27-Oct-97 再編集

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ブドウ日記  (97年 その3)


「最近のブドウ日記」(更新分)はこちらへ。



10月11日(土)

結論を最初に。

フランスには、Federweisserも、Zwiebelkuchenも、どちらもあった!

先週の雪辱戦で、再度アルザスへ。但し今回は、朝自宅からコルマール(Colmar)にある安ホテルチェーンに電話して、部屋を確保してから出かけた。これは正解だったようだ。17時頃チェックインした時はまだそうでもなかったが、19時頃再度ホテルに戻ってきたら、玄関には「Complet(満室)」の札が出ていた。隣のホテルも同様。

アルザスへ向かう途中、プファルツへちょっと寄り道。高速5号線、67号線、6号線を経て、Deutsche Weinstrasseの北端近くのグリュンシュタット(Gruenstadt)から一般道へ降りる。そこはもうすでにプファルツの「ブドウ海」の一角である。国道271号線(これがDeutsche Weinstrasseそのもの)の車窓から見る限りでは、この辺りは殆ど収穫を終えていて、ブドウが残っているのは1割程度と見た。....と思いきや、しばらくするとまだ殆ど(8割方?)ブドウが残っているようになる。村としては、ヴァッヘンハイム(Wachenheim)の辺り。この状態がダイデスハイム(Deidesheim)を過ぎた辺りまで続くが、その先のノイシュタット(Neustadt)辺りからは再び、「ほとんど収穫済み」となる。

愛読の「教科書」によると、プファルツでもいわゆる最高品質のワインを産するのはこのヴァッヘンハイムからダイデスハイムにかけての小さい部分に集中していて、ブドウ品種もここではリースリング(晩熟型)の比率が非常に高いと書いてあった。その他の地域は、言葉は悪いが「大衆ワイン」が主となり、ブドウ品種ももっと早熟型の他の品種が多いはずである。だとすると、前述の収穫状況は極めて辻褄が合う。

更に南下したところにあるナントカいう村のワイン協同組合の醸造所で、ブドウを満載したトラクターが列をなしているのを見て、ちょっと寄り道。中庭や、建物内の大型タンクの並ぶ合間に木のテーブルとベンチが並び、その場で売っているNeuer(新酒)を飲みながら、到着するブドウが次々と処理されていくのを眺める人達で大賑わいである。地元ふうの人も大勢いるが、見るからに我々同様「ブドウ観光」に来ている風情の人達も多い。我々も、当然のごとくNeuerを一杯買って、立ち飲みする。但し、この地方の標準サイズとも言うべき0.5リットルの特大グラスではなく、0.25リットルの小さい方。一杯1.5マルク也。

タンクの並ぶ一角で8人ほどで大宴会していた一行の一人が、珍しい(?)日本人カップルである我々を見つけて、自家製とおぼしきZwiebelkuchenを2切れ、恵んでくれた。「Neuerを飲むときは、Zwiebelkuchenを『食べなきゃいけない』のよ!」とかなんとか言いながら。(間違いなく、「...... muss man Zwiebelkuchen essen!」というのが聞こえた。)日頃現地の人達と積極的に接触するのがあまり得意ではない我々にとって、こういう経験はそう多くはなく、とっても嬉しくなった。

この雰囲気をしばし楽しんだ後は、一路アルザスへ。その間はしばらくブドウの姿も見なくなる。途中で国境を越えるが、95年(96年だったっけ?)に「シェンゲン条約」が発効して以来、ドイツ<--->フランス間の国境は原則ノーチェクである。旧検問所の建物こそ残っているが、見張り所にも人はいない。但し、脇の施設には警察官らは詰めているようで、余程怪しく見える者は止めて検問されるのかもしれない。

アルザスのブドウ畑は、ストラスブール(フランス側表記でStrassbourg)のすぐ南から始まるが、今日は万全を期して早めにホテルにチェックインする為に、コルマールまで高速および自動車専用道を飛ばして直行する。この道路はブドウ畑地帯から少し東に外れているのでブドウの様子は見えない。チェックインの後、ブドウ観光ガイドブックの薦めに従い、エギュイスハイム(とでも読むのだろうか....Eguisheimと書く)へ。コルマールのすぐ南、10キロも離れていない所である。

我々は全然知らなかったのだが、このEguisheimなる街、なかなか有名なブドウ観光地らしい。確かに、何重かに同心円状に古い建物が並ぶ旧市街は、ブドウをさて置いても十分観光名所になり得る街とみた。その上、今日は運良く何かの祭りの最中。旧市街の中心の泉のある広場には、何やらステージが出来ていて、回りは木のベンチとテーブルが取り囲み、脇には新酒やお菓子を売るテントが。我々も、まずは一口新酒を。呼び名は至って単純、「Vin nouveau(新ワイン)」である。0.2リットルのグラス一杯で7フラン(約2マルク、もしくは約140円)也。味も、値段も、ドイツでお馴染みのFederweisserとほとんど同じ。だが、容器が使い捨てのプラスチックコップであることで、ここがフランスであることを再認識する。(ここ数年ドイツでは「使い捨て」は一種のタブーとなっているが、フランスではそういうのは全く意に介さない。)傍にはお菓子やパンを売るテントも出ていたので、「では、Zwiebelkuchenもあるかな?」と思って見渡してみたが、「そこには」無し。

小さな旧市街を、円形の路地に沿って一回りして、元の広場に戻ってきた時、ふと脇にあるお店のショーウインドウが目に入る。「あれれ、これはもしかして?」

あった! Zwiebelkuchen!!

如何にドイツ語がよく通じるアルザスと言えど、お店の札なんかはフランス語である。よって、Zwiebelkuchenではなく、「Tarte a l'onion」と書いてある。訳すと「玉葱のお菓子」だから、そのものズバリ。やはりあったか。尤も、全くドイツ風の「クリマル」だって出るところなので、驚くには値しないが。

ここのTarte a l'onion、ドイツで普通あるように直径30cm位の大きいのを切り売りするのではなく、直径10cm強の小さいやつを1個単位で売っている。1個15フラン(4マルク強、もしくは約300円)也。買ったら、その場で電子レンジで暖めてくれた。味はというと、ごくお馴染みのZwiebelkuchenそのものであった。

さて、肝心のアルザスのブドウの話をまだ書いていなかった。

結局、ブドウの様子が見えたのは高速から降りた後、コルマールからEguisheimの辺りだけであるが、大雑把に言って、8割以上は収穫済み。残っているのは大方黒ブドウである。おそらく、ピノ=ノワール(Pino Noir)であろう。これすなわち、ドイツではシュペートブルグンダー(Spaetburgunder)と呼ばれ、最も晩熟タイプの品種の一つである。

先週アルザス北部を回った時は、逆に8割程の畑は未収穫であった。もし仮にここ南部でも収穫時期はあまり変わらないのだとすると、この1週間で大方収穫してしまったことになる。(注:先週見て回った辺りと、今日見て回った場所とは、南北に40〜50キロ離れている。)明日の帰り道に、北部の状況をチェックしよう。


10月12日(日)

今週末のアルザス旅行の究極の目的(?)は昨日果たしてしまったので、今日はのんびりできる。実際、朝起きたら結構な雨足で、ブドウ散歩という雰囲気ではない。よって午前中はコルマールの美術館で過ごす。以前来た時は入らなかったので。それにしてもこの街、すごい数の観光客で溢れている。

さて昼メシはどこで取ろうかと考え、結局ガイドブックのおススめに従い、リクウィール(Riquewihr)という街へ。コルマールの北北西10キロ程、山を少し登った緩い斜面にある。曰く、「中世の趣を残す街」。ここもまた、大変有名な観光地らしく、観光客で溢れている。ちなみに、聞こえてくる言葉は殆どドイツ語。

これまた虎の巻によると、この街の周囲がアルザスでもとりわけ高品質のワインを産するところだとか。街の中にも相当数の醸造所があり、殆どのところがその場で直売している。僕もなんとなく見覚えのあるヒューゲル(Hugel)社の醸造所に併設の直売所で、いつくか試飲させてもらって、各種まぜこぜで10本程買い込んだ。ちなみに昼メシは気軽なレストランで、あいも変わらず「Nouveau」を飲んで、「Tarte a l'onion」を前菜に食べた。

昼食中に天気が回復したので、引き続き周囲のブドウ畑散歩へ。昨日見たあたりとはだいぶ様子が違い、まだまだ収穫前の畑も目立つ。ごく大雑把に言って半々くらいか。黒ブドウだけでなく、白ブドウや、薄紫色ブドウ(ゲヴュルツトラミーナーと思われる)も、まだまだ残っている。そう言えばここアルザスでは、ドイツでいうシュペートレーゼやアウスレーゼに相当するような遅摘みワイン、「ヴァンダンジュ=タルディヴ」(Vandanges tardives)も作るという。もしかしたら、この界隈はその「遅摘み」の比率が高いのかもしれない。

そうこうする内に薄暗くなって来てしまったので、残念ながら先週見たあたりの収穫の進行状況を確かめることもままならず、帰宅。途中で「Nouveau」を買い込んだことは言うまでもない。


番外編 「Federweisser日記」(17-Oct-97記)

FederwesserもしくはNeuerなる飲み物、僕はつい最近まで、「これは秋の収穫祭りかなんかで、青空の下のベンチで飲むものだ」と勝手に決め付けていたので、瓶詰めを買ってきて家で飲むということはここ2〜3年ご無沙汰していた。ところが、今年は暫く前から某メーリングリストが「Federweisser」で随分盛り上がっている。そんな事もあって、今年は久々に瓶詰めを家へ買って帰って飲んだ。それも、かなりしつこい位に何回も。

そのおかげ(?)で、この飲み物が時間とともにどんな風に変わっていくか、少しは一般傾向が分かってきた。以下に、先週末アルザスで買って帰った1本のVin nouveau(フランス語だとこのように呼ばれる。何の事はない、「新ワイン」といっているだけ)の変遷について述べる。

<日曜日>
夕方、Reveaulilleなる小さな街の小さな食品店で、1本のVin nouveauを買った。中身は決して透明ではないが、かと言って真っ白に濁っている感じでもない。家へ帰って、寝る前に少し飲もうとしたが、まるで蜜のように甘く、どう考えてもアルコール飲料とは思えない。また、発泡も感じられない。まだ飲むには尚早と判断す。なお、「変化を観察すること」を第一目標とするため、冷蔵庫には入れずに台所に放置する。翌日以降も同じ。

<月曜日>
夜、帰宅後すぐ様子を見る。結構発泡しているのが見える。ひとくち味見。味は昨日と殆ど変わらず、非常に甘くで蜜の感じ。まだアルコール飲料であることを殆ど感じさせない。なお、微かに「有機溶剤風」の刺激的な匂い(臭い?)を感じる。総合的に言って、まだそこいらへんの飲み屋で飲むFederweisserの感じ以上に甘みが強い。

<火曜日>
同じく、帰宅後まず観察。色は昨日同様、濃く白濁している。泡立ちが一段と盛んである。少し甘みが弱まり、アルコール飲料であることは良く分かる。でも、まだまだ十分甘い。 ぼちぼち、「典型的Federweisser」に近づいてきた。

<水曜日>
発泡が少しおとなしくなる。色はまだ真っ白く濁ったまま、即ち、昨日と殆ど変わらず。甘みの方は随分薄くなった。「典型的Federweisser」の平均像に近い。

<木曜日>
殆ど発泡していない。また、ビンの底にオリ(酵母の死骸等)の沈殿が進み、白濁の度合いが低下した。甘みも一段と減り、かなり辛口。酸味も結構強く感じる。さほどコクの類も感じないので、はっきり言って、あまり旨い飲み物ではなくなってしまった。「これで限界」と判断し、飲みきる。

.....とまあ、こんな具合であった。この例では、買ってから2〜3日経ったころが、最も一般的な「Federweisser」の感じに近く、この頃の状態が最も旨いと感じた。

実は日曜日の帰り道、上記のやつに加え、道端のテントで売られているのを1本買った。これは最初から真っ白に濁っていて、かつ甘みもかなり抑え目であった。こちらの方は、2日目の月曜日時点で、ほぼ完全に辛口化した。「甘みの無いFederwesser」という、ちょっと不思議な飲み物である。3日目の火曜日には、あまりに辛いので、もう1本の甘い方のやつを少しまぜて飲んでみたが、「味の異なる2種類の飲み物が、まだ混じりきらずにいる感じ」で、これまた不気味であった。4日目の水曜日、「これ以上置いても得るものはない」と判断し飲みきる。買った時点で、もう一つのやつより1〜2日発酵が進んでいたのだろう。

以上、なんだか約30年前の小学校の理科の宿題の「観察日記」を思い出した。


10月18日(土)

2週間ぶりに「いつもの所」へ。収穫風景を見逃してはならじと気になっていたところだった。高速道路(A66)から続く自動車道(B42)がブドウ畑に最初に差し掛かるマルチンスタール(Martinsthal)の辺りで、早くも収穫風景を多々目にする。国道を降りて一旦エルトヴィレ(Eltville)の街の端をかすめて脇の小道に入り、ブドウ畑のすぐ手前の「一般車通行止」の標識の手前に車を止めて歩くのが我が家のお決まりのパターンである。

ここラウエンタールのブドウ畑群の中では、バイケン(Baiken)が抜きんでて有名で、ついでヴュルフェン(Wuelfen)とゲールン(Gehrn)の2つがそれに次ぐ。他にもいくつか単一畑があるが、殆ど無名。散歩コースの入り口真正面に見える州営ワイン農場建物の周囲にこの最高の畑バイケンが広がるが、散歩コースが最初にブドウ畑に差し掛かる部分は「その他」の畑である。確か、ランゲンシュトゥック(Langenstueck)だったと思う。この部分はすでに収穫済み。その手前、農道の脇の空き地には真新しい絞りカスの集積地があり、収穫期の醸造所につきものの発酵臭が漂っている。

すぐに農道の左側はバイケンの畑となる。ここはまだよく熟した感じのブドウがそのまま手付かずの状態。9月にはまだまだ青々(正しくは黄緑色)と見えたブドウの実も、殆ど緑色が失せて灰色から薄ベージュ色に見える。カビて腐ったブドウが多かった95年の風景、健康ではあったが青くてやや小粒で生育不順を感じさせた96年の風景に比べ、素人目にもブドウの状態は良さそうだ。そう言えば94年もこんな感じだったか。

農場建物に向かう農道の右側(南側と東側)はバイケンではない。こちらは、ちらほら収穫済みの区画も見られ、一部では明らかに機械収穫を行なったと見られる形跡もある。農場建物の東側と北側(斜面の上方にあたる)にもバイケンの畑が広がり、こちらも未収穫であるが、ブドウの房のなる部分の葉を落としてビニールで覆いをした区画が広がる。アイスヴァイン(Eiswein)のための準備と言われるが....それにしても今年は「ビニール覆い」の区画が例年以上に広いような気がする。(注:毎年同じ区画がこれに当てられる訳ではない。「教科書」によると、ブドウの状態を見極めて、アイスヴァイン候補としてもっとも適切な区画を選ぶと書かれている。)もしかしたら、アイスヴァイン用区画だけではなく、アウスレーゼやベーレンアウスレーゼを狙う区画も、ブドウの保護のために覆いをするのかもしれない。これからも注意して見ていれば分かるだろう。

先程から遠目には収穫風景が見られたのだが、やがてその脇を通る。ざっと20人ほどのグループが5〜6列のブドウ垣根にちらばって、切り取ったブドウを各人ごとにバケツに貯め、小型トラクターに引かれた大きな容器が回ってくる度に放り込む。更にこの小型トラクターは、下の農道で待つ更に大きな容器に集めたブドウを運び込む、という具合である。小高い所から見渡す範囲で、数箇所で同様に収穫が行われているが、思ったほど多くはない。約1時間の散歩コース沿いの畑について言うと、収穫済みの区画はまだ2〜3割か。散歩コースの一部にある黒ブドウの区画は、すべて収穫が終わっていた。

この後、早めの夕食を取ろうと、ラウエンタールの村の中にあるヴィンツァーハウス(Winzerhaus)へ。この村のワイン農家協同組合の醸造所建物で、その一部がレストランになっている。前の駐車場にはブドウを満載したトラクターが何台も並び、ブドウの受け入れの順番をのんびり待っている。きょろきょろ覗いていると、職員の一人が出てきて「そこを回って下の階へ行くとケラーが見られるよ!」と。ススメられるままに行く。入ってすぐのところには、さほど大きくもないプレス機が2台並び、上の階から太いホースで送られてくるブドウを、このプレス機にぎゅうぎゅう押し込んでいる。このペースでは、最後のブドウ受入は夜中になってしまうかな、という感じ。

意外なことに、ここのレストランではFederweisserを置いていない!! よって普通のワインをグラスで少々とって夕食とする。帰りに、道端の無名Weingutの玄関先で売っているFederweisserを1本買う。今シーズンはこれが癖になってしまった。


10月25日(土) --- 番外編 ---

あるメーリングリストに出ていた誘いに乗って、(マインツ)Mainzで開かれた試飲会へ。ラインヘッセン地方のワイン醸造家組合(とでも訳せばよいだろうか)主催のもの。故に出品もこの地方のワインに限られるが、それでも出品数は150種を越える。

実はこの手の「試飲会」なるものはほとんど初体験である。先日のRobert Weilのものは自家製品のみだったので出品数もせいぜい10数種だったと記憶。こちらもあまり「試飲」を意識しないで遊びに行ったつもりなので、ワインはすべて吐き出さずに飲んだ。今日はもう少し「試飲」を意識して、なるべく多数を味見するため、基本的には飲まずに吐き出すようにした。(高価なやつは飲んだが。)

あまり「たいした物」は出ていなかったらしいが、僕のような初心者にとっては、いろいろ変わったブドウ品種のワインをあれこれ試飲して比べることが出来るのは面白い。栽培品種の絞られるラインガウでは、かえってこういう「品種の比較」という試飲の機会は少ないので。結局、都合40種弱のワインを試飲したが、大半は実際には飲まなかったので終わった頃には全く酔いは感じず。(中には、全種類を実際に飲んだという人もいたが、その後結構な二日酔いに苦しまれたそうである。)

でも、何と言ってもこの日の一番の収穫は、日頃電子メールを通じてしか知らなかった人達と会えたことであろう。(中にはだいぶ「お馴染み」になりかけた人もいるが。)


10月26日(日)

先週に続き、収穫状況を確かめるべく、ラウエンタール(Rauenthal)へ。

結論を先に言うと、期待に反して収穫風景は1件も見られず。バイケン(Baiken)の畑はほぼ100%未収穫(シュペートレーゼ以上を収穫すべく「残してある」という感じ)で、その他の畑は8割方収穫済み。未収穫の区画は、これまたシュペートレーゼ以上の収穫の為に残してあるものと見た。よって、今日は丁度通常収穫が一通り終わって「中休み」といったところか。その上しかも日曜日なので、作業をする人が少ないのかもしれない。

さて、各論。バイケンの畑では、ビニールの覆いのなされた区画が一段と増えている。ここで今更ながら気づいたのだが....ビニール覆いにも2種類あるようだ。ある部分では、以前からよく見たようにブドウの房の周囲の葉をすっかり削ぎ落とし、ビニール覆いは上端も下端もホッチキスで留めてある。ものの本で「アイスヴァインの為の準備」として説明されているものの通り。

今回、これとは明らかに違うやり方の区画を確認した。そこでは、まずブドウの房の周囲の葉がそのまま残っていて、ビニール覆いも上端はホッチキスで留められているが、下端は何も固定されておらず、ヒラヒラとスカートの様である。更に、一部ではあきらかにビニール覆いの丈が短い。ミニスカートといったところか。先週も少し、「単なる推測」として書いたが、これはアイスヴァイン用ではなく、アウスレーゼ等の遅い収穫に備えてのブドウ保護の為の覆いと見た。....でないと、このバイケン畑に関して言うと余りに「ビニール覆い」の区画の割合が多く、いくらなんでもリスクの高いアイスヴァインにこんなに広い区画を割り当てるとも思えないので。来週以降もチェックを続ければ分かるだろう。

さてブドウの樹の様子だが....今年のこの辺りの様子は去年までと少し違う。というのも、全般的にブドウの樹の葉っぱがキレイな黄色になることなく、緑色から直接茶色く枯れている。例年だと、収穫の直後は晩秋の銀杏並木を思わせるようなキレイな黄色になるはず。先週異状に早くやってきた寒波(フランクフルト市内でもマイナス3度まで下がったらしい)の所為かもしれない。

この後、久しぶりに隣村キートリッヒ(Kiedrich)の、グレーフェンベルク(Graefenberg)畑からヴァッサーロース(Wasseros)畑周辺へ。先月(9月13日)書いた通り、この数年評判急上昇のロバート=ヴァイル(Robert Weil)醸造所の自慢の畑は主にこの辺りにあるらしい。こちらでも収穫作業中は一件のみで、ブドウ山はもっぱら散歩する人々達で賑わっているのみ。ここでもまた、大部分の区画(とりわけ、グレーフェンベルク畑)は未収穫で、例のビニール覆いも相当部分になされている。覆いのやり方に2種類あるところもまた、先程のラウエンタールと同様。

散歩ののち、村の教会と村一番(?)のレストランが向かい合う小さな広場のスタンドで、FederweisserとZwiebelkuchenの遅い昼食。ここで初めて気づいたのだが、Zwiebelkuchenを食べる人はここでは少数派で、シュマルツブロート(Schmalzbrot)なる物をつまみがわりに食べる人の方が多い。これはどんな物かと言うと....小麦・ライ麦のミックスの茶色い田舎パンのスライスに、ラードだかヘットだかの油脂(明らかにバターではないことは分かる)に香料・香辛料を混ぜたものを塗っただけ簡単なものである。値段も、ここのスタンドの場合1切れ1.5マルク。(ちなみにZwiebelkuchenは4.5マルク)

これまた単なる推測だが....プファルツやバーデン等Zwiebelkuchenをよく食べる地方は、ブドウ畑の他にも肥沃な麦畑、イモ畑、玉葱畑等が広がる大農業地帯である。それに対し、ここラインガウは、ライン川とタウヌス山に挟まれた緩斜面一帯はほとんどブドウ畑になっていて、その上はというと、もうタウヌス山の森になっている。広々とした穀物畑はこの辺りにはない。そんなことも、「Zwiebelkuchenを良く食べる/さほど食べない」と少しは関係あるのかもしれない。





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