2500年前の論語にさえ、学ばざることを教えるなという記述があります。しかし、自身が理解できないことを解説してくださるのがマスコミです。2500年たっているのに・・・・。
数分の放送ですべてが理解できないほうのことが多いのです。本当に理解するには、まず原理を理解する必要があります。そのために、狂犬病が疑わしい動物に噛まれたときの対処法を、最初に理解する必要があります。
噛まれたときの対処法。
潜伏期は通常9日から20日以上あるので(時に数年?)、救急車を呼ぶ必要はありません。まず、水道でできるだけ洗い流し、搾り出すことです。
ついで、平日のできるだけ早い時期に、中和のためのガンマグロブリン(日本では数十年発生していないので、入手困難。)を打ち、同時に予防接種を開始します。WHOは暴露後免疫(治療用としてのワクチン)は接種開始日を0として3、7、14、30、90日の6回を推奨しています。
重要なのはこの回数です。覚えておいてください。
これで、まず完璧に大丈夫です。
このとき、事前に予防接種がしてあるときはどうなるかということです。
まず、ガンマグロブリンは省略します。そして、追加免疫を3回行います。
追加免疫は省略できません。
つまり、事前免疫者では4回の注射が省略可能です。(ガンマグロブリンと3回の予防接種)
ところで、事前の予防注射は3回必要です。これだけでも、注射の回数はほぼ同じで、事前のメリットはないでしょう。
噛まれなければ一生注射する必要はありません。
アメリカでは何でもかんでも予防接種をすれば利益が多いという、予防接種万能論に近い国です。私もまあそれに近い立場です。もちろん、科学的検証・納得の上です。盲目的信仰ではありません。
そのアメリカでさえ、CDCは事前予防接種を推奨していません。なぜなら、死亡例はまずありませんが、副作用が極めて多いからです。しかも、犬の狂犬病予防接種は毎年受けなくていけないように、2年くらいで感染に危険なレベルまで免疫が落ちてしまいます。つまり、2年程度で追加免疫が必要です。体がだるくなる等の副作用もあります。
培養細胞によるワクチンの副作用
注射局所の腫れ 60%以上
全身症状 7〜56%
過敏症状 6%
卵によるワクチンの副作用
発生率 10万回に30
そのうち重篤なもの 10万回に2
ただし死亡例は無い。
一部の発展途上国では、動物脳から精製したワクチンが使われていますが、これも死亡例は無いものの、さらに副作用は増えます。もちろん、死ぬ危険と副作用を天秤にかけ、どちらがましかという問題です。
これらが、一般住民へ積極的予防接種を勧めない理由です。
マスコミよ、WHOの文書くらい勉強してから発言せよ。これが以前よりの河合 医院の主張です。いまだに守られません。知識のあるものは軽率に発言できなくなるものです。
生かじりの、中途半端な知識ほど有害なものはありません。
私見ですが、
英国・オーストラリア、ニュージーランド、太平洋の島はそもそも狂犬病が無いので不要。
アフリカ等でも、一般的に日本人が居住する大都市で、少なくとも赤十字クラスの病院に3日以内にアクセス可能ならば、現地の対応状況を調べた上で、不要。噛まれたときに迅速に対応すること。唾液が傷口に触れると危険。
もちろん、積極的接種推奨者はあります。
飛行機が週一度しか来ないなど、病院へのアクセスが制限される土地。
アメリカ在住でも、アラスカの奥地など数日で病院にアクセスできない。
海外で動物を扱う。
もちろん、海外の田舎で病院アクセスが悪い・不安である。
などです。
一般人が受ける必要はありません。
なお、相手が飼い犬なら2週間犬を観察して、異常が無ければ狂犬病の可能性はほとんどありません。犬は1週くらいで必ず発病するといわれています。確認してから予防接種を開始しても間に合います。
ここから、断片的知識になります。
キツネ・アライグマや馬も罹感します。哺乳類すべてです。
グランドキャニオンに行ったとき、リスにも気をつけるように警告されました。かわいくても、直接えさをあげてはいけません。アメリカは蔓延しています。
犬以外の動物では発症しないことが結構あり、危険性は高まる。
アメリカでの主要な感染源はコウモリです。犬ではありません。約70%。
コウモリは噛まれても痛みが無く、自覚できないのできわめて危険です。吸血コウモリに限りません。(フルーツコーモリは安全?一応食虫コウモリと記載がありました。)アメリカでは同じ部屋にいただけで大騒ぎになります。この場合、コウモリを殺し、すぐに検査すべきです。
この件に関しては、ニューヨーク市のホームページに詳しく出ています。日本のコウモリからは感染しません。
発症してから助かった人は世界で6人しか確認されていません。
そのうち5人はワクチンを投与されています。(ワクチンが遅かった。)ワクチンなしで助かったのは一人だけです。
アメリカでは年間3万人程度が感染後予防接種とガンマグロブリンを受けています。
発症してからワクチンを打つとかえって体力を消耗するので、とる手段はありません。
ヒトの場合、潜伏期間は9日から数年?で通常は20から60日程度です。発病率は32〜64%です。発病するかどうかはかまれた傷口の大きさや体内に入ったウイルス量などで大きくかわります。
シベリア・朝鮮半島も流行地区であり、いつ日本に侵入してもおかしくない状況です。犬への接種はきわめて重要です。
密輸・希少動物の輸入は危険です。
噛まれて、危険なときはあわてて日本へ帰国しないほうが良いようです。日本では発病を抑える狂犬病用ガンマグロブリンは認可されておらず、入手困難だからです。まず、現地でガンマグロブリンとワクチンを接種すべきです。3日目のワクチンをうってから日本へ帰るべきです。もちろん、他の先進国へ避難するのも良です。ワクチンも入手困難ですが、少し時間的余裕があるからです。ワクチンは一般的に、多少遅れても効果はあるものです。
狂犬病ワクチンは品切れ状態だそうです。正確な知識を持つ医師から見れば、ばかばかしいことです。信じて、軽挙妄動するマスコミ信者にも責任は少しあるでしょう。もちろん、自身が理解できない医学情報を垂れ流すマスコミの責任は重大です。
まとめ
1.マスコミの情報は、素人の思いつきで、科学的・医学的にでたらめであるのがまたも証明された。信じてはいけない。
2.狂犬病ワクチンは副作用が多い。(ただし死亡例は無い)
3.しかも、抗体の持続期間は短い。
4.感染後予防接種で十分であり、接種回数の節約にもならない。
5.とても一般人に勧められるようなものではない。
6.接種対象は例外的なハイリスク群の人々である。
2006.12.1
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