20-Jun-99 ブドウ日記 (99年 その3) 5月某日 イスラエル
イスラエル産、リースリングのワイン 仕事の関係で、5月の中旬に10日ほどイスラエルへ行った。この時に見聞きしたことは追々別のところで書いてみたいと思っているが、今日はとりあえずブドウについての報告を。 「イスラエルでワイン?」という疑問を持つ人が少なくないと思うが、実はそこそこの量を生産しているようだ。気候的には、イタリアやスペイントと同じ地中海性気候(冬に少し雨が降り、夏は高温乾燥)に分類され、平均気温を全体に高くしたような感じだから、ブドウの栽培には結構適しているのだろう。 それになにより....キリストが「これは私の血だ」といったところから、ワインはキリスト教のミサの儀式に欠かせないものとなっているが、その発祥の地は今のイスラエルに他ならない。....なんてことも以前は全く考えてもみなかったが、数年前にはじめて出張で訪れた際に「イスラエル産ワイン」を飲んで、なるほどと思った。 ....とまあ、勿体ぶった書き出しとなったが、実はさほど書くべきことはない。なにせ、今回は「ブドウ観光」に行ったわけではないし、一人で自由行動するような休日もなかった。仕事の行き帰りなんかの道端に時々ブドウ畑を見かけたのと、夕食のときに現地ワインを飲んだりしたくらいだ。 さて今回目にした範囲では、「見渡す限りブドウ畑」というような所はなく、半分砂漠みたいな感じの乾いた荒地の中、ちょっとした小さな一角にブドウが植えられているという感じの所が多かった。もともと非常に雨の少ない所なので、いつぞカリフォルニアで見たのと同じように灌漑用の水道管が敷設されている。ブドウ木の仕立て方も、ヨーロッパで普通に見かける垣根仕立てか、その変形ともいえる「リラ仕立て」(*1)であった。
この時期(5月中旬)、ドイツのラインガウ地方では、まだようやく花芽がそれと分かる程度に伸びた程度であるが、南国イスラエルでは、すでに小さな実が成っているのが見えた。 そこで作られるブドウ品種だが、レストランのメニューやスーパーのワイン売場での観察では、赤ならカベルネ=ソーヴィニヨン、ピノ=ノワール、メルロー等、白ならシャルドネー、ピノ=ブラン、それに何とリースリング(この南国で!)といった、欧州系のメジャーな品種を一通り栽培しているのがわかる。この国では物価や人件費もだいたい欧州諸国並と思われるが、ワインの価格もまたドイツのスーパーで見る欧州産ワインのそれと似たようなもので、中には数千円以上する高級品もあるが、さすがに「数万円」クラスのは見かけない。 本日分の冒頭の写真は、自宅へのお土産に買って帰った「中級品」の一つである。 "JARDEN" という銘柄名と、 "Johannisberg Reisling" という品種名以外はすべてヘブライ文字で書かれているのがお分かりいただけようか。ついでながら、このワインは「ゴラン高原」の産らしい。手元の「高校地図帳」では隣国シリアの一部ということになっている(日本政府の公式見解による?)が、第何次だかの中東戦争以来実質上イスラエルが支配している、いわゆる「占領地」と呼ばれる部分の一つである。もっともこの辺りの国境論争は、歴史をどこまで遡るかで見解が全く変ってくるので、他所者のぼくが意見を述べるのは控えよう。
「いかにもスイス」のブドウ山風景 6月3日の夕方から6日にかけてスイスへ遊びに行った。 ぼくが住むヘッセン州では、6月3日(木)は「聖体祭」なる祭日である。細かいことをいうと、春分と満月と曜日の組み合わせで決まる「復活祭」から数えて何日目という定義の、いわゆる「移動祭日」であるが、その定義の関係で毎年必ず木曜日になる。こうなると、世界一平均労働時間の短いドイツ人達のかなり多くは金曜日を有給休暇にして4連休とする。残念ながら平均的ドイツ人の労働時間とは縁の無い生活をしているぼくも、たまには仕事の合間を見計らって休暇くらいはとる。今回はたまたまそれがこの時期となった。 出発が夕方となってしまったのは何処へ行くかなかなか決めかねた所為だが、結局は「残雪たっぷりの山の景色を見に行こう」ということで、スイスへ向かった。帰省を別にすると、泊りがけの旅行は昨年暮のドレスデン+プラハの「クリマル巡り」以来である。こちらの「子連れ旅行記」もいつか書いてみたいとは思うが、今日はとりあえず「ブドウ」について。 スイスのワイン、「珍しいもの」の一種として日本にも少量入っている。手元のガイド本によると、スイスのブドウ(ほとんどワイン用)栽培面積は約17000haというからドイツの約1/6である。方や人口比はドイツの8000万人強に対してスイスは700万人弱であるから、一人あたりのワイン栽培面積はドイツより多いことになる。....とは言っても、どのみちイタリアやフランスに比べると1ケタ少なく、どちらもラテン諸国から大量にワインを輸入している。 ....と、前置きがながくなったが、今回の宿泊地はローヌ渓谷のリゾート地、クラン=モンタナ(Cran=Montana)。いわゆる「高級リゾート地」の一つであるが、この時期は全くのシーズンオフなのでホテルもそんなに高くはない。(食事は高くついたが。)そして、そのローヌ渓谷の右岸一帯の南向き斜面がスイスでも有数のワイン産地である。今回の主目的は「山岳観光」だが、せっかく道端にブドウ畑があるのに素通りするのは忍びないということで、ちょっと寄り道。 あれ、何ともう花が咲いているではないか。
ドイツのラインガウ地方のブドウ開花はもっと先、6月中旬〜下旬である。それより南に位置するとは言え、山間部で寒冷なスイスではもっと遅いかもしれないと思っていたが、意外や意外、ほとんど満開状態である。 次の写真は翌日の帰り道だが、場所はほとんど同じ所。
ごらんの通り、ドイツのモーゼル地方なんかで見られる「杭仕立て」風のところが主流のようだが、杭の長さはモーゼルのそれよりかなり短い。枝の処理なんかも違っていそうな気がするが、葉がかなり茂っているので良く見えない。 視線を下の方に移すと....
木の丈は小さいが根元の幹は十分太く、その太い幹が何本かに枝分かれしているところなんかはモーゼルの選定方法とちょっと違う。 周囲の景色はこんな感じで....
結構高いところまでブドウが植わっていて、かつまた集落も斜面の上のほうにもあるのがお分かりいただけよう。なお、この写真で谷底に白く光る広い帯は、ローヌ川なり。 最後の写真は、ローヌ川沿いに少し下ったシオン(Sion)の町のそばの急斜面ブドウ畑。ここでの畑仕事は見るからに大変そうだ。採れるワインがその苦労に見合った値段で売れるものなら良いのだが.....(写真の写りが一段と悪いのは、車のガラス越しに撮ったため。)
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