香港映画の原作・ノベライゼイション

香港映画の原作や、脚本をノベライズした小説などの紹介です。


秦俑 秦俑

李碧華
天地圖書有限公司(香港) 1989

これは89年の作品「テラコッタ・ウォリア」の原作です。作者のリー・ピクワー(李碧華)はこの映画の脚本も担当していますが、これが脚本をノベライスしたものなのか、それともこの小説をもとに脚本を書いたのかは、ちょっとはっきりしません。しかし多分、秦俑という時事的に話題性のある題材を扱っていることや、脚本を書くにあたってあの有名な時間SF映画「ある日どこかで」を参考にした等の話も聞くので、脚本が先だったのではないかと予想してます。
物語は、一人の男が一人の女性の生まれ変わりと三度愛し合うという、時代を超えたロマン溢れるSF恋愛小説になっています。
ここに紹介した本は映画の公開に合わせて出版されたもので、本の中には映画のシーンの写真も何枚か収められています。そしてこの装幀ですが、金色の地にコン・リー(鞏俐)の顔をアレンジしたデザインは、この映画の美術監督であるハイ・チョンマン(奚仲文)が手掛けています。(ちなみにハイ・チョンマンは、先頃日本で公開された「アンナ・マデリーナ」の監督でもあります。)


潘金蓮之前世今生 潘金蓮之前世今生

李碧華
天地圖書有限公司(香港) 1989

これは「ジョイ・ウォンのリインカネーション」(89)の原作。上の「秦俑」と同じリー・ピクワーの小説です。
タイトルにもある潘金蓮とは、中国四大奇書の一つ「金瓶梅」に登場する人物で、中華文化圏では割とポピュラーな存在です。この物語は、「金瓶梅」の登場人物の生まれ変わりが、現代において再び同じ運命を辿ってしまうというストーリーになっています。こういう輪廻転生を題材した物語は、同じ作者による「秦俑」にも通じるところがあるように思います。リー・ピクワーの原作・脚本による香港映画作品は、他にも「ルージュ」(88)、「青蛇転生」(93)、「さらばわが愛 覇王別姫」(93)など多数あります。


自梳 自梳

小唐
尖端出版有限公司(台湾) 1997

なんだか昭和30年代の婦人小説のような表紙ですが、これは97年の東京国際映画祭で公開された「女ともだち(自梳)」のノベライズで、脚本家の小唐自身によるものです。この本も映画の公開に合わせて出版されたもので、本の中には映画のシーンの写真などが収められています。しかしこの表紙の絵、一応カリーナ・ラウ(劉嘉玲)とチャーリー・ヤン(楊采妮)のつもりなんだろうか?
本の前書きでは、この映画の監督で製作者でもあるジェイコブ・チャン(張之亮)が、自梳とはどういうものか、そして何故自梳を描こうとしたのかを詳しく説明しています。


笑傲江湖 秘曲 笑傲江湖 (全7巻)

金庸:著 小島瑞紀:訳 岡崎由美:監修
徳間書店(日本) 1998

これはあの「スウォーズマン」シリーズの原作です。
作者の金庸は、香港をはじめ中華文化圏では非常に有名な武侠小説の作家で、日本では徳間書店が96年頃から彼の作品の日本語訳の出版を始め、既に「書剣恩仇録」「碧血剣」「侠客行」等の小説集が出版されて、日本でもちょっとしたブームになっているようです。
金庸の武侠小説は一度読み始めたら止まらない面白さと言われますが、しかしこの「笑傲江湖」などは全部で7巻もあるので、これを読み始めたら延々と7冊読み続ける羽目に陥ってしまいます。気を付けましょう。金庸の武侠小説がどう面白いかを説明するのは簡単で、要するにこれは「香港映画そのもの」なのです。
映画の「スウォーズマン」シリーズは、登場するキャラクターが多彩で、しかもキャラクターの性格付けが非常にはっきりしていて個性的なのが特徴ですが(このページ参照)、それは本来金庸の小説の特徴でもあったようです。原作は映画とは随分違いますが、代表的なキャラクターは全部登場するので、比べてみるのも面白いです。
金庸の小説の映画化作品はこの他にも多く、「カンフー・カルト・マスター 魔教教主(倚天屠龍記之魔教教主)」(93)、「鹿鼎記」(92)、「大英雄(射鵰英雄傳之東成西就)」(93)、「楽園の瑕(東邪西毒)」(94)などがあります。
金庸に興味のある方は、この他の出版物として、「武侠小説の巨人 金庸の世界」 監修:岡崎由美 徳間書店(96)、「きわめつき武侠小説指南」監修:岡崎由美 徳間書店(98)等もご覧下さい。


南京の基督 南京の基督

原作/芥川龍之介 脚本/ジョイス・チャン(陳韻文) ノベライズ/丹後達臣
扶桑社(日本) 1995

この本は文庫サイズですが、厚手の上質紙で出来ていて、映画のシーンのカラー写真が非常に沢山載っている(もちろん富田靖子のヌードとかも)、ほとんど映画の写真集と言っていいようなものです。実は私がこれを買ったのも、小説が読みたかったというより、写真が見たかったからなのでした。もし小説が読みたかったのなら、芥川龍之介の原作の方を捜したと思う。
原作のあるものを再度ノベライズするというのも、どういうものかと思いますが、この本の場合は写真がメインだから(なんて言っちゃ悪いかなあ)こういうのも有りかもです。


1998/12/26

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