一日分が205円以下の薬は保険請求時に、薬の名前を省略しても良いという制度があります。
患者さんには関係のないことですが、私もずいぶんこの制度を利用してきました。
当然、大もうけをたくらんだのではありません。世界で標準的な治療、もっとも正しいと考える治療法が、役人の作成した「社会保険制度」のルールでは対応できなくなることがあります。それを乗り越えるために安い薬を組み合わせ、世界標準に合わせるためなのです。
例を挙げてみましょう。
小児用バファリンという薬がありました。ほんの数年前に「バファリン81」という名前に変わりました。同じ薬なのにです。
小児用バファリンはアスピリンが大人から見れば少量含まれた薬です。小児に使用すると「ライ症候群」という恐い副作用をおこすので、小児には20年位前から使用禁止でした。しかし、大量の小児用バファリンは販売されてきたのです。
アスピリンを服用しつづけると血が止まりにくくなるという副作用が知られていました。これに着目して、心筋梗塞や脳梗塞のあとに少量のアスピリンを与える実験が数多く実施されました。その結果、他の薬と同等かそれ以上の効果があったのです。そして、その量がちょうど小児用バファリンでよかったのです。
ところで、厚生省の役人の規定が法律と同じ効力がありますから (これが気に食わない、参考でよいと思う) 、小児用バファリンは「小児の解熱」にしか用いてはいけないのです。もしも、名前を出して大人に使用すれば使用禁止ということになります。
小児用バファリンが保険に載せられたときには想定されなかった使い方なのです。
医学は進歩します。あらゆる規制や制度は必ず時代に合わなくなるものなのです。50年前に「インターネット常時接続時代における人権侵害」に対する法的保護を想定できた人間が存在するでしょうか?
これは、厚生省もメーカーも知っていたことです。しかし、20年は放置されていました。
メーカーにも言い分はあるのは理解できます。小児用バファリンは一錠6円40銭なのです。考えても見てください、コーヒーに入れる砂糖よりも、飴玉一個よりも安いでしょう。きわめて厳重な衛生設備と、精製度の高い安全な原材料を加工してこの値段ではやっていけません。輸送費・人件費も必要です。保険の適応に「心筋梗塞の予防」をとるには、何億もの経費がかかるのは目に見えています。それをまかなえる値段が薬についていないのです。
なんでも、飛び切り安ければ消費者に良いとか、企業はどんなにいじめても良いと考えるのは単純すぎます。回りまわって、消費者が不利益になることもあるのです。再生産できない異常に低い薬価は役人が決めるからです。自由主義経済ではありません。工場の設備が更新できなければ、安くてよい薬も製造中止で消え去るのです。
同じ効能の厚生省の許可する「血小板機能抑制剤」にシロスタゾールというのがあります。これだと、厚生省のルールどおりです。一月分の薬代だと、16716円かかります。一方、小児用バファリンを名前を記載せずに保険請求すれば、わずか月に192円です。これでも、私は「悪徳医の金儲けのため」に名前を隠して努力していたのでしょうか?そんなことは、毎日新聞のようなゲスのかんぐりというものです。
医師に一日200円の自由裁量を与えるのが、それほど悪徳医を増長させる事なのでしょうか。
むしろ、世界で標準・日本で不可能な治療を何とか安い薬で工夫しておさめる、良い制度に思えるのです。
制度・法律などでがんじがらめにして、創意工夫を一切排除させるのが新聞は得意のようです。朝日の馬鹿記者が医師の口の利き方が悪いといって、厚生省に「指導」を求めに行ったという愚かな事件がありましたが、新聞とは本当にとんでもないことを言い出すものです。何でも、お上の規制に頼りたがるのがマスコミです。創意工夫は不要のようです。
先ほどのシロスタゾールを使用すると、小児用バファリンに比べ月に16524円多く費用がかかります。年198288円余分ですから、10年で約200万円節約したことになります。一人でこれだけです。10人以上に使用しましたから、私一人で約2000万円以上の保険財政を助けたことになります。これが、毎日新聞の言う「悪徳開業医」なのでしょうか。本当に毎日の記者は馬鹿なことを考えつくものです。自分自身の考えが低級だから、相手も同様だと考えるものなのです。自身の下劣さの反映なのです。
現在薬局で売られている小児用バッファリンは、アスピリンが使われていないので安心して使えます。医師用の薬とは成分が違っているのです。
もうひとつ例を挙げましょう。
気管支炎や肺炎の原因にマイコプラズマというのがあります。若い人に多く、一般の抗生物質がきかず、重篤になって困ることがあります。急激に重篤化することがあるのです。同様の老人の病気にレジオネラ感染症があります。これらの菌は原因の30%くらいになることがあります。これを考慮しないで治療を考えるのは現実的でありません。教科書的には、痰の培養で原因菌を決めることになりますが、検査代も高く、結果が出るのに3日くらいかかり、大学病院の入院ならいざしらず、一般外来では現実的でありません。高い費用で、結果が出る前に勝負はついているのです。
これらの菌には、安い抗生物質のエリスロマイシンを一般の抗生物質に併用すれば重篤化は簡単に防げます。ところが、日本の保険では一種類の抗生物質しか使ってはいけません。逆にエリスロマイシンでは他の菌にはほとんど効きません。これでは、入院や死亡を防げないのです。呼吸器の専門家ほどこの恐さは身にしみています。エリスロマイシンはわずかに60円から110円で出せるのです。それを3日使えば確実に効果がわかります。110円で命にかかわりかねない病気を考慮して治療するのが悪徳でしょうか。私の患者さんのうち結構これで命が助かっている老人や子供がいるのです。110円の工夫を生かせる制度を残してほしいのです。
もちろん、205円以上の額は監査を受けるのです。あまりに細かい査定を行うのは事務量が増え、人件費も増えるので、医療費上昇の原因になります。どこかで線引きをするのが現実的です。
役人の決めたルールに盲従していれば、命は守れないということは現実にいくらもあります。厚生省が万能なら、AIDSもヤコブ病も事件にならないはずです。
一日分200円の中でなんとか科学的・世界標準に準じた医療を創意工夫している医師も多いのですが、毎日の低能記者にかかると、悪の温床としか考えられないのです。
もちろん、医師の中にも悪いのはいます。聖人ばかりとは言いません。制度を悪用して利益を図る者が少数出てくるのは、現実社会ですからあるとは思います。しかし、全体としてみればむしろ有益な制度です。新聞記者というのは些事にこだわり、全体の中での位置付けが理解できない者の集まりだから、荒唐無稽な記事を一面に載せて、医師攻撃が出来るのです。
健康保険が万能で、厚生省のご指示がまったく完全なら、医師は苦労はしません。保険外の先進医療も不要になるはずです。
糖尿病から腎不全になることが最も多く、医学界では重大問題です。透析になれば多額の医療費がかかります。腎臓病、特に糖尿病からくる腎不全予防にはACE阻害剤が効果的なのは国際的に承認されています。
どこの大学病院でも使用しています。ところが、ACE阻害剤は厚生省は高血圧にしか使ってはいけないことにしています。これを使用せず、糖尿病患者に裁判で訴えられたら医師は負けるでしょう。もちろん、毎日新聞がその賠償費を払ってくれる訳がありません。いいたいことは言うが、責任はとらないのがマスコミです。
我々医師は科学的・倫理的に正しい治療をしたいだけですが、日本では認められていないことも多いのです。それなら、どこの病院もうその「高血圧」という病名をつけるか、200円以下の薬で名前が出ないようにしているのです。これは、倫理的にも科学的にも仕方のないことです。表面的なウソ病名や「不正請求」よりも、患者さんの腎臓を守ることのほうが大切です。一人の腎臓透析を防げば、1000万円以上の医療費が一年で防げる上に、患者さんの社会生活も守れるのです。
「厚生省が認めず、毎日新聞が医師攻撃をするので、あなたは腎不全になっても責任はもてません。」などと説明できるでしょうか。
毎日新聞程度の低級のレベルの人間が、「レセプト開示で情報を全部だせば、ウソ病名で医師を追及できる」等主張しますが、「ウソ病名」がないと命が守れなかったり、かえって医療費が増すことになるでしょう。ゲスはどこにでもいます。困ったことです。大事なのは、国際的に見て質が確保できているか、平等性が保たれているかなのですが、ゲスは目先の整合性しか求めません。そして、「ウソ病名」すなわち、医師の金儲けと短絡して平気です。実社会の苦労や気づかいなど理解できないのです。
ACE阻害剤の心臓保護作用も同じで、血圧が高くない人でも、少量の薬を使用して心臓の保護を行います。厚生省が禁止している方法です。
毎日新聞のアホ記者なら、厚生省のルールに従わないのは、すなわち医師の不正、目的は悪徳金儲けと単純にしか考えられないのです。さすが、スタチン系で4割癌などというウソ・デタラメを一面で流し、非科学新聞を自認するだけのことはあります。
205円が表に出せないのは、科学のため・学問的整合性のため・患者さんの命のためであることが多いのですが、下劣な品性の人間にかかれば、表に出せないとはすなわち自分のためで、理由は金儲けとしか考えられないのです。他人への誤解は自身の鏡であり、自身の下劣な品性の反映です。想像力の欠如・学問への無知の反映でもあります。
厚生省のルールが論理的・科学的なら厳しい監査も良いのですが、ルールは役人のご都合主義の塊のような部分さえあるのです。
スタチン系というコレステロールを下げる薬があります。メバロチン・リポバス・リピトールなどです。同じ作用なのに、メバロチンとリポバスの病名が高コレステロールであると保険は通りませんし、リピトールは高脂血症だと保険は通りません。
保険上はメバロチン・リポバスは高脂血症が適応で、リピトールは高コレステロール血症が適応だからです。この場合は、まったく同じ病気を意味しているのにです。医師でも混乱しているのは多くいます。
こんな、でたらめなご都合主義・非科学的監査制度など守ろうという意欲さえ失せてしまいます。だからといって、毎日の記者のように保険制度も監査も廃止しろとは言いませんが・・・。
進歩して、新しい手術が出来ても、なかなか保険に採用されません。「古い手術として請求せよ」と通達がきます。役人のご都合主義の通達の塊が保険制度です。逆に、絶対行われない手術が残っていることもあります。保険のルールどおりでは、患者さんの不利益になることも結構あるのです。
予防接種の正常反応の一部で、腕のはれや硬結があります。副作用と呼ぶのは間違いで、気にするほどのことではありません。自然に消えます。しかし、これを少なくすることが統計上明らかに存在します。皮下注射でなく筋肉注射にすることです。これが世界標準です。法律のほうがおかしいのです。とくに、子供の三種混合ワクチンがそうなのです。ところが「予防接種法」では皮下注射にしないといけないことになっています。筋肉注射は違反です。患者さんのためには、法律のほうがおかしいのです。
では、河合医院では、どうするのか?もちろん法律どおりの皮下注射ですが、いつも、うっかり針を深く刺しすぎて、筋肉注射になっているのです。
科学より、命より役人の制度・監査をありがたがるのはアホ新聞記者くらいなものです。インフルエンザ予防接種廃止で死亡者増加に大きく貢献したのはマスコミです。
肺炎球菌ワクチンの適応は子供だけです。私は一生懸命高齢者に行っています。命を守るためです。毎日のアホ記者なら「適応外の高齢者に予防接種を行う、金儲けの悪徳医者」になってしまうことでしょう。もちろん、世界的に視野を持てば、間違っているのはマスコミと厚生労働省なのです。こんなことは科学者なら、よく経験することです。お役人さまの規制を絶対視するのは、アホマスコミくらいのものです。私にとって重要なのは、命を守るための科学的合理性です。役人の規制ではありません。
マスコミの大反対により、インフルエンザワクチン廃止になってからも、個人的に一生懸命接種を行ってきました。マスコミや厚生労働省の規制の範囲外の行為です。これも毎日新聞なら、「適応外の高齢者に予防接種を行う、金儲けの悪徳医者」になってしまうことでしょう。2001年再開されたので、私のほうが正しかったことになります。個人開業医など程度が低いと、新聞記者は馬鹿にしているのかもしれませんが、マスコミより、厚生労働省より正しかったのは私のほうです。マスコミの顔色や・厚生省の意向・規制にびくびくして医療を行っているのではありません。
5年程度なら、粗悪な商品・詐欺的商法でも大儲けもできるでしょう。しかし、10年20年と先を考えれば、良い商品で長く消費者とお付き合いしたほうが生涯利益は大きいでしょう。
地域にねざし、10年以上お付き合いをしようと考える医師も同じです。良くしてあげて喜ばれ、悪くなるのを防いで長く外来通院をしてもらったほうが利益が上がるというものです。実社会の経験があれば自明の理です。これがわからないのは、実社会経験のないアホ新聞記者くらいのものです。患者さんの利益と医師の利益は大きく反するものではありません。
マスコミのおろかな記事で、満足するのはマスコミの軽薄でちっぽけな正義感、規制されるのは科学的・論理的な医師の予防法や治療、被害を受けるのは国民の命という図式は、インフルエンザワクチンの集団ヒステリーでの廃止による死者数増加となんら変わりはありません。マスコミの感情優先、構造的非論理性が原因ですが、報道で取り上げられることはありません。構造改革が必要なのです。他を非難するのは上手ですが、反省することのないのがマスコミです。
もちろん少数のものは、制度を悪用すると記者どもは主張するでしょう。
医師も聖人ばかりではないのは認めざるを得ません。しかし、この例はどうでしょう。
通信の秘密で最大限利益を受けるのは誘拐犯など悪人です。言論の自由はテロリストにも認められます。だからといって、どちらも規制しろとは誰も言いません。全体の利益のためには、多少の不都合も見逃さざるを得ないのは当然です。
マスコミのデタラメ報道で死者が出ています。私は以前からそれらを追及していますが、それでも、言論を規制しろとは書きません。失うものも大きいからです。
逆に、医師の不用意な言動が多いので規制しろと厚生省に掛け合ったのは朝日新聞のアホです。自分たちのウソ・デタラメの言論の自由も最大限に保障しろ、しかし、医師の言動は気に食わないから規制しろ、というのが新聞記者なのです。
しかも、第一面に載せてしまったデタラメ記事は絶対訂正しないのが大新聞なのです。
乳幼児の医療費は無料です。これを悪用し、休日だろうが深夜だろうがお構いなしに受診するものも出てきます。「いつから熱があるのです?」とたずねると、「今日の早朝からです」とか「昨日の晩からです」と平気で答えます。こんな連中がいるので、ドイツの医師会も休日や深夜は高額の時間外料を取るように要求しています。
だからといって、乳幼児の医療費無料化は悪だとはだれも主張しませんが、新聞記者ならやりそうな事です。全体を見る能力に欠けるからです。一部の悪用ばかりに目が行くのです。
患者は弱者でいつも正しい、医師は悪徳でいつも悪い。このようなステレオタイプの思考しか出来ない低能が新聞記者には多いのです。現実はそんなに単純ではありません。社会対立を助長するだけでは、本質的解決はいつまでたっても得られません。
わずか205円の自由裁量の余地を与えれば、医師は頭を使って種々の工夫で患者さんの利益をはかっているのです。厚生省の時代遅れを補正し、世界の標準に近づけているのです。社会的に大きな問題にもならないのに、何でも役人が規制しろとわめく新聞記者の低能には開いた口がふさがりません。役人が箸の上げ下ろしにも口出しする、独裁国家・狂信的国家にするのが望みなのでしょうか?役人の規制がそれほどお好きですか?
何でも、マニュアルや規制でことが解決すると考えるのが新聞記者です。
現実社会は、多少の融通・工夫がないと上手く機能しません。役人の規制よりも、205円で医師に工夫をさせればよいのです。
これさえ規制するなら、患者さんが失うものも巨大です。
葉っぱが3枚腐っていたら、森全体が腐っている、焼いてしまえと考えるのがマスコミです。
枝葉しか見ず、森が見えないマスコミなど信じてはいけません。
2000.07.01
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