建築作品ドキュメンテイション法

はじめに

建築図面、模型、スケッチ等をドキュメンテイションする方法、つまり写真への記録の仕方です。35mmのフィルムを想定しています。自己流ではありますが参考にしてください。写真に関する基本的な知識はあるものとして話を進めます。読み進めていく上での語彙不足を感じる方は、日本語では、www.konica.co.jp/how_to/Tit_.htm1 , www.nikon.co.jp/main/jpn/photography/index.htm 英語では、www.kodak.com , www.photo.net 等を一通り見てみることをお勧めします。

必要機材
一眼レフカメラ(ファインダーの視野率が出来るだけ高いもの、スポット採光できるもの、が便利)、単焦点レンズ(ズームレンズだと直線が弧を描く場合がある)、グレースケール(正しい露出を出すために必要)、三脚(シャッタースピードが遅くなるため)、水準器(図面撮影の際、図面とカメラのフィルム面を平行に保つために必要)
上記は絶対必要。下記はあれば非常に便利。
露出計、タングステンライト、80Aフィルター

ネガポジジレンマ
どのタイプのフィルムで記録するか決めなければなりません。白黒、カラー、ポジ、ネガどうするかです。それぞれに味がありどれがいいと一概に言えません。ネガで撮影すると撮影は簡単で(ラティチュードが広い)値段も安いが、色再現性は悪いです。ポジで撮影するとその逆です。私個人的な意見としてはネガで撮影し、色が悪いプリントは、ラボのおっさんに文句を言って良くしてもらうのがいいと思います。ただラボのおっさんも色再現に関しては悩みつづけています。良い関係を保つようにしましょう。REALAはかなりいいきめこまかさをしています。白のグラデーションも良いです。スライドでプレゼンをすることがメインであればポジでとるほうが良いと思いますが、プリントが目的であればネガのほうがいいと思います。ネガで取っていてもデュープでスライドを作れますし、ポジが必要な時はそのプリントを、ポジフィルムを使って取り直せば良いからです。

レンズ
広角レンズで模型をあおって取るとそれらしい模型写真になります。レンズのディストーションは調べておくのが良いでしょう。模型であればあまり気になりませんが、図面撮影では、直線がゆがむ可能性があります。100mm前後の単焦点レンズで平面を撮影すると写真の端から端までコントラストの高い写真が取れます。マクロレンズがあれば
相反則不軌
フジのASTIAは32秒露光しても補正は要らないが、私の愛用するTri-Xは十分の一秒を超えると相反則不軌の影響が極端に出てくる。つまり露出をより開いたり、色補正をしなくてはならないのです。模型撮影では全てにピントを合わすために絞りを絞りきることが多くシャッタースピードが遅くなるのでこのことに注意する必要があります。フイルムメーカーにいってデータをもらっておきましょう。インターネットでも手にいれることができます。


2D

図面のめくれ、しわを糊でつけたりアイロンかけたりして直す。
まず図面を三脚で撮影できそうな位置の壁(水平垂直平面ならどこでも良い)にはる。複数枚撮影する場合は大きい図面からはる。たての図面も横位置ではる。水準器で図面(紙)の線が水平垂直か調べ調整。メンテ等ではる(撮影後Photoshopで補正の予定があれば後で補正)。張った紙の位置を示す印を壁の4角につける。紙のサイズが同じ間はその印を利用し連続撮影(紙のサイズが変われば最初から同じことをする)。紙のサイズがA1,B1等の規格サイズであれば、四隅の対角線を壁に書き込むと便利。
フラッドライトがない場合午前中の日陰で撮影。この場合ぼんやりした影が図面上に落ちていないか注意。ライトがある場合は夜中等ほかの光が入らない状態で撮影。ライトを図面の中心に向かって45度の角度で最低2方向から当てる。図面の4隅、中心が同じ露出になるようにする。この時ライトを図面からできるだけ離す(ハレーションの危険がある)。
露出を測る。図面をはって、光源の準備ができたところで、図面の上にグレーカードを置きカメラの内臓露出計を使って測る。この時カメラのファインダーにはグレーカード以外を見えないようにし、影や、光源以外の光がグレーカードに入らないように注意し、その状態でレンズのピントは無限遠に合わせて露出を測る。絞りはf11かf8にしシャッタースピードで露出をあわせる(平面であるため被写界深度は関係なくレンズ特性としてf11、f8当たりが一番レンズ性能が良いため)。1/10秒を超えるシャッタースピードに注意する(相反則不軌)。自動露出カメラの場合、マニュアル露出モードにして上記の方法で測った露出を固定する。この露出は以後、図面の大きさが変わろうとも、カメラの位置が変わろうとも変えなくてよい(白い図面だとオーバーの、黒い図面だとアンダーの印が出るが設定は変えない)。しかしライトの位置を動かすのであれば露出を最初から測り直す。全体に薄い図面は露出を半段ぐらい落とすとうまく行く。
カメラの位置を決める。カメラを三脚にのせファインダーを覗き、撮影位置を決める。この時雲台の上が水平か(レベルで測る)、フィルム面と図面が平行かに(私は目測していた)注意する。またファインダーにはファインダー視野率というものがあり、フィルムに写る全面がファインダーから見えていないことに注意し撮影位置を決める。ネガの場合、普通のところはノートリミングの現像はできないので図面周りに余白を空ける必要があるし、ポジの場合もマウント蹴られを考える必要がある。正確に行うためには、テストをしておく必要がある。視野率が100%でないカメラで100%の状態を調べるには、フィルムを入れる前にシャッター幕のうえにトレペを重ね(シャッター幕には絶対触れない)シャッタースピードをbulbにしてシャッターを開き、位置を確認してから、フィルムを入れるようにすればできる。
レリーズを使って撮影する。ない場合はセルフシャッターを利用する。ピントあわせはオートフォーカスで行った場合でも撮影時はマニュアルフォーカスで撮影する。レリーズがない場合はセルフシャッターで行う。撮影の際はファインダーから入る光をふさいでおく。
ネガの場合、プリントは、それをプリントする人と直接話ができるところに持っていく。仕上がりはたいていの場合プリントの色は、原稿の色と違うので、その場に図面の紙と同じ紙を持っていき仕上がりをその色に合わせてもらう。ポジの場合色再現はほとんど同じに仕上がる(というより変えられない)。プロラボに持っていけば値は張るがかなりの仕上がりを期待でき、気に入るまで文句が言える。ポートフォリオ等のプリントはプロラボに頼みましょう。


3D

基本的には2Dの場合と同じであるが、根本的に違うのは立体であるために被写界深度の設定の必要性と、それによっておきる絞り、シャッタースピードの変かに対する対応、それとライティングである。以下の順序で行ってください。

模型のごみを落とす。
模型についたごみは写真に落とすとかなり目立ちます。
構図を決める。
被写界深度(f値)を決める。f値とレンズと被写界深度の関係のExcelファイルを作りました。参考にしてください。
露出をあわせ一呼吸して確認してから撮影。

ライティング構成とそれにあった露出を設定する。
ANSEL ADAMSのゾーンシステムというものがある。詳しい解説はwww.kt.rim.or.jp/~btzs/ , www2.nikkeibp.co.jp/ART/zone/を見ていただきたい。これらはかなり技術的な問題であるのでここで言いたいことだけをまとめると、ファインダー内の見せたい一番暗い部分のディティールと、一番明るいディティールの部分の光の量の差が絞り4段分であればてきとうな写真になるのだが、3段分であれば眠い写真に、5段分であればハイキーな写真になってしまうということである。つまり光の量を調節できる模型撮影では、絞り4段分にあわせた光の量にすることである。そして暗いがディティールを出したいところにスポットで露出をあわせ、出た値から2段絞り撮影する。これが基本である。がそううまく行くものではないので、ポジで取る場合は特に。光の種類にもぼやーとしたものから、影もはっきりしたものまでかなりの種類がある。テクニックもいろいろあるがここでは割愛する。商業写真の本当を読んで勉強してください。基本はフィルライトとスポットライトである。フォトランプ一灯だけではコントラストが強すぎるので、全体を照らす反射光を当てるとよい。撮影を二人以上で行い一人にライトを持ってちかづけたり離れたりして動いてもらうと楽に、わかりやすくできる。フォトランプがない場合南面に窓がある部屋で直接光があたらない場所で窓のほうを太陽の方向と考えて撮影すると案外うまく行く。


正しい撮影方法はいっぱい失敗をすることによって発見できるものです。図面や模型は思っている以上に早く傷みます。ぐずぐずしないで写真にさっさとおとしてしまいましょう。
ポートフォリオを作る際は同じような写真ばかりでなく、プロセス段階のスケッチを載せたり、模型写真もアップを取ったり引いたりして変化をつけましょう。

23Dec1998
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