酸素療法ブーム


  

 

 

 


酸素バーが流行です。酸素を吸いながら、リフレッシュ効果を目指すものです。排気ガス・タバコの吸いすぎで現代人は酸素が不足しています。酸素を吸って元気になりましょうということでしょうか。酸素バーで一服するのが知的でおしゃれな現代人の流行のようです。

確かに、タバコを吸うようなバカ者は慢性的な一酸化炭素の軽い中毒状態ですから、酸素は不足しているでしょう。
多くの論文で、タバコを吸う人間は仕事の能率が悪いのが立証されています。欠勤率が多く、病気になる確率も高く、アメリカでは喫煙者をできるだけ採用しないのが一般的です。労務コストが高いのです。

最近は、酸素濃縮器がバカ売れで、エアコンにもつけているメーカーがあります。一流企業を自認する大会社も金儲けのためなら、科学的根拠もなく売りつけるのはマイナスイオンを見ても解るとおりです。

機械は進歩しているので、酸素は通すが窒素を通さない膜とか、窒素を吸着して酸素だけ通す化合物がありますので、酸素濃縮器は比較的簡単に作ることができます。

在宅酸素療法も行っています。当然、治療に酸素を使っています。

酸素療法を行う前提は禁煙を守れることです。さらに、火の用心にも気をつけます。私の患者さんでも、線香が一気に燃え上がったという人もいます。

酸素飽和度計も、もちろん使用しています。酸素を吸わずに、空気中で自身の血液を測ってみると97%から98%くらいのものです。もちろん100%にすることは不可能ですが、酸素を多量に補給しても1%弱しかあがらない計算になります。1%上がったからといって、一般人が楽になることはありえません。健常人が酸素をいくら吸ったところで、効果はまったく無いのは明らかです。もちろん、酸素を吸えば能率が上がるなどという科学的論文は無いでしょう。

一時期、未熟児網膜症が問題となりました。危機的状況を救うために、酸素濃度をあげた保育器の中に未熟児を入れていました。未熟児網膜症は失明をきたすわけですが、これは、酸素の過剰投与が原因と解明されました。

あまり得意なほうではありませんが、病院では人工呼吸器も操作していました。このときは、100%の酸素も供給できるわけですが、患者さんのCO2やpHを酸素とともに測定し、必要最小限の酸素濃度にしていくのは常識です。

2000ページを超える内科学書にも10行程度しか記載が無いのですが、高濃度の酸素を与え続けると間質に不可逆的障害が起こり危険だと記載されています。

原因は活性酸素のためであるとされていますが、活性酸素除去剤のSODやビタミンE やCは無効だそうです。もちろん、臨床では先ほど述べたように、不必要で過剰な酸素を与えないのは常識です。私も、過剰な酸素を長く与えたことは無いので、このような症例の経験はありません。

家庭用の酸素供給装置は能力が低く、障害が出るという統計や報告はいまだありません。しかし、酸素濃縮装置は簡単に作れ比較的安価です。大量生産すればコストは急速に下がるでしょう。科学的知識の無い者が、業者の宣伝に乗せられ、高濃度の酸素を使い出すのではないか心配されます。

体がさびるの、老化のもとだとビタミンCやEが大量消費され、日焼けにも動脈硬化(過酸化資質・酸化LDL)にも悪いと活性酸素を避けておきながら、一方では酸素を吸うのが知的な雰囲気だというのは呆れてものがいえません。

たとえば、運動直後に酸素を吸えば回復が早くなりそうです。プロの選手なら効果は多少証明できるかもしれません。ただし、運動により筋線維は傷つくのは証明済みです。修復が必要なわけですが、修復中に活性酸素の存在は良いとはいえないのではないでしょうか。

筋肉の疲労物質は主に乳酸だとされています。乳酸は疲労を引き起こす悪い物質です。朝日新聞的レッテル貼りなら、乳酸は悪玉だ、悪玉の乳酸は排除しなければならない、だから酸素を吸って乳酸など殲滅してしまえとなるわけです。
ところで、東大の石井直方教授によれば、酸素不足の状態(血管を縛る)で強い運動を行い、その後血管を開放すると成長ホルモンなど、筋肉を発達させるホルモンが大量に出るそうです。
酸素を大量に与えて、悪い乳酸など急速に減少させるほうが良いのか、徐々に減少させたほうがトレーニング効果が増すのか、検証は済んではいないのです。朝日的単純思考では医学は解決できません。高地トレーニングで心肺機能が鍛えられるのは、全員が認めることです。

健常人が酸素を吸って何か良い効果が期待できるとはとても思えません。
もちろん、呼吸不全の人に適切な量の酸素を補充すれば、寿命が大きく伸びるのは証明済みです。

それなら、タバコで酸素不足には、一見酸素は効果的にもみえるでしょう。
とんでもないことです。タバコこそ活性酸素の「疑惑の総合商社」です。タバコの煙の活性酸素で痛めつけられた気管支や肺胞上皮にさらに酸素を吸って痛めつける。まあ、お馬鹿な喫煙者です。業者に乗せられているのです。
過剰酸素でコレステロールが酸化してくれれば、タバコの相乗効果で、動脈硬化が進むというものです。これなら、喫煙者はいっそう早く死ねるというべきです。

昔のコピー機などでオゾンが発生するので、事務所にもオゾンの濃度が労働衛生基準で定められているくらいです。活性酸素は呼吸器系に悪いのです。

もちろん、副流煙で回りのものを癌にしている喫煙者などには、同情は禁物です。
禁煙しか効果は無いというべきです。

2003.08.01
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河合 医院

初級システムアドミニストレーター 河合 尚樹

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