都会の公園の並木道には、木漏れ日と蝉時雨が溢れていた。
すべてが熱く燃えている、暑い真夏の日。
そんななか、二人の若き棋士が、熱き血潮のすべてを碁盤に注いでいた。
現名人の一子であり、以前より注目されていた若手プロ・トップの塔矢アキラと。
何処からとも無く現れた、プロ棋士なりたての進藤ヒカル。
プロになる以前から因縁のある二人であった。
『六目半差で、進藤初段の勝ちです。』
はじめ、自分ではない自分を追いかけられ、そして自分が追いかけた相手。
その相手に、追いついたヒカル。
「やったぁー!! やったよ佐為、塔矢に勝ったんだぁっっ……!!」
「やりましたねヒカル。これで私も、もう……。」
「……ん? どうしたんだ佐為?」
「……。」
「佐為…??」
追い求めた目標に追いつくことは出来た。
願いは叶った。
だが、代償となったものは決して小さくは無かった。
「大変よ! おじいちゃんの家で火事が在ったの!!」
「……!?」
「怪我人はなくて、本宅もほとんど無事なんだけど、蔵とかが全焼して…。」
「…蔵…? …蔵の中には……佐為っっっっ!!!!!」
失意に陥った少年。
迷走することしか出来ない少年。
「ねえヒカル、どうしちゃったの? なにがそんなに悲しいの? ねえ…ヒカル…。」
「……。」
「…お願い…答えてよ…。」
「…あかり…。」
「……!! うんうん!」
「それ、カバン…どっか行ってたのか。」
「え、コレ? うん、高校受験の夏だから、夏季講習に。」
「…高校か…それもいいかもな…。」
「……え?」
困惑する周りを囲む者達。
「高校だとぉ!? なにかんげーてんだよっ! お前は!!」
「そうよ、どうしちゃったのよ。」
「……いいんだ、もう。」
「なに言ってやがる。塔矢に一度勝ったからってそれでいいってのかっ!!」
「……いいんだ、もう佐為はいないから。」
「……『sai』!?」
幼馴染の言葉も。
院生当時の仲間の言葉も。
そして、
「ふざけるな!! キミはまたボクに背を向けるのかっ……!!!!」
目標でありライバルであった者の言葉も届かない。
周りを見ることすら拒否してしまった少年は、
「ねえ、三谷くん。」
「ん?」
「ヒカルが高校行くって…。」
「…はぁ? なに言ってんだ?」
「……。」
「……はぁ。そんな顔すんなよ。」
「……でも。」
「それに、俺と一緒にいるときに、他の男の話なんかしないで欲しいな。」
「……え? 三谷…くん……!?」
「なにもしゃべるな。」
「……んん。」
「……。」
見守ってきてくれた者も失ってしまうのか。それとも、
「でも加賀……。」
「なに情けない顔してやがるんだ筒井。周りがいくら騒いだってしょうがねーだろうが。」
「でも。」
「あいつを、進藤を信じろよ。それとも、信じられないか?」
「……。」
立ち直ることが出来るのか?
……佐為。お前の求めた『神の一手』。
俺は……。
Orchidaceous Works / ピカ碁っぽいページ presents したいなぁ(笑)
ヒカルの碁
勝手に最終局神の一手
〜受け継ぎしモノ〜
近日発表!! (しません)
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