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こちらは CATV モデム。東芝製だ。 |
DSL と並んでもう一つの選択肢が CATV インターネットだが、通常各エリアで一社が独占して CATV テレビサービスを提供しているので、選択肢はない ( 最近 New York 市はちょっと事情が変わった。詳しくは後述 )。ローカル CATV 局がインターネット接続サービスを持っているかどうかになる。総じてアメリカではケーブルテレビ会社のほとんどがインターネット接続サービスを提供しているようではある。
さて New York 市の場合だが、これがちょっと複雑になっている。一般に Manhattan や Queens、Brooklyn では Time Warner 社が CATV を提供していて、The Bronx 区では Cablevison 社が提供している。そのほか、エリアやビルによっては RCN というケーブル会社もケーブルテレビのサービスを提供している。つい最近、うちのポストにも「RCN はこのエリアでもサービスを開始しました」という案内が入って来た。それによると同時にインターネット接続サービスも供給しているが、値段は Time Warner 社のそれと変わらないようだった。
ちなみに Cablevision 社は僕が以前住んでいた Long Island に本社を構える会社で、Long Island では Cablevision 以外からケーブルテレビサービスを受けることができない。
さて僕が今住んでいるアパートに引っ越ししてきたときは Time Warner しか選択が無かったので、テレビ受信のサービスを依頼した。その前の Long Island に住んでいたときは Cablevision 社の CATV インターネットをずっと使っていたので、当然 Queens でも Time Warner が提供していると思いきや、まだ Manhattan の一部のみサービスインという、お粗末な状況だった。そこで仕方なく、上記の Verizon の DSL サービスを使用していたのだった。
それから一年ほど経って「あなたの住んでいるエリアも CATV インターネットが使えます」という案内が入り、早速申し込んだのが2001年夏のことだった。
ところがことは一筋縄ではいかなかった。アメリカでは良くある話だが、実はいろいろ問題があってインターネットが使えるようになるまでオーダーしてから3ヶ月もかかった。その間「ケーブルの交換」「ブースタの設置」など10回以上も Time Warner のテクニシャンがうちに来て調査や工事をしなくてはならないほどだった。
Time Warner の CATV インターネットを申し込んだとき、すぐに DSL のサービス契約を打ちきろうとしたのだが、こういうこともあるかとそのままにして置いて良かったと今は思っている。でその3ヶ月の間、Time Warner の接続スピードを近くの電器屋で体験してからと言うもの640Kbps のスピードには満足できず、しかも CATV インターネットは遅々として使用できない状態だったので、DSL のプラン変更をしたのだった。ところがこちらも問題があって1.5Mbps にしたはずなのに、下で紹介している速度比較サイトで見ても全然変わらなかったのだ。これまた Verizon も困り果ててしまい「モデムの調査」「僕の PC にインストールされている PPPoE のドライバが古い?」「ケーブルにノイズが乗っている?」などといろいろな調査をすることになってしまった。幸いサービスが止まっていたわけではなく、1.5Mbps のプランに変更したのに、以前の640Kbps のスピードしか出ていない、というだけの問題だったのでメールや Web ブラウズには何の支障もきたしはしなかったが。
Verizon の話によれば、モデムや PC 側の PPPoE ドライバにはスピードに依存する設定はなく、すべて局側の工事で640Kbps から1.5Mbps へのスピードアップを行える、と言う話だったのに「○○日の××時に速度の変更を行います」と指定された日時を過ぎてもその速度の変化は全くなかったのだ。結局最後は大げさな話になってしまい、うちにテクニシャンが来て、ケーブル品質のチェックまでする始末に ( ちなみにこの日は Time Warner からも CATV インターネットのテクニシャンか来ることになっていて、時間は別々の予定だったのだがどちらも朝一にやってきてくれたおかげで2人のテクニシャンが同時にうちのケーブルを見ていたのは笑えた。二つ PC があったのでそれぞれでテストをすることができ、PC 側で CATV インターネットと DSL の線のつなぎ替えをすなくて済んだけれど)。
なんとか CATV インターネットが使えるようになると、やはり速度は DSL より速い。実測値で下り4Mbps / 上り400Kbps 近い数字をたたき出す。おかしな話だが、DSL はテクニシャンがケーブルのチェックにうちに来たところ、彼が持っている装置では1.5Mbps Ready の結果が出た。ところがやはり僕の PC では640Kbps のリンクアップしかできず、試しにそのテクニシャンが持参した PC でも同様の結果しかでなかった。結局、調査は Verizon 持ち帰りということになり、その後640Kbps でしか接続できないのは確認していたんだが、最近いつのまにか1.5Mbps で接続できていることを発見。最初に申し込んだ時は640Kbps でいつでも解約可だったのだが、1.5Mbps へのプラン変更をした際に「そうすると1年間は解約できませんが」と言われて、それでも申し込んでしまったので、しばらくは CATV インターネットと DSL の二種類のプロードバンドが利用できるハイテクなうちになってしまったのだ。
CATV インターネットの接続は月$44.95。
Time Warner CATV インターネット の公式サイト
では CATV インターネットと DSL、どちらが得かちょっと比べてみよう。
僕は実際にどちらも導入し、現在も両方使えるのだが、総じて Time Warner Cable の CATV インターネットに軍配があがる。 速度だが、昼夜によって CATV は大きくスピードが変わるのだが、夜はたいてい4Mbps近い速度が出ている。昼はおそらく企業が帯域をたくさん使うのだろうか、2.5Mbps 近くまで落ちてしまう。
一方 DSL はどうかというと DSL の特性を生かして、時間帯、曜日に関わりなく一定して1.5Mbps の速度が提供されている。
速度だけ見ると CATV の圧勝だが、では値段はどうかというとこれがちょっと微妙だ。
まず CATV インターネットはまず家にケーブルテレビが見える環境になっていないと使えない。まず物理的にケーブルが来ているかどうか。古いアパートではケーブルテレビが見えなかったりするのだが、そういうときは大家と相談して、アパートにケーブルテレビを引いて良いかどうか許可をもらう必要がある。ちなみにこの工事は Time Warner がすべて負担してくれる。
次にサービスだが、ケーブルがあるからと言ってテレビの受信サービスを受けていないと$60になる ( CATV を受信しているうちでは上述の様に$44.95。)。つまり僕が DSL で使っている1.5Mbps サービスの本来の値段とほぼ同じになる。
手っ取り早くブロードバンドを使いたいと言う人で電話は引いているけど、ケーブルは引いていない、と言うならこれは DSL が向いているし、電話は普段携帯を使っていて家に固定電話を引いていない、かつケーブルテレビは引いている、というなら CATV インターネットを引いた方が安上がりだろう。
また速度を重視するならやはり CATV インターネットになる。
・・・とここまで書いていてまた少し事情がかわりつつある。事情通の人は知っているかもしれないが、Time Warner と AOL は合併したのだが、これにより CNN などを傘下におさめる巨大メディア企業となり、その独占を制限するために Time Warner 社は自社の CATV インターネットサービスを競合他社に解放しなくてはいけないこととなった。
それが早速効果となって現れて、先週 Earthlink という大手 ISP プロバイダから案内が届いた。それによると月額$44で Time Warner の CATV インターネットサービスを利用できるようだ。これだけ見るとケーブルテレビを受信していなくても良いようなので、これが本当なら、$5高くても DSL よりは CATV インターネットの方が断然トクだろう。
導入の手軽さで取ると CATV に軍配があがる。DSL は PPPoE ドライバが必要で、しかも使用するたびにログインとパスワードのウィンドウが表示されるのが、CATV に慣れてしまうと結構うっとうしい。もちろんログインもパスワードもソフトウェアで覚えていてくれるので、毎回タイプする必要はないが。Windows XP では通常のモデムのダイアルアップのように PPPoE での登録も可能になり、ドライバもシステムに組み込まれているので使用勝手はだいぶ楽になったが、CATV インターネットは PC がオンになっていれば何もしなくてもインターネットにつながっているので、インターネットにつながっていることを全く意識せず、シームレスなコンピューティング環境を提供してくれる。
さて僕が良く利用する速度比較サイトは、http://www.ba-hss.com/speedtest/である。Verizon のテクニシャンが教えてくれたのだが、Time Warner の CATV インターネットからでももちろん接続できる。
おそらく日本にいる人がここで速度を比較するとたとえプロードバンドを利用していてもとんでもなく遅い数値が出るだろう。 この差は日米のインターネットの線の太さに依存するからだ。僕が日本にあるメジャーなプロードバンド速度比較サイトでここからの速度を比較すると、やはり1Mbpsぐらいしか出ない。
そこでふと思ったのだが、アメリカに住んでいても大半が日本にある co.jp のサイトを多く見ているのなら、4Mbps も1.5Mbps も実は体感速度は変わらないんじゃないか、ということ。がーん。
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