OSの違いを乗り越える

かなり詳しい人からも,MacからWindowsや,その逆,さらにはイメージの共用に困っているので相談を受けます。たとえば,クラリスや123の表をEXCELの表に使いたい等です。いくらフロッピーやUSB機器が読めるからといって,ワードの文章をMacに持って行って開こうとしても出来ないことが多いです。それなりのルールやこつがあります。こつをつかめば,大丈夫です。ユーザー辞書も一から登録するのは面倒です。移植したいものです。肝臓が移植出来るのですから,データも移植しましょう。どの初心者向けの解説書にも載っていることなので,書く必要もないかと思いましたが,答えると尊敬されるくらいなので書いておきます。ワープロ専用機でも同じ様に処理できます。辞書の移し方はDos/V機同士でもテクニックは同じです。

1.Macはあらゆるフロッピーを読めますが,WindowsはMac形式を読めないので,フロッピーはDOS形式でフォーマットしておきます。USBのスーパーディスクも両方で読めます。これもウインドウズでフォーマットしておきます。他の機器は実際にはやっていないので解りません。読めれば保存の形式に注意すれば,移植出来ます。

2. 最近気に入っているのは,インターネット標準のHTML形式での移植です。ワープロで作った文書を「ファイル」メニューのHTML形式で保存を選びます。相手に読んでもらうだけならば,フロッピーをどこに持っていってもまず読めるでしょう。ブラウザのないパソコンは考えられないからです。ダブルクリックでNetscapeかInternet Explorer(IE)が開いて表示されます。表示されたら,メニューの編集から「全文を指定」し「コピー」して,自分の使いたいワープロ文書へ「ペースト」または「貼りつけ」すれば出来上がりです。

3.同じ様な物ですが,作成した文書を「ファイル」メニューから「名前をつけて保存」を選びます。初心者はここで名前をつけて満足してしまい,その下の「ファイルの種類」Macでは「形式」等という欄があるのに気付かない人が多いようです。これが一番重要です。ここで何も指定しないと,使っているソフトの特殊な形式で保存され,他のソフトでは読めなくなってしまいます。つまりバージョン情報,センタリング,アンダーライン,フォントの指定,タブ形式,余白の設定等の情報がそれぞれのソフトで違っているので読めなくなるのです。それではそういう情報が一切ない保存形式を選べば良いのです。それは「テキスト」形式です。もう少し進んだのでは「テキストと改行」形式です。どちらが良いかはOSやソフトのバージョンの組み合わせに依るので,私なら同じ名前で両方の形式で保存しておき,移植してから試してみます。2つを行っても,たいした手間ではないからです。

4.このフロッピーを他のコンピューターに持っていっていきなりダブルクリックをすると反応しないか,WordPadかsimple textが開き,うまくいかないと嘆かれてしまいます。これでも開いてしまえばコピーと貼りつけでうまくいきます。開かないとパニックです。
ここでの本来の操作は,使いたいワープロを先に起動しておきます。その「ファイル」メニューの「開く」から移植してきたフロッピーの開きたいファイルを指定するとまず成功します。このときも保存のときと同様に,開くときの画面で下の方に「ファイルの種類」とか「形式」を選ぶ欄があるはずです。ここでは,「すべてのファイル」とか「テキスト」としないと,目当ての文書が表示されない事があるので注意が必要です。あとは,センタリングやフォントの種類や大きさを変更して,移植完了です。最悪開かなければ,WordPadやsimple textを使って同じ操作をすれば,まず読めるはずです。

追加 2000.07.01
ウインドウズのWordPadとメモ帳ソフトでは違う反応を示すことがあります。うまくいかないときは、両方試してみてください。また、ウインドウズでMacのファイルが「種類が不明」となりますが、これは拡張子がないためです。名前の変更で無理やり.txtや.docに強制的に変更してしまうというウルトラC(ふるい表現だ!)もあります。

5.さて,表計算ソフトやデータベースです。これも,まったく同じです。「名前をつけて保存」のとき形式でテキスト形式を選びます。表計算やデータベースでテキスト形式とは何のことか初心者には理解できにくいでしょう。これは同じ行(レコード)のデータの間の区切りを空白,またはTAB記号で区切り,表の行(レコード)と行(レコード)の間は改行で区切るという保存形式の約束と理解しておけば良いでしょう。Windowsでは空白かTABかを選ぶ場合がありますが,これもどちらがうまくいくか解らないので,両方の形式で名前をかえて保存します。この形式で移せるのは数字や文字だけで,式は移植できません。しかし,大事なのは正確な基本データであり,導かれる式は作り直せば良いのです。式の形式もソフトにより異なるので,移植が無駄な可能性が高いのです。もちろん,移植先では先にソフトを立ち上げておいてから,「開く」命令でテキスト形式を指定して開くのは文書と同様です。

6.同じ様な形式でCSV形式があります。これは表の同一行のデータの間はコンマで区切り,行(レコード)と行(レコード)の間は改行で区切るという約束です。つまりCommma Separated Valuesです。これもたいていの表計算が対応しているので,保存してみる値うちがあります。

7.SYLKというのがあります。これはお役所が決めたようで,表計算の式も移せることになっているのですが,私は成功したことがありません。フォント情報や文字サイズが移せるというリッチテキストもありますが,うまくいかない事が多いです。また,親切に「1-2-3形式で保存」などと出ていて,喜んでいると案外うまくいかないことが多いように思います。

8.画像も同じです。データ品質を落とさないなら,MaCならPICT形式,Windowsならbmp形式で保存します。どちらも一切圧縮なしにすべての画素の点を保存する形式です。Photoshopやペイントソフト等画像ソフトを起動して「ファイル - 開く」命令で開きます。私の使っているきわめて古いPhotoshopバンドル版では一度開くとPhotoshop形式に変換しますが画像は表示されません。もう一度開くと今度は画像が表示されます。あきらめないことです。開けたら,再度保存してOSに適合した保存を行えば他のワープロソフトでも利用可能です。いきなりワープロソフトに取り込もうとすると,失敗することがあります。

9.ほんの少し画像の質が落ちてもよいなら,インターネット向けのGIFやTIFF形式で保存します。JPEG(jpg)形式も利用できます。これらをNetscapeやIEのアイコンの上に置くようにすると,ソフトが立ち上がり,画像が見られます。見えたら,画像の上で右クリックするか,Macならマウスを押続けると「画像に名前をつけて保存」と出ますからそれを保存する手もあります。たいていの画像ソフトはこれらの形式に対応していて,開けます。

10.Ethernetでつなげば良いのですが,MacとWindowsは相性が悪いようです。どうしても必要なら,サーバーとしてLINUXを使用する必要があります。この場合でも,汎用性のある保存を心掛ける必要があります。EthernetでMacとWindowsのファイルを共有するプログラムもありますが,結構設定が面倒ですし,ファイルにアクセスできても直接クラリスでワード文書が読めるわけではありません。(代表的なワープロにはソフト的に対応している場合もあるが,うまくいかない方が多い) やはり汎用性のある保存形式で保存していないと読めません。

11.自分で自分にメールを送り,画像や表を添付することもあります。うまくいく場合もあります。会社から家にフロッピーやノートパソコンを持って歩くよりもスマートな方法です。いろいろ試して見て下さい。テキスト形式で送信しておけば,原理的には読めるはずです。しかし,ブラウザのMIME設定を行っておかないと,画像や表が文字列に化けてしまうこともあります。

12.さて,画像,表,文章の複雑に組み合わされた文書です。これは,可能性が少なくなりますが,不可能ではありません。まず,保存はインターネットのHTML形式です。ソフトによっては個々の要素を同じフォルダ上に保存してくれますから,相手先のソフトから要素ごとに貼りこみや画像のペーストを使って文章を組み立てます。もう一つの方法は,一度ブラウザに取り込み,画像を保存したときの様に,その要素ごとに名前をつけて保存してから利用するかです。画像ソフトで一度読み込んで変換する必要がある場合があります。まったく元のままにはなりにくいものですが,十分使用に耐えられます。Macではインターネット上の表をコピーして,表計算ソフトに直接貼りつけられます。EXCEL2000からは対応ができたようです。一度ブラウザで立ち上げて,表計算もコピーを試して見る値うちはあります。

13.日本語変換の辞書(登録単語)も移せます。まず,辞書ツールを立ち上げ,ユーザー辞書を開きます。(Macは機能拡張の中にある)。あとは同じで,名前をつけて保存,テキスト形式保存です。IMEは言葉が変で,ツールメニューの中の出力と表現します。または、イクスポートと表現します。読み込みたいコンピューターで辞書ツールを使いユーザー辞書を開き,「テキスト形式からの読み込み」「テキストからの一括登録」「文書ファイルからの登録」「インポート」等の指示に従います。同じ機種を買い替えたときも同じです。失敗すれば「保存しますか」に「いいえ」を選び,種々試してください。

14.Bookmarkも移せます,NetscapeもIEもbookmark.htmとその名前のとおりのファイルがありますから,コピーします。(Macなら初期設定のなかのNetscapeフォルダ)。IEならファイルメニューのイクスポートを行うとbookmark.htmというファイルを作ってくれますので,フロッピーで移動出来ます。もちろん検索でBookmark.htmをみつけ,直接コピーしても可能です。どちらもHTML形式ですのでOSやソフトに依存せず,そのままでも利用できます。メールアドレスも移せます。AdressBook.htmで同じ様な操作です。ソースを見るで具体的にアドレスが表示されるので,コピーできます。

15.余分ですが,インターネットでページ全体をそのまま保存したいときは,名前をつけて保存で,ソースの保存を選べば画像など組み込んだ,そのままの姿で保存できます。これは,OSやソフトに依存しません。文章だけで良いなら,テキスト形式の保存を選びます。

16.これらが理解できれば,メールなどで相手の機種が解らないときなど,テキスト形式で送信すべきだというのが,より理解できるでしょう。

以上の様な方法で,WORD,EXCEL,クラリスの表計算とワープロ,123,MacWord, IE, Netscape,ことえり,IME等をいったり来たりしています。どれにも一長一短があり捨て難いからです。葉書作成時の住所録,年賀状作成ソフト等も同じ様に処理できる可能性があります。移植性がないと買い替え需要が望めないので,対応する場合が多いからです。データベースなら,一度表計算で読み込み,移植後さらにデータベースに書き戻すなど,複雑になる可能性はあります。本当に大事なファイルは案外少ないものですが,移植しておけば,故障時の被害も軽くすみます。ウイルスも機種依存性なので,被害で全滅の危険も減ります。ワープロ専用機でも,移植の作戦は同じです。

結局,移行手段は提供されているのです。売り込む側になれば,簡単に乗り換えられると宣伝する必要がありますが,逆に簡単に自社製品から,他のOSやソフトに乗り換えられては困るので,積極的には宣伝しません。中途半端な宣伝にならざるを得ないのです。困るのは知識のない消費者で,儲かりさえすれば良いのがメーカーです。

要約
A.保存のとき注意して汎用性のある形式で保存する。一般的には「テキスト形式」です。HTMLも汎用性があります。
B.ダブルクリックで開くのではなく,移植したいソフトの方を先に立ち上げておいて,「ファイルー開く」メニューを用いる。

応用問題
いま使っているコンピューターのユーザー辞書を,エクセルやクラリスの表計算に取り込んでみましょう。ヒントは,画面に出ている表示に注意することです。(特に保存のとき)

蛇足
「先生は詳しいようなので,医師向けの画像管理ソフトをデモさせてくれ。」と言ってきました。断わったのですが強引です。定価は80万円です。「JPEGで65000枚保存できます。BMPも可能です。」とたいそうの自信です。私が「DICOMはどうですか?」と質問すると「聞いたこともありません。」との返事です。「NIHのサイトに詳しい説明があるので勉強してきてください。」とお引き取りを願いました。

レントゲン科以外では,まだ馴染みがないかもしれませんが, 医療分野では画像圧縮の標準はDICOMです。MR,CT,エコー等少なくとも今後15年くらいはDICOMでしょう。対応機器も増えています。 病院内LANを構築するときもDICOMが標準です。見るだけならNIHからviewerが無料ダウンロードできるはずです。電子カルテを選ぶときもこれが読めるかが着眼点の一つです。将来,機械とつないだり,大病院からの受け渡しに支障のでる可能性が考えられます。医師でも知らない人が多いのに,プログラマーにどこまで知識があるか疑問です。
よその大病院でその話をしたら,「そんなものを買う医師がいるのか」という反応でした。同感です。医学もついていくのは大変ですが,コンピューターもついていくのは大変です。あまりに,関連分野が広く,進歩が早いのです。

1999.12.01

http://geocities.datacellar.net/HotSprings/kawaiclinic
初級システムアドミニストレーター  河合 尚樹
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