朝日新聞は新聞を利用すると、学生に教育効果があると盛んに宣伝されています。
知性あふれる朝日新聞様は昨年イレッサ取材班を結成し、イレッサの「不正」を追及して、承認取り消しにも大変努力されましたが、残念ながらイレッサの承認は現在も維持されています。
昨年10月に医師会よりイレッサの詳しい副作用死亡率が報告されました。世界中でもこれ以外に検証できるデータは無いと思われます。イレッサは日本で最初に使用されたからです。これで、イレッサ取材班様の「副作用の無い理想の社会」が実現した暁には、どれくらいの死亡が防止できるか計算できるようになりました。
彼らの偉大な考察を検証してみましょう。検証といっても、単純な%計算で、小学生レベルの知性で十分です。
集計によると2002年9月から12月までにイレッサを使用された肺癌患者は約19000人でした。このうち副作用による死亡者は124例で、肺線維症によるものは114例でした。肺線維症による副作用死亡率は0.6%ということになります。
一方イレッサは他の抗がん剤が効かなくなった患者さんでも約3分の1に効果がありました。残りの3分の1が効果は限定的効果とされ、残りの3分の1がまったく効果がないと考えられます。
つまり、0.6%の人が薬の副作用で死ぬが、33%の人に効果があるということです。50倍の開きです。
ここから、朝日新聞イレッサ取材班様が年間にどれくらいの生命を殺すか計算できます。
一年間に肺癌で死亡するのは約57000人です。しかし、全員にイレッサを使うわけではありません。手術で完全に取りきれたり、他の抗がん剤で効果があれば使う必要はありません。逆に、男性で喫煙歴が長く肺が損傷を受けていると使えなくなります。
余談ですが、タバコは肺癌を作り出し(発ガン性)、増殖させ(プロモーター)、治療さえできなくする完璧な人殺しの毒物です。
さて統計で、実際にイレッサを使用できたのは3分の1です。つまり年間57000人の3分の1の19000人にイレッサを使えるということです。
肺線維症で副作用死は0.6%ですから、年間114人が死亡することになります。朝日新聞イレッサ取材班の主張が達成されたあかつきにはこれらの人々の死亡が防げることになります。これらの人は肺癌が進行し4月くらいの余命と考えられます。他の治療法も効かない例が大部分だからです。最大でも6月でしょう。つまり38年から50年分くらいの命が薬により奪われることになります。
イレッサの承認が取り消されれば、これらの命が助かるのです。朝日新聞イレッサ取材班の偉大な成果というものです。「副作用の無い理想の社会」の実現です。
同時に、承認取り消しになれば19000人の治療は不可能になります。そのうち著効は3分の1の6333人です。
1人が少なくとも半年以上1年くらいは寿命が延びたはずです。
つまり、朝日新聞イレッサ取材班により6333年から3200年分の命が失われるということです。(もちろん著効でもっと長く生存されている方もいます。正確な余命改善率は、発売後年月が経っていないので、計算できません。)
朝日新聞イレッサ取材班が一年間に奪う命は、正確には6333年−50年ということになります。
これが、朝日新聞イレッサ取材班が一年間に奪っていくはずの命ということです。チャップリンの有名な言葉を思い出します。「一人を殺せば殺人者だが、大量無差別に殺せば英雄になれる」。
朝日新聞イレッサ取材班はまさに正義の味方のつもり、英雄なのでしょう。朝日新聞イレッサ取材班の「副作用の無い理想の社会」とはこういう事なのです。
朝日新聞のこれらの陰謀は、医師の理性と論理によって不成功に終わったのです。
しかし、昨年一年でも、朝日新聞を信じた患者さんが多く死んでいったことでしょう。数百年から千年単位にです。医療ミスの比ではありません。6000年分なら殺人未遂としても、超凶悪犯罪といってよいでしょう。あまりの巨大な結果責任に普通の感性なら辞職するのが当然では無いかと思うのです。
無責任な言論に社長が辞任したり、取材班の社員が懲戒を受けることもありません。これらの恐ろしい言論に朝日新聞の誰も責任を取らないのです。他人は非難するが、自身は責任を取らないのがマスコミです。
思い違いであれ、ミスであれ、命を奪えば責任を取るのが社会のルールです。
説明不十分で乳房が失われたといって、マスコミは医師を非難し、裁判でも賠償責任が生じます。これほどの人命被害はなぜ非難せず、有罪にならないのか法律家に説明をうかがいたいというのが庶民感情です。実際インフルエンザ予防接種廃止でも人命は失われたのです。マスコミのおかげで・・・。わずかな副作用を恐れ、マスコミを信じる、代替療法・民間療法にはしるというのは、こういう巨大なリスクを背負うということです。利益はそれに比べてほとんど得られません。ここでは0.6%です。実際の命の効果に直せば0.1から0.2%程度のものです。そして、相互のかばい合いでマスコミはこれらのことを隠しつづけているのです。
いったん承認を取り消されると、再承認に10年はかかるでしょうから、6万5千年分くらいの命が奪われるはずでした。朝日新聞イレッサ取材班の「副作用の無い理想の社会」が実現していたらの話です。
これらは、朝日新聞による害毒のほんの一部なのです。実際、マスコミによるインフルエンザ予防接種廃止ではもっと多くの人命が奪われたのです。癌より余命の長い人たちだったからです。
医師の大部分が朝日新聞を毛嫌いしているのは、このような事実関係の集積があるのです。感情的反発では無いのです。
2004.1.1
初級システムアドミニストレーター 河合 尚樹
P.S.
0.6%は変る可能性もあります。0.6%とは、発売直後の集計です。副作用についても余り知られていない時期のものです。
使っても効果が余り無いか、まったく効かない人に副作用が出れば医師も患者も直ちに使用中止をします。問題は、よく効果があった人に副作用が出た場合です。肺線維症はステロイド大量投与によって割とコントロールできるそうです。副作用を抑えられたとき、患者さんは大抵「よく効いていたので、もう一度使ってほしい」と希望するのです。医師にも「できればよいのだが」という誘惑があります。そして、再使用をすると、今度はきわめて重篤になるそうです。
経験により、これらが知られてきたので現在副作用後の再使用はしなくなっています。このため、0.6%
はもっと減少するかもしれません。初めてのものを使いこなすのには、何事にも習熟が必要なのです。
また、どのような人が副作用が出やすいかという統計も集積しつつあります。
もちろん、使用比率ももっと上昇する可能性がありますので、奪われるはずの命の量ももっと増える可能性もあります。
私の文が感情的マスコミの記事と違うのは、根拠を示していること、それゆえ間違いでも検証可能ということです。病気で無い人には「寿命が1.5倍くらいになってもたいした事は無い。それくらいなら治療を拒否する」と頭で考える人もいるでしょう。それは自由です。しかし、薬を飲むだけで、最後の半年を穏やかに家族と過ごせることは、かけがえの無い貴重な時間と考える人もいるのを忘れてはいけません。朝日新聞はそれらを奪おうとしたのです。現場の医師には、これほど腹立たしいことはありません。憎んで当然です。
「かわいそうな一例」を取り上げ、非難して感情的になるのとは根本的に異なるのです。論理的・科学的思考と感情的・思いつきマスコミ記事との差なのです。
「奇跡的に回復した一例」で代替療法・健康食品や癌治療薬を売りつけるのと似た発想です。下劣さでは共通しています。代替療法を薦めるなら、それによって失われる有益性も責任をもって説明すべきです。自分の気に入った事を述べるだけでは死者が増えるのです。下劣な朝日のように・・。
朝日の下劣さの証明 自身の法律違反を正せない朝日新聞
物事を多面的に見れない。視野狭窄。たった一つの正解しかないと信じている。自身に都合の良いデータしか見ない。善か悪の二元論。一部を論じて、全体を論じたつもりになる。全体の中で、どのような位置付けか理解していない。自分は正義だと信じている。現代医学を悪と信じている。
P.S.2 悪夢・・・
自身が大量の人命を奪っておいて、人命・人権の向上に朝日医学賞や社会福祉賞を贈る。
ブラックジョークでしかありません。
真に人命の救済に尽力しているこのホームページにぜひとも朝日医学賞をください。
P.S.3
イレッサは理論的に他の消化器癌にも効果があります。イレッサが承認取り消しになっていれば、将来的に年間一万年以上の生命が奪われていたものと思われます。めでたし、めでたし。
イレッサはEGF受容体というタンパク質の働きを抑え、がん細胞の増殖を防ぐ。劇的な効果が出る人がいる一方、副作用で死亡する人もいて、効き方の個人差が大きい。最近の研究で、イレッサが効く人は、同受容体の遺伝子に特有の変異があるケースが多いことが分かっていた。
研究グループがイレッサの効果のあった患者を調べると、たばこを吸わない人が多いことが判明。腺がんというタイプの肺がんになった非喫煙者15人のがん細胞を分析したところ、7人(約47%)に同受容体の遺伝子変異があった。
一方、喫煙歴のある肺がん患者では、81人のうち変異を持っているのは4人(約5%)にとどまった。