我々を出迎えてくれたのは、トナカイではなく(トナカイのうんちは、牧場への道で数多く見つけたが)、ラップランドの蚊、しかも大群である。フィンランドのみならず、日本でも見たことのない大群。す、すごい。ファームステイや日曜日の野外博物館など比べものにならない数。早速、用意の防虫液を顔、手、首と露出部全てに塗込んだ。が、群がる蚊の群れは去る様子を見せない。
船着き場から、牧場に一歩足を踏み入れたとき、大群の発生理由が分かった気がする。放牧場は一面の湿地帯、建物のある小さな丘の麓まで、木製の歩道が続いている。尾瀬の湿原(の写真)のようである。これでは、トナカイの放牧場というよりは、蚊の飼育場でないか?牧場内では、トナカイに餌をやっておとなしくさせ、近くに行って触らせてくれたり、モンゴルのパオを木造で作ったような小屋の中でトナカイの肉を煮込んだスープをごちそうになったり(このスープは、おいしかった。月曜日の動物園見物でもトナカイの肉料理が出たそうであるが、においがきつくて食べれなかったと聞いていたが、さずがにスープにすれば、においも、肉の硬さも、逆に長所に転ずるのであろう。)したが、立っていても座っても蚊の群れから逃れる術はなく、歩いても立ち止まっても同じである。トナカイのスープと共にいただいたホームメードのビールが拍車をかけたのだろう、おでこを中心にブクブクに刺された。
トナカイ牧場を去って船がスピードを上げるまで、蚊の群れから逃れることはできなかった。室内に多少、蚊がまぎれ込んでいるとはいえ、ホテルに戻ってほっとした。帰りのボートで減りつつある蚊がウインドウブレーカーの上で休息するのを観察したが、ヤブ蚊に近い縞々模様の胴体を持ち、サイズはヤブ蚊の1.2倍か、聞いていたように、ラップランドの蚊は、やや大きい。蚊に弱い人は、よくよく慎重に考え、覚悟を決めた上でトナカイ牧場を訪ねるべきである。