専業主婦の国民年金料

国民年金掛け金を専業主婦があまり収めていないので,勤労女性からの不満が大きいと論議になっています。テレビなどで,乗せられた愚かな勤労女性がヒステリックに叫んでいます。新聞でも同じ様な記事が目につきます。最近は女性記者が多く,勤労女性の意見は強いようです。専業主婦の意見など問題にされません。

大変な時代で,子供を育てるのに全力を尽くそうと考えて積極的に主婦を選ぶのも一つの生き方です。働く女性も主婦もどちらも老後の生活を保証するのが福祉というものです。年金制度発足当時から専業主婦も働く女性もいたわけで,今急に専業主婦批判が始まっています。

年金制度とその計算は複雑で,素人には理解できません。そのため,我々は自分の年金さえいくら貰えるか解りません。ましてや,他人の年金とその掛け金がどうなっているかなどほとんど解りません。そして,その掛け金に対して,給付金が適切かどうか,複雑すぎて解りません。どこで国民が「専業主婦の掛け金が不公平だ」と声を挙げているのでしょうか。不思議なことをマスコミは書くものです。

厚生省はいつから国民の声を熱心に聞くようになったのでしょうか。年金切り下げと健康保険の個人負担をすすめたのが今回の不景気の直接的原因でしょう。国民の声を聞かなかったのは,大蔵の財政再建計画に従う厚生省だったのではないのでしょうか。国民年金の制度を作ってきたのは厚生省です。それが,いまさら,不公平でけしからんと言いはじめています。複雑な制度を国民はほとんど知りません。厳密にどの程度の負担率で,どの様に不公平なのか国民には理解できません。制度の不備が理解できるのは専門家でしょう。制度が不公平だとしてもそれを作ったのは大蔵と厚生省です。

主婦と働く女性との溝は深まるばかりです。けしからんとの声は日に日に強くなっています。この論議でだれが得をするのかということです。厚生省も楽にはなります。厚生省は大蔵べったりの2流官庁と霞ヶ関ではランクされているのです。結局年金料の負担が上がり,楽になるのは大蔵です。大蔵の財政再建路線の一貫と見るのが妥当でしょう。愚かなマスコミもうまく乗せられています。制度に不備があるとしたら,放置してきたのは役人です。不思議なことにだれも役人を責めません。マスコミと役人の癒着が疑われます。

長年医者をやっていると,厚生省のやり方が見えてくるものです。患者負担が上がる前には,必ずマスコミの医師攻撃が始まります。患者と医師を分断しておき,医者はけしからんとの世論のなかで負担増が決まり,実際は国の負担が減るだけで医師の収入が増えるわけではないのに,いかにも医師が得をしたような世論が作られます。裏で大蔵と厚生が笑っています。厚生省のリークとそれに乗せられる,ばかなマスコミのおかげです。

今回も,大蔵,厚生連合軍がいつもの同じ手を使ってきたように見えます。医師の代わりに専業主婦が槍玉にあげられたのでしょう。これを見抜けないマスコミは情けないものです。役人にすれば,「世論の喚起」,「マスコミ対策」。実態は愚かな国民に片寄った見方を与え,分裂させ不公平感を作りだし,改革が必要だとの世論の盛り上がりのなかで,自分たちに都合の良い負担増を通させるのです。

残念ながら,年金の事に関しては専門家でないので何がベストかは私には解りません。対案が出せないのは残念ですが,マスコミの意見にはついてはいけません。解るのは,中央役人の陰湿なやり方だけです。キャンペーンの目的は,もちろん,国民の負担増と大蔵の財政再建です。省益あって国益なし,官僚あって国民なし。財政あって国民経済なしです。官僚丸抱えの政策にのる橋本首相は立派です。

年金掛け金が上がり,負担増になるとき,必ず負担の公平化や適正配分,働く女性への配慮という言葉が使われるでしょう。スケープゴートは主婦で,(自分も負担増なのに)喜ぶのは働く女性,裏で笑うのは大蔵官僚です。


1998.06.15
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