わがままな僕の仔猫
「ひいぃ、疲れたぁ……」
メイちゃんの部屋に戻ってきてすぐに僕は、そんな情けない声を上げて、メイちゃんのベッドの端に腰を下ろしていった。
もっともこの部屋の場合、『すぐに』っても、部屋の入り口からベッドの端まで、たっぷり十メートル近くは歩かなきゃならないんだけど。さすがメイちゃんの部屋、六畳一間キッチン半畳風呂なし玄関トイレ共同の僕のアパートとは訳が違……とっとと。
ずむ。
腰を下ろしたベッドの、ふかふかすぎるくらいのマットレスに腰を取られて、思わずバランスを失いかけてしまう。慌てて手足をばたばたさせて、みっともなくひっくり返る事だけはどーにか避けられたけど――ええぃ、格好悪い事、この上ない。
まったく、高級品すぎるってのも考え物だよなー。特に、僕みたいな庶民にとっては。
なんて。
そんな埒もない事を考えながら僕は、ベッドに座るなり、咽喉元に指を突っ込んで、さっきから首を締め付けてるネクタイ、こいつを、一気にぐいっと緩めていった。着慣れないワイシャツ。一番上のボタンを外す。とにかく気道を確保する。
ふぅ。
やっとどうにか一息、吐いた。回りを見回す余裕ができる。
見渡せば、時刻はとっくに夕刻になってしまっていた。テラスからは薄く西日が射して、部屋が茜色に染め上げられている。
その色合いのせいかどうかは分からないけれど、僕はなぜか、心の底からほっと落ち着いていた。妙に心地よい感じがする。この部屋はいつでも僕を暖かく包み込んでくれて、気の安らぐ穏やかな心持ちにさせてくれる。
そーゆーのって、この部屋の住人と、けっして無関係じゃないと思う。
……もっとも、メイちゃん自身が穏やかかって言うと、ちょっとばかり首を傾げてしまうところもあるけれど――っと、こんな事、本人には聞かせらんないや。オフレコ、オフレコ。
そんなメイちゃんの部屋は――その広さはともかく――全体的に落ち着いた調度品で占められていた。部屋の中には、ごく静かな音量で、柔らかいクラシックの音色が流れている。もちろんスピーカーは、部屋全体の雰囲気を壊さないよう、巧妙に部屋の各所に隠して設置されている。
一見、さほど豪勢にも見えないけれど、それでいて隅々まで気を配られた、最高級品だけが用いられているという、これが本当の贅沢って奴だ。僕の見るところ、伊集院家の中でメイちゃん一人だけが、この手のセンスに恵まれている。
これって、惚れた欲目でそう見えるって訳じゃないと思うんだけど。はは。
何せこの伊集院家の他のご家族、特にレイさんの派手好きとゆーか豪華絢爛金ぴか大好きぶりってったら、もう……。
って、くたびれた脳みそで、そんなの〜てんきな事を考えてたら。
「まったく、何を甘えた事を言っているのだ」
とと。
いきなり正面から、そんな呆れかえった声が降りかかってきた。
僕に顔を上げるヒマも与えず、その声は続けざまに、こんな事を言ったもんだ。
「たったこれしきの事で、だらしないのだ。これではメイの下僕など、とうてい務まりはしないのだ」
げっ、下僕っすかぁ!? ……まぁ、いいけど(いいのか?)。
もちろん僕にこんな事を言うのは、電脳わがまま娘こと伊集院メイちゃん、その人だった。もっとも僕も、メイちゃんに言われる分には、ただ苦笑いを返すしかない。メイちゃんだって半分は、本気でそう思ってるんだろうし(おい)。
あの日だってメイちゃんは、泣き笑いの顔でそう言ってたしね。
今日のメイちゃんは、フリルの付いた白いブラウスに、ちょっとだぶだぶ目の白衣をその上に羽織っていた。襟元の赤いネッカチーフが可愛らしくって、それがとってもよく似合っている。
そして、屋敷の中だけでしか着けてない丸っこいめがねを引っ掛けて。思いっきりバカにしたよーな感じで腰に手を当てて、ベッドの上の僕を見下ろしている。ジト目が僕を睨みつけている。
ぷうとほっぺを膨らませた膨れっ面が、凶悪的なまでに可愛い。
その可愛さに、思わず誤魔化されそうになるのを感じながらも、僕は。
「んな事言ったってなぁ……」
ついつい、そんな愚痴をこぼしてしまっていた。
何せ今日も、朝っぱらから執事の三原さんに、大学近くに借りているアパートから、半ば拉致に近い状態で強引に連れ出され、伊集院家のあるひびきの市までヘリで二時間揺られてきて、それから延々八時間、ぶっ通しでメイちゃんの旦那さまになるための教育を受けさせられているのだから。
しかもこれから、メイちゃんのご家族と夕食をご一緒するという――これが、ひびきの高校を卒業してからの、僕の土日の強制イベントになっているのだ。
もともと僕は理系の大学に進んだんで、そっち方面についてはまぁそれなりに、自信がない訳でもないのだけれど、むろん伊集院家の一員となるためにはそれだけで事足りるはずもなく、政治学、経済学、国際情勢から、芸術鑑賞、格闘術、人身掌握術に至るまで、ありとあらゆる帝王学を、この際、一気に叩き込まれているのだった。
いちおうメイちゃんには、お兄さまとゆーか――えっとその――レイさんっていう年上の『きょうだい』がいて、伊集院家の家督は彼(……)が継ぐ事になっているので、そんなにも僕の果たすべき責任は重くはないのだけれど、それでもメイちゃんと付き合っていく上で、伊集院家の一員として恥ずかしくない程度の知識と教養は必要という事らしい。
ま、これもメイちゃんのためだと思って頑張ってんだけど。
ところが、そのメイちゃんは。
「メイは、言い訳は嫌いなのだ」
そんな僕の必死の努力を、問答無用一刀両断!! ってな感じで、見事にぶった切ってくれるのだった。
「……」
思わず僕は、二の句が告げないまま、あんぐりと口を開けた。あ、いや、その、もちろんメイちゃんの今のセリフに、悪気がないって事は分かってるんだけど。つい、ね。
ほら、メイちゃんてばすごい素直な娘なもんだから、思った事をつい口に出さずにはいられないんだよ――多分。
そんな事は、重々承知していたはずなのだけれど。
けど。
つい、やってしまった今の僕のコーチョクが、メイちゃんにはどうも過敏に映ってしまったようだった。
「あ……」
僕の表情の変化を感じ取って、強気一辺倒だったメイちゃんの態度が、みるみる内にしゅんと萎れていった。叱られた仔猫のように、切なげで悲しそうな表情になってしまう。
顔も、俯き加減になる。
それを見て、いけねヤバぃと思った、その瞬間。
「――頑張って、欲しいのだ」
ぽつり。
メイちゃんが、そう、呟いていた。
いつもの闊達とした雰囲気とは程遠い、聞こえるかどうかギリギリの声。まるで僕にすがりつくかのような、ごく小さな呟き声。
普段がテンション高いだけに、妙に心に浸み入ってしまう。
そんな、メイちゃんの声を聞き逃さないよう、僕がじっと黙ったままでいると、メイちゃんはその心の内に秘めた思いを、一つ一つ紡いでいくように、ぽつり、ぽつりと言葉を続けていった。
「メイは――メイは、今のままの先輩で――今のままの先輩が、いいのだけれど――伊集院家の回りの連中には、それじゃダメだって言う人も、いるのだ。あんな庶民が、伊集院家の一員に連なるなど、もってのほかだ――などと。まったくあ奴ら、何も先輩の事、分かってないくせに……」
メイちゃんはそう言って、本当に悔しそうに顔を歪めた。
唇の端を強く噛んで、ぎりぎり歯を軋らせている。口を真一文字に結んでいる。その目が怒りと悔しさで打ち震えていて、それでも爆発させる事のできない憤りを、必死に押さえ込んでいる。
メイちゃん……悪く言われてるのは、メイちゃんじゃなくて、この僕なのに。
そしてメイちゃんは、胸の前でぎゅっと握りこぶしを握り締めると、必死に訴えかけるような表情をして、僕に言うのだった。
「それでもメイはっ!! 先輩が、悪く言われるのは、嫌なのだ。本当の先輩を、分かってない奴らを、見返してやりたいのだ。だから、だから……」
後はもう、言葉にならなかった。
メイちゃんは、普段は絶対に見せないような、今にも泣き出しそうな表情で、僕の目をじっと見つめていた。まるで、飼い主に見捨てられるのを恐れている仔猫のように。
その瞳がうるうると潤んでいた。
だから僕は。
「分かってるよ」
とびっきりの笑顔でもって、メイちゃんのその気持ちに応えてやった。
今にもぐずりそうなメイちゃんを、そっと膝の上に抱きかかえてやり、ぽんぽんと二、三度、頭を撫でてやる。抱えた胸に、メイちゃんの体温を感じる。
髪の毛に軽くキスをしながら、メイちゃんの耳元に囁いてやる。
「メイちゃんの気持ち、すっごく嬉しいよ。愚痴ったりして、ごめんな」
僕の腕の中で細かく震えるメイちゃんの髪から、ほのかなシャンプーの香りが漂ってくる。僕の鼻腔をくすぐる、天然の干草のようなメイちゃんの髪の匂い。
その金色の癖っ毛を、くしゃくしゃって感じでかき回してやるだけで、メイちゃんが顔を僕の胸に埋めて、駄々をこねるようにいやいやをする。
たったそれだけの事なのに、メイちゃんがすごく愛おしい。
僕は言葉を続けた。
「それに、メイちゃんだって、俺がいなくたって、一人でひびきの高校で頑張ってるんだもんな。俺がこれくらいで弱音を吐いちゃいけないよな」
「ばっ、ばかぁ……」
そんな不用意な僕のセリフに、メイちゃんがぴくんと身体を震わせていた。
顔をぐじゅぐじゅに歪めながら、僕の顔を見上げて、言った。
「その、メイを一人にしたのは、いったい誰なのだ……」
そう言ってまた、メイちゃんは僕の胸に頬をすり寄せてくる。ぎゅっぎゅっと、顔を押し付けてくる。背中に腕を回して抱きついてくる。
そうだよね。先に卒業しちゃって、メイちゃんに寂しい思いさせてるのは、僕なんだものね。それを思うと、毎週こうやって――ムリヤリにでも――会えるって事、それだけですごい幸せな事なんだよね……。
僕はそんな事を頭に思い浮かべながら、メイちゃんの頭を抱え込んで、いつまでもいつまでも、そっと髪の毛を撫で続けていったのだった。
しばらくの間、メイちゃんはそのまま、僕の胸に身体を預けていた。
にゅるっ。
え……と?
そんなこんなで、僕は密かに身悶えしながら、まずはそっと、メイちゃんの眼鏡を外していった。ちょっと粘液がこびりついてるそれを、ベッド脇のサイドテーブルに置く。
「あ……」
僕は、息を荒げて喘いでいるメイちゃんに、そっと一つキスをしてから、メイちゃんの両脚を割って、身体をそこに入れていった。太ももをちょっと抱えるようにして、メイちゃんの腰を僕の方に引き寄せてくる。
永劫とも思える時間が過ぎて、ようやく勢いを失った僕は、糸の切れた操り人形みたいに、ばたんとメイちゃんの横に倒れ込んでいった。ぜぃぜぃと荒い息を吐きながら、そっとメイちゃんに寄り添っていく。
――結局、それから僕とメイちゃんは、全部で合わせて三回した。
もちろん、二人揃って夕食会をすっぽかしてしまったとゆーのは、改めてゆーまでもない事なのであった。 おしまい
だけどメイちゃんは、そんな風にぴとっと身体を寄せ付けてきてるくせに、なぜだかさっきから僕と、目を合わせないようにしてるみたいだった。横を向いて、所在なげに視線をそこらに彷徨わせてたりしている。
泣いている――? 訳ではなさそうなんだけど、それでも何か、瞳が艶っぽく濡れているような気がする。唇も、さっきから何か言いたそげに、ひくひくと開いたり閉じたりしている。その色ってば、きらきらと薄く光るパールピンク。
あ、リップ塗ってるんだ。
遅まきながらその事に気が付いて、この鈍感な僕にも、ようやくメイちゃんが何を望んでるかが、ぴんときた。ちらっと顔を覗き込む。
それでもメイちゃんは何も言わず、ついと視線をそらし、拗ねたようにじっと口をつぐんだままでいる。
そんな頑ななメイちゃんの態度に、僕はくすっと、心の中だけで笑った。心の中だけで、だよ。どうせ、声に出して笑ったりしたら、また怒り出すに決まってるし。
それにしてもまったく、甘えん坊のくせして、相変わらず素直じゃないんだから――もっともメイちゃんのこんな姿を知っているのは、僕一人なんだけどね。
メイちゃんは、人前じゃいつも高慢ちきで高飛車で高圧的で、僕を年上とも思わないような態度で接してくるんだけど、あの伝説の鐘が鳴った日以来、二人っきりだと時折、こんな風に僕に甘えてくるのだった。その甘えっぷりが微妙に屈折していて、そこがまたメイちゃんっぽくて可愛らしい。
だから僕は。
そんなメイちゃんの望みを叶えるために、そっぽを向いてしまっているメイちゃんの頭を、優しく左腕で抱え込んであげるのだった。
おとがいに手を当てる。そっと上の方を向かせる。めがねを軽く持ち上げてやる。
「あっ……」
メイちゃんが目を眇めて、何か言おうとしたのを塞ぐように、僕はそのまま、ゆっくりと唇を重ねていった。
ぷりっとした柔らかい感触が、僕に触れる。メイちゃんの熱い吐息が、僕の唇を割って入ってくる。背中に回された両腕に、ぎゅっと力が込められてくる。
メイちゃんとのキス。何度しても、背中にぞくぞくっと感動が走っていく。
舌先でちろちろと唇をくすぐってやると、メイちゃんはおずおずと舌を伸ばしてきて、僕のそれに絡めてくる。ちゅっちゅっと、まるであどけない赤ん坊が乳を吸うように、僕の舌を求めてくる。
恐る恐る、僕の愛情を確かめているような、すごくいじらしくて可愛らしい、メイちゃんのキス。僕だけの仔猫。このままの勢いで、濃密でディープなキスってのもいってみたいんだけど、驚かせるといけないから、今はじっと我慢。
それでもたっぷり、三十秒ほども互いの舌先を味わってから、僕らはゆっくりと唇を外していった。
「んっ……ふぅ」
メイちゃんの口から、すごく色っぽい吐息が漏れた。二人の唇の間に、透明な銀の糸がつぅっと引いて――切れる。
それをメイちゃんが、とろんと蕩けた目付きでぺろりと舐めとる。美味しそうな、それでいてまだ物足りなさそうな顔で、メイちゃんが僕を至近距離から見つめる。
そんな暴力的なまでの可愛さに、僕の心臓と別のところが不意に、どくんと一つ、鼓動を打った。
まずい。メイちゃんは今、僕の膝の上に乗ってるんだっけ。
そーゆー事実から類推される、当然のヤバい事態を想像して、僕の顔からさっと血の気が引いていった。
だがそれは、結果からゆーと完全にヤブヘビだったよーだ。
顔から引いていった血がその分、確実に別のところへと溜まっていく。膝の上のメイちゃんの重みも、僕に圧力を掛けてくる。溜まっちゃいけないと思えば思うほど、溜まっちゃいけない所に、どんどん血が溜まっていく。
あああだから、そんな事を考えてると余計にヤバいって……。
「!!」
あっちゃ〜。
僕の必死の努力(?)もむなしく、メイちゃんは『それ』に気付いてしまったようであった。その事を多分、太ももで感じ取ったメイちゃん、気恥ずかしさに顔を真っ赤に染めている。
「ごっごめん」
とりあえず、謝っとく。
「なっ!! 何が、なのだ!?」
僕の声に、メイちゃんは弾かれたように答えを返した――って、おいおい。気付いてない振りをしてても、声が裏返ってるからバレバレだって。
でも、メイちゃんの方からすっとぼけてくれるんだったら、僕もあえて、その話題に触れようとは思わなかった。僕も欲望がない訳じゃないけど、こーゆー事は、お互いの気持ちが大切だと思ってるし。
何よりも僕は、メイちゃんの気持ちを一番大切にしたいし。
てな訳で僕は。
「あ、いやその……分かんないなら、別にいいんだ。あはははは」
明後日の方向を向いて、この場を、笑って誤魔化そうとしたのだった。冷や汗たらりとたらしながら、乾いた、ざーとらしい笑い声を上げる。
だが。
僕のそんなあいまいな態度が、逆にメイちゃんの燗に触ったようだ。
「ななな何を言うのだ。メ、メイだって分かってるのだ。こっこっ子ども扱いするんじゃ、ないのだ」
いきなりメイちゃんが僕の腕の中で、顔を真っ赤にして怒り出した。
いかん、逆ギレモード発動か!? 声が見事に裏返って、トーンも急に上がって、呂律もちゃんと回ってないぞっ!?
「そ、そういう訳じゃあ……」
しどろもどろに言い訳をする僕に、メイちゃんは暴走したそのままの勢いで叫んだ。
「それに大体――」
えと?
「メイを大人にしたのは、せっ先輩なのだっ!!」
ちゅっど〜ん!!
メイちゃんの、そんな大胆すぎる爆弾発言で、僕の身体が一気に辺りに爆裂四散していった。木っ端微塵、だ。
うがが、いやその、それはその、一片の申し開きもできないほどに、おっしゃる通りなんですけど。あひゃあ。
ううう健全な男子としては、あまりにもメイちゃんが可愛らしすぎるんで、我慢できなかったんだよおぉ。つい出来心で――ってゆーか、したかったのは事実だし、その事を後悔なんか絶対してないんだけど。ぐわわ。
だが、今のセリフはどっちかとゆーと、思いっきり自爆でもあったよーだ。言ったメイちゃんその人が、ぷしゅ〜って感じで頬を染めて、ぽっぽって頭から湯気を上げて俯いている。
照れまくっているその様子が――ああもうっ――これがまた、爆裂的に可愛いっ!! ったく、こんな姿を見せられて、我慢しろって方が無理ってもんだ。
何て、心の中で言い訳をしながら僕は。
「メイちゃん……」
次の瞬間、メイちゃんをぎゅっと胸に抱き寄せていた。
頬をすりすり、髪の毛なでなで。メイちゃんの頭をいーこいーこしてやる。メイちゃんも何も抵抗せずに、僕にされるがままになっている。
心臓がどきどき鳴っている。別のところもどくどく脈打ってる。気づかれてるんだろーなーとは思ってはいても、メイちゃんが嫌がんないんで、そのままにしとく。
抱きしめたその格好のまま、よけいにメイちゃんを抱く腕に力を込めていく。
そうしてしばらくの間、抱きしめて体温を感じていたら、メイちゃんが顔をそっぽに向けたまま、まるで一人言のように、ぼそっと一言、呟いていた。
「し、したいのか……?」
「えっ!?」
思わず耳を疑った僕に、メイちゃんが怒ったような早口で、返事を促した。
「え、じゃない。メイが聞いているのだ。答えるのだ」
「あー、いやー、何とゆーか、そのー……」
そ、そりゃー、したくないって言ったら嘘になるけど――。
いいの?
実は、しちゃったって言っても、僕とメイちゃんとは――えとその――まだ片手くらいしか、してないのだった。その何回かも、キスとかしてたら、僕がもうどーにも辛抱たまんなくなっちゃって、ついついその先まで進んじゃったって感じで、それもひのふの、数週間以上も前の話。
それ以来僕は、メイちゃんとはキスまではしても、それから先には進まないよう、枕を涙で濡らしつつも、必死に自制していたのだった。
理由は――その。
メイちゃんがまだまだ『する』のに慣れてないみたい、だから。
大騒ぎだった初めての時――ま、あれはあれで忘れられない思い出だけど――に比べれば、入れても痛がらなくなっただけ、マシなのかもしれないけど、ナニをしててもメイちゃんはまだ、快感を得ているにはほど遠いって感じだった。入れるまでは、そこそこ感じてるみたいなんだけど。
してる時の、何かに耐えてるようなメイちゃんの表情は、それはそれで嗜虐的にそそられるものがないでもないんだけど、それってやっぱり違うと思うし。それに、そーゆー顔を見ても萎える事のない自分の若さに、終わった後でちょっぴり落ち込んだりもする。
えっちの時はメイちゃんが健気なだけに、よけいに。
そんなこんなで、あまりがっつくのもなぁ、ってのが、ここんとこしばらくの、僕の気持ちだった。どうせするんだったら、メイちゃんにも気持ちよくなってほしいし、かといって、入れずにすますってのは、ホント蛇の生殺しみたいだし……。
何て、考えてもしょうがない事をぐじぐじ考えてると。
「ええぃ、じれったいのだ!!」
そんな僕の煮え切らない態度に業を煮やしたのか、メイちゃんが眉毛を逆立てて、するっと僕の腕から逃れていった。僕の前に軽やかに降り立ち、仁王立ちになって、ぴっと人差し指を僕の胸に突きつけてくる。
そして、有無を言わせぬ口調で言い放った。
「いいかっ!? せっ先輩は全部、メイのものなのだ。だからメイは、先輩を好き勝手にしていいのだ。文句は、言わせないのだ」
ちゅっ。
そう、メイちゃんは一気に言うと、鳩が豆デッポ状態の僕に一つキスをして、ベッドに腰掛けている僕の足元にひざまずいていった。
あっけに取られている僕を尻目に、メイちゃんはぎこちない手つきで僕のベルトを外していった。ちゃっと音を立ててチャックを下ろす。そして、とっくに硬くなってしまっている僕のそれを掴み出して、ぎゅっと握り締めて、高らかに僕に宣言した。
「だから、これも、メイのものなのだ。メイが、好きにするのだっ!!」
そ、それってどおいう……。
そして、僕がメイちゃんのセリフを理解するより早く、メイちゃんはそれを桜色の唇に、おもむろに含んでいったのだった。
そんなねとねととした触感が、いきなり僕を包み込んでいた。
生暖かくて柔らかい、メイちゃんの唇。もごもごと僕の先端を包んでいる。口の中では敏感な僕の部分が、くちゃくちゃと音を立てて舐られていく。
「うっ……はぅん」
いきなりの物理的な攻撃に、思わず僕は、そんな悩ましげな声を上げてしまった。
「きっ、気持ちいいのか?」
おしゃぶりしているメイちゃんが、僕のそんな声を聞いて、ちょっとだけ嬉しそうな声で僕に尋ねた。
「えっ!? う、うん……」
僕もまだ、あまりのこんな事態に混乱していたんだけれど――この際だ――メイちゃんに正直に答えてやった。だって、本当に気持ちいいんだもの。
だが、僕があんまり素直に答えたもんだから、今度はメイちゃんの方が逆に慌てちゃったみたいだった。
「あああ当たり前なのだ。このメイ様がしているのだ。気持ちよくないはずがないのだ」
自分で言ったセリフに、さらに自分で頬を染めて、それを誤魔化すかのように、また再びメイちゃんは、一心不乱に僕をしゃぶり続けていった。じゅぽじゅぽと音を立てて、僕のものを口に出したり入れたりしている。
僕の股間では、めがねを掛けたままのメイちゃんが、僕の棒に沿いながら、一定のストロークで顔を上下させていた。ほつれ毛が、汗でおでこに貼り付いちゃったりもしている。
めがねをしてると一見、まじめな優等生っぽくも見えるメイちゃんが、僕のを咥えてこんな事をしてるかと思うと、それだけで僕の興奮は、否が応にも高まっていった。
それに、こんな事をさせてるとこを、誰かに見られでもしたらと思うと気が気ではなくて――くっ――そんな一種の緊張感のようなものが、さらなる興奮を誘ったりも、していた。
もっともこの部屋は、メイちゃんお手製のセキュリティシステムでがっちり外部から遮断されていて、たとえ三原さんと言えども、メイちゃんの許可なしには侵入禁止なのだけれど。
じゃないと僕の首、いくつあっても足りないよな。多分。
メイちゃんは指で僕の竿を支えながら、ぴちゃぴちゃと仔猫がミルクを舐めるようにして、先端を執拗にしゃぶっていった。僕のこれの扱いにも、もう慣れたものだ。
そもそもメイちゃんは、最初の時から嫌な顔一つせずに、僕のものを咥えてくれたのだ。
特に最初の時、痛がってうまく入らなかっただけに、自分の口で僕が気持ちよさそうな顔をするのが、メイちゃんにはすごく嬉しいみたいだった。僕もメイちゃんにしてもらってるって考えるだけで、自分の手とは比べ物になんないほどに興奮してしまう。
それに実際、メイちゃんの口はとてもあったかくて、気持ちがよかった。
僕はもちろんメイちゃんしか知らないし、メイちゃんも僕のが初めてだから、多分テクニック的にはまだまだ稚拙な方なんだろうけど、それはそれで長持ちする分、僕にとっても都合がよかった。だって、それだけ長い間、メイちゃんの口を感じてる事ができるから。
とはいえ。
まっさらなメイちゃんに、少しずつ僕の気持ちいいところを教えていって、僕色に染めていくってのも、それはそれで征服欲をそそられるとゆーものがあった。
僕は、メイちゃんの動きを邪魔しないように注意しながら、耳の後ろをそっと指で撫でさすってやった。ごく低い声で囁いていく。
「メイちゃん、もっと先っぽのくびれた所、ぎゅっと唇で締め付けてみて……そうそう、んっく!!」
「ほふは? ほへへひひほは?」
メイちゃんが口をおちょぼにすぼめながら、上目づかいに僕の顔を見上げた。メイちゃんは僕の教える通り、その柔らかい唇で、僕の敏感な部分を遠慮なしにぎゅうぎゅう締め付けてくる。
どっちかというとメイちゃんは、今まで歯を立てないように、おっかなびっくり僕のを咥えていたもんだから、こーゆー強引な攻撃は、僕自身すごい刺激的であった。
「そうだよ、そのままくびれを弾くように唇でしごいて……ああぁ」
言われるがままに、メイちゃんが僕のものを出し入れしていった。
きゅぽきゅぽ音を立てながら、僕の肉の実がメイちゃんの唇に弾かれていく。濡れた先端が外気に触れて、ひんやりとする間もなく、再びメイちゃんの口の中に含まれていく。
それが、たまらなく気持ちよかった。
「いい、気持ちいいよ……メイちゃん上手だね……」
「ははひはへはほはっ!!」
僕のを口に咥えながら、誇らしげな顔でメイちゃんが言った。どうやら、当たり前なのだと言ってるらしい。
それにしてもメイちゃんは、覚えがよかった。
言った事はたいてい、一回で習得してしまうし、一度覚えたテクニックを、次に必ず応用してくる。実際今も、言われなくても舌先を僕のとば口に当てて、ちろちろとそこを押し広げるように、僕の割れ目をほじくっている。これも、前回教えた事だ。
まったく、ほんとに優秀すぎる生徒であった。
「うっ……ああぁ……」
思わず、喘ぎ声が出てしまうほどに。
メイちゃんは、僕が声を上げたのがよほど気に入ったのか、唇で僕の先端を挟みつけながら、ちゅうちゅうとそこを吸っていった。尿道口に押し当てられた舌が、とてもぬめらかで柔らかい。
真空で真っ赤に充血したそれが、内部から毛細血管ごとくすぐられるような感じで、背筋がぞくぞくするほど気持ちよかった。まるで袋がひっくり返って、中身が全部、吸い出されてしまいそうなほどに。
すごく、メイちゃんの口、気持ちいい。
あまりにもそれが気持ちよかったんで、僕は、もう――ごめん、メイちゃん――寸分たりとも我慢できなかった。
僕は、メイちゃんの頭をいささか乱暴に掴んで固定すると、矢も盾もたまらず、こう、宣言した。
「ごめん、メイちゃん。ちょっと動くよ? いいね?」
「へ!?」
メイちゃんの返事も待たずに、僕は半ば強引に、メイちゃんの口の奥深くまで、僕の強張りを突き入れていった。ぬるっとした舌を押しのけて、ぐいっと咽喉元近くまで、僕のものが呑み込まれていく。先端が咽喉の奥を突く。
「んぐっ!?」
メイちゃんのうめき声も耳に入らぬまま、間髪入れず腰を動かしていく。出し入れを繰り返す。激しい摩擦が先端を襲う。
「ああああぁ……」
メイちゃんの舌がめちゃくちゃに絡まって、それが、とてつもなく気持ちいい。
ぐじゅぶじゅと淫猥な音を立てながら、僕のものがメイちゃんの口を出たり入ったりしていた。メイちゃんの口の端では、唾液混じりの白い液が粘っこく泡立っている。
「いいよ……メイちゃんの口、すごくいいよ……すぐいっちゃいそうだよ」
そんな自分勝手なうわ言を呟きながら、僕はずんずんと腰を突き入れていった。
たぷたぷと音を立てて、陰嚢がメイちゃんの顎に当たる。弾かれる。睾丸に、刺されるような痛みが走るけど、そんな痛みなんて、とっくに快感に移り変わっている。
見ればメイちゃんは顔を歪めながら、それでも必死にえずきそうになるのを我慢して、僕の動きを受け入れてくれていた。僕の腰に手を当てて、口を精一杯に開いて、されるがままに僕に咽喉を突かれている。
あのわがままなメイちゃんが、こんな僕のために、ここまで頑張ってくれている。
そんなメイちゃんの苦しげで、それでいて優しそうな表情を見た瞬間、僕のそれは、あっさりと限界を突破してしまっていた。
「うっ!!」
先端がぬろりと唇でしごかれた瞬間、溜まりに溜まった噴流が、僕の中を一気に駆け上っていく。慌てて引いた腰の先から、ものすごい勢いで白い粘液が飛び出していく。
びゅくっ!! びゅくっ!!
音を立てて、大量のしぶきがメイちゃんに向かって撒き散らされていった。顔にも、眼鏡にも、髪の毛にも、そして胸元の真っ赤なネッカチーフにも……。
メイちゃんはひざまずいたまま、じっと瞳を閉じて、身体中で僕のそれを受け入れていた――そう、まるで神に祈りを捧げる、清らかなる乙女のように。
絶え間なくメイちゃんに降り注ぐ、顔面への熱いシャワー。僕は、自分の強張りをぎゅっと握り締めながら、それをメイちゃんの唇に押し付けるようにして、何度もなんどもしごき立てていった。
ぬるぬるが指に絡まってきて、塗り広げられて、それでもとめどもなく溢れ出してくる。とどまるところを知らない、メイちゃんへの想い。
メイちゃんに、聖印を……メイちゃんが僕だけのものだという、聖なる証を……ここに……清らかなる、メイちゃんの唇に……。
含まれる。きゅっと吸引される。腰が甘美で打ち震える。
そして。
ぷちゅん、という水音とともに、最後の一滴がメイちゃんの唇に吸い込まれていってようやく、僕にもまともな思考力というものが、徐々に戻ってきつつあったのであった。
目の前の惨状が、ようやく目に映ってきた。ていうか画像が、じわじわと頭の中に浸み込んでいった。僕が今、何をしてしまったかって事について、遅まきながらも思い当たる。
ぞくっ。
冷水をぶっ掛けられたみたいに、一気に頭の奥が醒めていった。
メイちゃんは僕の前にぺたんと座り込んだまま、はあはあと息を荒げていた。放心してしまっているのか身体中の力を抜いて、じっと顔を俯かせている。眼鏡が陰になって、その表情まではよく見て取れない。
メイちゃんの、顔にも服にも眼鏡にも、出したばかりの僕の粘液が、たっぷりとへばりついていた。顔中に塗ったくられた精液からは、まだほかほかと湯気が上がっているくらいだ。
それを認めた瞬間、僕の胸に、今さらではあるけれど、ものすごい後悔の念が押し寄せてきた。別の意味で、心臓がどくどく早鐘を打つ。
「ごっ、ごめんっ!! あんまりにも気持ちよかったもんだから、つい……」
謝って許してもらえる事じゃないかもしれないけれど、どうしても謝んなきゃって思ったんで、とにかく僕は謝った。
ごめん、メイちゃん。こんな風にするつもりなんて、全然なかったんだよ。
いやその、でもそれってメイちゃんとこーゆー事したくないって意味じゃ全然なくって、すごく気持ちよくって、メイちゃんさえよければまたしたいんだけど、もっと互いの合意とゆーか、でもでも、苦しそうなメイちゃんの表情もこれまたくるもんがあったし、それがまた萌え〜とゆーか、って馬鹿か俺は何考えてんだっ!?
メイちゃんの気持ちが一番大切じゃなかったのかよ? っても顔射って初めてだけど、すげー征服欲がそそられるとゆーか、無垢な少女を穢す悦びとゆーか、うひゃあ。
なんて、勝手に妄想して混乱しまくってる僕を不思議そうに見上げ、メイちゃんはぽつりと。
「――いいのだ」
こう、言ってくれた。
「でも、服まで汚しちゃって」
そして、さらに見苦しく言い訳を続けようとする僕を差し置くかのように、それこそ本当に天使のような笑顔を浮かべ、さらにこうまで言ってくれたのだった。
「先輩が気持ちよかったのなら、メイは、それだけで嬉しいのだ」
その笑顔に僕のハートが、ずきゅんと音を立てて撃ち抜かれていた。
やられたっ!! って感じ。
もやもやした僕の心の中から、後悔の念も情欲も、よけいなものは全部吹き飛ばされてしまっていた。そしてメイちゃんが好きだって気持ち、それだけが心の中に射止められて残っていた。
思えば、時折見せてくれるこの笑顔に、僕はめろめろになっちゃったんだよなぁ。
改めて僕は、メイちゃんすごいって思ってしまった。笑顔一つで、こんなにも人の心を幸せにしてしまえるんだもの。
「メイちゃん……」
思わず僕は床にひざまずくと、その愛らしい唇にキスをしようと、メイちゃんの身体を抱き寄せていった。唇に付いた粘液が少し生臭そうはあるけれど、それもメイちゃんがしてくれたからだもん、構うものか。
それに大体、元々は自分のものでもあるし。
だが、メイちゃんは。
「だっだめなのだっ!!」
そう言って慌てて胸を突いて、僕を押し戻してきた。どんと突き飛ばされるような格好で、僕はまた、ベッドに腰を沈めてしまう。
そして、間抜けな表情でメイちゃんの顔を見つめる僕に、メイちゃんはあたふたしながら言い訳を始めていった。
「そっ、そんな事したら、今度は先輩の服まで汚れてしまうのだ……あっ、でもでも、これはその、先輩にきっキスして欲しくないって訳じゃなくって、して欲しいんだけど、でもそれだけじゃやだっていうか、だからその……」
目をきょろきょろ、手をわたわたさせながら、必死で言葉を探している。だけど、メイちゃんもこんがらがっているのか、どうにもうまい言葉が見つからないようだった。
そしてついに。
「ええいっ!!」
ヤケを起こしたのか、メイちゃんがおもむろに立ち上がっていた。そして、いつも僕に訴えかけてくる時のように、胸の前で握りこぶしを握って、目をぎゅっとつむっては、僕に向かって大声で、こう、叫んだのだった。
「だからっ!! メイのよっ汚れた服は、先輩にせっ責任を取って、ぬぬ脱がせて欲しいのだっ!!」
「えっ!?」
驚いて聞き返してしまった僕に、メイちゃんは叫び声を上げて爆発しちゃったからか、蒸気がぷしゅ〜っと抜けてしまった顔で、頬を真っ赤に染めて俯いていた。
それでもメイちゃんは僕の問いに、小さいけれど確かにはっきりとした声で、ちゃんとこう答えてくれたのだった。
「今度は……今度は先輩が、メイを気持ちよくしてくれる番なのだ……」
なけなしの勇気を振り絞ってるような、感情が入り混じった声。メイちゃんの握り締めた指先に、ぎゅっと力がこもってるのが分かる。
きっと、すごい恥ずかしいのを我慢して、言ってくれてるんだと思う。
だから僕は。
「あ……」
俯いてるメイちゃんの顔を上向かせて、ちゅっと小鳥がついばむようなキスをすると、最高の笑顔でメイちゃんに微笑みかけて、こう、言ってあげた。
「うん、分かったよ。お礼に、メイちゃんも気持ちよくさせてあげる」
「ばっ、ばかぁ……」
メイちゃんが照れたように、ぷいっと顔を背けた。軽く、膨れっ面をしている。
ぐああっ!!
思わず僕は心の中で、咽喉元をがしがし掻きむしっていた。
まったくもお、そんな仕草がどれだけ可愛らしいのか、きっとメイちゃん本人は、全然気付いてないんだろうな。
ったくぅ。
メイちゃんが、眩しそうに目を眇める。
僕はそれを見て、顔に柔らかな微苦笑をたたえると、障害物のなくなったメイちゃんの顔を優しく両手で挟み込んで、顔中に飛び散った僕の粘液を、ひとつひとつついばむように丁寧に舌先で舐め取っていった。
「ん……ふぅ」
メイちゃんがくすぐったそうに鼻を鳴らすけれど、僕は止めてあげない。
冷えてしまったそれは、冷たくて妙にえぐかったけど、僕がメイちゃんを汚したものだ、僕がきれいにするのが筋ってもんだった。
そして、僕がたっぷりとメイちゃんの顔にキスの雨を降せ終わった頃には、汚れは全て、きれいに拭い取られてしまっていた。代わりにメイちゃんの顔が薄桃色に上気して、ところどころ僕の唾液でてらてらと光っている。
そのまま僕はキスをしながら、メイちゃんの胸元のネッカチーフの結び目をほどいていった。するするっていう絹音を立てて、首筋から引き抜いていく。それを、毛足の長いじゅうたんの上に、ふわさっと落とす。
そして、メイちゃんと丹念に舌を絡めながら、僕は指先の感覚だけを頼りに、メイちゃんのブラウスのボタンを、一個一個丁寧に外していった。フロントホックも、片手でぷちんと外してやる。メイちゃんの、75Aの胸元を、そっと手のひらで受け止めていく。
もっともそれって、確かに受け止めるってほどのボリュームがある訳じゃないけど。
でも、それはそれでメイちゃんらしくって、僕は気に入ってる。メイちゃん本人は、気にしてるみたいなんだけどね。でも、僕は他でもない、メイちゃんのそれが好きなんだけどなぁ。
メイちゃんのより巨乳だろうが、逆に貧乳だろうが、どんなのを持ってきたって、メイちゃんの胸の可憐さにはどれも敵わないだなんて、僕は勝手に思っている。
僕はその、適度に柔らかいお気に入りのそれを、ふにふにと揉んだ。
「やだ……先輩、何をするのだ……」
メイちゃんが僕の指の悪戯から、上半身をひねって逃げようとする。けれど、その身体にはもう、そんなに力は入らないようだった。
くねらせた身体にたくし上げられて、白衣が、ブラウスが、肩口からしどけなくはだけてしまう。背中が半分見えるくらいまで、ずり落ちてしまう。
ちゅ。
「あ……」
僕は、目の前の美味しそうなうなじにキスをして、メイちゃんの抵抗が止んだ隙に、腕を手早く、脱げかけた服から抜かせてしまっていた。そのまま背中をキスしながら降りていって、服と、ついでにスカートも、身に付けてるもの全てを剥いでいってしまう。
「あぁ……」
そして、僕の唇がわき腹に辿り着いた頃には、メイちゃんはもう、生まれたままの姿にショーツ一枚という、実にあられもない格好になってしまっていた。ちょっと肌寒いのか、表面にぽつぽつと鳥肌が立ってしまっている。
僕は、そのひざまずいた格好のまま、メイちゃんの身体を回り込むようにして、身体の位置を正面へとずらしていった。
そして、メイちゃんの腰を抱えるようにして、おへそにそっと舌を這わす。
ひくんっ!!
それだけでメイちゃんの身体がびくっと震えた。よけいに鳥肌が立っていく。
「あっ……あっ……」
そのままおへそに舌をくりくり挿し込みながら、僕はメイちゃんのショーツをゆっくりと下にずり下げていった。あそこから、ふわっと女の子の匂いが立ち昇るような、そんな気がする。
ふと、顔を見上げると、メイちゃんは顔を真っ赤にしながら、腕で乳房を隠すようにして、僕から視線を反らしていた。
そして。
「はっ、恥ずかしい……のだ」
ぼそりと、そんな可愛らしい事を言った。
きゅうぅ。そんなメイちゃんのあで姿に、僕の心臓がきゅんきゅん音を立てて鳴った。ううう何でそんなピンポイントに、萌えワードを言ってくるんだよぉ。
すげー可愛いじゃないか、もうっ。
僕は思わず立ち上がると、メイちゃんの身体をぎゅっと抱きしめていった。そのままの勢いを利用して、目元に熱いキスを一発かます。
キスでくたっとなったところをひょいと横抱えにして、僕の可愛いお姫さまを、そっとベッドの上に横たえていく。
そして僕自身はとゆーと、ベッドの脇に立ったまま、しどけなく横たわったメイちゃんの身体、オールヌードを、じっとりくまなく端から端まで、ゆっくりと時間をかけて眺めていった。
それも、視姦ってほどではないにせよ、充分にいやらしく、かつねっとりと。
当然。
「やっ、やだあっ!!」
これは充分すぎるほどに、メイちゃんの羞恥心とゆーものを刺激していた。もちろん僕も、そのくらいの事、分かっててやってんだけどね……って、悪人? はは。
メイちゃんは、僕の粘っこい視線から逃れようと、手足をすくめ、ぷいと背中をそむけていった。そしてまるで、怯えた亀さんみたいに身体をぎゅっと丸めている。
でも、そういう格好をすると、今度はメイちゃんの形のいいお尻が丸見えになっちゃうんだけどなぁ。メイちゃんは、そんな事にも気が付いてないみたいだ。
それでも僕は押し黙ったまま、じっとメイちゃんの姿を見下ろしていた。
メイちゃんは恥ずかしさに身も心も縮こまらせながら、僕の視線に耐えようと精一杯、頑張っていた。でも、あまりにも露骨な僕の視線に、ぷるぷると小刻みに身体を震えさせたりもしている。
そして、ついに我慢できなくなったのか、その震える肩越しに、ちらりと半べその顔を僕の方に覗かせて。
「せっ先輩も……脱いでくれなきゃ、嫌なのだ」
そんな、すがりつくようなか細い声で、メイちゃんが言った。
もちろんこの僕に、否応があろうはずがなかった。それに、これ以上メイちゃんを不安がらせるのも、本意ではないしね。
僕は軽くメイちゃんにうなずいてやると、手早く服の上下を脱いでいった。メイちゃんと同じく、素裸になる。
実はメイちゃんは最初の時から、する時には全て服を脱いで、互いに裸で抱き合うという、そういうシチュエーションにこだわっていた。それこそが愛し合う二人の間でのえっちだと、固く信じ込んでいるのだ。
僕ももちろん、その方がメイちゃんを直に感じられるから好きである。そっぽを向いちゃってるメイちゃんの背中に寄り添うように、僕の肌を合わせていく。胸に、メイちゃんの体温を感じる。
そしてそのまま包むように抱きしめ、ちゃんとおねだりできたごほうびに、うなじにそっとキスしてあげる。鼻腔にリンスの香りが抜ける。
「ああ……」
それだけでメイちゃんが、安堵に満ちた声を漏らした。
僕はそのまま、細くてさらさらの金髪を鼻先で掻き分けながら、後ろからメイちゃんの耳をじっくりとねぶっていった。ぴちゃぴちゃと、わざと水音を立てるようにして、メイちゃんの耳の後ろに舌を這わせていく。
「んっ……やっ、かはっ!!」
メイちゃんは、この音にものすごく弱かった。今も、抱きしめて耳元をねぶってるだけなのに、僕の腕の中でメイちゃんの身体が、びゅくんびゅくんと飛び跳ねている。
僕がぎゅっと抱きしめてるもんだから、よけいに身体の逃げ場がなくって、行き場を失った快感が、そこかしこで暴れ回ってるって感じだ。
メイちゃんは身体をぎゅんぎゅんくねらせながら、それに必死で耐えていた。可愛らしく腰をくねらす、仔猫のダンス。
僕はそんな攻撃の舌を緩めないまま、メイちゃんに回してる腕を、そっと胸元深くまで差し入れていった。メイちゃんに重みを掛けないように注意しながら、それでも少しでも触れ合ってる部分が多くなるように、メイちゃんの身体に密着していく。
ぴとっとくっつく。
そうする事でメイちゃんのぬくもりが、よけいに僕の身体、前面にくまなく伝わっていった。暖かい塊が僕の腕の中で暴れてるあたり、本当に、聞き分けのないわがままな仔猫を抱いているような感じだ。
熱くたぎった僕のものも、メイちゃんのぷりぷり揺れるお尻に押し当てられて――あ、いや、その、そんなにぐりぐりこねられると、それはそれでヤバいかも。ひゃうぅ。
そんなメイちゃんの攻撃に、ちょっとボルテージが上がりすぎて、僕は慌てて腰を引いていった。多分、無意識の行動とはいえ、思わぬ反撃に、僕は思わず苦笑いを浮かべてしまう。
代わりに僕は、そのお返しという訳じゃないけれど、メイちゃんの身体のあちこちをそっとフェザータッチでさすりながら、少しずつ身体を下にずらしていった。耳元から首筋、首筋から肩、腋へと、つつつっと舌を這わせながら、徐々に下に舐め下りていく。
「はあっ……んっ」
メイちゃんの声を心地よく感じながら、左腕をバンザイさせるようにして、無防備になった腋のお肉を、はむはむとついばんでいく。ごく薄く生えてるうぶ毛を舌に絡める。
そこはほとんど無臭なのに、それでもなぜか鼻の奥がぞくぞくするような、そんな甘い香りがする。
「メイちゃんのここ、すごくいい匂いがするよ……好きだよ」
「やぁん」
せっかく僕が誉めてあげたのに、メイちゃんはいやいやをするように首を左右に振った。もぉ、ほんとに素直じゃないんだから。
そのまま僕は、メイちゃんが首を振った勢いを利用するようにして、自分の体重を移動させていった。メイちゃんの身体を、ころんと仰向けにひっくり返していく。
メイちゃんの太ももを割って、身体をずらし入れる。包み込むように上から覆い被さって、メイちゃんの両腕を押さえ込んでいく。
そして、身動きできなくなったメイちゃんの身体を正面から見据えて。
メイちゃんのなだらかな丘の裾野に、唇を押し当てていった。そこから、丘の頂きをめざして舐め登っていこうとした――その時。
「やっ!! そ、そこは嫌っ……なのだ」
そんなメイちゃんの切実みを帯びた声が、僕の耳に届いてきた。押さえて動けなくしている腕にも、ぎゅっと緊張の力が走る。
その声に僕も舐めるのを一時中断して、メイちゃんの顔を見上げていった。
メイちゃんは見つめる僕の視線から、恥ずかしさで顔をそむけながら。
「そこ……メイのそこ……見ちゃ、ヤなのだ」
今にも泣き出しそうな声で、そう言った。
そこ。今にも僕が舐め上げようとしていた所。人よりちょっと小ぶりな膨らみ。
メイちゃんの、胸。
やっぱりメイちゃん、胸が小さいのを気にしてるみたいだ。
仰向けになってるメイちゃんの胸は、寒さでか緊張でか、うぶ毛が銀色に立ち揃っていた。先っぽも、ぴんと尖ってしまっている。
だけど。
確かにメイちゃんのそれは、多少盛り上がりに欠けているかもしれないけれど、若く張り詰めたその乳房は、仰向けになっていても重力に負けずに、きれいな形を保ったままでいた。そのなだらかなカーブは、僕にはとても美しい曲線に思える。
色も、先っぽが鮮やかな薄紅色に染まって、全体はピンク色で、とても綺麗だ。
だから僕は、素直な気持ちで、思ったままを、メイちゃんに伝えた。
「何で? メイちゃんのここ、可愛らしくってすごく好きだよ。綺麗だよ」
「そ、そうなのか……?」
メイちゃんが、そんな不安げな声で、僕の顔を覗き込んだ。
何も、僕が嘘を吐いていると疑っている訳でもないのだろうけれど、それでもやはり、自分に自信が持てないという感じだった。
まったく、僕がメイちゃんに嘘を吐くはずがないじゃないか。メイちゃんは充分、いや、すっごく綺麗だって。
僕はメイちゃんの事が好きだけれど、それって、心とか性格とかだけが好きなんじゃない。もちろんメイちゃんの身体も体型も、全部引っくるめて大好きなんだから。
僕が、そんな確信に満ちた表情でゆっくりうなずいてやると、ようやくメイちゃんは、心の底から安心したような、穏やかな笑顔を浮かべてくれた。
そして。
「じゃあ、いいのだ……」
そんな許しの言葉ともに、身体から力を抜いて、ゆっくりと瞳を閉じていった。全てを僕に委ねてくれる。
ありがと。
僕の事を信じてくれたメイちゃんに、僕は心の中で感謝の言葉を捧げながら、再びメイちゃんの裾野に、そっと唇を合わせていったのだった。
唇が胸の谷間に触れただけで、メイちゃんは控えめな吐息を漏らしていた。
メイちゃんのそこは――小さいからかどうかは分からなかったけれど――すごく、感度がよかった。今も、ちょっと舌を這わせただけなのに、メイちゃんはもう息を詰まらせて、切なげに溜め息を吐いている。
小ぶりな丘の頂上のぽっちも、くっきりとその形が分かるくらいに尖っていて、小指の先っくらいのその蕾は、僕の唇を待ちわびて、ふるふると震えてるくらいだ。
だから僕は。
「ひゃんっ!?」
そこまで舌先をつつつって滑らせていって、期待に打ち震えているそれを、ねっとりと唇で包んでやった。吸い付くように押し潰すように、舌先でそこをこね回してやる。
ぷりぷりした触感が、舌先で跳ねる。
舐めてないもう片方の方も、指先でつんつん弾き飛ばしてやる。
「あぁ……やぁ、先輩……それ、もっと……なのだ」
その動きに、メイちゃんが息を荒げながら、はしたなくもおねだりをした。
僕はそのリクエストどおり、メイちゃんのグミみたいな弾力のあるそれを、何度となく舌先で転がしていった。左手にすっぽり収まる膨らみも、やわやわと柔らかく揉み上げてやる。
そのたびにメイちゃんは、小っちゃな身体をくねらせて、僕から与えられる刺激を一滴たりとも逃がさぬよう、自分から積極的に受け取ろうとしていた。
いつしかメイちゃんは、両腕で僕の頭を抱え込んで、小ぶりの胸をもっと強く僕に押し付けようとさえしてきた。
小さいとは言え、それなりに柔らかいメイちゃんの乳房が、僕の顔で押し潰されていく。そのぽよぽよした感覚が、僕の口腔いっぱいに広がっていく。
僕は夢中でそれを舐めしゃぶりながら、自由になった右手を、そっとメイちゃんの股間、割れ目へと這わしていった。指先が太ももをさすり、秘貝のとば口へと近づいていく。
「ふぅ……んっ」
指先がそこをそっとさすっただけで、メイちゃんはそんな甘い吐息を漏らした。
メイちゃんのそこは、指先だけでもはっきりとその形状が分かるくらいにシンプルで、ごく控えめな様相をしていた。蠢かす指先に、ほんのちょっとはみ出した襞がようやく絡まるくらいの、清楚な割れ目。その色は、見なくても分かる鮮やかなサーモンピンクで――そして僕が触るといつもそこは、こんな風にぬらぬら濡れて光っていた。
メイちゃんのそこを包み込んだ手のひらに、ほんの申し訳程度の若草を感じる。
僕は、手のひら全体でそこを揉み込むようにしながら、中指をスライドさせて、その指先にねっとりと蜜をまとわりつかせていった。
「あっあっあっあっ……」
直接的な刺激に、メイちゃんが断続的な声で喘いだ。
メイちゃんのそこは、もう充分すぎるほど濡れそぼっていて、とっくにぬめりはよくなってしまっていた。けれどその先はまだ、中指一本でさえ一杯になってしまうほど、狭く、キツく、そして暖かい。その事を僕は、身をもって何度も体験している。
だから僕は、過剰すぎるほどにたっぷりと粘液をまとわりつかせて、それでもなお慎重に、ゆっくりとメイちゃんの中に、指を差し込んでいったのだった。
「んっ」
第一関節が入った辺りで、メイちゃんが軽く首をのけぞらした、小さく声を上げる。わずかに顔をしかめている。
僕は、そんなメイちゃんを他の快楽で紛らわしてやるかのように、乳首にそっと歯を当てていった。唇で挟み込んで、ぷるぷるとそこを左右に揺らしてやる。
「ひやあぁ……」
メイちゃん自身もそんな声を上げて、ぷるぷると首を左右に振った。
そうしながらも僕は、不退転の決意でもって、少しずつ指に力を込めていった。徐々に中指を、メイちゃんの中へと挿し込んでいく。
ずむっ……ずむっ……って、そんな擬音が聞こえる訳ではないけれど、意識的にはそんな感じで、中指をそこに埋めていった。
そこは、まるで喰いちぎられるんじゃないかと思うほど、ぎゅうぎゅうに僕の指を締め付けてきて――その暖かさと弾力に後で包まれるかと思うと、それだけで僕のものがびくんと一回り、大きく膨らんだような気がした。
そして。
「あふっ……んんぅ」
ようやくと言っていいほどの時間が過ぎて、中指が全て、メイちゃんの中に収まっていった。メイちゃんが安堵の溜め息を漏らす。僕はその溜め息を塞ぐように、メイちゃんに唇を合わせていく。
しばらくそのまま舌を絡めながら、じっとメイちゃんの事を抱きしめてやる。
包まれてる中指から、ひくんひくんと蠕動が伝わってきた。まだ、キツい事に変わりはないけれど、それでもだんだんと分泌されてきてる粘液で、次第にそこが馴染んでいくような、そんな感じがする。
唇を離す。
「んはぁ」
メイちゃんの息が落ち着いてきたところで、ほんの少しだけ指を戻し気味に、メイちゃんの中を擦ってやった。
「あぁ……」
そんなメイちゃんの溜め息を耳元に聞きながら、僕は微妙に指を前後させて、中を少しずつほぐしていった。メイちゃんの内壁を、擦るように揉み込むように、指の腹で刺激していく。その内、そこからじんわりとぬめりが溢れ出してきて、僕の動きにも滑らかさが伴ってくる。
僕は、自由度を増してきた指先で、少し固くなりだしてきたメイちゃんの中、前面を、ちょっと強めに掻いていった。
「くっ!! くうぅ〜ん」
いきなりメイちゃんの身体が、びくっと跳ねた。くんっ、と身体を弓なりに反らしながら、そんな啼き声を上げる。
「ごっごめん。痛かった?」
慌てて僕は指の動きを止めて、メイちゃんの顔を覗き込んでいった。
メイちゃんは、ぎゅっと固く目をつむって、ぷるぷると小刻みに身体を震わせながら、はぁはぁと息を荒げていた。いきなりの刺激に耐え切れなかったのか、苦しげに眉根を寄せている。
イっちゃった訳……? では、多分ないと思うんだけど、それでもメイちゃんは、何かにじっと耐えているような感じで、身体をぎゅっと強張らせていた。
それに何だかメイちゃんの中も、急にとろりと粘度が増したようで……実際、こんなに濡れてきたのって、今までの数少ないえっちの中では初めての事であった。
こんな事態に困惑して固まってる僕に、ようやく落ち着きかけてきたメイちゃんが、薄目を開けて、かすれたような艶っぽい声で、僕に言った。
「大丈夫……なのだ。いいから、もっと続けるのだ」
「いっ、いいの?」
思わず僕も聞き返してしまう。何せ、こういうの、初めての事だから。
僕だっていちお男としての立場上、さっきからメイちゃんをリードしてる格好になってるけど、実際のとこ僕も、メイちゃんとしかした経験はないのだ。初めての出来事に、ちょっとばかし及び腰になってる僕ではある。
だがメイちゃんはそんな僕の態度に、むしろちょっと焦れるような声で。
「いいのだっ。だから、さっさと続けるのだっ」
そう言って、続きを促すのだった。
よっ、よおし。そこまで言われちゃあ、僕にも男としての意地とゆーか面子みたいなものがある。か、覚悟しろよぉ。もう止めてって泣いて頼んだって、止めてやんないんだからなっ。
――でも、ホントに泣かれたりしたら、多分止めちゃうんだろうけど。
僕はそんな固い(?)決意でもって、指の動きを再開していった。相変わらず締め付けはキツいけれど、さっきよりぬるぬるしていて動かしやすそうな感じがする。
僕はなるべく、さっきのとこら辺を中心に擦るように、中で指をひくひくと蠢かしてやった。
「ここ? ……こう?」
腕を浮かせて、中指の先だけに神経を集中する。下手すると、ちょっと攣りそうな感じがしないでもないけど、この際、そんな事は言っていられない。
「んっ、あっあっ……そっ、そう……ひっ!?」
そんな僕の動きに、メイちゃんはいち早く反応を示していた。
僕が指を蠢かすたびに、もどかしげに腰をくねらせていく。それも、僕が攻めているポイントが微妙にずれているのか、僕の指を追うような、またすかすような感じで、腰をくんくん押し付けてくる。
僕も、メイちゃんのその反応を見ながら、よさそうな所を探索するように、中をこりこりと掻いてやったりする。
ちょうど上ら辺よりも少し右寄りのところに、ちょっとざらざらというか、表面がぷちぷち凝ってる所があったんで、そこを中心に、指の腹で練り込むように刺激してやる。
「ああっ!! やぅんっ……そこっ、やっ」
そこをぐいぐい押し込んでやると、メイちゃんがそんな甲高い悲鳴を上げた。
いやいやと首を振ってんのに、よけいじゅわっと液が溢れ出してきている。身体も、ひくんひくんと小刻みに痙攣を繰り返している。
そうやって、しばらくそこを揉み込んでると。
「先輩ぃ……」
メイちゃんが目をうるうる潤ませながら、すがるような声で、僕に言った。
「何かそこ、変なのだ……いっぱいで、もっとそこ……んっ、強くして、欲しいのだ」
はしたなくもそう、おねだりしてきた。
おねだりしてる最中にも、メイちゃんは待ちきれないような感じで、腰を浮かせては沈めしてくる。そこをぐりぐり、僕に押し付けてくる。指先と指の関節に、メイちゃんの体重と圧力が加わる。
「こう?」
僕はその、押し付けられてる固い部分を、もうちょっと強めに掻いてやった。
粟立った、ぷりっとしてる感触が、指に直接伝わってくる。それこそ、中指の指紋の皺ひとつひとつを捺し込んでくような感じで、くにくにとそこを刺激してやる。
「やああぁ……やだやだ、出ちゃ……漏れちゃうのだ……」
そこをそうされると、メイちゃんは泣きそうな顔でいやいやをした。
まるで、おしっこが出そうになるのを我慢してるみたいに、腰をぐりんぐりん回して、僕からの刺激に耐えようとしている。
でも大体、メイちゃんはさっきからやだやだって言ってるくせに、それでも腰は、ぎゅうぎゅうと僕の方に押し付けてくるのだ。メイちゃんのあそこからも、粘液か汗か、ひょっとしたら漏らしちゃってんのかもしれないくらいのぬるぬるが、とめどもなく溢れ出してきている。手のひらまでもう、びしょ濡れになってるくらいだ。
にちゃにちゃいういやらしい水音を立てながら、そこに小刻みに指を出し入れしてやると、メイちゃんは髪を振り乱しながら身悶えした。
「ああぁ先輩、せんぱいぃ……」
どうにも耐えきれないような切羽詰った声で、僕に言う。
「それだけじゃ、切ないのだ……我慢できないのだ。もっと……もっと強く先輩が、欲しいのだ……」
そ、それって、メイちゃん……。
「入れて、欲しいの?」
そう、耳元でぼそっと囁いた瞬間、中指がきゅんっ、と強く締め上げられていた。
見れば、メイちゃんは恥ずかしげに視線を反らし、半分、泣きそうなべそをかいたような表情を浮かべ、僕から顔を背けていた。
その、頬を上気させた羞じらいの表情が、なんとも言えないくらいに可愛らしくって、思わず僕は、メイちゃんにほおずりをしてしまう。
メイちゃんは僕にほおずりをされながらも、駄々をこねるような泣き声で。
「いいから、早くするのだっ!! メイの、メイの言う事が聞けないのかっ!?」
いつものように、わがままを言った。
僕は、なだめるようにメイちゃんの髪の毛を撫でてあげながら、僕のわがままなご主人さまに、とっておきの笑顔で、こう、答えてあげた。
「もちろん、メイちゃんの言う事なら何だって聞くよ。だって俺、メイちゃんの下僕だもん」
「ば、ばかぁ……くぅんっ!!」
まったく素直じゃないわがまま娘に、僕は指を抜くついでに、そこをこりっと強めに掻いてやった。押し出されるような感じで、指がにゅむっとそこから抜ける。
僕の右手は、メイちゃんのそこから溢れ出した粘液で、中指どころか手のひらまで、ねっとりねちゃねちゃの状態になっていた。
間違いなく、メイちゃんが感じてる証拠だった。
僕のそれは、一度出しているにも関わらず、とっくに準備が整っていた。
手のひらまで、べっとりとこびりついているメイちゃんの粘液を、なすりつけるように僕のものに塗りつけていく。メイちゃんのぬるぬるが、僕のものを包み込んでいく。
そして僕は、固く尖っているそれをぐいっと押し下げるようにして、メイちゃんのそこへとあてがっていった。
先端が、そこに触れる。それだけでメイちゃんの充血した襞々が、僕を誘う花のように、ぬめぬめといやらしく絡みついてくる。
全ての準備が整ってから、僕はメイちゃんの顔を見据えて、言った。
「いい? 入れるよ?」
こくん。
メイちゃんがうなずくのを確認して、僕はゆっくりゆっくりと、メイちゃんの中に腰を沈めていった。ぐぐっと矢印が襞々を掻き分け、暖かく濡れた洞穴へと、その進路を進めていく。
「あぁ……」
まず先端の敏感な部分が、メイちゃんの中へと潜り込んでいった。
ぬとっとしたぬるま湯みたいな感触が、先端に伝わる。でも、そこはそんな柔らかさとは裏腹に、僕を押し返そうと、ぎゅうぎゅうに圧力を掛けてきていた。
それでも僕は、尖った先の部分を、入り口へとぐいっと挿し込んでいく。
「んっ……くっ……」
メイちゃんは必死に歯を食いしばって、僕のそれに耐えようとしていた。
指一本でさえキツいのに、いくらぬかるんでいるとは言えそこは、キツキツに僕のものを締め上げてきていた。柔らかいだけに、圧倒的な弾力でもって、侵入しつつある僕の先端、敏感なとこを、四方八方から押し潰そうとしてくる。
僕はその痛いほどの締め付けを、無条件に快感へと変化させながら、メイちゃんの負担にならないよう、それだけを考えて、ゆっくりとシャフト全体を挿し入れていった。
ずむっ……ずむっ……と、狂おしいほどにじれったい速度で、僕のものが肉壁を掻き分けて、少しずつメイちゃんの中に埋まっていく――そして。
こつん。
先端がメイちゃんの奥に当たってようやく、僕は全てがメイちゃんの中に呑み込まれていったのを感じ取っていた。
全部入ったところで動きを止めて、両腕でメイちゃんの身体を抱きしめてやる。
「かはぁ……」
僕の腕の中でメイちゃんが、肺中の空気を吐き出すような溜め息を吐いた。
僕の全てを呑み込んだメイちゃんは、唇を半開きにして、苦しいだろうのに、至福の表情でそれを受け止めていた。それでもあそこがいっぱいなのか、僕の耳元で、はっはっと苦しげに、小刻みに息を荒げている。
で、そのたびに、きゅんきゅんとあそこが締まっていく。その、じれったいような痛痒いような締め付けに、僕は動きたくて動きたくってたまらなくなる。でも耐える。
メイちゃんを、僕の勝手で苦しめたくないから。
メイちゃんと一緒に、気持ちよくなりたいから。
でもやっぱり動きたくて。それくらいにメイちゃんの中は暖かく締め付けてきて。すごく、すごく気持ちよくて……。
そんな、僕のいろんなものに耐えている表情を見かねたのか、メイちゃんが健気にも、こう、言ってくれた。
「う、動いても、よいのだぞ?」
「で、でも、メイちゃん……」
そう言ってくれるのは嬉しいけど、本当に――う――いいの?
僕、もう、メイちゃんの事、思いやれるほどの余裕、残ってないよ? ブレーキ外しちゃったら、もう、歯止めが利かない。一気に最後まで突っ走っちゃう。
それでも――それでも。
そんな、まだ最後の一線で逡巡している僕を後押しするように、メイちゃんが泣き笑いみたいな笑顔で微笑んでくれた。
「いいから、メイは、その方が……いいのだ。そうして、んっ、欲しいのだ」
そう言ってメイちゃんが、くんっといやらしく、腰をひねった。僕のものが半分ほど抜けかけていく。中で、にちゅっと擦られる。快感が一気に弾け飛んでいく。
くううっ!!
それが僕の理性のたがを、あっけないほど簡単に崩壊させていた。
ああっ、もう俺、これ以上我慢できない。そうだよ、メイちゃんもして欲しがってるし、いいじゃないか。俺、メイちゃんの事、好きだから。好きだ。突きたい。擦りたい。……やりたい。
したい。
「ごっ……ごめん、メイちゃんっ!!」
僕は本能のおもむくまま、抜けかけたそれを、一気にぐいっと突いていった。先端が奥に当たって跳ね返ってくる。そのまま腰を使って、ぐいぐいピストン運動を続けていく。
「ひっ、ひぃんっ!!」
内部を思い切り擦られて、メイちゃんが甲高い悲鳴を上げた。
だけどメイちゃんのどんな悲鳴も、もう僕を止める事はできなかった。僕はただ、擦るたびに生まれ出てくる圧倒的なまでの快感に身を任せ、腰をぎゅんぎゅんくねらせるだけだ。
すごい気持ちいい。
すごい気持ちよかった。
メイちゃんの中は、突き入れようとするたびに、やだそこキツいのだっと力の限りに抵抗してきて、そのくせ抜こうとすると、抜かれちゃヤだぁとぎゅうぎゅう僕のものを絞り上げてくるのだ。
メイちゃん本人と同様に、そこはすごいわがままで――それがたまらなく気持ちよかった。
メイちゃんも唇を噛み締めて、苦痛とも愉悦とも知れない表情を浮かべている。
「あっ……あっ……」
にちゃにちゃと、擦れ合ってるそこからいやらしい音が響いてくる。ぬめりがさらによくなってくる。
徐々にストロークが滑らかになっていくにつれ、メイちゃんの声も今までと違った、甘く、愉悦を含んだ声に変わっていった。
「変なのだ……今までと、違うのだ……やだ、怖、くっ、のだ」
たまらず僕に、ぎゅっと抱きついてくる。背中に手を回す。爪を立てる。
舌先が、僕の唇を求めてさ迷う。
メイちゃんはまるで熱病にでも侵されたように、頬を真っ赤に紅潮させながら、うわ言のように息を荒げて喘いでいた。
「いいの? メイちゃん、気持ちいいの!?」
僕も腰を振りながら、そう、メイちゃんに問い掛けていく。
メイちゃんも、小刻みに身体を震わせていく。
「わか、分からないのだ……何か、あそこが膨らんで……ひっ!?」
急にひくんっ!! とあそこをひくつかせる。ぎゅんと一気に締め付けられる。
つむっていた目を大きく見開く。ぽろりと一筋、そこから涙がこぼれ落ちる。
「あああ、やだやだ……ほんとに変に、なっちゃうのだ」
混乱しきった表情で、メイちゃんがいやいやとかぶりを振った。
そのくせメイちゃんは、腰をぐいぐい、僕の方に押し付けてくるのだ。
そう、いつしかメイちゃんまでもが、僕の動きに合わせて、腰をくんくんくねらせていた。もっと別のところを突いて欲しいのか、それとももっと強く突いて欲しいのか……そこまではよく分からなかったけれど、それによって僕のものが、より一層強く擦られる事に間違いはなかった。根元と先端に、痛いほどの圧力が掛かる。
「くうぅ……」
そんな溜め息が唇から漏れる。
メイちゃんの中では、無数の柔突起が僕のものに絡み付いていた。動くたびに、メイちゃんのぷちぷちが僕の粘膜から引き剥がされていって、また新しいぷちぷちが、我れ先にと逆棘の返しに吸い付いてくる。
シャフト全体も、膣口でぎゅっと締め付けられて、中ではうねうねしている襞々に、根元からにゅむにゅむ擦られていく。
「すごい……メイちゃんのここ、絡み付いて……いっちゃいそうだよ」
思わず弱音が出てしまうほどに、メイちゃんのそこは貪欲に僕を咥え込んでいた。
メイちゃんも喘ぎながら、薄目を開けて。
「先輩も……いいのか? メイも……メイもきっ、気持ちいいのだ……もっと、もっと強くして……欲しい、のだっ……くっ!!」
そう言って、ぐいっと僕のものをしごいていった。
その瞬間、僕の背筋に、何とも言いようがないほどの震えと感動が立ち昇った。
あぁ、メイちゃんが気持ちよがってる――僕に突かれて気持ちいいって、もっとしてって啼き叫んでいる。メイちゃんが僕ので感じている――!!
僕の身体の下では、すごくいやらしい格好で、メイちゃんが喘ぎ悶えていた。組み敷かれたその下半身は、僕のもので何度も貫かれていて、一つ突きを入れるたびに、にちゃにちゃと歓喜のよがり声を上げている。
僕に突かれて感じまくっているメイちゃん。その姿を見下ろしてるだけで、胸がぎゅうんと締め付けられるような、ぞくぞくっとするような感覚が、僕の下半身から身体中へと広がっていく。
もちろんこうしてる間にも、腰の勢いは衰えていない。むしろスピードと快感が、倍加してっている。
「メイちゃんっ!! いくよっ!!」
さっきからとっくに突きまくってんのに、僕はそんな理不尽な事を言いながら、メイちゃんの中をぐいぐい力強くかき混ぜていった。奥に届けとばかりに、ずんずこメイちゃんの中を突き上げていく。僕にはもう、快楽しか感じ取れない。
「ひゃん!?」
思い切り子宮を突かれて、メイちゃんがそんな悲鳴を上げた。けれど僕はもう、止まれはしない。
腰を回すだの三浅一深だの、そんなハウツー本で学んだ知識などどっかに軽く吹っ飛んでしまっていた。ただひたすら本能のままに、メイちゃんの中を突き、抉っていく。
肉壁を先端で掻き分けていって、メイちゃんの身体を突き上げて、抜いては襞にカリが引っ掛かって擦れていく。掻き出された粘液が、二人の陰毛でこねられて、ねちねちと卑猥な音を立てていく。たわんだ袋がメイちゃんに当たって、ぱんぱんと軽快なビートを刻んでいく。
「あっあっあっあっ……」
そんなリズムに合わせるように、メイちゃんが断続的な悲鳴を上げた。
もちろん悲鳴ったって、けして嫌がっての声じゃない。むしろ、どうしようもないくらいに気持ちよくって、どうしようもないくらいに身体がいう事を聞かなくって、それで上げてる、どうしようもないくらいにいやらしい声だ。
「いやっ……やはっ!! す、すご……ダメっ……ひゃああんっ!!」
メイちゃんはもう、半狂乱に近かった。
髪を振り乱しながら、めちゃくちゃに頭を振って喘いでいる。
爪はぎゅっと僕の肩に打ち込まれていて、それだけを頼りに腰をぎゅんぎゅん揺らしまくっている。その腰の動きにまったく遠慮はない。
そんな、すごくいやら可愛らしい表情で喘ぐメイちゃんの顔を見て、僕の緊張は一気にヤバくなっていった。ちょっと油断した隙に、煮えたドロドロの塊が、すごい勢いで尿道を駆け上ってくる。
あとひと擦り、いやふた擦り――もっともっとメイちゃんに入れていたいメイちゃんの中にいたいメイちゃんとしたいこのまま最後まで気持ちよくなりたい――そんな誘惑を必死に振り切って、僕はメイちゃんの中からぐっと引き抜いていった。
「やあっ!?」
抜かれた瞬間、メイちゃんがそんな切なげな悲鳴を上げた。
「くっ!!」
抜いたそれを握る間もなく、びゅくっ!! びゅくっ!! と噴流が、怒涛の勢いでほとばしっていった。熱くたぎる粘液が、メイちゃんの身体中に撒き散らされていく。
灼火箸を刺し込まれるような快感が、僕の中心を貫いていった。
一度出したとは思えないほど、それはすごい量と濃さであった。それは永遠に続くかと思うほどの気持ちよさで――そして初めて味わう、心の底からの安堵感であった。
「ああっ……んあっ……あぁ……」
メイちゃんは僕のそれを、虚脱しきった表情で受け入れていた。
目が虚ろに見開かれて、唇の端からは、はしたなくよだれが垂れていたりもする。
行き場を失った快感をもてあますように、ひくっ、ひくっと、身体が小刻みに痙攣を繰り返していたりもする。
そしてその、唇の端にかかった飛沫を――恐らく無意識にだろう――ぺろりと舐めて。
「……んぁ……苦い、のだ」
そう、呟いていた。
メイちゃんの火照った身体から、ぷぅんとミルクみたいな甘い匂いが立ち昇っている。それが、妙に心地よい。
そして僕は、メイちゃんの頭をそっと抱き寄せ、耳元に唇を寄せると。
「メ、メイちゃん……どうだった?」
息も絶え絶えになりながら、そう、尋ねていった。
正直なところ、僕はもう、指一本も動かしたくないくらいに疲れまくっていた。
まるで、持ってる体力全てを快感に変えて、一気に放出してしまったような、そんな感じがしていた。すごい幸せな気倦さが、僕の身体中を包んでいた。
すごく、よかった。
何だかようやく、ただセックスしてるってんじゃなくって、メイちゃん『と』セックスしている、そんな感じが僕の中で形になった気がした。
メイちゃんも、途切れる息の間に間に、こう、答えてくれる。
「わか……分かんないけど……んっ……何かすごく……きっ、気持ちよかったのだ……。何か……何だか、すごく怖いとこに連れてかれそうな気がして……でも、先輩、止めてくれなくて……すごく、怖かったのだ」
そう言ってメイちゃんは、僕の肩に顔を埋めた。今でもまだ怖そうに、身体をぷるぷる震わせている。
僕は震えるメイちゃんを抱きしめてやりながら、その癖っ毛の金髪をそっと撫でていった。
「ごめんね、メイちゃん」
そう、囁いてやる。
「うぅん、いいのだ」
メイちゃんはそう言って、ふるふると可愛らしく頭を振った。
そして、抱きしめられて少し落ち着いたのか、さっきよりも少ししっかりとした声で、メイちゃんは言葉を続けていった。
「それで……どんどん遠いとこに連れてかれて……すごく変で……でも止めて欲しくなくって……昇ってって、どんどん昇ってって……あと……もう、ちょっとの所で――」
と、メイちゃんが少し拗ねたような顔で、僕の方を見上げた。
「――先輩が、抜いちゃったのだ」
「ゑ?」
そっ、それってメイちゃん、どおいう……。
僕が妙な顔でメイちゃんの顔を見つめたからか、メイちゃんは僕を安心させようと、にこっと笑顔を作って、僕にこう、言ってくれた。
「でも、もう大丈夫なのだ」
力強く、そう宣言する。目にもいつしか、光が戻ってきている。いつもの自信と強引さが、いつの間にか身体に満ち溢れてるようでもある。
えとその、だ、だいじょーぶって、いいいったい何の事でしょーか?
何となく、理由もなくよぎる言い知れぬ不安に、たらりと一筋、冷や汗が流れた。
メイちゃんが、言った。
「今ので、だいぶ感じが分かったのだ。忘れない内に、もっとするのだっ!!」
って、メイちゃ〜ぁんっ(爆)!!
学習意欲が旺盛なのはいー事だけど、まっ、まだ今ので足りないってゆー訳!? 僕、もうこれ以上、する体力、残ってないよっ!?
「ちょ、ちょっとメイちゃ……とっとと」
ほら、抵抗する体力もなく、あっさりメイちゃんに押し倒されてしまう。
メイちゃんが、力の抜けた僕の身体に覆い被さってくる。僕の胸にキスをする。
「ほらっ、早く先輩も仰向けになるのだ。今度はメイが上になるのだ。さっさとこれ、準備するのだ」
「わっ、メイちゃんどこ触ってん……あひっ!!」
いきなりメイちゃんが僕の萎れたナニを掴んで、しゅっしゅっとリズミカルに擦り上げていった。あわわ、ちょ、ちょっと休ませてよぉ……。
いくらメイちゃんが可愛くったって、そんなに擦られたって、今出たばっかの、しかもこんな激しいえっちの後だもの、そんなすぐに立ちゃあしないよおっ!!
痛いくらいに敏感になってるそこを、強引なまでに擦られて、僕は頭の中まで真っ白になっていった。
それでも僕の萎れかけた愚息は、いくら擦られてもふにゃふにゃと、中途半端に膨らむばかりで、一向に硬度を取り戻そうとはしない。
そんな、男として情けない僕のものに、業を煮やしたのか。
「んもおっ、まどろっこしいのだっ!!」
ぱくっ。
メイちゃんがおもむろに僕のものを咥えていった。
柔らかい舌先が、まだこびりついてる粘液をこそげ取るように、ぺろぺろと先端を舐めまわしていく。唇が、きゅっとカリ首を締め付けてくる。
「うひゃあっ!?」
先端を襲う、そんな痛痒い感覚に、僕は思わず首をのけぞらせた。
そしてしばらくの間、僕のそんな嬉し恥ずかしの悲鳴が、メイちゃんの部屋中に響き渡っていったのだった……。
えぇえぇ、何だかんだ言っても僕も男っす。何とか奮い立たせてちゃんと三回、お勤めこなしましたですよ。
メイちゃんも、回数をこなしてく内にだんだん感覚を掴んでいったのか、最後は互いに抱きしめ合いながら、一緒にいく事もできた。
あ、一緒にっても、もちろんちゃんとゴムを付けて、だよ。メイちゃんはやだってわがまま言うんだけど、ほらまだメイちゃんも高校生だし、僕もまだ、セキニン取れるほど稼ぎがあるって訳じゃないからね。
いつか、もうちょっと時間が経ったら、心置きなく最後までいこうよね。
そして、ようやっと三回目が終わった後、さすがの僕たちも精も根も尽き果てて、二人、ベッドに突っ伏していった。いつの間にかそのまま、寝入っちゃったようだ。
ってのも、気が付いたら部屋の中は真っ暗で、メイちゃんが僕の身体に寄り添うように、可愛らしい寝顔ですうすう寝息を立てていたから。
★感想はメールか掲示板へ★