|
このままではいけない…。
焦燥感と、半ベソの中でいろんな情報収集をはじめた。本屋の犬本チェックにもいっそう熱が入るようになった。しかしあらゆる本を読めば読むほど分からなくなってくる。なぜか。それは、本によって書かれていることがまちまちだからである。ひどい時には、対症療法として、まったく逆のことが書かれている。たとえば噛むという行動を矯正する場合、「叩いていけないと教える」というのと「叩かず無視して教える」というものがある。 いまの犬しつけの流派には大きくわけて2通りある。警察犬しつけ系の「叱って矯正する」ものとアメリカ系の「ほめて矯正する」ものである。すでにして、両者はスタート時点で、異なっているわけだから、それぞれの本にまったく逆のことが書かれていてもフシギではないわけである。 ただでさえ、混乱している私のアタマの中はさらに混乱しはじめた。 また、いろんな人に相談したり、情報を収集したりもした。ある人は「犬の顔を見たらわかるから、一度連れて遊びにおいで」と言った。人相ならぬ犬相が見えるそうである。たとえば、鼻筋の長い犬は従順だという。しかしその人の家は少し遠方にあり、その時点では、ハナを車に乗せること自体が難しかったので、諦めることにした。またある人は、「うちの犬もゴールデンで、何でも噛んだけど、ある日大きな木の切り株をおもちゃであげたら、それが気にいったらしくて、それをずーっと噛んでいる」と教えてくれた。なるほど、何か夢中になれるものを作るのはいいかも、と思い、しかし周りに切り株なんかないので、某レトリバー専門ネット通販サイトで巨大なガムを購入して、あげてみた。確かにハナは夢中になった。しかしそれは夢中というより、熱狂したといった方がいいかもしれない。そのガムを自分のものにするやいなや、絶対に離さなくなった。それどころか別の用事でわたしたちが近づいただけで、とりあげられると勘違いして唸り、威嚇してくる。いつもと顔つきが違うのである。ごはんの時間になっても見向きもしないで、そのガムを噛みつづける姿はもはや異常であった。 数時間後、ほうほうの体でガムを取り上げた私は、途方にくれていた。 私との格闘で疲れて眠ってしまったハナはまるで天使のような顔をしている。さっきまで暴れていた横着な犬とは思えないほど、私のひざにくっついて甘えて寝ている。 「そうさ、あんたはだめじゃない」ともう一度自分にも言い聞かせるように言ってみた。 ハナはまだ本当に私たちに心を開いていないのかもしれない。きっと生まれてすぐ親兄弟と離され、気がつけばたった一人で見知らぬ土地のペットショップの檻ごしに人間の興味本位の顔にさらされて、そしてダンボールに入れられてわが家にやってきたのだ。考えてみれば大変な人生である。必要以上に根性すわってて、頑固でもしょうがないかもしれない。それは生まれつきのものかもしれないけれども。 気をとりなおして、またネットでの情報検索をはじめた。ゴールデンを飼っている人ばかりのメーリングリストに入ったり、いろんなページで情報収集もした。その中で、ずっと気になっているページがあった。名古屋周辺で犬のしつけの個人指導を行っている人のページである。 |