6月17日(火)

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ムーミン谷

 日曜日の朝は、あいにくの雨であった。バスでタンペレスイミングセンターへ行こうかという提案も軽く無視され、我々は中央図書館に出かけた。タンペレの中央図書館は、雷鳥(懐かしのサンダーバードである)を模した斬新なデザインの建物を誇っており、タンペレのガイドブックでも始めの方で紹介されることが多い。上空から撮った写真を見るまでは何が雷鳥の形なのか分かりにくく、地上から撮った写真をいくら見ても、ピンと来ない。
 本来は2階の中央図書館へ来たのだが、日曜休館にて、困っていたところ、階下のムーミン博物館が空いていることに気がついた。入館は大人15マルッカ、子供5マルッカ(もちろん4歳の素子は無料)で、サルカンニエミの遊園地水族館に比べて割安である。ムーミンに興味のない人や、忙しい旅行者には魅力が乏しいかもしれないが、ムーミンを知っている人ならば、ゆっくりと一時を過ごすには良いところかもしれない。家内は気に入ったようで、もう一回行ってみたいと言っていた。
 図書館一階(地下と呼ぶべきかもしれない)には、ムーミン博物館(ムーミン谷)がある。原作者トーベ・ヤンソン直筆の原画スケッチやムーミンの物語(アニメではなく原作小説の)の有名な場面を模したミニチュア場面などが展示してある。「地球の歩き方」でも、タンペレのページの約半分を割いて紹介しているだけに、ときどきは日本人観光客が訪れるのであろうか、日本語のパンフレット(展示物が日本語で説明されている。貸してくれたが、購入希望者に売れるように、ちゃんと値段が(25マルッカと)書いてあった。

(サイクリング II)

 午後3時を回ったところで、雲がとぎれて来たので、一度アパートに戻り、家族でサイクリングに出かけることにした。素子を乗せた自転車を私が運転し、家内と智の自転車3台を連ねてのサイクリングである。目的地はアパートから西北へ直線で5Hのハタンパーである。タンペレのダウンタウンからヴィーニカン湾を挟んで南に500m、ピュハ湖の東岸から西に突き出した小さな半島の先端にある。途中の3/5は林間のハイキング道、残りは歩道を走ることになる。道はハイウエイや鉄道を避けるために折れ曲がり、途中2、3ヵ所の急坂では、自転車を降り、押して歩くことになったが、少なくとも車を心配せずにほとんどの行程を走れるのは安心である。智を同行させることにも、ほとんど不安はない。
  
 ハタンパーの公園は小さな半島の先端にあり、すぐ東隣には大きな病院もある。状態の良い入院看者の散歩道としては絶好の場所かもしれない。散歩をする人の他に、上半身裸でジョギングをする男性、それに、我々と同様のサイクリング者で、午後5時を過ぎているのに、結構にぎやかい。桟橋ではおじさんが一人釣をしていたが、湖水の透明度は、智がスポーツ教室で利用しているヘルバンタ湖やスオリ湖より劣る。透明度が低いのはダウンタウンを横切るタマー運河を見ていれば想像がつく。冬の三河湾(竹島付近)より透明度は低いかもしれない。一般にタンペレ近郊の湖の水は茶色である。もっときれいな湖水を見るには、人高密度の低い東部や北部へ出かける必要があるのだろう。
 6時半くらいにヘルバンタに戻るとスオリ湖から水泳帰りの家族が歩いてくる。子供たちがバスタオルを肩にかけているから水浴であろう。たしか午後3時の気温は22℃であった。サイクリングには丁度良い気温であったが、彼等はこの気温で水浴をするのであろうか。桟橋の飛び込み台から喜んで飛び込む子供たちは、フィンランド人。

夏至祭

 フィンランドでは、昼間明るい夏は大変貴重な季節で、昼間が最も長くなる夏至には特別な思いがあるのであろう。今度の週末は、夏至祭ということで金曜日が祝日となり3連休になる。職場の同僚から以前のサウナパーティの時に「夏至祭の週末、フィンランド人は全て湖畔の小屋に出かけ、湖畔でたき火をして、サウナに入るのだ。町はゴーストタウンになるから覚悟しておけ」と脅かされていたので、我家も町を脱出すべく画策した。2泊3日で、タンペレの北約100kmのルオベシ近郊にある農家に「ファームステイ」することにした。農家と言っても20人ものゲストを受け入れ可能な施設(「地球の歩き方」によるとデンマークとフィンランド全土にこのような農家があるらしい)で、外国人観光客向けに英語のパンフレットがあるぐらいであるから、純粋な農家とは言えないだろうが、この家には8歳の子供、猫、鶏、がちょうに、ぶたと犬がいる。
 とても水がきれいで冷たい小さな湖があると、以前マラさんから聞いた、ヘルベティンコル国立公園にも近いし、フィンランドを代表する画家、ガッレン・カッレラ(作曲家シベリウスと同時代の芸術家で、駐日大使館発行のフィンランドガイドブックの表紙は彼の描いた湖と森の絵である。子供向けシベリウスの伝記を読んでいたとき出てきたので、名前だけは知っていた。)のアトリエ(1895年築)も近い。
 パンフレットによると、我々が世話になるイラ・トウーホネン家は、ナシ湖(この湖はタンペレの北に接し、サルカンニエミの遊園地から見えた大きな湖であるが、南北に細長く、北はルオベシよりさらに北ヴィラットまで続いている。タンペレからヴィラットまでは、「詩人の道」と呼ばれ夏の間は観光船が往復している:片道8時間のクルーズ)の湖畔近くにあり、母屋と湖畔の小屋にサウナがある。いかにもフィンランド、湖畔に別荘を持たない我々が夏至祭を過ごすには最適な場所に思える。人間の冷熱耐久試験入門にはもってこいではないか。先週末に買ったビニールボートも無駄にならずに済みそうである。

(日没時間の訂正)

 新聞の土曜版にタンペレの日の出、日の入りの時間が書いてあったので、以前の不正確な情報を訂正したい。6月7日(土)の日の出:3時49分、日の入り:22時59分、6月14日(土)の日の出:3時43分、日の入り:23時08分である。

(月が見えた)

 今日、フィンランドに来て初めて月を見た。午後10時過ぎ、まだ明るい南の空に、よく見るとお月さまが浮かんでいる。見つけたのは智であった。大騒ぎしている智に月の場所を示されてやっと分かった。

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