そんなボクらの関係



「おら筒井、さっさと来いよ!」

今日の終わりのホームルームが終わるとともに加賀が声をかけて来た。
見れば、加賀はもうすっかり準備万端のようで、鞄を持って立っていた。
僕の方はといえば、ホームルームが終わってから支度をはじめたから、まだ席を離れることは出来なかった。

「ちょ、ちょっと待って」

急いで教科書とかを鞄に入れる。

「おいおい、いちいち教科書とか持ち帰ってるのか、お前は?」

加賀があきれたようにぼやくが、僕にしてみれば、教科書なんかを学校に置いたままにしておく方が信じられない。

「当たり前だろ、そんなの」
「ま、お前は俺と同じ高校に入れただけで奇跡だったもんな」

こ意地悪そうな笑みを浮かべる加賀にちょっとむっとなったが、事実なので仕方がない。
こいつはなんでもかんでもチャランポランなのに、なんでも僕より出来るんだ。

「そういう事は、思ってても言わないものだよ」

詰め終えた鞄を手に立ち上がる。
それでもやっぱりちょっとむっとしていたのだろう、表情にも出ていたようだ。

「無駄口たたいてないで、さっさと行こう」

加賀の顔も見ないで僕はさっさと歩き出していた。

「おいおい、待てよ!」

教室から出るころには、もう既に加賀は横まで来ていた。
中学のときと変わらず制服の上着のボタンは一つとしてとまっていない。
高校に入学したてでこれだから、上級生からもにらまれているだろうに、加賀は全く気にしてはいないようだ。
廊下をいっしょに歩いていても、たまに好奇の視線で見られる事がある。
まあ、全く正反対な身なりをしている二人が並んで歩いていればしかたないのかもしれないけど。
自分でも、なんで加賀みたいな人間とこんなに親しく付き合っているのか良く分からない。
高校がいっしょだったのは、どこまで偶然だったのか。
しかも、今は同じ部活にまで所属している。

ガラガラガラ

部室として使われている教室の扉を開けると、もう既に幾人かの人が来ていた。

「ちわーっす!」
「こんにちわ」

一応、一番の低学年なので僕たちが挨拶をしながら入っていくと、中の生徒たちも挨拶を返してくれる。
でも、すぐにみんな目の前の板に集中していった。
みんなが集中しているものは、碁盤と将棋盤。
ここは『囲碁将棋部』なんだ。
どうも、別々だと十分な数の部員が集まらないらしい。
でも、そのおかげで加賀と一緒の部に入れた。

・・・というか、そうなってしまった。

でも、これも良かったのかもしれない、と最近思い出している。

「おおい筒井、指導碁打ってやるよ」

加賀が二つ折りの碁盤の前に座って、『王将』印の扇子を広げている。
なぜか知らないけど、加賀が結構、碁の相手をしてくれるからだ。
なにも言わず、加賀の前に座る。
加賀はニヤリと、いつもの笑みを浮かべる。

「置き石は三つくらいでいか」

もちろん、置き石を置くのは僕で、いつも黒。
それでも加賀には全くかなわないのだからいやになってしまう。

「ま、安心しろ、ちゃんとやさーしく指導してやるからよ」

まったく、ホントに指導はしてくれるんだけどさ。
・・・はあ。

でも、なんだかんだ言っても結構僕も楽しんでるから、いいのかもね。
ただちょっと気になるのは、同じ部の女の子達が、僕たち二人を見ては、何か熱心に話してるんだ。
気になって加賀に聞いてみたこともあるんだけど、
「世の中には知らない方が幸せなこともある」
とか言って、教えてくれないんだけど・・・。

・・・やっぱ気になるなぁ。




おしまい

 


あとがき

気づかない方が身のためですぜ筒井くんよ。(笑)
オレだってそんなの書きたくねえからさ。(爆)
だから、清い良いお友達同士でいてね。(核爆)


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