タミフルはインフルエンザの特効薬です。これは、非常によく効きました。発熱から6時間で受診された方は、次の日に微熱です。以前なら、高熱がぶり返し寝込んでしまうところですが、そのまま治癒してしまう人もあるくらいです。
MBS系列はタミフルの会社ROSCHに「見通しが悪かったのではないか?」と幹部を詰問し、謝罪させて正義の味方を気取っているのが放映されました。
いつもの「正義の味方・悪を追及するマスコミ」の面目躍如です。
都合の悪いことが起これば、「犯人」を作り出し、責任を押し付けるのがマスコミというものです。
WHOはマダガスカルでの大きな流行を警告していますが、日本は大流行とはみなしていないようです。ROSCHという会社が日本を軽んじて、薬を回してくれないのなら問題です。日本の子会社が、流行予測を間違って、他国に比べて大変少なかったら、それも問題です。マスコミに責め立てられ、反論できない会社はかわいそうなものです。
実態を聞いてみると、とんでもないことが理解できました。なんと、タミフルの世界総生産量の6割を日本が消費してしまったのです。こんな、ばかげた国はないのです。総生産量の6割を、金にあかせて消費するような国に責められる会社は気の毒です。
インフルエンザの予防注射を廃止すれば、弱いお年寄りや弱い幼児がばたばた倒れるのは明白なことです。こんなことも理解できななかったマスコミが、13倍の流行変化を予測できなかった製薬メーカーを激しく非難し責任を押し付ける。これが、日本の姿・知的レベルというものです。
金にあかせ全世界の製薬資源を浪費するような体制を作り、「資源が足らないのはメーカーが悪い。」と一方的責任の押し付け。金さえ払えば、消費者・庶民は最大限のサービスを受けて当然という、資本主義論理の最も悪い面がマスコミに見られます。世界の非常識国家です。北朝鮮をバカにできません。
そんな日本のマスコミに非難されるROSCHはかわいそうです。
また、中国で鳥インフルエンザが人間に感染して問題となっています。非常に恐ろしいことです。
スペイン風邪が再来しても多くの死者が出ると考えられます。
これらにもタミフルは効果があるはずです。
しかし、そのときは今回以上にタミフルの取り合いになるでしょう。国別の割り当ても当然です。タミフルを浪費するような国でどんな混乱が起こるか、考えても恐ろしいことです。
タミフルは万能か
タミフルも薬である以上副作用があります。
昨年11月厚生省の通知でも10歳くらいの子供4人に血圧低下のショック症状が見られています。幸い処置がよく全員回復しています。
世の中に完全なものがない以上、そのうちショックの副作用による死者も出るでしょう。
今年のインフルエンザワクチンは非常によく効きました。
河合 医院でワクチンを受けたご老人で、発熱をした方は一人もいません。それもそのはずで、WHOが流行予測をしているわけですが、理論が現実とよくあっており、予測は10年に一度外れることはないようです。効果は絶大でした。
一般的には、インフルエンザワクチンは70%から90%発病を防げるとされています。
1995年の先進国におけるワクチン接種率が発表されています。千人あたり、アメリカでは239人受けています。100人以上の国がほとんどです。韓国でも、95人が受けています。日本はなんと最低の8人でした。偉大なマスコミの成果です。こんな国でインフルエンザが大流行しても仕方がありません。
2000年のワクチン出荷量は633万本、2001年は871万本でした。1本2人分ですから接種人数はその倍です。取り合いになったくらいですから、ほぼ全量接種されています。副作用で死亡者は7人だそうです。そのうち、子供は一人もいません。すべて70歳以上でした。
よく言われることですが、予防接種による死亡は被害者救済のため、科学的にはありえないものも認定してしまいます。
7人の死因でも急性肝炎というのが入っています。生きたウイルスでもないのに肝炎で死亡するなど奇異な感じです。
一方、厚生省の認めるインフルエンザの死者は、流行の少なかった1999年でも3200人、小児科学会の推計によるインフルエンザ脳症の発生は年間200人から300人です。
完全なワクチンなどどこにもありません。ワクチンはいわば、アレルギーを誘発させているものです。アレルギーである以上、きわめて稀に過敏な人に有害な作用をもたらすものです。人間の作り出すものに完全ということはありえないのです。事故の起こらない飛行機や車はこの世に存在しません。
現実世界では危険性を天秤にかけ、どちらを取るかしかないのです。車を運転するということは、死亡事故に巻き込まれる可能性があります。低い危険性に目をつぶり利便性を取るか、危険性を取って車のない不便な世界に暮らすか、どちらかを選ばないと仕方ありません。
同じ事ですが、3200人の方にはいる確率が高いか、3.5人に入る確率が高いかということです。
出荷本数に対する死亡副作用はきわめて低いものです。
インフルエンザ脳症について
解決法はこれしかない
脳症は5歳以下に多発します。成人に見られないのは、免疫の発達過程の特殊な状況があるからでしょう。
A香港型に多発し、今年がまさにそれでした。
インフルエンザの発症と同じ日かせいぜい翌日に神経症状で発症します。大阪では神経症状がなく死亡した例が多く、問題になっています。死亡率は30%とされています。
死亡するときは、数時間で死に至るときもあります。これは、ウイルスが脳に入るのには早すぎます。実際、脳の中にはウイルスは検出できません。脳炎と言われないのはこのためです。
インフルエンザワクチンを接種しているのに死亡する例も見られます。きわめて早期にタミフルを投与しているのに、死亡している例も見られます。ウイルスが増えられる状況にないのに 死亡する例が見られるということです。
解剖すると、血管炎・脳血液関門の破綻・血管源性浮腫・小血管内血栓などが認められます。
ウイルスに対する激烈なアレルギーのような病態が考えられます。アレルギー反応に近いから、タミフルのような薬も効かず、脳にウイルスが入る時間的余裕もないのに死亡するのです。(アレルギーの薬が効くわけではありません。)
予防注射の副作用に似ています。一部の過敏に反応するグループに予測不能で、急速に発現するのです。
稀にしか発症しないが、予測はきわめて困難です。
最大の防護は、ウイルスと接触しないことしかありません。
非科学的でヒステリックなマスコミに引きずられて、厚生労働省さえ、「集団防衛の考え方から、個人防衛の考え方」へ転換してしまいました。しかし、インフルエンザ脳症は、個人防衛では防げないのは明らかです。
接触した、素因のある子はきわめて早期にアレルギー様の反応を起こし、数時間で死ぬからです。
子供とウイルスとの接触を根絶するしかないのです。素因のある子を識別する方法はないからです。
小学校でのインフルエンザワクチン接種を廃止させたマスコミが、子供たちの死の最大の責任者です。
学校医として、しらみの広がりなど観察すると、兄弟を経由して違う学年や保育所へ伝播していくからです。
幼児の周りの保護者に積極的にインフルエンザワクチンを接種する。兄弟にも接種する。もちろん、対象年齢の子供にも行う。こうして、過敏な体質の幼児の周りからウイルスを排除しない限り、脳症を消す方法はないのです。過敏な子を特定する方法はありません。
タミフルを浪費して、もっとまわせと会社を非難する国では通用しない考えです。
集団防衛の考え方、これこそが世界の常識(日本の非常識)です。
予防接種副作用による被害者は、他の多くの生命を守るための社会的代償です。
マスコミや法律関係者は、結果が重大であると「原因があったはずで、責任を追及し処罰すべきだ」と考えるのです。ここから犯人探し・非難の応酬・責任のなすりつけ・社会的対立が生じてくるのです。レベルの低い人間の行うことです。
過敏な体質を簡単な診察で予測する方法はありません。科学的に無理です。詳しい検査で、もしできるとしても、大変な検査費用が生じて社会的に実現できないでしょう。
解決は簡単なことです。法的責任など「よほどの悪質な故意・ミスがない限り責任は追及しない。代わりにはならないとしても、保証はきわめて厚く行う。」とすればよいのです。つまり、「責任追及型から保険・保証型制度への転換」です。
これが、世界の常識・日本の非常識です。
アメリカでは、ワクチン1本あたり2ドル25セントを課金しています。国でも民間でもよいのですが、プールして、被害者救済をするのです。アメリカでは死亡事故には、日本円で一億近い金額が払われます。
まあ、こういう制度ができると、役人が天下りとして押さえ、食い物にして最後は不正事件が起こるのが日本という国の常識です。
補足
少し前までは「脳症の子にワクチンを受けたものがいない。」が小児科医の常識だったのです。常識に外れる例が少し見つかってきただけです。脳症の子は圧倒的にワクチンを受けていないものです。
多分、ワクチンをしていたほうが脳症はずっと少なくなると思います。動物実験ができませんので、科学的結論を出すには長い年月が掛かります。
ワクチンが脳症を増やすとか、全く効果がないという根拠はありません。こういう点がマスコミと科学との考え方の差です。誤解されませんようにおねがいします。2003.3.1
初級システムアドミニストレーター 河合 尚樹