天国への方程式
俺は、一人ではなかった。
目の前のコンソールが、無慈悲にもそれを告げていた。
そいつはこう言っていた。
この船に、俺以外に、もう一人の人間が、乗っている、と。
……密・航・者、だ。
ついに来やがったか、と俺は思った。
必ずそうなんだ。
俺は確かに、大型旅客船『鵬天』から射出される前に、厳重に、それこそいちいち指さし確認しながら、厳しく装備をチェックした。
自分の命にかかわる事だ。誰が手抜きなんかするもんか。
なのにこれだ。
必ず、きっかり一時間後に、どこかから降って湧いて出たかのように、人間が発見されやがる。
二、三度、話は聞いた事があった。
宇宙局局長の情婦が乗り込んできた話とか、ナマコ(!)が乗り込んできた話とか、その他諸々、嘘か本当か知らないが、パイロット同士の酒の肴には、そんな話がそれこそ星の数ほどあった。
ただ、そんな話の中に、共通する事がたった一つ。
パイロットは、無事には済まない。
……これだ。
覚えてるだけでも、密航者に喰われた例が二つ、逆に追い出されちまった例が一つ、遺伝情報だけが残った例が一つ、フランケンシュタインになっちまった例が一つ、ある。
ろくなもんじゃねえ。
だから俺は常々、旅客船の船室には、聖書の代わりにゴドウィンの小説を置いとけって言ってるんだ。
ああ、だが、今更そんな事を言ってても始まらない。
奴さんがすでに乗り込んでるのは、もう、変えようのない事実なんだ。
使命は、果たさなければならない。
俺は、シートに深くもたれ掛かって、今からやらなきゃならない事を、思い出して、深い、ため息を吐いた。
やる事自体は単純だった。
かつ、絶対でもある。
それは、空間条例第八条項目 L に、はっきりと述べられている事だった。
『EDS 内で発見された密航者は、発見と同時に直ちに艇外に遺棄する事』。
つまり、平たく言えば、見つけ次第、裸で宇宙に放っぽりだせって事だ。
この事は、まったく人間の意思に関わらず、物理的な意味で絶対なのだった。
くどい話は抜きにするが、要は、燃料が足りないって事なのだ。
宇宙空間は、加速するにも、減速するにも、質量に応じて燃料がいるって所だ。
それなのに、この船には、目的地まで、俺一人と荷物を運ぶのにギリギリの燃料しか積まれてないのだ。
まったく、パイロットの命と燃料と、いったいどっちの方が大切なんだろうかね。
前に、船長にそう言ったら、打てば返す的に、『燃料!!』って答えられた事があったっけ。
なんでも、宇宙空間では、パイロットの代わりはいるが、燃料には予備がないからなんだそうだ。
ったく、人をなんだと思ってやがるんだ。
俺の『本来』の仕事は、惑星エークホルムにいる探検隊に、エビナ緑蛇の血清を届ける事だった。
運が悪い事に、探検隊の持っていた血清は、キャンプを襲った竜巻でダメになってしまったのだそうだ。
その緊急通信、通称ナンバー 8 コールを受けた我が母船『鵬天』は、緊急宙間航行法に従って、通常空間に抜け出し、血清と俺を積んだ EDS 、すなわちEmergency
Dispatch Ship を射出して、またΩ空間へと戻っていったのだ。
もはや俺には、帰る所すらないのだ。
それこそ、ここで早く密航者を放っぽり出さないと、この船がエークホルムの大気圏で、燃え尽きてしまう事にも成りかねない。
すると、俺ばかりか、エークホルムの探検隊や、そもそもの原因となった密航者まで、みんなまとめて死んでしまうという事になる。
どうせ死ぬなら、一人だけの方がいい。
少なくとも、俺は死にたくない。
俺は、心を決めた。
やる事だけ、やっちまえばいいんだ。そうすれば、万事うまくいく。
それに。
もしかして、ひょっとして、万が一、定跡通りだったら、上手くいけば『役得』なぞがあるかも知れない。
よし。
俺はパイロットシートから立ち上がると、ゴム銃と僅かな下心とを持って、貨物庫の方へと歩いていった。
「出てこい!!」
命令の言葉は、いつの時代も、単純かつ明快だった。
出来れば、『処理』の方もそういきたい物だった。
貨物庫の中から、何かがガサゴソと動く気配がしたが、それもすぐに聞こえなくなった。
あきらめが悪い。
世の中は、思うようにはいかない物だった。
俺は、声を荒げて、もう一度怒鳴った。
「{出ろ}{傍点}と言ったんだ!!」
ようやく、命令に従う気配があった。
俺は、ゴム銃を中腰に構えて、油断なくドアに狙いを付けた。
場合によっては、その場で即座に撃つつもりだった。
「よーし、そのまま、両手を挙げて出てこい」
僅かな沈黙の空間があった。
数瞬後、軽いエアノイズと共に、貨物庫のドアが開いた。
そして、密航者が姿を現した。
俺は、心の中で、思わず舌なめずりをした。
定跡通り、だった。
密航者は、若い女、だったのだ。
いや、若い女と言うよりは、少女と言った方が適切かも知れなかった。
どう見ても、二十歳過ぎには見えない。
下手すれば中学生、いや、小学生にも見えるくらいの体型だった。
出るところがまだ出きっていない未完成の身体の上に、愛らしい顔がちょこん、と乗っていた。
くるくるとよく動く瞳が、上目遣いに俺を見つめていた。
てへっ、ばれちゃった、という台詞が、ぴったりの表情だった。
俺は、ごっくんと生唾を飲み込んだ。
もろ、俺好みの娘だったのだ。
その瞬間、俺は、この娘の運命が俺の両手に委ねられている事に、不道徳にも神に感謝したのだった。
そう、やる事だけ、やっちまったら、姦る事だけ、姦っちまえばいいんだ。
俺は、パイロットルームに戻ると、少女に、壁ぎわにある非接触型コンソールの上に座るように、手で示した。
少女は、それに唯々諾々として従ったが、その顔からは、いたずらが見つかった時のような照れた笑いはすでに消えていて、代わりに、シュンと落ち込んだ時のような表情が張り付いていた。
少女は、目を伏せて、じっと身を固くしていた。
「名前と歳は?」
俺は聞いた。
さっきとは異なった、できるだけ優しい声で聞いたつもりだった。
もちろん演技だ。
それでも、少女のほっとした気持ちが、波動となって感じられてきた。
その期待を裏切らなければならない事を知っている俺は、超自我で、微かに良心の呵責を感じていた。
もちろん、表層意識でそれを感じていた訳ではない。
表層意識は、すでに別の欲望でギラギラとたぎっていた。
そうとも知らず、少女は小さな声で、しかしはっきりと、言った。
「……茉莉。杉谷茉莉っていうの。十六才になったばかりよ」
十六才か。それにしてはなかなか幼い身体付きだな。
「で、何で EDS なんかに潜りこんだんだ?」
茉莉は、逡巡するかのように、舌先を唇の上に這わせていた。
俺は、軽くうなずいて、先を促す。
茉莉は、なぜか顔を赤く染めながら、ぽつり、ぽつりと話し始めた。
「……お兄ちゃんに、会いたかっただけなの。お兄ちゃん、政府の調査団で、エークホルムに行ってて、もう、二年も会ってないの。だから……」
なるほど、兄を追いかけ三千里って訳だ。
その結果が、あまりにもアンハッピーエンドだがな。
俺のやる事なんて、その中じゃほんの些細な事さ。
「密航が、重大な罪だって事は知らなかったのか?」
「知ってたけど……。お兄ちゃんとは、まだ、ずっと長い間会えないはずだったし……。それが、今すぐ会えるなんて、なんか神様の思し召しみたいで、つい、何も考えられずに乗り込んじゃったの。……ごめんなさい」
まったく、ごめんで済めば警察は要らないとは、この事だった。
しかも、今回は物理現象が相手だ。どうもこうもならない。
俺は、この娘が少しでも長く生き延びられるように、減速を何 G か減らした。
しかし、これも、どちらかと言えば、俺のためだ。
なるべく長い間、生かしとかなきゃもったいない。
一瞬、疑似重力装置の調整が間に合わなくなって、船が落下したかのように感じられた。
茉莉は、その変化を敏感に感じとっていた。
「なに? どうしたの? スピード変えたの?」
「いや、少しでも燃料を節約しようと思ってな」
俺は、本当のところを言った。隠しておいても、いずれはばれる事だ。
「あんまり、燃料ないの?」
俺はそれに答えずに、コンソールに向かって、ナンバー 8 をコールし始めた。
とにかく、アリバイは作っとかなきゃならない。
この位置からなら、『鵬天』が拾ってくれるはずだった。
後ろからの不安そうな視線が、背中に痛いほど感じられた。
ほどなくして、回線がコネクトした。
船籍ナンバーがディスプレイに流れる。『鵬天』だ。
「こちら『鵬天』、どうした、EDS38HT03? 何か事故でもあったのか? over?」
「こちら深川、緊急事態だ。船長を頼む。over」
宇宙からの音を受け付けない船内に、少しの間、微かな宙電ノイズが舞った。
俺は後ろを振り向いた。
茉莉は、完璧に事態を把握し損なっていて、怒っていた。
「あたしを連れ戻しにくるの?」
俺は黙っていた。
茉莉は、そっちの方がまだましだという事実に、まだ気付いていなかった。
自分がこの後、どういう事をされるのかも。
船長と回線がつながった。
「心橋だ。慎二、何があったんだ? over」
「密航者です。over」
「……それはそれは」
答える船長の声には、僅かに驚きのような物が混じっていた。
「しかし、なぜ緊急事態なのだ?やる事は分かってるだろう。『EDS 内で発見された密航者は、発見と同時に直ちに艇外に遺棄する事』、だ。over」
茉莉が息を飲む音が、はっきり聞こえた。
そこで、俺は言った。
「了解、{直ちに遺棄します}{傍点}。報告が先と思いましたので。報告終了。over」
回線が切れた。
これで、アリバイはできた。
やる事は、やった。
これから先は、船内では、俺が法律だった。
俺は、浮かび上がる笑みを必死に堪えて、ゆっくりと後ろを振り向いた。
茉莉は、まだ信じられないという顔をしていた。
その眼は、恐怖で大きく見開かれていた。
「うそ……でしょ? そんな……あたしを放り出すなんて……。あたし……そんな……死ななきゃならない事した?」
俺は、できるだけ悲痛な顔を作って、茉莉に言った。
「本当だ。燃料がないんだ。この船の燃料は……」
「やっ!!」
茉莉にはもう、俺の説明を聞いている余裕などなかった。
茉莉は、まるで俺の発した言葉に殴られたかのように、いやいやをしながら、座ったままで後ずさりしていった。
パニックする事によって、冷たい現実を拒否していた。
俺は、ついに顔にうすら笑いを浮かべながら、茉莉の方に一歩一歩にじりよっていった。
「なあに。今すぐ放り出すなんて、そんなもったいない事をするもんか」
茉莉と俺の眼が合った。
茉莉は、瞬時に俺の意図を理解したようだった。
死とは別の物への恐怖が、茉莉の顔に鮮明に浮かび上がった。
「やああっ!!」
茉莉は、いきなり立ち上がると、甲高い悲鳴を上げながら、貨物庫の方へ逃げて行こうとした。
「おっと」
俺は慌てずに、コンソールのボタンの一つを押した。
「あっ!!」
とたんに、茉莉は足を絡ませて、床に転びそうになった。
が、転ばなかった。
茉莉は、転びそうになった格好のままで、空中で溺れていた。
「だめだなあ。いきなり走り出したりしちゃあ」
俺は、無造作に茉莉に近づくと、空中でもがいている茉莉を、いとも簡単に捕まえた。
俺の押したのは、もちろん、疑似重力発生装置のボタンだった。
俺は、この船の中を、無重量状態にしたのだ。
素人が、無重量状態の中で自由に動き回る事は、ほとんど不可能に近かった。
俺は、パイロットの常として、きちんとマジックブーツを着用していた。
やっぱり、規則は守っとく物だ。いつ役に立つか分かったもんじゃない。
そんな事を思いながら、俺は手早く茉莉の服をはぎ取っていった。
「やあーっ!! やめてぇっ!! や、やっ!!」
茉莉は当然抵抗したが、それはほとんど効を奏さなかった。
茉莉には、どちらが上でどちらが下かも分からなかったに違いない。
「止めとけ。じたばたしたって無駄だよ」
俺は、茉莉の服を、脱がせられる物は脱がし、脱がせられない物は無理矢理引きちぎっていった。
どうせ、二度と着る機会がない物だ。
空中には、茉莉の服の端切れが漂っていった。
茉莉が素裸になるのも、時間の問題だった。
「やあ!! そこ、やっ!!」
俺は、最後の砦の、茉莉のパンティに手を掛けた。
ニタリ、と笑った。
思いきり引きちぎった。
「やぁんっ!!」
茉莉は、そうすれば現実が変わるかのように、両手で眼を覆った。
もちろん、現実は俺にとって好ましいままだった。
茉莉の裸体は、外見通り幼い身体付きをしていた。
胸は、僅かに膨らみかけているだけというものだったし、あそこにも、柔らかい下草が薄く生えているだけだった。
恐らく、一度も使った事の無い代物だろう。
俺は、茉莉を後ろから抱きかかえるような格好で、優しい声で、言った。
「死ぬ前に、人生で一番の楽しみを教えてやるよ」
「いやあああっ!!」
茉莉は無論、聞いちゃいなかった。
俺は、茉莉を空中に浮かせると、固定用のストラップで、茉莉の身体を手際よく縛っていった。
いつ無重量になるか分からない船内には、その手の物はたくさん常備されていた。
茉莉は、瞬く間に、暴れる事すら許されない身体になった。
茉莉の少ない皮下脂肪が、強引にストラップで絞り上げられていた。
その姿は、痛々しさと同時に、一種の神々しさすら兼ね備えていた。
もちろん茉莉には、そんな事は知った事ではなかった。
茉莉は、ストラップが締め付けてくる痛みに、空中で身体をよじっていた。
「やっ、痛いっ!! 何で? あたし、こんな事されなきゃならない事した?」
茉莉は、泣き顔でそう訴えていた。
その顔は、一瞬、俺を怯ませる凄みを持っていたが、下半身は、まったく別の反応を催していた。
俺は、反射的にこう言い放っていた。
「ここにいる事自体が、お前の罪だ」
その一言で、茉莉は打ちひしがれたように、顔を背けた。
俺は、声のトーンを落として言った。
「だから、その時まで、いい事を教えてやろうって言ってんじゃないか」
空中に浮かせたままで、茉莉の胸をいじり始めた。
「何も知らないで、死ぬのはやだろぅ?」
「やあぁ……」
もはや、茉莉の声からは、力強さは失われていた。
その声には、もはやどうにもならないという事と、すべて自分が悪いのだという事を再確認する、諦めの響きが混じっていたようにも聞こえた。
俺は、良心と欲望とを同時に背徳感に突つかれながら、力の抜けた茉莉の身体を、しっかりといじりまくっていた。
茉莉の身体は、予想外に反応が良かった。
小指の先くらいの茉莉の乳首も、みるみる内に固くなった。
耳たぶに口を付けると、そこをパッと赤く染める。
半ば強姦されているような物だから、喘ぎ声こそたてていないが、意に反して身体が感じているのは、見ただけで分かった。
その感じ方は、まるで、誰かにそうされる事を望んでいたかのようだった。
俺は、盛り上げられた茉莉の乳房をこね回しながら、言った。
「どうした。声出せよ。気持ちいいんだろ?」
「……」
それでも茉莉は口を結んで、頑なに声を上げる事を拒否していた。
感じていないはずはなかった。
絞り上げられた乳房は、すでに、ピンク色に色づいていた。
乳房を揉むたびに、身体の方は、時折ぴくっ、ぴくっと引きつっていた。
茉莉は、きつく眼を閉じて、それを表情に出さないようにと頑張っていた。
俺は、フフンと鼻で笑った。
どうしても、声を上げさせてやりたくなった。
「……強情っ張りめ。これでもそんな顔してられるか?」
そう言って、俺はいきなり茉莉の乳首をつねり上げた。
「……いやっ!!」
茉莉が悲鳴を上げた。
思った通り、それが引き金になった。
俺は、すかさず胸を揉みしだいた。
茉莉には、一度口から飛び出した言葉の流れを止める事は出来なかった。
「やっ、あっ……やん……やっ……」
口を塞ぎたくても、それが出来るはずの両手は、背中で固く縛り上げられていた。
茉莉に出来るのは、これはあたしの意思じゃない、という風に、首を激しく左右に振る事だけだった。
俺は、それを一種の狂的な笑いで見ながら、言った。
「なんだ、やっぱり感じてるんじゃないか。スケベだな」
「いやあぁ……」
茉莉の両目から、涙の飛沫がふうわりと空中に漂っていった。
征服者の感慨ここにあり、という感じだった。
次に俺は、茉莉の身体を軽く回して、茉莉のいちばん恥ずかしい部分を目の前にやった。
茉莉は、そこを隠す事もできずに、俺の眼に犯されていた。
茉莉の顔こそ見えなかったが、まともな表情をしていようはずがなかった。
茉莉のそこは、外から見た限りは、そう変わりあるようにも見えなかった。
俺は、膨らみかけた真珠にそっと中指を置いて、茉莉に言った。
「どれどれ、そろそろこっちの方もいじって欲しくなったかな?」
指先で、茉莉の真珠をくりくりとこね回した。
「あっ、あん……あん……」
そこは、僅かの刺激で、まるで一粒の苺ジェリーのように固まっていった。
割れ目からも、じっとりと蜜が滲み出してきている。
俺は、舌先でそれをすくい取ると、茉莉の真珠を唇でついばんでみた。
思いきりそれを吸い上げてみる。
「いーっ!!」
ぬとっ、とした液体と共に、肥大したそれが口の中に吸い込まれてきた。
甘噛みしてやると、それは本当にジェリーのような感触がした。
「うあっ……あっ……うっ」
突っつき、転がし、なめる。
そうこうしている間にも茉莉の身体は、どうしようもなく俺の顎をびしょびしょに濡らしていった。
俺は顔を上げると、片腕で顎に付いた蜜を拭った。
そして、おもむろに、茉莉の花びらをめくり上げる。
「あふっ!!」
鮮やかなピンク色の洞穴が、俺の目に飛び込んできた。
中には、半透明の液体が、ぷるるっと溢れ溜まっていた。
俺は、それをずずずっと音をたてて啜り取った。
「ひいぃ……」
茉莉が、泣き出しそうな声を上げた。
そのくせ茉莉は、あそこの奥から絶える事なく蜜を湧き出させていた。
それどころか、動かせないはずの腰を突き出してくるそぶりさえ見せる。
これは……と、俺は思った。
試しに俺は、指を二本、洞穴の中に突っ込んでみた。
「いぃ、あ……ぁ……」
茉莉は呻きながらも、ほとんど抵抗なく、ぬぷぬぷと指を飲み込んでいった。
あそこの中が、挿入された指を、真綿のように締め付けてきた。
指を前後に動かすと、花弁がねちょねちょと絡み付いてくる。
そして茉莉は。
「……あふぅ……あっ……はぁん……」
明らかにそれを、痛がりもせずに感じていた。
間違いなかった。
俺は挿入した指だけを使い、空中の茉莉を動かして顔をこっちに向けさせた。
「あひいっ!!」
茉莉の質量が、俺の指を通じて茉莉の中を激しくこね回していった。
俺は、もはや焦点の定まっていない茉莉の目を見据えて、言った。
「お前……初めてじゃないな?」
一瞬だけ、茉莉の目が光を取り戻したかのようだった。
茉莉の顔が、瞬時に真っ赤に火照ったのも、恐らく羞恥心のせいだったろう。
しかしそれが、指の動きにつれて、次々と興奮の火照りに置換されていくようすは、ある種、無惨な物を感じさせた。
そしてこれこそが、さっきの問に対する茉莉の答えだった。
それを見て、俺の心の中に、だんだんと理不尽な感情が膨れ上がってきた。
処女だと思っていただけに、茉莉に裏切られたような気がしたのだ。
「ふん……、一度も男をくわえ込んだ事がないような顔をしやがって」
俺は怒り狂って、茉莉のあそこに乱暴に指を出し入れした。
茉莉のあそこが壊れるかと思うくらい、激しく突っ込んだ。
摩擦で、指が熱いほどに擦れた。
だが茉莉は。
「ぃぃ……ゃん……そ……もっ……」
悔しい事に、茉莉はそれすらもしっかり快感に転じていた。
すでに、完全に快感の海の中で溺れていた。
俺は、無性に腹が立ってきた。
だれだ? こいつをこんなにした野郎は? 畜生。
俺はもう、心身ともに我慢がならなくなっていた。
ズボンの中から、激情にたぎった俺のモノを取り出す。
空中で浮いている、茉莉の腰をつかむ。
そして俺は、昂ぶっているモノを濡らしもせずに、茉莉のあそこにぶち込んでいったのだった。
「くああぁぁっ!!」
茉莉のあそこは、呆れるほどあっさりと俺のモノを飲み込んでいった。
狭い洞穴が、ぎゅっぎゅっと俺を締め付けてくる。
しかし幼いはずのそこは、充分にほぐれていて、熱い俺自身を温かく包んでくるのだった。
実際、茉莉の顔に苦痛の色は見えなかった。
むしろ、喜悦の表情すら浮かべていた。
たまらなくなって、俺はすぐさま茉莉の身体を俺自身に打ちつけていた。
「あうっ……ぐぷぅ……あぁ……」
重量のない茉莉の身体が、慣性を持って俺自身にぶつかってくる。
にちゃにちゃと、粘液の擦れる音が、密閉された船内に響く。
それと共に、突かれるたびに、茉莉はあられもない声を上げていた。
その姿は、まるで、貪欲な熟女とさえ思わせるほどの物だった。
実際、茉莉のその感じ方からすると、茉莉の経験が一、二回だとは、俺にはとうてい思う事ができなかった。
誰か、とまでは分からなかったが、幼い時からだいぶ経験を交わしてきたのだろう。
天性の素質もあったろう。
今では、茉莉の身体は実に『おいしい』身体と化していた。
俺とて、女性歴がそんなにある訳ではなかったが、茉莉のあそこはダントツの名器に間違いなかった。
締まりがきついだけではない。
あそこの肉襞が、それこそ食虫植物の触手のように、すべての精を吸い尽くそうと俺自身に絡み付いてくるのだ。
プラス、信じられないほどの可愛い顔であえいでいる。
これで感じない奴は男じゃなかった。
ご他聞に漏れず、俺も、今にも漏らしそうになってきていた。
いかん、と俺は思った。
いくら何でも早すぎた。
痺れた頭の奥底で、こんなに早くいっちまうんじゃもったいない、という警告が発せられる。
まだ時間もあった。
あああ、でも、このままいっちまいたい……。
俺は、オナニーを覚えたてのガキの頃のように、持っている自制力をフル動員しなければ、その衝動を押さられそうになかった。
もったいない……。もったいない……。もったいないっ!!
……はあっ。
俺は、やっとの思いで、茉莉でピストンするのを止める事ができた。
しかし。
なぜか、まだ快楽は途切れる事なく続いていた。
茉莉のあそこから俺自身に、快感が絶え間無く送り込まれていた。
動きを止めても、茉莉の内壁が、勝手にうねうねと俺自身を揉みしだいてくるのだった。
うおおっ?
俺は驚いて茉莉の顔を見た。
茉莉は、放心状態の時のような遠い目で、俺を見つめていた。
半開きの茉莉の唇の端に、一筋の唾液が光って見えた。
そして、その茉莉の口から、半ば予想された言葉が、ついに飛び出してきた。
「……お兄……ちゃぅん……」
同時に、茉莉のあそこが、いきなりギュッと締まった。
うっ!!
一瞬の出来事だった。
たまらず、俺の野性の本能が、熱い鉄の塊となって、一直線に尿道を駆け上がっていった。
俺は、間髪を入れずに放出していた。
聞こえるはずの無い、ぶちゅちゅっ、という、俺の精虫が茉莉の体内に撒き散らされていく擬音さえ、聞こえたような気がした。
茉莉はそれを、聖母のような微笑みで受けとめていた。
俺のモノは、果てる事なくいつまでも蠕動し続けていた。
久しぶりの、女の中への射精は、最高に気持ちいい物だった。
じんわりと、俺のモノがあったかいお湯に包まれていくような感じだった。
すべての感覚が、腰の一点に集中していた。
それでも俺は、いつものような、出した後の微妙な倦怠感を、まったく感じ取る事ができなかった。
むしろ、まだまだ登りつめる途中だという感触さえした。
俺自身も、大量の放出にも関わらず、少しも萎える様子なく、茉莉の中で固く尖ったままでいた。
それこそ、抜かずに何発でもやれそうな気分だった。
実際、茉莉自身も、まだのようだ。
そう。
お楽しみはこれからなのだった。
俺は、とにかく一息吐いてから、自分のモノを差し込んだまま、茉莉の身体をぐるりと半回転させた。
「……はぁっ、んっ」
二人の体液でぐちょぐちょにぬめったあそこは、その多少無理な動きにも、ほとんど抵抗する事なく、俺自身を滑らかに擦っていった。
いわゆる、バックの格好だ。
背中では、後ろ手に廻された両腕が、固くストラップで縛められていた。
俺は、茉莉の身体を束縛していた、ストラップを外した。
もちろん縛めを解いたからといって、いまさら茉莉は抵抗などしなかった。
それどころか、身体を支える必要がないのをいい事に、自分から胸と股間のさくらんぼをいじり始めていた。
「……あぅん……もっとぉ……」
茉莉は、自分から、幼い喘ぎ声を漏らしだしていた。
すでに茉莉は、完全に快楽に身を委ねてしまっているかのようだった。
自分の運命を、もうどうにもならないと、諦めているのかもしれなかった。
それならそうで、こっちとしても気が楽だった。
絶対に後腐れのあるはずのないセックスを、時間が許す限り、楽しめばいいだけの事だった。
後は、コンドームみたいに、宇宙空間へ、ポイ。{使い捨て}{ディスポーザル}だ。
ちょっともったいない気はするが、それはそれで仕方がない。
ただ、それこそ時間だけは、もう一発やりたいと思っても、延長するのは、物理的観念から不可能だった。
俺は、とりあえずの確認のため、左手首に巻いてある、ブラボーのコンパクトウォッチに目をやった。
現在のエークホルムとの相対速度ベクトルと相対位置と双方の質量と残燃料とを頭に入れて、ざっと残り時間を暗算してみる。
細かい桁数はともかくとして、あと三十分ほどは余裕があった。
充分、一発できる。
俺は、安心してピストン運動を再開し始めた。
一度放った俺のモノは、最初こそ麻痺したように感覚が鈍かったが、すぐに前以上の快感の渦に絡め取られていった。
それでもなぜか、まだまだ持ちそうな心持ちだった。
放出された毒液が、結合部でぐちゅぐちゅと白い泡をたてていた。
「ああぁ……いぃ、そこ……まり、いいよぉ……」
次いで、茉莉の声のデシベルも、冪関数的に大きくなっていった。
俺は、発情期の猫みたいに腰を振りながら、茉莉の腋から手を廻して、茉莉の身体をかかえ起こした。
茉莉の中で、俺のモノの角度が変わった。
「あうぅ……」
当たり所が変わったか、茉莉が呻いた。
俺は、茉莉を後ろから抱き上げる格好で突き上げながら、茉莉の耳元に口を寄せて、そっと囁いた。
「どうだ……お前のお兄ちゃんのと、どっちがいい?」
茉莉は、お兄ちゃんと聞くと、急にあそこをびくっと締め付けてきた。
拗ねるような、恥じらうような声で、茉莉が呟く。
「……いやぁ……お兄ちゃん、いじわるしないでぇ……」
その声からは、まだ茉莉が、自分の兄と俺とを混同しているのかどうかは分からなかったが、茉莉の動きは、前以上に大胆になっているようだった。
自分の敏感な芽を、指先できつくつねる。
首を回して、自分からキスを求めてくる。
あそこを擦り付けるように、腰をくりんくりん回してくる。
その動きは、それこそ信じられないほど気持ち良かったが、俺自身も、いつもからは信じられないほどの持久力を発揮していた。
俺は、その快感に酔いしれながら、ほとんど何も考えずに、マジックブーツを脱いでいった。
茉莉と足と足とを絡め、指先だけで、ぽん、と床を蹴る。
反動で、二人の身体が宙に浮いていった。
俺達は、繋がったままで、ふわふわっと空中を漂っていた。
「やぁ……変ぅん……」
茉莉の視覚が、またもや平衡感覚を裏切り始めたようだった。
もちろん俺は、こんな状態であっても、パイロットの常として、無重量の特性を、忘れないでいた。
大体は水中と同じような物だが、水と違って抵抗が段違いに少ない。
おかげで腰を動かしても、あそこが擦れて痛くなったりはしないが、代わりに下手に動くと、この狭い船内、どこにぶつかるか分からなくは、あった。
だが、俺はパイロットだ。平衡感覚には自信がある。
俺はむしろ、逆にその自由にならない動きを楽しむくらいの気持ちで、茉莉のあそこに腰を打ち付けていった。
実際、噂には聞いた事はあったが、俺もやったのはこれが初めてだった。
二人が身体を動かすたびに、微妙に進行速度ベクトルや回転モーメントが変化していった。
体液が、霧のように辺りに飛び散っていった。
俺達は、ぐるぐると捩れ捻れながら、お互いに腰を振り続けていた。
さすがにこれは、パイロットと言えども、頭に血が昇った。
「……やん、気持ちわ……いぁ……ああっ……」
訓練していない茉莉は、よけいそうに違いなかった。
無重量による血流の停滞と、快感による激しい興奮とで、頭の中が真っ白になってきているのだろう。
かく言う俺も、もう目の前に星が散り始めてきた。
そろそろ、無重量状態も限界だった。
俺は、最後の平衡感覚を総動員して、二人の身体を、コンソールの方へと誘導していったのだった。
久しぶりの 1G は、身体にひどく重く感じられた。
俺と茉莉は、繋がったまま、しばらく床の上で喘いでいた。
だが、俺にとっては、そうそうゆっくり休んでいる訳にもいかなかった。
貴重な残り時間を、無駄に過ごすなんて、余りにももったいなかったのだ。
俺は、腰に重くのしかかってくる疑似重力に逆らいながら、無理矢理茉莉をコンソールにもたれ掛からせると、半ば意地で、後ろから、三たび腰を抽挿し始めた。
茉莉は、足に力が入らないのか、すぐに腰を落としそうになっていたが、そのたびに俺は抱え直して、また俺自身をぶち込んでいった。
「……いやあぁ……もう……許してぇ……」
もはや茉莉は、息も絶え絶えになりながら、喘いでいた。
それでも腰を突き出してくるのは、開発されたが故か、それとも天性の悲しい性なのだろうか?
その姿は、いっそ、哀れですらあった。
しかしもちろん、苛んでいる当の本人の俺が、その時、そう思っていた訳ではなかった。
その時の俺の頭の中は、絶え間なく飛び込んでくる快感と、どうすればもっと強い快感が得られるかの、二つの考えしか存在していなかったのだ。
俺は、茉莉の腰を掴んでグラインドさせながら、メインスクリーンに大きく映る、エークホルムの姿を霞んだ眼で見つめていた。
そこには、表面の大半を森林で囲まれた、緑の半円が映っていた。
俺は、ぼんやりと、もう近距離通信の使えるレンジだな、と考えた。
その時、俺の滲んだ頭の中に、ある名案が一つ浮かび上がってきた。
そうだ、茉莉のお兄ちゃんに、茉莉の最後の声を聞かせてやるのもいいかも知れない……。
恐らく、茉莉のこんな声も久しぶりだろうしな。
俺は、半ば理不尽な復讐心を胸に、近距離通信、ナンバー 3 をコールし始めた。
まさか船内を見せる訳にも行かないので、ディスプレイはオフにしておく。
ついでに、まだ茉莉の声が聞こえないように、マイクに極度の指向性を掛けておいた。
ほとんど間を置かず、回線がコネクトした。
ナンバー 3 は、ナンバー 8 と違って、ツーウェイトークだった。
「ヘイ、こちら第二班。EDS か? どーもベリベリサンクスだぜぃ」
俺は、荒い息をなるべく目立たせないようにして答えた。
「あぁ……こちら EDS38HT03 だ。……そこに杉谷はいるか? 緊急事だ」
「いやあああっ!!」
杉谷と聞こえたとたん、茉莉が大きな悲鳴をあげた。
もちろん向こうには聞こえない。
「正哉か? ちょっと待ってくれ。今呼んでくる。」
向こうの男が、席を外したようすが感じとられた。
俺は、その間に、茉莉のボルテージをどうしようもなく高めてやろうとした。
どうせなら、『いい声』を聞かせてやった方が喜ぶに違いない。
だが茉莉は、さっきから、選択権もないのに、いやいやと激しく左右に首を振ってばかりいた。
「やっ……お願い……それだけ……許し……ああっ……」
俺は、せせら笑いながら、茉莉に言った。
「ふん……何をいまさら。さっきまで自分から喜んでたくせに。……それに」
茉莉の真珠を擦り上げる。
「ああんっ」
「ここは嫌だって言ってないぜ」
「……いやあぁ……」
茉莉は、がっくりと肩を落として、顔をコンソールに俯かせていた。
俺は、暴れるのを止めた茉莉の身体を、安心して突きまくった。
茉莉はもう、半ば諦めたかのように、それを何一つ抵抗もせず受け入れていった。
「……あっ……はぁん。やはっ……あぅん……」
茉莉の声が、だんだん限界へ向かって高くなっていく。
俺は、自分のモノも苦しくなってきたのを感じながら、茉莉に言った。
「それに……お兄ちゃんと最後の別れをしなくっちゃな……」
「やああっ!!」
茉莉の声が、まるで現実を忘れたいかのように、狭い船内に響きわたっていった。
その時だった。
コンソールのスピーカーから、さっきとは違う男の声が聞こえてきた。
恐らく、茉莉には最初の一語で分かったはずだった。
「こちら杉谷だ。どうした EDS? 何のニュースだ?」
その声には、幾分緊張した様子がうかがわれた。
俺は、すかさずマイクの指向性を切ると、より激しく茉莉を犯し始めた。
茉莉は、しばらくの間、声を立てまいと歯を食いしばっていたが、激しい突き上げについに耐えきれなくなって、大声で喘いでしまった。
「……あうっ……あん……おっ……お兄ちゃんんっ!!」
切ない声が、マイクを通じて、遥か彼方のエークホルムまで伝わっていった。
「茉莉? まりいっ!? どうしてそこにっ!?」
その声は、事情を把握しきれない、半狂乱の叫びと言ってもよかった。
「あっ……逢いたかったの……逢いたかったのおっ!!」
俺は、舌っ足らずな茉莉の台詞に、冷徹な解説を付け加えた。
「……妹さんは……ぅ…… EDS に……密航したんです……」
「まりいっっ!!」
それは、すでに彼の手から永遠に去ってしまった人を求める、男の悲痛と絶望の叫びだった。
その声が、俺の情欲をさらに掻き立てていった。
もう俺は、性欲に取り憑かれた単振動マシーンに過ぎなかった。
「あああっ!!」
欲棒で、茉莉のあそこを抉って抉って抉りまくった。
「……やあっ……茉莉、だめ……もう……だめえっ……!!」
茉莉は、急カーブで天国への階段を駆け昇ろうとしていた。
それに比例するかのように、ナンバー 3 コールの感度が悪くなっていった。
通信域から出かかっている。
「茉いっ!! どう……た? za……いっ!!」
正哉の声は、もはや茉莉の耳には届いていなかった。
「くああっ……いく、いく……まり……死んじゃううんっ!!」
「……ま……ri慰ッ……!!」
「ひいいっ!!」
茉莉と通信が、同時にブラックアウトした。
「うっ!!」
一瞬遅れて、俺も茉莉の痛いほどの締め付けに耐えかねて、たまらず放出してしまった。
今までの人生で、一番気持ちのいい射精だった。
どこに溜まっていたのかと思うほど大量の精液が、どくどくと茉莉の子宮にぶちまけられていった。
永遠に続くかと思われる快楽だった。
が。
茉莉の締め付けが並みじゃなかった。
痛いほど、なんてもんじゃなく、はっきりとギリギリと締め付けてくる痛みだった。
茉莉は、絶頂のショックで痙攣していた。
膣痙攣、だった。
早く抜いて、茉莉を処理しなければならないのに、焦れば焦るほど、俺のモノは抜けようとしなかった。
下手に抜こうとすると、それこそちぎれそうだった。
実際問題、こんな事悠長に言ってられないほど、とにかく痛い!!
痛くて何もできなかった。
その時、激しい痛みに、脂汗をべっとり額に張り付かせながら耐えている俺の脳裏に、ある一連の言葉がよぎっていった。
「……パイロットは無事には済まない……」
おしまい