アメリカの報道では、現在の死者は221人だそうです。アメリカ人は大変な危機感を持っています。輸血による感染から死者も出ています。
厚生労働省等も多くの情報を流しているので、そちらを参照してもらえばいい訳で、河合 医院の出る幕ではないと、馬鹿にされても当然でしょう。
まあ流行地で、少しはましかなと思う注意点をあげておきます。
蚊が活発になる、夕方から数時間は外出を控える。
虫除けスプレーなどを多用する。(WHOなどはDEETを薦めている)
服の色は白がよい。蚊は明るい色が嫌い。
長袖・長ズボンを着用する。
藪には近寄らない。(冬は可能)
網戸を厳重にし、蚊帳を用いる。
日本脳炎ワクチンを接種しておくとましかも??? (後述)
水溜りを作らない。古タイヤが一番の問題です。次に、墓の花いれ、手水鉢、空き瓶、空き缶を放置しない。
こんな注意を仰々しく記載するのは、世界的にはもっと重要なマラリアの予防に共通だからです。
潜伏期間は、5から15日で、感染に気づかない人も多いはずです。8割は感染に気づかず、少しだるいくらいを含め、2割が症状を示し、150人に一人が脳炎を発症すると雑誌には出ています。
症状が出れば、発熱・頭痛・筋肉痛が主体で、単なる夏風邪で短期間に回復してしまいます。稀に、咽頭炎やリンパ節腫大をきたすこともあります。
高齢者を中心に稀に脳炎を発症し、治療法がありません。子供ではかなり軽症で、慢性化もありません。脳炎では3〜15%の死亡率です。治療法は無く、対症療法です。
心筋炎・膵炎もあるそうです。
人から人への伝染はありません。きわめて弱いウイルスで、消毒薬ですぐに死にます。
鳥の中で増殖し、蚊の体内でも増殖します。
一般人は人の怖い病気という認識でしょうが、もっと慌てているのがじつは競馬関係者なのです。
アメリカで馬が13000頭以上罹患し、3分の一が死んでいます。馬でも脳炎を起こします。
人間は一番高級だとうぬぼれていますが、実は馬のほうが価値は高いのです。
子供をひき殺しても3000万もあれば賠償成立ですが、競馬馬なら数億円はざらなのです。経済価値は馬のほうがずっと高級です。
今年アメリカで、馬用のワクチンが認可市販されました。(Fort Dodge Animal Health) 非常な朗報です。いずれ、人間にも応用可能でしょうから。私は楽観しています。
日本に入ってくるのは時間の問題です。死人が出るのも騒ぎでしょうが、スポーツ新聞など「有名ダービー馬死亡」で大騒ぎになるでしょうし、ワクチンが間に合わなければ、競馬界は壊滅です。馬から人へはうつらないそうです。
まあ、そうはならないでしょう。厚生労働省より資金を潤沢に持つ胴元のJRAは、人間より価値のある御馬様に十分な予防をするでしょう。 マスコミも味方ですから、ワクチン反対キャンペーンとか医師の金儲け陰謀説は出てこないからです。
資金のない厚生労働省が、人間に十分な予防対策を立ててくださるか、疑問というものです。たくさん死なないと動かないのが御役人ですから。予測が外れることを望みますが。
現状でも、マスコミも大騒ぎしています。日本で流行して、ワクチンが間に合わなかったら年数千人の死者が出ると予測されます。
さて、医学的に解説すると、西ナイルウイルスはフラビウイルス科フラビウイルス属です。馬や鳥に感染し、吸血した蚊の中で増殖し、人にも夏風邪を主に起こすのは前述のとおりです。感染を気づかずに終わることも多いのです。(不顕性感染)
血清学的には、日本脳炎抗体と交差反応があり、確定診断には日本脳炎抗体価より西ナイルウイルスの抗体価が高いことを確認する必要があります。
日本脳炎と抗体に交差反応があると書きました。そうです、西ナイルウイルスは日本脳炎のウイルスと非常に近いウイルスなのです。ほとんど同一、違いはほんのわずかなのです。抗体に交差反応があるのは、そのためなのです。
私は、日本脳炎ワクチンを行っている集団では、西ナイルウイルスは広がりにくいのではないのかと推測しているのです。もちろん、間違っている可能性は大きいのですが、調べて見る価値はあります。言っておきますが、これは科学者として科学的・論理的に十分可能性のある推測です。マスコミのヒステリック非論理的思い込みと同一視してもらっては困ります。
2004.6.1
追加
チンパンジーの感染実験では推論は証明されました。しかし、抗体価をかなり高くしたので、人間での効果は疑問です。無意味ではないでしょうが、完璧でもありません。保証はできませんが、海外へでるときは日本脳炎ワクチン再接種が少しはましかも・・・。
来年の新一年生用の検診が終わりました。さすがに、三種混合・ポリオ・はしかあたりのワクチンは、ほぼ接種済みですが、日本脳炎ワクチンは半数程度にしか接種されていません。
日本では発生率が低いので、無視する親が多いのでしょう。以前から述べているように、海外に出れば非常に危険なものです。
西ナイルウイルスによる、日本での数千人の死者予測は日本脳炎が過去に蔓延したときの数字なのです。
西ナイルウイルスを極度に恐れる国民が、日本脳炎に関しては馬鹿にして接種を行わないのです。
全く矛盾した非論理的・愚かな行為です。プロの常識と一般人の常識やマスコミの「論理」(あるの?)が極端に乖離しているのは、ダイオキシン騒動と似ています。
2002.12.1
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