暗闇の中に突然放り込まれたような感覚だった。 ”どこかしら、ココ…?” 辺りを見回す。 そこは徐々に形を整えていき、見覚えのある場所へと変わってゆく。 そして、見覚えのある顔が浮かんでくる。 『あした…父さんに会わなきゃならないんだ…何を話せばいいと思う?』 ”……ダレ?” 少し困ったような顔をして自分の顔を上目づかいにみている。 いつの間にか、ふたりでエレベーターに乗っていた。 『そうそう。掃除の時、ゾウキンを絞ってるの見てたらさ、なんか“お母 さん”って感じがした』 少し頬を染め、照れと恥ずかしさを混ぜたような顔をして話していた。 ”…お母さん……?” 向かい合った彼は自分の瞳を見つめていた。 場所が変わっていた、どうやら芦ノ湖の湖畔らしかった。 『案外、主婦とかが似合っていたりして。アハハハ』 空には月がでていた。 その月は湖面にも綺麗な円を描いている。 ”…バカなこと……言わないで” 湖面に起こるさざ波で、月はゆらゆらと揺れるように形を変えていた。 目の前には向かい合って笑う、瞳があった。 そしてその瞳は…
_____紅い色をしていた。
50000 Hits Anniversary for K.Ranmabayashi's Home Page. 一つの終わり、一つの始まり
彼女は、目を開けた。 その目には、見慣れた天井がただ写っているだけだった。 「ユメ…なの…?」 そのままの姿勢で、一人つぶやく。 「ユメ、私の心の見せる幻想…」 ゆっくりと体を起こして、そばに置いてある時計に目をやる。 午前6時半。 いつもより30分ばかり早起きだった。 「あれは…」 そういいながらまだ頭の片隅に残っている夢を反芻してみる。 しかし、その試みはうまくいかなかった。 「紅い、瞳…」 その印象が、彼女の記憶に強烈に残っていた。 ベットから起き上がっている彼女は、バスルームへと向かった。
2018年
シャワーを浴びて部屋に戻ると体を拭き、着替え始める。
『ここへ行くことを考えてみてはどうかね』 『?』 『高校だよ』 『がっこう…?』 『そうだ、その自由はあるよ』 『自由…』 『そうだ』 『…そうですか…』 学校、別にどうでもよかった、私には。 自由。 それが私にある、と言われた。 命令じゃ、なかった。 「そう、でも私は学校に行くことを選んだ」 そう…選んだ、自分で。
すっかり着替え終わった彼女は自分の髪の毛を触り、まだ湿っているのを確 認して、洗面台へと向かう。 ドライヤーを手に取り、電源を入れる。 柔らかくて暖かい風が彼女の顔にかかる。 彼女は鏡を見ながら、自分の髪を乾かし始める。 いつもと同じ、自分の顔。 いつもと変わらない、毎日。 けれど、今日は… 「どうして…」 それは、珍しく夢を見たせいかも知れなかった。 それが、彼女の心に少しばかりの変化を起こさせたのだ。 鏡に映る、自分。そして夢でも見た、紅い瞳。 「私は、ここにいるのね」 彼女は、ドライヤーの立てる音にかき消えそうな声で、そうつぶやいた。
2018年、8月。
8月、暑い夏。 夏、それは18年前になくなった。 いまは、何月でも一緒。
登校のために自分の部屋を出る。 むっとする熱気と蝉の鳴き声。 そこは、以前住んでいた殺風景な団地の一室ではなかった。 第3新東京市内の、小奇麗なマンション。 茶色のレンガの壁を持つ、マンションの一室に今は住んでいた。 これも、あの後与えられたものだった。 ドアを閉め、鍵をかけると階段に向かう。 2階分の階段を降りて、エントランスへ出る。 学校までは歩いて10分といったところか。 マンションを出て、バス通りを歩き、そして図書館の脇を通る。 その先には、大きなブナの木がはえている公園があった。 その公園を横切ると、学校が見えてくる。 いつもと同じ光景、同じ時間。 変わりのない、彼女、綾波レイ。 その時、レイは気が付いた。 その公園の中央に立っている、大きなブナの木にもたれるようにしている、 一人の少年に。 もちろん立ちふさがっているわけではないので、特に邪魔というわけではなかっ た。 レイはいつもと同じように、なんの関心も見せず通り過ぎようとした。 その時その少年が声を、発した。 「あの…」 その声にレイは立ち止まり、声のしたほうに顔を向けた。 「…」 レイは思わず目を見開いた。 そして、口からは声が漏れそうになっていた。 ブナに寄り掛かっていた少年は、レイの記憶の中にある人とあまりにもそっ くりだった。 居るはずの無い人、よみがえる記憶。
『君がファーストチルドレンだね?』 『綾波レイ』 『君は僕と同じだね』
「あな…」 あなた、ダレ、といいかけてレイは言葉を変えた。 「なに…?」 その少年は、少し慌てたように話す。 「いや、違ってたら悪いんだけど…」 少年は困ったような笑いを浮かべて続ける。 「その…どこかであったこと、なかったっけ?」 少しの沈黙。 「いいえ。ないわ」 レイは、にべもなく答えた。 「そう…いや、ごめんなさい。人違いだったようだね」 少年はそう言って微笑んだ。 記憶の中の人。 だけど、少し違う。 彼は茶色の瞳を少し悲しそうに曇らせて、口を開きかけた。 が、思い直したように口を閉じると、 「呼び止めて、悪かったね」 そう言うと、少年はゆっくりと立ち去っていった。 彼女は、その背中を少しの間見ていたが、表情を変えることなく学校へと向かっ た。
「いいかあ、今が大事なんだからな」 教室に教師の声が響く。 月曜日の最後の授業はホームルームと呼ばれる、生活指導の時間だった。 「今どき、大学くらい出てないと就職口なんてないぞ」 変わってしまったのは、季節感だけだった。 生徒の間から、まだ二年だぜ、という声が漏れる。 教師はそれを聞きとがめたように、さらに大きな声を出す。 「それ、それがいけないんだ。そんな事言ってる人はお先真っ暗、行くとこナシ 」 セカンド・インパクト以前となんの変わりもない。 良い学校を出て、良いところへ就職する。 人などそうそう変わるものではないらしい。
”あの人、待ってた…” レイはそんな教師の話など上の空で、頬杖をついて窓の外を見ていた。 窓際の一番後ろの席。 いつからかそこがレイの指定席のようになっていた。 ”私を待ってた” 思いだしてみる。 『あったこと、なかったっけ?』 ブナの木にもたれた、少年。 その顔が別の顔に重なる。 『君は、僕と同じだね』 そう言って微笑んだ紅い瞳の、人。 ”でも…どうして…?” ざわざわと、胸の奥がざわめく。 「なに…?この感じ…」 レイは声に出して、つぶやいた。 そのつぶやきが聞こえたのか、隣の女子生徒がいぶかしそうな顔をしてレイ をちらりと見る。 が、それだけだった。 レイには友人と呼べる人はこの学校にはいなかった。 すでに入学から2年が経っていたが、それを特に苦痛に感じることもない。 昔からそうだったから。 でも… やはりなつかしい声は、ある。 レイは、ふとそんなことを思った。
3年前のあの時、『人類補完計画』は発動しなかった。 全ての思惑は、水泡に帰した。 エヴァ初号機によって… だけど、人類は滅びなかった。 何も、変わらなかった。
そしてあの人は死んだ… そして知っている人はいなくなった。 そして……私は初めて自分の意志を持った。 やはり、変わった。何かが…
ガタガタッとなる机とイスの音で、レイは我に返った。 静かだった教室に、ザワザワと話し声があふれていく。 いつの間にか授業が終わっていたらしい。 今日の最後の授業だった。 教室の前で声を張り上げていた教師も、すでにいなくなっていた。 机の上にひろげてあった白紙のノートが、窓から入ってくる風でパラパラ と めくれてゆく。 その風は、レイの髪の毛もゆらしていった。 レイはそのノートをパタンと閉じると、帰り支度を始めた。
第3新東京市立病院。 レイは学校の帰りに、自分の家からは反対方向にあるそこに寄った。 コンクリートむき出しの門、くすんでしまった白い壁。 外見は古くなっていたが、設備は問題なかった。 ガタガタっと立て付けの悪そうな音を立てる自動ドアをくぐって病院に入る。 中は空調が効いていて、快適な温度に調節してあった。 レイはどう見ても涼みに来たとしか思えない人達がたむろしているロビーを 慣れたように横切り、まっすぐに階段に向かった。 エレベーターももちろんあるのだが、レイは何故かそれを使おうとしなかった。 階段を3階まで上がり、窓から日が射している廊下を歩きだす。 リノリウムの床に足音がかすかに響く。 その途中、向こうから一人の看護婦が歩いてくる。 彼女は、レイを認めて少し微笑んだ。 「こんにちは」 何度か会っているような感じで、彼女はレイに声をかけた。 「こんにちは」 レイもそれに答えて返事を返す。 人に挨拶を返すなど、3年前のレイからは想像も出来ないことだ。 3年という月日は短いようでいて、人に変化を与えるには十分なのかも知れない 。 病室の扉の前に立った、レイ。 そのドアのプレートには、『303 碇シンジ』と書かれていた。 ノックをすると、どうぞ、という声が中からする。 付き添いの看護婦の声だ。 彼女はレイを微笑んで迎えた。 「あら、綾波さんじゃない。シンジ君、綾波さん来たわよー」 看護婦はシンジに声をかける。 声をかけられたベットの上のシンジは、折りかけの紙飛行機を脇へぽいっと 置くと嬉しそうにレイを見る。 「レイしゃんだ。こんちはっ、レイしゃん」 「…こんにちは、碇くん」
3年前。 最後の第拾八使徒との戦い、『アダム』との接触、『人類補完計画』の阻止。 そして…自ら手にかけた、父ゲンドウの死。 それら全ては、圧倒的な精神負荷としてシンジを襲った。 もともと、精神に負荷はかかっていたのだ。 むしろ、臨界を突破してしまった、というべきだろう。 そしてその結果、シンジの精神は崩壊した。 担当医に言わせれば正しくは逆行で、現在のシンジは3歳頃の精神状態なの だそうだ。 さらには、シンジはベットからほとんど起き上がることが出来なかった。 これは精神と肉体のバランスが崩れてしまったことが原因のようだった。 ただ前例のないことであり、いかなる検査によっても原因の特定は出来な かった。 そういう経緯を踏まえたうえで…… 上手く行けば、 医師はそう断ってから言った。 「上手く行けば、このまま成長していけるかも知れません」 ただ、負荷が並のレベルではないので、判断しかねるとのことだった。 仕方のない話なのだが、エヴァからのパルス逆流による精神汚染度までは測 れない。 というよりもそれがあったのか、無かったのかすら分からないのだ。 すでにそれを測る術を知っている人も機械もない、ということだった。
「どうぞ」 付き添いの看護婦はそう言ってイスを出してくれた。 「はい」 と言ってレイはそれに座る。 以来レイは、週に2〜3回くらいここに来るようになった。 なぜそうしようと思ったかは分からないし、来ても何ができるわけでもな かった。 シンジの傍らに座り、シンジが明るく話すのを黙って聞く。 そして、しばらくそうしてから帰るのだ。 今日もそうだった。 特に反応もせず、めったに表情も変えないレイに対してシンジはよくしゃ べった。 昨日読んだ本、今日食べたもの、感じたこと、思ったこと、、、、 とにかく何でもかんでも全部をレイに話した。 話し疲れて眠ってしまうか、話すことが無くなって困るくらいまでシンジは しゃべった。 そうしてから、レイは帰るのだった。 今日は話し疲れて眠ってしまったシンジを見ながら、レイはイスから立ち上 がった。 体つきこそ14歳のそれのままだったが、顔つきや表情は3歳のものだった。 「ありがとうね、綾波さん」 付き添いの看護婦がレイにお礼を言う。 「…いえ、さよなら」 そう言ってレイはドアを開けた。
「…ありがとう、感謝の言葉。でも感謝されるようなことは、し ていない……」
病院を出たレイは、芦ノ湖に寄ってゆくことにした。 芦ノ湖の湖畔。 レイはよくこの場所に来ていた。 いつでもここは風が気持ち良かった。 気分転換したいときや、落ち着きたいときなどはこの場所で読書などをする。 そして日が暮れるころになって、帰る。 そういう場所だった。 けれども、今日はなにか変な感じだった。 頬に当たる風はいつもと変わらず、気持ちの良いものなのに。 朝の夢から始まって、あの少年に会ってからというもの、今日はどこかおか しかった。 落ち着きたくて来たのに、少しも落ち着くことが出来なかった。 レイは、湖の方に歩いていった。湖面は静かにさざ波をたてている。 その湖面を静かに見つめる。 青い湖面を__ 「やあ」 その時、聞き覚えのある声がした。 レイは、振り向いて自分の認識が正しいのを確認した。 「やあ、また会ったね。何をしてるの?」 朝会った、ブナに寄り掛かった少年がそこに立っていた。 彼は穏やかに微笑みながら歩み寄ってきた。 「あなた、誰?何か、用?」 レイは表情を変えず、口を開いた。 「ゴメン、名乗ってなかったね」 その少年はそう言って謝ると、酒城ナオ、と名乗った。 「さかるぎ、なお…」 レイは少年の名前を繰り返した。 「そう、でも多分…」 ナオは湖面を見つめていた。 「多分、本当の名前じゃない」 芦ノ湖のさざ波は、穏やかに太陽の光を反射させていた。 「……」 レイは何も言わなかった。 「記憶が無いんだ。いつから記憶が無いのかも、分からない」 そう言ってナオは寂しそうな微笑みをレイに向けた。 「それで?」 レイの返事は短かった。 確かにその説明だけでは、ナオがレイになんの用があるのか分からなかった。 しかしその分を差し引いたとしても、レイの反応はあまりにも冷い。 彼女は警戒していた、この少年を。 「君を見たとき、何か思い出したような気がしたんだ」 そんなレイの反応には頓着した様子を見せずに、ナオはそう言った。 「なつかしい感じがした。ひょっとしたら、僕の知っている人かも知れな いって…」 レイは話をするナオを無表情に見つめていた。 「話をすれば、何か思い出すかも知れないと思ってね」 「そう…それで、思いだしたの?」 レイの言葉にナオは苦笑する。 「いや。それが、何も」 でも、と続ける。 「でも、確信はしたよ。僕は君を確かに知っているし、君は僕を知っている はずだ、と」 「でも私は知らないわ、あなたなんて」 レイはことさら冷たく言い放った。 ざわざわと胸騒ぎがする。
”なに…この感じ…”
「きっと会えてよかったんだと思う」 ナオは考え考え、ゆっくりとそう言った。 「……」 レイはそのナオの言葉にはなんの返事もせず、黙ってきびすを返した。 「帰るのかい?」 ナオの言葉を背中で受けつつレイは答えた。 「…ええ。さよなら」 少し微笑んで、彼は言った。 「また、会えるよ。きっと」 それに対するレイの返事はなかった。
「…そうなの…?いいえ。あの人は、あの時に消えたわ。でも… 」 「でも、あの人…同じ感じがする…」
翌日。
ドアをあけたその顔は一瞬おどろいたような顔をした。 しかしその顔はすぐに微笑みに変わった。 「あら、綾波さん。珍しいじゃない、二日続けてなんて」 レイは再びシンジのもとを訪れていた。何故かは自分でも説明できなかった。 そうしなければいけない気がした、ただそれだけだった。 「こんにちは」 レイは今日は先に挨拶をした。 「こんにちは、綾波さん…」 付き添いの彼女は、そう言って少し表情を曇らせる。 「あの…ごめんなさい。シンジ君、さっき寝たばかりなのよ…」 本当に申し訳なさそうに、彼女は言った。 「…そうですか」 そう言いながら、レイは病室に入っていった。 どうぞ、と言われてだされた椅子に座りシンジの寝顔を見つめる。 シンジは本当に安らかな微笑みを浮かべて眠っていた。 穏やかな寝顔。 その穏やかさは、一瞬レイをほっとさせる。 恐らくは楽しい夢でも見ているのだろう。 レイは、そんな寝顔をだまって見つめていた。 ”碇くん…” 言葉が心からあふれてくる。 ”昨日、フィフスチルドレンに似た人にあったわ” まるで、5分前のことのように感じる。 ”でも違う人。でも、同じ感じの人” いつもと立場が逆転したように、レイはシンジに向かって話しかけた。 ”分からない、私には。どうして…?” なにも言わず、だまって見つめていることを話す、と言っても良いのなら。 「碇くん…」 レイは、思わず声にだしてつぶやいた。 「ん、んんー」 シンジが寝返りを打つ。 レイは声をだしたことを恥ずかしがったのか、それともそれを聞いたシンジ が寝言を言いながら寝返りを打ったことにびっくりしたのか、少し頬を染めて 看護婦に謝った。 「いいのよ。大丈夫みたいだしね」 彼女は笑ってそういった。 その彼女の微笑みは、余りにも真剣にシンジの顔を見つめるレイの気持ちを 勘違いしたものが混じっていたようだ。 もちろん、レイはその看護婦がそんなことを考えていることなど気付きもし なかったが。 「あの…私、帰ります…」 レイはそう言って突然立ち上がった。 「え?もう…?」 看護婦はびっくりしたように聞き返す。 「そんなに気を使わなくってもいいのよ、綾波さん」 「いえ…他に、用があるので…」 レイにしては珍しく、ウソを言ってその場を退出しようとしていた。 「そう、それなら仕方ないわね。また来てね、シンジ君も待ってるから」 看護婦は、それ以上は何も言わずに笑顔で言った。 はい、と返事をしてレイは病室をでた。 廊下を歩きながら考える。 ”どうして、ついたのかしら。ウソ…” 何故ウソをついてまで、帰ろうとしたのか自分でもわからなかった。 もちろん他に用事など、ない。 シンジの顔をまともに見れなくなったのだ、あの時。 そして、遠ざかってゆく感覚をシンジに感じた。 今までに感じたことのない、感情。そして戸惑い。そして…… 恐怖。 心に沸き上がって来た自分の感情をレイは理解できなかった。 その脳裏に浮かぶのは、ユメで見た、紅い瞳。
「……何?この感じ。今までに感じたことのない、感じ…」 「碇…くん?分からない……」
それから三日。 レイは自宅のベットの上で、うつぶせになって寝転がっていた。 学校は今週を最後に夏休みに入っていた。 週末までの三日間、レイは学校に通いはしたが授業はまるで上の空だった。 というよりも学校に通った記憶さえ彼女には、無い。 もっとも夏休み前最後の週だったので、授業らしい授業はなかったのだが。 今うつぶせになって虚空を見つめるレイの頭からは、学校のことなどありは しなかった。 色々な思いが浮かんでは消え、消えては浮かんでいった。 二度しか会っていない人間のことが、頭から離れなかった。 あの時の人に似た人、そして自分に似ていた人。 酒城ナオ、という名の少年。 あれから、シンジのところへも顔を出していなかった。 もちろん芦ノ湖の湖畔にも、行っていなかった。 レイは自覚していなかったが、怖かったのだ。 あの、酒城ナオ、という少年に会うのが。そして話をするのが。 レイは彼に対して異常に警戒心を抱いていた。 ”私は私…関係ない” そう思っていても、理解できない恐怖がレイの心には存在した。 ”私…怖いの?何が、怖いの…?” レイは自問自答していた。 彼が自分と同じである、ということを知ることだろうか。いや… いや、むしろ自分が彼と同じである、ということを知るのを怖がっているのだ。 忘れているもの、気付かないもの、気付かないふりをしているもの。 そういったものを思い出してしまいそうな雰囲気をレイは感じていた、あの ナオという少年に。 しかし、彼は言っていた。 『また会えるよ。きっとね』 そう、レイもその予感はあった。 いずれ、また出会ってしまう。 ”…どうして、怖いの…?” 答えのない問答を繰り返すだけ。 ただ時間だけがすぎてゆく。 ”碇くん…分からない…私は…”
___レイはまくらに顔を押し付けた。
第3新東京市の街並。 それは今だ要塞都市としての面影を残していた。 もちろんジオフロントは閉鎖していたし、エヴァ戦闘用の各種ビル型格納庫 も今はほとんどが通常のビルへと建て換えられている。 ちなみにジオフロントはテーマパーク化計画が持ち上がったが、予算や心情 的な面での猛反対にあい、実現には至らなかった。 第3新東京市は2015年を境に超近代都市への道を歩み始めていた。 そしてそれはほとんどが実現されているといってよいだろう。 整備されたインフラ、生活するのに困らない物量、洗練されたビル群。 そしてなによりも、自然との調和。 おそらく、これなくして第3新東京市を「超」近代都市とは呼べない。 そのほとんどが、セカンド・インパクト以後の出来事によってもたらされた、 なかば自然な成り行きだったとしても。 セカンド・インパクトにより滅茶苦茶になってしまった地球の環境も、以前 に比べればだんだんとそれ以前へと戻っているらしい。 ただ、それは極めて微々たるものなのだが。
今だ暑い夏が1年中続く第3新東京市。 道に落ちる影は、その日差しの強さを証明するかのように真っ黒だった。 街路樹は青々と繁り、涼しげな木陰を作ってはいたがこの暑さではあまり効 果は期待できなかった。 まっすぐに伸びた道に並ぶ街路樹とくすんだ白い壁。 鼻歌を口ずさみながら、自分の影を追いかけるようにゆっくりと歩く。 「♪ラララ…」 交響曲第九番。 「♪…ラララララーララ」 コツンッ。 その時頭に何かが当たった。 「ん…?」 それはブルーの折り紙で折られた紙飛行機だった。 自分に当たって道へ落ちたそれを拾い上げる。 その折り紙の飛行機は丁寧に折られていた。 これなら良く飛びそうだ。 そう思いながら飛んできたと思われるほうへと目を向ける。 くすんだ壁の向こう側はどうやら病院のようだった。 「そういえば…」 さっき通った門にそう書いてあったっけ。 そうつぶやきながら視線を滑らせると、3階の一室の窓が開いている。 多分あそこから飛んできたのだろう。 「これは、返してあげたほうがよさそうだな…」 キレイに折られた紙飛行機を手にそう言うと、病院の入口の方に 引き返しはじめた。
ガチャ
ドアを開けて病室に入ると、いきなり何かが自分に向かって飛んでくる。 とっさにだした手のひらに当たったのは、紙飛行機だった。 レイは床に落ちた紙飛行機から視線をベットに移すと嬉しそうな顔のシンジ がいた。 どうやらレイをびっくりさせようとしてタイミングを計って投げたようだ。 彼の周りには十数機の紙飛行機が折られておいてあった。 「こんちはっ、レイしゃん」 しかし、レイはその言葉に返事を返すことが出来なかった。 わずかに見開かれる、レイの紅い瞳。 「…どうして、ココにいるの…」 シンジの傍らにはイスに座ってシンジと共に笑っている、酒城ナオの姿が あった。 「シンジくんの紙飛行機を拾ってね。届けに来たんだよ」 驚いた様子もなく、ナオはそう言った。 「綾波さんっていうんだってね。君もシンジくんと知り合いだったんだね」 笑顔。 「…ええ」 嫌悪。 それはレイにとってはほとんど初めてといっていい感情だった。 ”私は私…関係ないわ” しかしナオはそんなレイの心に入ってくる様に感じられた。 ”あの人は、私と同じ…” レイは目を伏せて部屋に入ったところで立ち尽くしている。 「っと。それじゃあ…」 ナオはそう言ってイスから立ち上がる。 「僕はこれで。シンジくん、じゃあね」 そう言って傍らの看護婦に挨拶をするように軽く頭を下げる。 シンジは、うん、と笑顔でナオに返事をした。 その表情は、まるで以前から知っていたかのような親しさを感じさせた。 ドアへ向かって歩いてくるナオが、まるで自分の方へ歩いてくるような錯覚を 起こしてレイは少し後退りした。 そのすれ違いざま、ナオはレイだけに聞こえるような声で言った。 「…シンジくん、心を閉ざしているんだね」 レイはその言葉に、はっ、と顔を上げた。 その視線の先には、哀しそうなまなざしをしてドアを出てゆくナオの横顔が あった。 レイはナオが出て行ったドアをしばらく眺めていた。 「シンジくん、知らない人はダメなのに…どうして彼は大丈夫だったのかしら… ?」 付き添いの看護婦はナオが出ていったドアを見つめながら、そうつぶやいた。 それは返事を欲しがっている、というよりもむしろ独り言に近いものだった。 彼女も言っても仕方ないことだと思ったのか、レイには返事を求めなかったし、 それほどこだわった様子はなかった。 レイの耳にももちろんその言葉は入っていたが、先程のナオの言葉が気にかかっ て いたのでそのまま反対の耳から出ていってしまっていた。 ”心を…閉ざして…” レイはドアから視線を外し向き直ると、さっき自分に向かって飛んできた紙 飛行機を床から拾い上げた。 「はい…碇くん」 レイはそう言ってピンクの折り紙で折られた紙飛行機をシンジに差し出した。 「すごいでしょ?シンジくん、あっという間にそんなうまく折れるように なっちゃって。私よりうまいんだもの、参っちゃうわよねぇ」 付き添いの看護婦はそう言って苦笑を浮かべる。 確かにその紙飛行機はこれ以上ないくらいキレイに折られていた。 「昔から…」 レイがふと思い出したようにつぶやく。 「昔から碇くん、器用なほうだったから…手先とかは…」 レイがシンジの昔のことを話すのはまれだった。 まれ、というよりも皆無だったのだ、シンジがこんな状態になってしまってから は。 「そう…」 寂しげ、というよりも気の毒そうに看護婦は言い、それ以上その話をしよう とはしなかった。 その間にもシンジは自分の折った紙飛行機を眺めていた。 そしてさっき拾ってきてもらったばかりのものを手にすると、ビリヤードの キューのように2、3度試すように軽く振り、窓の外に放った。 しかし一度飛ばしてしまったものはどこかバランスが崩れてしまうようで、 大して飛ばずに病院の前庭に落ちてしまった。 「もう、せっかく拾ってきてもらったのに…」 看護婦が苦笑しながら言う。 当のシンジは、思ったより飛ばなかったことがショックだったのか悲しそう な顔で窓の外を見つめていた。 「そうだ、綾波さんも投げてみたら?それだったらよく飛ぶわよ、きっと」 彼女はそうレイに声をかけた。 レイは、 「えっ…」 と言ってちょっと困った顔をした。 しかし思い直したようにピンクの紙飛行機を持つと、窓の外に向けてゆっく りとしたストロークで放った。 ”遠くへ…” 何故かそんな思いがレイの心に浮かんでくる。 そんな彼女の心が乗り移ったかのようにそれはまっすぐに飛んでゆく。 風に乗ってゆっくりと。 その翼に太陽の光を浴びて。 まるでスローモーションの画面を見ているようにレイには感じられた。 ”落ちてしまうのは、イヤ” それはレイにとって、終わりを表すのか。 しかし紙飛行機は地球の重力に従って、ゆっくりと放物線を描きながら徐々 に高度を落としてゆく。 「わあ、やっぱりよく飛んだわねぇ」 感心したような声を出す、看護婦。 レイの放った紙飛行機は、病院の前庭、さらには壁をも越えて飛んでいった のだった。 ちょうどよい風がその時吹いていたのかも知れない。 シンジは、そのピンク色の紙飛行機が飛んでゆく様をうれしそうなまなざし でながめていた。 ”どうして、心を閉ざして…” レイはそんなシンジの笑顔を見つめながら、そう思っていた。 『…シンジくん、心を閉ざしているんだね』 別れ際、ナオがつぶやいたセリフがレイの胸の奥に繰り返されていた、何か 重要な響きを伴って。
時はいまも、円を描く
「ボクがここにいる理由…」 「あの人はナゼ…ココにいるの…?」
それを思いだすとき、止められた時は再び動きだす。
「アヤナミ レイ…やはりボクは彼女を知っている…そして」 「…サカルギ ナオ…あの人は、きっと…」
月に導かれてゆく、ふたり
「もう一度、出会う…」 「私と、オナジ…そう…」
それは終わり、そして始まり
「彼女と会うのは…やはりあの場所…」 「会わなくては、イケナイのね…」
時はいつも、円を描く
AM0時。 日付が変わる時刻。 月は夜空高く、そして神々しく明るく輝いていた。 芦ノ湖の湖畔。
綾波レイ、彼女はそこに立っていた。しばらくここへは来ていなかった。 何故だか分からず、何かに誘われるようにこの場所へ来ていた。 『また会えるよ。きっとね』 それは、かの人の予言であったか。 そしてそれは現実のものとなった。 深夜の湖畔に彼はいた。 湖面に映る月を見つめながら、立っていた。 それは、待っていた、とも言えるだろう。 実際ナオはレイを待っていたのだから。 レイがナオに近づくと、足音に気づいたナオがすっと振り向く。 「やあ、来たね」 ナオはレイを見て、当たり前のようにそう言って微笑んだ。 そして、また視線を芦ノ湖へと戻す。 はっ、と息を飲むレイ。 一瞬、レイと向き合ったその瞳は、驚いたことに最初に会ったときとは違っ ていた。
紅い瞳。
「フィフスチルドレン…渚、カヲル……」
思わずレイの口から、その名がこぼれる。 「今夜は月がキレイだねえ。もったいないくらいだよ」 カヲルはレイのその言葉にはなんの反応も見せず、そう言って空を見上げた。 「そうは思わないかい?ファーストチルドレン、綾波レイ」 微笑むカヲルの口から出てきた言葉にレイは驚いた。 ファーストチルドレン、彼ははっきりそう言った。 「…思いだしたの?」 レイが、探るようにカヲルに聞く。 しかしカヲルはまたもレイのその言葉など聞こえないふうに話を続ける。 「シンジくんと会ったとき、記憶の断片が甦ってきた…。それは、心地良い 記憶だった」 そして…とカヲルは続ける。 「そして、その心が閉ざされていることを感じた。誰かのために、ね」 ”ダレか…?” レイの心を見透かしたように、カヲルは穏やかな微笑みをちらりとレイに向ける 。 やはりその瞳は紅い色をしていた。間違いなかった。 「そうさ、思いだした。もちろんそれには、君のこともシンジ君のことも 入ってる」 今度は湖に映る月を見ながら、カヲルは話続ける。 「そして、どうして僕がここにいなければならなかったのかも…」 「そう…」 レイは彼の横顔を見つめながら、短く相づちを打った。 「ああ。思い出さなくとも良かったのかも知れないね」 カヲルはレイの方を見て微笑んだ。 「…」 その微笑みは幾分か寂しげだ、とレイは思った。 「酒城ナオ、のままでも良かったかも知れない」 カヲルの言葉は誰に向けられているのか分からなかった。まったくの独り言 のようにも聞こえた。 「でも、思いだしてしまった…」 「…」 レイは黙ってカヲルの言葉を聞いている。 その表情からは彼女が何を思っているのかまでは分からなかった。 「ここにいてはいけない存在。許されない、時間」 構わず、歌うように話し続けるカヲル。 「ここに…いてはいけない?」 レイが口を開く。 「…あなた、一体…」 そんな疑問にカヲルは明快に答える。 「迎えに来たのさ、君のことをね」 優しい微笑み。 「迎え、に…?私を…?」 心を見透かす、紅い瞳。 「そう。全ては決められていたことなのさ」 「…勝手なこと、言わないで…」 レイはカヲルの言葉を拒絶した、それが真実だと感じながらも。 「僕らは、引かれあう運命だったのかも知れないね」 「…」 何も言わず黙って自分を見つめるレイに、カヲルは一瞬笑顔を消し去った視 線を送る。 「僕はきっと君に会うために、もう一度生まれたんだよ」 「どうして…?どうして、そんな事いうの?」 レイにはカヲルの言うことの全てが理解できなかった。
今更なんだというのだろう?
決められていた?
ダレに?
どうして?
「決められていたことさ、さっきも言ったね。君も気づいているはずだよ」 「知らないわ、私は。分からない…」 レイはやはりカヲルの言葉を、そして真実を拒絶し続ける。 ”終わるのは、イヤ” 「僕らは、未来を失った。永遠にね」 カヲルはそう言ったが、その表情はそれほど悲しそうには見えなかった。 むしろ、その選択が正しかったのだと信じている表情だった。 「寂しいのかい?」 不思議といやみを感じさせない様子でレイに話し掛ける。 「…別に」 レイはカヲルの視線を避けるようにして、ポツリとそう答える。 視線を外したのは…怖かったのだ、カヲルの優しさを受け入れるのが。 「ファーストチルドレン、綾波レイ。そして、アダムより生まれしもの」
…ヤメテ…
その恐怖とともにわき起こるつぶやきは声にならず、心の中に反響する。
…ヤメテ…ヤメテ…ワタシヲ…ヨバナイデ… ヤメテ…
しかし彼は視線をレイの方に向けたまま、話していた。 「やっぱり君は、僕と同じだね」 その言葉と共に、カヲルの身体が光に包まれていく。 そして存在が希薄になってゆく。
僕だけじゃ、ないさ。
「っ!」 気が付くと、レイの体からもカヲルの体から発せられているものと同様の光 が発せられていた。 「どうして…なぜ、ダメなの…?」 その光は徐々に強くなってゆく。
それが、人類の生き残る唯一の方法だからね。 滅びの時を免れ、未来を与えられる生命体は、一つしか選ばれない。
「でも、何も起こらなかった」 レイは、光に溶け込んでゆく感覚を感じながら言った。 「でも、人類は滅びなかった……私がいても」
それは、シンジ君の力だよ。
「碇くんの…?」 レイは、自分を「レイしゃん」と慕うシンジを思いだした。
そうさ。 彼は解放され、これから先の時間を生きてゆく必要がある。 分かるね? 人類には、未来が必要だ。
「……そう」 レイは全てを理解した。 シンジはその精神の全てを閉ざし、時を止めていた。 そう、レイという存在の時を。 いわばレイはシンジの精神の中のみに生きる存在。 だから… レイは、気が付いた。 だから、シンジはなんの表情も見せない自分にもあんなに明るくしゃべって いたのだ。 そのレイの心が、そのひとときを楽しんでいることを知っていて。 「碇くんが、私を…」
そうさ、でもそれもそうは長くは続かない。 しょせんは、人の力さ。 限界がある。 でも、シンジ君らしい。とてもね。
「…そう、ね」 今やレイの体はすっかり光に包まれていた。 「…でも、なぜ……あなたが……?」 自分の心が光と融けあってゆくのを感じながら、レイは話す。
それが、僕の役割だからだよ。 僕という存在に与えられたレゾンデートル、存在意義、さ。
「…そう」 レイは目を閉じた。 それは宴の終わり、そしてユメの終わり。 時は、動きだす。 全てはあの時に、戻る。 現実は、現実の続きを。そして、不連続な時を再び紡ぎだす。 「…いかり…く…ん…」
希薄になってゆく、存在。 希薄になってゆく、意識。 希薄になってゆく………レイ。 「…も…う…い…ち…ど……
そう、もう一度生まれ変われるのなら… その時はきっと人として……
_____生まれたい。
深夜2時。 第3新東京市立病院。 303号室。
「あやなみっ」 月明かりの中眠っていたシンジは、弾かれたように目を覚ました。 窓が開いていて、そよそよと気持ちの良い風が入ってきていた。 「どこだ…?ここは…」 言ってから辺りを見回す。 シンジの精神はこの瞬間、3年分の時間を取り戻していた。 明日になれば、病院をあげての大騒ぎになるのは間違いない。 しかし、そんな事は今のシンジには関係がなかった。 「綾波……?」 シンジは、ついさっきまで綾波がいたような気がしていた。 それが突然、いなくなった。 「…ユメ…?」 夢を見ていたのかも知れない。 彼女は夢の中で、微笑んでいた___珍しく。 手を伸ばし、名前を呼ぼうとしたのに、声は出なかった。 そして… 「おかしいな…?」 シンジはもう一度辺りを見回し、どうやら病院であることを理解した。 起き上がったときシンジの手に何か紙のようなものがあたった。 「ん…?紙飛行機?」 それはピンク色をした紙飛行機だった。 どうして、それを飛ばそうと思ったのだろう? シンジはそれを手に取ると、ビリヤードのキューのように2、3度試すよう に軽く振ると窓の外めがけて放った。 「…?綾波…これ投げたのか?」 起き上がって窓のそばに近寄り、自分が投げた紙飛行機の行方を目で追いかけた 。 そのピンクの紙飛行機はまるで流れるようにキレイな直線を描いて飛んでいた。 その先には、明るく輝く月が、あった。 シンジの目には涙があふれていた。 夢の中のレイは微笑みながら、涙を流していた。 「綾波、泣いてた…」 もう二度と会えない。 シンジは漠然とそう感じていた、というよりも理解していた。 そして、それが仕方のないということも一緒に… シンジは病室の床に膝をつき、窓の縁に額をあてて……号泣した。
「……ありがとう。あなたに会えて、うれしかった……」
光に消えた、最後の言葉____
___end of story , thank you for reading. -A・RI・GA・TO・U !!- |
蘭間林のコメント
5万回記念投稿、お一人目は神笠那由他さんでした。
那由他さん、投稿ありがとう!! (^O^)
この世界に存在を許されないレイを、この世に繋ぎとめたシンジの想い。
自らの時を止めてまで繋ぎとめていたかった彼女。
彼の想いは、それほどまでに強かったんですね。
でも、人一人の力では、どうにもならないことというのが、確かに存在するのです。
どこまでも切なく、それでいて温かなレイとシンジとカヲルの姿が、とても良く描けていました。
那由他さんの書くお話は、特にオリジナルのお話は、必ず温かさを感じる事が出来ます。
きっと、那由他さんの作風なのでしょう。
そういう雰囲気って、結構好きだったりします。
このお話の感想は、Sephiroth
〜セフィロート〜の