06-Aug-97 掲載

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ブドウ日記 (92年〜95年)



--- 92年 ---


この年の11月、念願かなってドイツへ転勤。勤務地のDueseldorfはブドウ産地にはあまり近くないし、そうでなくても最初のうちは生活に慣れるだけで精一杯。ブドウ見物までは気が廻らず。ただ、年末年始に強烈な寒波がやってきて、アイスヴァインには恵まれた模様。ちょっと話はそれるが、ドイツに「住む」ようになってはじめて、ドイツ国内のデパートやデリカテッセンの店先では、ドイツで一流醸造所と言われるところの等級の高いワインはさほど置いていない(少なくとも東京のデパートの方が品数は多い!)と言う事に気付いた。こうなっては産地に直接出向くしかない。幸か不幸か、勤務先の会社は93年夏にはFrankfurt近郊への移転が決まっている。Rheingauはスグそこだ!



--- 93年 ---


1月30日(土)

買ったばかりの車(といっても、中古車)の「馴らし」を兼ねて、Ahrまで出かける。転勤後初めて見るブドウ畑に感慨ひとしお。(以前にも旅行ではいくつかの著名な畑は訪れたことはあるが。)

その後

6月の会社の移転(Frankfurt郊外へ)と、それに伴う自宅の引っ越し準備と後片付けのため、夏ころまではほとんどブドウのことは忘れそうな日々を送る。こちらの夏は日本よりはずっと涼しいと聞かされていたのだが、93年の6月、7月は記録的な猛暑。その後は気温は少し下がったものの好天が多くてブドウには良い年だったと見え、後日各醸造所のリストの分析値などを見ても、ひときわ糖度の高いワインが収穫できた様子がうかがえる。

-----> 96年7月1日の項を参照。

10月10日

「たまたま寄ってみた」Marcobrunnの畑で、初めて収穫風景を見る。この年はまだ他のこと(週末観光など)に忙しく、ブドウ見物はそこそこに。11月後半には強烈な寒波がやってきたが、アイスヴァイン用ブドウ達がどうなったのかはチェックをしそびれた。その後もあまり市場やリストでは見かけないところを見ると、寒波がちょっと早すぎたか?

この年、それぞれいつ頃だったか思い出せないが、Kloster Eberbach, Schloss Rheinharzhausen, Schloss Johannisberg等の「併設直売所」で仕入れることを覚える。これらの直売所は、ドイツでは珍しく、日曜日も開いているのでとっても便利。



--- 94年 ---


この年はブドウ見物にも少々時間を割く。4月上旬の復活際休暇(ドイツでは法定祝日と週末で4連休)には、足を延ばして隣国フランスのブルゴーニュ地方へ。かのロマネコンティやシャンベルタンの畑など見物するが、「どうせココのワインにはあまり縁が無いしなア」と思うと、感激も中くらい。むしろ「日本ではよくお世話になった」ボジョレーの畑に立った時のほうが感慨もひとしお。

しかしながらこの年も、開花の時期と、その後ブドウが大きくなってゆく時期は見逃してしまう。この年もドイツの夏は猛暑で、ブドウの生育もよかったみたい。

6月11日(土)〜12日(日)

MoselはBernkastelへ一泊旅行。かのDoktor畑は、91年12月の旅行の際も夕暮れ時に「ちらっ」とは見たが、今回はゆっくり散歩する。ブドウの若葉がキレイで、まだ花は見かけないものの、ブドウの房の格好をしたツボミは見える。

ここBernkastelは「普通の人々」(ドイツワイン気違いではない人達)にとっても、かなり有名な観光地らしく、街中が観光客で溢れている。おかげで、日曜日にもかかわらず開いている酒屋(というか、土産物屋というか)もいくつかある。とりあえず、Thanischの"Doktor"のKabinettを2本と、Ausleseのハーフサイズを1本買い込む。

6月26日(日)

Rheingauのどこか(記録なし)へ散歩に。でも暑くてすぐにメゲる。ブドウの花の満開写真が残っている。

7月前半は2週間の休暇で北欧へ。よって、ブドウ関係は「お休み」。

7月30日(土)

HattenheimのSchloss Schoenbornの所在を確かめる。残念ながら、「週末もやっている販売所」のようなカンバンは出ていない。更に悪いことに、事務所の建物自体が改装中のようだ。すぐそばのPfaffenbergの畑を、塀の外から覗き込む。ブドウの実は直径数ミリぐらい。

このあとKloster Eberbachへ。販売所には何度か来ているが、修道院跡の中はこれまで入ったことが無かったので、はじめて見物。バジリカ(聖堂)が、もはや「礼拝の場所」としは使われていないことを知る。この時は丁度、「Rheingau Musikfest」のためのステージが組み立てられていた。

その「Musikfest」の一環として、今日の午後はSteinbergの畑の中で、ワインを飲みながらの青空コンサートがあるとのこと。とりあえず近くまで行って、「外から」偵察。面白そうではあるのだが、今日はいくらなんでも暑すぎる!! よって、「青空コンサート」はパス。少し涼しくなってから、Schloss Vorrads周辺とSchloss Johannisberg周辺の畑の散歩などして帰る。

8月6日(土)〜7日(日)

この週末の主な目的地はScwarzwaldなので、ブドウとは直接関係なし。ところが、帰り道に、「ライン川を渡った向こう側はAlsace」であることに気が付き、寄り道する。ブドウの実も随分大きくなっている。まだまだ青々として固そうではあるが、大きさだけ言えば、最終的な大きさにかなり近い感じ。最後に、Ribeauvilleとかいう村の中で夕食。ワインはもちろんAlsace。でも、何を飲んで、どんな味だったかの記憶は全く残っていない。(なんせこの「日記」は、約2年後の96年7月、当時の写真を見ながら書いているので。)

ただ、この後、酔いを醒ますのに苦労した記憶がある。(この地からFrankfurtまで、ざっと300kmほどある。)

9月10日(土)〜12日(月)

月曜日1日休暇を取って、アルザスとブルゴーニュへ。初日は朝寝坊をしてしまったので、とにかくColmarまで「行くだけ」の一日。2日目はまずアルザスのブドウ見物。見た目には十分大きくなってはいるが、まだ収穫の気配はない。結局この日はMaconまで行くが、着いた時はもう薄暗くてブドウ見物はおあずけ。

最終日の朝は、何はさておきBeaujolaisへ。この年の春に訪れた時、垣根も杭もなく、ただ幹だけが立っているのを見て、「秋にはいったいどんな風になるのだろう」と疑問だったので。で、行って見たらきちんと(あたりまえか)ブドウもなっていて、所々で収穫中。珍しそうに見物したり写真をとったりしていたら、作業中のお兄さんが足元の株からキレイな房をひとつその場で切って、「食ってみな!」と言う感じ(我々はフランス語会話はまったくダメだが、これくらいの想像はつく)で、我々にくれた。

昼食はMorgon村の「大衆食堂」風の店で。昼の定食は50フラン(約1000円)かそこら。料理の注文はとったが、「飲み物」の注文を聞いてくれないのでヤキモキしていたら、なんのことはない、聞きもしなかったが、0.5リットル程のカラフェの赤ワイン(当然、ボジョレーであろう。少なくとも、それらしい色と味だった)を持ってきた。きっと、ここでは「常識以前」なんだろう。

このあと、すぐそば蔵元直売所で、91年、92年、93年のMorgonを2本ずつ買い込んで帰る。ココはFrankfurtからはちょっと遠いのが難点。約600kmあるので、渋滞がなくても5〜6時間はかかる。

9月18日(日)

たまたまSchloss Johannisbergへ行ったら、一般訪問客にケラー案内していたので入れてもらう。私の「教科書」である「新ドイツワイン」(伊藤真人著)にのっている、「ブドウじらみ様をたたえる絵の彫られた樽」などに見とれる。一般訪問客と言っても「外国人」はあまり見かけない。解説のおじさんはよくしゃべり、普通だったらとても聞き取れないような速さのドイツ語なのだが、話の内容は以前「教科書」を貪り読んだおかげで大体の見当はつく。

10月8日(土)〜9日(日)

Marcobrunnに「ちらっ」と寄り道。ちょうど収穫中で、道端にはポーランドナンバーの車がいっぱい。収穫期にはポーランドの人達が大勢アルバイトにやって来ることは何かの本でも読んだ記憶がある。この後、今週末の目的地であるMosel地方へ向かう。宿はTrier市内へ。夕食はRatskellerへ行ったが、グラス売りのワインの品揃えがイマイチ。早々と退散して、向かいのDomsteinと言う名前のワインレストランへハシゴ。ここは以前、旅行(91年12月)の際に来て、Beerenausleseがグラス売りで飲めるのに感激した店。今回も最後はBeerenausleseで締めくくる。

翌日、Saal地区Scharzhofbergの畑へ。Egon Muellerの館はひっそり。残念ながらココでは一般消費者向けの小売窓口はやっていない模様。続いて畑の散歩。一部の畑ではもう収穫済み。Wiltingenの村へ向かって歩いて行くと、収穫中の所に出くわす。ブドウを満載したトラクターの荷台を珍しそうに覗き込んでいた(間近で見るのは初めてなので)ら、ここでもおじさんがやって来て、またまた「食ってみな!」と。私と家内に一房ずつ、キレイなのを選んでくれた。甘い!でも手がベトベト。この後、隣村を通りかかったら、村の体育館で「Federweisserfest」なるお祭りの最中。Federweisserとは発酵途中の「濁りワイン」。初めて口にした。この寄り道のため薄暗くなってしまったが、ほとんど「意地」でRuwer地区のEitelsbacher Karthaeuserhofbergの畑を「一目見て」帰路へ。この辺りだと2時間程でウチへ着くので楽。

10月16日(日)

Rauenthalの収穫風景を見物。青い空に程よく色づいたブドウの樹々がキレイな、絵ハガキ的写真が撮れたので、これをもってこの年の年賀状写真とする。

11月6日(日)

これまたたまたま「散歩」に行ったSchloss Vollradsで、Advent(クリスマス前の4週間)の土曜日はケラーの一部を解放して中で試飲と小売販売をやっているとの貼紙を見つける。Schloss JohannisbergやKloster Eberbach, それにRheinharzhausenなどの直売所は週末も開いているのでそれまでにも随分買い込んでいたのに対し、ココは「事務所」なので普段は平日しか買うことができない。(それとも、併設のレストランへ行けば買えるのかな?) これは逃してはならじ、と12月3日(土)に再訪し、キッチリ買い込んだ。とりわけ、「86年物」が入手できたのが嬉しい。8年も経ったQbAなので「ワインとしての値うち」は何とも言えないが、「86er Schloss Vollrads」には個人的に思い入れがある。

ところで本題のブドウの方はと言えば、アイスヴァイン用にシートで覆われたブドウは、始めのうちは随分健康そうだったのだが、残念ながら暖冬でなかなか凍るチャンスがなく、どんどん干からびたり落ちてしまったり。それでもごく一部では年明け早々の寒波で収穫に成功したことを後で知って、むしろ意外に思ったほど。



--- 95年 ---


昨94年は「断片的」なブドウ見物はしたものの、花が咲いて実がなって、その実がだんだん大きくなって行く様子を逐次観察するには至らなかった。よって、「今年こそは」と意気込む。

この年の「ブドウ見物始め」は 3月11日(土)〜12日(日) のシャンパーニュから。新芽が出るにはまだ程遠く、畑の景色はモノトーン。とあるカーヴの見物コースに訪れたら、みごとな「観光コース」になっているのにビックリ。こんなのは、これまでどこにもなかった。どうやら辺りの大手カーヴはみな同じようになっているらしいところを見るに、シャンパン作りは相当いい儲けになると見える。悲しい性で、そう思っていても、その「儲け」に貢献してしまう。

4月2日(日)

ほぼ2年ぶりにAhrへ。Marienthalの村を囲む半円形の急斜面は、まるで野球場のスタンドを思わせる。また急斜面では垣根作りのかわりに、一本々々が独立した杭作りになっていて、枝が「クルッ」と輪になっているのが面白い。葉が十分繁ってしまうとこの面白さは見えなくなる。ここの州営醸造所の販売は週末はお休みにつき、年中無休のWinzerhausにて日常用ワインを少々仕入れる。

4月14日(金・祝日)〜17日(月・祝日)

復活際休暇はDresdenとその周辺の観光へ。最終日にはMeissen周辺で車の窓からブドウ畑をちらっと見かけたり、Meissenの街では少々買い込んだりしたが、時間に余裕もなく、特別な「ブドウ観光」はパス。


4月からはほとんど毎週末、どこか遠くへ出かけない限り、散歩を兼ねてRauenthal村のBaikenからWuerfen, Gehrn, Langenstuekあたりを「定点観察」することに。その他は気紛れで、Kiedrich, Erbach, Hallgarten, Vollrads, Johannisberg等へ寄り道したり、時にはAssmannshausenあたりまで行ってみたり。クルマは本当に便利だ!

5月になると、小さな房の格好をしたツボミがはっきりと認められ、週ごとに大きくなるのだが、Rauenthalでは6月15日(木・祝日)時点で未開花。次の週末はオランダ旅行のため「一回休み」。

6月25日(日)

Rauenthaler Baikenにてようやくチラホラ開花しているのを見る。その後すぐにMarcobrunnまで下ってみると、こちらは満開。標高の差は100mかそこらだと思うが、開花状況の差は歴然。

7月9日(日)

再度「週末一回休み」ののち、いつものRauenthalへ行ってみると、はやくもブドウ「のようなもの」が。真っ青で見るからに固そうではあるが、大きな粒は5ミリ程にも。

7月16日(日)

かなり「ブドウらしい格好」になる。


真夏も、暑さにめげずに毎週のようにRheingauへ通う。もっとも、この時期はブドウ見物よりはStrausswirtschaftで一杯やる方がメインだったかも。もう一つの嬉しい発見は、この時期各地で盛んに催されるローカルなワイン祭。良く探せばEisweinやBeerenausleseなどがグラス売りで飲めるのが我々庶民には嬉しい。

8月5日(土)

Rauenthalで「定点観察」の後、Hallgartenのワイン祭り会場へ。ここで遂に初めてTrockenbeerenausleseをも口にする。もっとも、この手の等級のワインをグラス売りするのは、言っては悪いがいわゆる「無名」醸造所だけで、一流所はSpaetleseか、せいぜいAuslese止まり。これらワイン祭の雰囲気が気に入って、その後もRheingauの他、Pfalz, Baden, Wuerttemberg, Frankenも訪れることに。

8月12日(土)

ワインとは関係ないが、家でお気に入りのビール、「Schmucker」の工場でも見物に行こうか、と、OdenwaldのMossautalへ。それはそれははんとものどかな所。この村で、「Schmucker」に勤めている人以外は、いったい何をして暮らしているのかなア、という感じ。

8月13日(日)

初めてPfarz地方へ。高速でGruenstadtまで行き、そこから「Weinstrasse」を南下。さすがにここのブドウ畑はスケールがでかい。途中、いくつかの村でお祭りをやっている。結局、Deidesheimのお祭り会場で早めの夕食を兼ねて一杯。見渡したところ、どの店でもグラス売りが0.5リットル単位なのに驚く。そういえば「教科書」にも、この地方の特色として、そのことが書かれてあった。

無名蔵元のテントへ入ったのでワイン自体には特に印象はなかったが、おつまみに食べた「Saumagen」(地元の庶民料理で、一種のソーセージのようなもの)の旨いこと!ところが、このSaumagenの「味をしめて」この後もPfalzには何度か通ったのだが、なかなか旨いSaumagenに出会わない。しばしば、やたらと塩っぱかったり、しつこかったり。

8月20日(日)

今週はWuerttembergへ、これまた初めての訪問。でも午後の日帰りなので、ブドウ畑に着いたのは夕方。
(後日注: 96年に一泊して訪れた。)


ところが、95年は8月後半から極端に天気が悪くなった。何といっても雨が多い。「定点観察」を続けているRauenthalでも、どんどんカビたり腐ったりしているブドウが目につくようになる。他の村へ廻っても大同小異。Schloss Johannisbergなどとりわけ悲惨で、今年の収穫はゼロではなかろうか、と心配になる位。BadenやPfalzはまだ少しマシだったみたい。

---> 後日談(96年11月8日記)
上記は私の素人感覚であって、実は95年は決して「悲惨な年」ではなかったことを後で知った。詳しくは、96年の日記に記載。

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このようにブドウの状態は非常に悪かったが、それでも各所でアイスヴァイン作りの試みは続けられている。とは言え、シートの中を覗いて見てもまともなブドウの房はほとんど皆無。自然現象とはいえ、無情なものだ。

余談になるが、この年の収穫時期にPfalzを訪れた際、初めて、機械収穫している「現場」を目の真ん前でみる。それまでは「機械収穫」の存在は知ってはいても、どういう仕掛けになっているのか想像もつかなかった。ウマく考えるものだ。でも樹が痛そう!

(後日記)
機械収穫の仕掛けをご存じない方のために。

まず「ふとんタタキ」を思い起こす。この「ふとんタタキ」みたいなのが幾つもあって、ブドウの垣根を両側から挟み込んでパタパタ叩いていると思えばよい。ブドウの実が房から叩き落とされ、それを下で受けつつ真空掃除機で吸い込むような仕掛けだと理解して良いかと思う。

(もとの日記に戻る)
この年の冬は久々の、と言うか、我々にとっては初めての本格的な冷え込みが何度も来た。Frankfurtの街中でも零下5度〜10度くらいの日が延々と続く。公園の池も固く凍り、アイスホッケーをして遊べるくらい。秋の長雨がなくてブドウが健全だったらアイスヴァインもさぞかしうまく出来ただろうに、と思うと残念。


--- つづく ---




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