僕の夏(キセツ)
周りの人たちが夏がやってきたと騒ぐようになった。でも、僕にはそんな感じはしなかった。
だから夏を感じたいと思った。
夏を実感したいと思った。
庭に蛍の姿を見た。暗闇の中にチラチラと瞬く蛍の姿を見た。
それが僕の夏の始まりだった。
セミの鳴き声が激しくなった。風にゆれる風鈴の音に涼しさを感じた。
それが僕の夏の盛りだった。
夕立が降るようになった。夕焼けの空に鰯雲が見えるようになった。
それが僕の夏の終焉だった。
去りゆく夏。去りゆく夏に、僕は別れを告げよう。
また、季節が一巡りしたその時の再会の誓いとともに。
(Aug. 25, 1998)