夜空に浮かぶ望月の明かりが窓から差し込み、この室内を明るく照らしていた。だが、同じ明るさでも、月明かりは、やはり日の光とは雰囲気がまるで違う。
月明かりには、なぜか怪しげな雰囲気が漂う。
そして、その怪しげな雰囲気のある明かりに照らされたこの室内も、やはり怪しげな雰囲気が漂っていた。
・・・いや、怪しげ、というのとは少し違う。
強いて言うならば、淫靡な雰囲気、とでも言おうか・・・。
「あっあっあっあっあっ・・・!」断続的にうめき声を上げている女のシルエットが浮かぶ。
小刻みに震える彼女の上には、もう一人、やはり小刻みに身体を動かしている男の姿。
「・・・っん! んっんっんっんっ!!」
「・・・。」
うめき声をもらす彼女と違い、彼は無言で動いている。
そして、
「はぁっっ・・・!! んっ・・・っ!!!」
彼女は、ひときは大きな声を上げながら大きく身体を弓なりに反らすと、力尽きたかのように動かなくなった。
同時に動きを止めていた彼は、しばらくの間、動かなくなった彼女を見つめると、彼女の側を離れる。
そして、そのまま部屋を出ると、ベランダ側のソファーに半分横になるかのように腰掛けた。
そこからは、ベランダへと続く大きなガラス戸ごしに夜空に浮かぶ月を臨むことが出来る。
彼・・・、碇シンジは、表情無くその望月を見上げた。
その姿に、その光に、シンジの思考は麻痺していく。
統一性の無い思考の海の中、先ほどまでの自分の妻の姿が浮かぶ。
それは、鈴原夫妻の間に新たな命が誕生したことをシンジから伝え聞いたレイが、シンジに望んだ結果だった。
そこまで思うと、混沌とした思考の海の中から、トウジの家でのことが思い出される。
「トウジはいいよなぁ・・・ただ一人愛した人と一緒になれたんだから・・・。」「そうや、ワシはヒカリにぞっこんなんや! 悪いか!!」
「悪いなんて言ってないよ・・・。・・・ただ。」
「ただ・・・なんや?」
「うらやましいなって・・・。」
「なに言うとんのや。シンジかて、同じやろうが。」
「・・・そう・・・かな・・・。」
なぜ、あのような言葉を口にしたのか。なぜ、トウジの言葉に歯切れのよい返事をすることが出来なかったのか。
そがなぜなのか、シンジには良く分かっていた。
分かっていたからこそ、頭の中の靄が晴れることはなかった。
しかも今夜は、もう一つ大きく衝撃を受ける話を聞いた。
それは、シンジの記憶の底に眠っていた名前。シンジにとって、忘れ得ぬ人の名前。
先ほどまでレイを乱れさせていた技術を教えてくれた、
シンジの、初めての女(ヒト)。
葛城ミサト。
「ミサト・・・さん・・・。」
ポツリ、つぶやくシンジの思考は、遠い記憶の海底へを沈んでいった。
「よろしくね、シンちゃん!!」「・・・は、はい。」
はちきれんばかりの笑顔で差し出された彼女の右手を、圧倒されながらもシンジは受けた。
それが、葛城ミサトとの初めての出会いだった。
シンジが中学3年生の夏休みの時のこと。
おりしも、ユイとゲンドウの2人はそろって長期出張中。
中学1年生だったレイも、2人に連れられて行っていまっていて不在。
シンジだけが、受験生という理由から、家に残っていた。
そして、そんなシンジを心配してか、ユイが、家庭教師という名目で連れて来たのが葛城ミサトだった。
当時、大学生だった彼女はとても明るくノリのよい人で、シンジともすぐに打ち解けた。
受験生だったので部屋に一人でこもりがちだったシンジを外に連れ出してデートまがいのことをしたりもした。
彼女のおかげで、シンジは、家族のいない間も寂しいことはなかった。
そしてシンジが、そんな彼女のことを憧れの目で見るようになったのも、無理からぬ事であった。
そんなある日のこと。「一体、どうしたんですかミサトさん・・・。」
彼女は、日ごろの明るい性格からは考えられないほど落ち込んでいた。
「・・・。」
何も言わず、ただ痛々しげな微笑みを浮かべる彼女を、憧れのような感情をもっていたシンジが放っておけるはずもなかった。
何も言わない彼女に、根気強く接したシンジに、彼女の方もポツリポツリと、何があったのかを語りはじめた。
「だからってこんなこと! 許されるわけないよ!!」
すべてを聞いたとき、シンジは思わず叫んでいた。そして、うつむく彼女を、シンジは抱きしめていた。
「・・・そんな・・・そんな・・・。」
シンジの口を出る言葉は、意味を成さない。意味ある言葉を紡ぎ出せるほど、思考が安定していない。
それどころか、
「ねえ・・・私の事好き・・・?」
泣きそうな瞳で、そう聞いてきた彼女に、シンジの思考は、完全に麻痺してしまった。
「・・・シンジくん。・・・お願い。」
「・・・ミサト・・・さん・・・。」
その日、がシンジの初めての日となった。それから、夏休みの終わりまで2人の関係は続いた。
シンジからミサトへの奉仕。ミサトからシンジへの奉仕。
互いに与え合いながら、喜びを分かち合う行為。
それは、シンジの、忘れ得ぬ遠い夏の日々の思い出。
「ねえ・・・私の事好き・・・?」
あの日、年上の彼女はこう聞いた。
「ねえ! あたしのこと好き!?」
あの日、年下の彼女はこう聞いた。
「ねえ、アタシのこと好き!?」
あの日、同い年の彼女はこう聞いた。
「うん、大好きだよ。」
シンジはそう答えた・・・? 答えたかった・・・? 答えられなかった・・・?
「「「ねえ、私の事、一番好き?」」」
「・・・。」
わからない・・・。
わからないまま、混沌としたシンジの思考は停止し、現実の世界に戻ってくる。先ほどから変わらずガラス戸ごしに月を臨むソファーに座ったままのシンジ。
その手には、
「なぜ彼女たちは、耳カキだけでああも乱れることが出来るんだろうか・・・?」
その手には、先ほどレイを乱れ落とした、シンジ愛用の耳カキが、今も握られていた。
日付が変わり、4月1日となったころの事だった。
偽Innocentia chapter12 "Remember the Night"fin...(^_^;)
葛城ミサト
綾波レイ
惣流アスカ
3人の女性の耳カキを達成したシンジが次に選らんだのは・・・
「ダメ!私には夫も子どももいるのよ!!」
「ワシはお前をなぐらにゃアカン・・・。」
「ハイ!ワタクシはあなたのためにこの服を着てまいりました!!」
「あの子、企業スパイよ。」
こんなこと書いて大丈夫なのか蘭間林和彦!!!
・・・っていうか、来年の今ごろまで "Innocentia" 終わらせないつもりなのかお前は!?(爆笑)
では、来年の4月1日にもこのHPが存在していたならば!!(^_^;)
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