福岡にて

2004年8月

■海の中道

「海の中道」は、福岡市の沖に東西に形成された砂州で、博多湾をぐるりと囲むように形成され、その先にある志賀島を地続きにしています。そこは「海の中道海浜公園」という国営公園として整備され、現在230haが公園として開園しているそうです…たいへんに、広い。
我々は百道(ももち)浜から出ている高速船に乗って、公園にアクセスすることにします。

港に近づくと見えてくる、大きな凸面を海側に向けた建物が、水族館「マリンワールド」です。とても大きく明るい水族館で、博多湾周辺で見られる魚を中心に、屋外の専用プールではクジラまで飼育されており、海の世界を堪能できます。「ニモ」:クマノミはここでも人気者、イソギンチャクのあいだに隠れる仕草が愛らしく、また顔立ちもかわらしいい。しかしなんといってもここの見ものは、イルカのショーです。

夕方からのショーにも、盆の期間中なので大勢の人たちが集まっています。ステージはその向こうに、宵の博多湾と対岸の街の明かりを背景にして、期待感にあふれています。
登場したイルカたちはよく訓練されていて、各個体の能力ごとに、トレーナーたちと息の合った芸を披露してくれます。
その前にアシカのショーも見ましたが…アシカのときにはただ笑みが出るような楽しさなのだけれど、イルカのときにはどうも涙腺を刺激されます。「芸」というよりも、ともにその場を楽しんでいる「仲間」という感じさえして、思わずイルカがイルカであることを忘れて彼らに対して純粋に拍手をしてしまったり。自閉症の子供がイルカと泳ぐ治療法があるのが分かる気がします。

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近くの敷地に用意された遊園地は、こじんまりとしたものですが、中央広場を囲むように、ゴーカート、観覧車、メリー・ゴー・ラウンドなどの施設が用意されています。
ゴーカートには「オフロード」コースがあって、信じられないほどガタガタの道を、サスペンションのきかないゴーカートに乗って座席からずり落ちながら走るのは結構タイヘンでした、また「アイスワールド」では外がたいへん蒸し暑い中、しばしマイナス30度の世界を体感できました。

 

敷地内、背の高い椰子の並木が続くなど南国ムードがいっぱいで、僕はそこにいるあいだじゅうずっと鹿児島のことを思い出していました。少年期の一時期を過ごした鹿児島の風景は僕にとって懐かしいものです。ここと同じように椰子などの木が茂り、特有の明るさをもっています。指宿、開聞、長崎鼻、桜島。鹿児島で過ごした2年間はたいへん楽しかったのでー、その風景を思い出すのは嬉しいことです。

■博多の食事

今回、「もつ鍋」と「博多ラーメン」、それに玄界灘の寿司をいただきました。
もつ鍋は、川端の商店街のはずれにある、その名も「川端」にて。ここのものが美味しいのだそう。僕は博多でもつ鍋を食すのはこれが初めてです。注文は「もつ鍋4人前」:2人なのにもかかわらず。それが普通なのだそうです。あと、メニューに「ごはん」がない…ごはんを食べながらもつ鍋を食すのは邪道なのだとか。
鍋は、よく味の出た出汁に、牛モツと豆腐、韮とキャベツと牛蒡、これですべてです。至ってシンプル。味は関西の舌からすると結構塩味が効いています。長崎の「ちゃんぽん」等の類も結構塩味はありますし、北部九州はしっかりした塩味が基本なのかもしれませんね。鍋の締めには、おじやではなく、「ちゃんぽん」を入れます。関西でいえば、「クエ鍋」の最後にラーメンを入れるようなノリでしょうか。

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博多ラーメンは、天神の「一蘭」にて。関西にはないので、かなり久しぶりにいただきました。唐辛子ベースの辛いタレがこの店の特徴です。油脂分もかなり多いと思うのですが、意外にさっぱりといただけます。

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そして寿司…薬院の「やま中」にて。ずっと行きたいと思っていた店で、今回やっと願いが叶いました。日曜日が定休なものだから、なかなか営業しているときに辿り着かなかったのです。

 
建物の設計は磯崎新氏、各部の素材やスケールをわざと「和風」からはずしつつ、しかも全体として和の息を吹き込むことを主眼に設計されています。エントランスのどっしりとしたアルミ鋳物の扉は、品川の茶室「有時庵」と同じ素材ですね。
博多には老舗の寿司割烹「河庄」がありますが、「やま中」はその弟子筋にあたります。福岡相互銀行:現福岡シティ銀行の設計のため福岡に頻繁に訪れていた磯崎新氏が、吉村順三氏設計になる「河庄」を訪れていたのが縁で山中氏としりあい、「やま中」独立時に建物を設計することになったのだそうです。

玄界灘の海の幸のすばらしさはもちろん、出し巻き玉子、茶碗蒸しなど店の「だし」を使ったものも、きょーれつに、おいしい。

■大宰府:福岡の小京都、か?

大宰府に行きました。生まれたときの宮参りが大宰府、次に小学校の修学旅行のときに、その次が高校時分に仲間と、その次が学生時代に車にて、よって今回がおそらく5度目。
お宮参りがここだったこともあって、親近感のある神社です。今回気づいたのは境内の楠の大木。楠の樹形はケヤキなどに比べれば雑然としていますが、そのぶん力強さがありますね。
お参りをしてー、今回初めて知ったのが、この奥に「だざいふえん」という遊園地があること。境内からそこに続く入り口もひっそりとしていて、多くの人に見過ごされてしまいそうなのだけれども、ジェットコースター、観覧車、リフト、バイキング、ビックリハウスなど、ひととおりの遊具施設があります。おどろき。

遊園地入口そばには、今年オープン予定の九州国立博物館のエントランスとなるトンネルが建設中でした。博物館のアクセスのためだけにトンネルを掘っているのだから、リッチな話。

 ☆

 
天満宮そばの「光明禅寺」にも、今回初めて行きました。禅寺の標準的な平面に庫裏や茶室が増築されたかたち、建物北側(正面側)に枯山水の庭があり、これは九州唯一だそうです。南側にも苔と白砂でつくれられた素晴らしい庭があり、しばし休憩させていただきました。たいへん蒸し暑い日であったのに、ここばかりには涼しい風が通り抜けます。まったく、日本建築は不思議です。


太宰府天満宮参道はそれほど長くはありませんが、両側に多くの土産物店が軒を並べます。「かさの家」という店で茶そばのセットと抹茶のセットをいただきました。焼きたての「梅ヶ枝餅」の、なんと美味しかったこと。外側のぱりっと焼けた部分の香ばしさと食感がすばらしー。
煮物の炊き合わせも出汁の味はよく効いているのにきれいな色に仕上がっていて、先ほどの枯山水ともども、ここは小京都かと、思った次第。天満宮に伝わる文化ももとは都からのものですしね。

 

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最終更新日04/09/15

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