●5大新聞で見た今週のインド

Indian Express (Delhi)

Deccan Herald (Bangalore)

The Economic Times (Delhi)

The Times of India (Delhi)

The Hindstan Times (New Delhi)

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●インドにおけるスラム問題(990401)

新聞記事:

 先日、デリー中心部近くのスラム街にて大きな火災が発生しました。公式発表による死者は40人程度、家を失った人は2000人に上るとのことですが、人口を把握することの難しいインドのことですから、実際の死者はそれ以上に上るとの説もあります。死者の中には一家族9人が全員死亡した例もあります。

【火災の概要】
 今回火事の遭った場所はニューデリーとオールドデリーの境目に近く、日本でも報道された通り、貧民街で、1軒1軒の家が密接に立ち並んでいる地区です。当然、火事に対するもしくは緊急時に対する非難広報の整備などなされていません。インドの3月は乾期にあたり雨は全く降らず空気は乾燥しその日はたまたま風も強かったために被害を大きくしました。さらに、この近辺は交通事情がさほど良くなく、慢性的に道路が混雑しています。

 こう言った様々な事情で午後3時頃に発生した火災の消火作業が午後4時頃から始まり救急車も午後4時過ぎになってやっと到着したとのことです。日本では考えられないほどの時間のかかる作業です。
 
 インドでは救急車は、人が死んでからくるから日本で言う霊柩車との悪口をしばしば耳にしますが、 確かに3時に発生した火事で救急車が4時過ぎにしかこないのであれば、こう言った悪口を叩かれても仕方ないのかもしれません。実際に今回の火災の後現地の新聞には救急車車内に積み重ねられた子供の遺体の写真が掲載されていました。

【原因】
 今回の火事の原因は不法に引き込んだ電線による漏電で火災が発生したと言われています。驚いたことにスラム街にも数多くの電化製品が存在しラジオもあればテレビのある家庭も当然あります。そういった電化製品使用のために電線から不法に電気を引き、たこあし配線が次なるたこあし配線を呼び、漏電が起きてしまいます。彼らは法的に保障された家を持たないだけで実際の暮らしはその他の裕福では無いインド人ともあまり変わらぬ暮らしをしているというインド人もいます。

 最近デリーでは政府主導のもとにガス管の整備を始めたそうですが(現在はプロパンガスを各家庭で購入している)、ガス管がデリー市内中を網羅することになった際には今度は電線と同じようにガス管も不法に引き込みガス爆発の危険もあるのではないかと噂されています。

【スラム】
 インドでは近年農村部から都市部への人口流入が激しくなっています。人口の爆発的増加、海外企業のインド進出などの要因に依る経済構造の変化などが一因といわれています。インドの首都であるデリーを始め、インド経済の中心地であるボンベイや4大都市のマドラス、カルカッタなどを中心にそのような傾向があるようです。インド国内のビハール州やウッタルプラデーシュ州などからの出稼ぎ労働者、インド国外バングラデシュからの出稼ぎ労働者の増加です。彼らはデリー市内へ出てくるとヤムナー川沿いの政府所有の土地に勝手に家を建て、居着いてしまうのです。

 これに対しインド政府が強制立ち退きなど何らかの措置をとるかと言えばそうではなく、実際には彼らにも選挙権が認められている為に何も手を出せないのが現状のようです。特にスラム街での人口は他と比べてもおおいため票集めのためには彼らの力も必要不可欠となるから仕方が無いとは、私の友人の某インド人ビジネスマンの弁です。

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