21世紀大阪の奇蹟、か!?
その昔(そんなに昔ではない)、大阪は阿波座の地に、伝説のラーメン店があったという。 その名は「開花ラーメン」。 厨房を囲むカウンター、そのほかにはテーブルが3つほどあるだけの、ごくありふれた街角のラーメン店の店構えであった。 しかし一旦その店で料理を注文し、それを口にした者は、一人残らず、大きな驚きを隠せなかった筈だ。 卓越した調理技術によって、見事なまでに美しい色に仕上がった料理。素材の味を殺さない穏やかな味付け。各素材と調味料との絶妙な調和。 本物の料理が、そこにあった。 その料理人、王有福の名は、私が認識していた以上に、巷ではその技術において有名な人物であったらしい。TV番組等にも時折顔を出していたのだと聞く。 そして彼はその後、心斎橋に新しくオープンする122席もの大きな中華料理店の料理長として大抜擢されることになる。
「南花樓」と名付けられたその店の名には、「開花ラーメン」のエコーを感じることができる。阿波座において開花させた花を、今度は大阪はミナミの地にひらくというわけだ。 そして先日、私もついに、その新しい店へと足を運ぶ機会に恵まれた。 久しぶりに彼の料理を味わうことが出来たわけたが、予想を越えて私はその味に再び感動してしまった。凡そ、料理の一口一口に関して感動することはまだあれど、その「ひと噛みひと噛み」に感動できる料理などそうザラにあるものではない。玉葱の一片一片に、その甘味と、しゃきしゃきした食感が、そのままに残され、酸味、甘味、塩加減の調和の取れた餡に包まれる。その一片から玉葱特有の辛味は全く感じさせないところなどは、魔術的な技巧と言ってよい。 全体として抑えたあっさりとした味付け。それゆえに、炒め物のなかで海老だけにあらかじめ下味がつけられていることなどもよく判る。その海老のぷりぷりとした食感もたまらない。 食後に供されるクコの実を飾った杏仁豆腐や烏龍茶に至るまで、一切の手抜かりなし。 それでいて値段は非常にリーズナブル。これでもかこれでもかと次々に料理が提供される夜のコースで3,600円からというのは驚き。私はこれほどに対価価値の高い料理店を他に知らない。さらに昼間のランチタイムであれば、780円から(!)、戴けるのだという。 21世紀の大阪に訪れたひとつの奇蹟だと、呼んでおきたい。(呼び過ぎだけど)。
■南花樓
■*印写真は、パンフレットより。 |
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最終更新日04/09/10