抗コレステロール薬は癌を減らす


  

 

 

 

8月23日毎日新聞が一面トップで、「死亡危険度3倍」と大きな活字で記事を出しました。
まるで、コレステロールの薬でガンが増えるかのような印象です。マスコミのいつもの汚いやり方です。センセーショナルな見出し、でたらめな科学分析、理解力の不足ですが、患者さんの反応も結構あります。まあ、毎日は読まれていない新聞なのがせめてもの救いですが。
低能マスコミを信じるのがアホなのです。

山口大学松崎 益徳氏からのインタビューということになっています。関係者からも問い合わせがあったようで、松崎氏もあわてて「そういう話はしていない。科学的におかしいではないか」と毎日新聞に抗議したのですが、毎日新聞の解答がふるっています。「これは科学の新聞ではありませんから。一般紙です。」

つまり、一般紙とは「科学的正確さなどどうでもよい、デタラメでもよい。どうせ読者など程度がしれているので、科学など理解できない。」ということです。毎日新聞の見識の高さには頭が下がります。自分自身をおとしめてくれるのですから。
これぞ、マスコミの本質です。こんな連中が「言論の自由」を叫び、科学的訂正さえ握りつぶすのです。

ここまではっきり、でたらめでよいと開き直ってくれると気持ちのよいものです。
繰り返しますが、新聞とは低能の人間のために、科学的真実はどうでもよく、レベルの低い記者が思いつきで書くものなのです。毎日新聞自身がそう認めているのです。毎日新聞を読んでいるということは、恥ずかしいことなのです。電車で広げてはいけません。自分が低能だと宣伝しているようなものです。一面トップの記事でさえこの程度です。

さて、河合 医院も薬で患者さんにガンを増やしては申し訳ありませんので、「科学的真実」を追究してみましょう。最新の論文です。
(もちろん、科学の進歩、測定法の発見、知識の集積、新しい化合物等で、真実も時代で動きます。)

Am J Med. 2001 Jun 15;110(9):738-40
Do statins cause cancer? A meta-analysis of large randomized clinical trials.
Bjerre LM, LeLorier J.

5年間以上、Statinを投与した論文を集め、飲まなかったグループと比較した、もっとも信頼できるメタアナリシスという手法です。

結果だけを述べると、癌とその死亡は─0.1%ということです。つまり、癌は減ったのです。0.1という数字にはそれほどの意味はないでしょう。つまり、スタチン薬は癌とは関係がないと結論できるでしょう。これこそ「科学的真実」なのです。

他にも似た論文があります。
Clin. Cardio. : Aug 2001, 24, 1113-7 What do the statin trials tell us.
Drugs 2001,61 197-206 Safty profiles for the HMG-CoA reductase inhibitors: treatment and trust
J. Clin. Ligand Assay : 2001, 24/1 6-12 Clinical benefits from lowering cholesterol

最後の論文などは、LDLを80未満にしてもガンは増えないと書いてあります。

ガンとstatinで引くと、こんなのです。もしも、スタチンでガンが増えも減りもしないなら、増えるという論文と減るという論文が同数だけ出るはずなのですが、減るというものばかり出てきます。これだけ減るというのが多いのは、弱いとはいえ癌抑制作用があると考えたほうがよいのです。専門的過ぎるかもしれませんが、順位和検定のようなnonparametricな検定をやっているようなものです。

毎日新聞の記事に「科学的真実」など、どこにもありはしません。新聞を信じるのは馬鹿のすることだという例が、またひとつ増えただけなのです。

毎日新聞には頭のおかしい評論家の「コレステロールを下げると、免疫が落ち、癌が増える」というまったく根拠のない解説まで載せるのですから、あいた口がふさがりません。

スタチン薬とはコレステロールの合成酵素を抑える薬です。単純な頭はコレステロールを下げるという効果にだけ目が行きます。

しかし、生物は数少ない部品やメカニズムを上手に他の細胞でも利用しているものです。ここが、化学や物理と大いに違うところで、原因と結果が一対一で結びつかないのです。(まあ、物理でも不確定性理論はあります。)

スタチン薬は、
痴呆を7割減少させる
抗炎症作用を示す
そのために動脈の炎症を鎮め、直接動脈硬化を減らす
血管の平滑筋の遊走を抑え動脈硬化を減らす

などの効果が示唆されています。

薬の効果は、単純なものではありません。
しかも、スタチン薬ではその効果は望ましいものが非常に多いのです。もちろん、副作用がまったくゼロの薬はありません。(他にACE阻害剤などが医学界の注目の的です。)

新聞などを信じて、医師を疑い、薬を中止するのはおろかです。

少量のスタチン薬で、総コレステロールで160mg/dl、LDLで80以下に減少した人は、癌の傾向がやや多いと思われますが、統計的にはっきりしたものではありません。(JLIT未公表データ)単純頭脳の記者は薬のせいだと直結します。
コレステロールを下げることにより、発ガン性・ガン促進作用があるなら、何万人を集計してガン増加が─0.1%ということはありえないのです。薬が効きすぎる人は、何か隠れた異常があり、それが顕在化したためと思われます。これが、世界中のまともな科学者の考えることです。
これをハイパーレスポンダーと呼びます。

これ以上の意味付けは無謀です。これを逆転し、コレステロールを下げたから癌になったなどというのは低能の考えることです。

当然さらなる意味付けの研究は必要ですが、科学的分析では、癌は減る傾向です。


2000.11.01
http://geocities.datacellar.net/kawaiclinic/
〒6050842 京都市東山区六波羅三盛町170 
河合 医院

初級システムアドミニストレーター 河合 尚樹

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