written by 狂極
第壱話 「プロローグ」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 199X年、あの忌まわしい戦いから既に数年を隔てたここ、人工楽園リゾート市 では愚羅市長を中心に、市の再建も順調に進み今やピシバン帝国の中でも1、2を 争う市に成長しつつあった。かくの如き短期間の内に帝国の上位都市に伸上がる事 が出来た訳には市長以下、市の数人の重鎮しか知らない大きな秘密が有った。 そう、今も異次元空間で練田署長とし烈な戦いを続けていると(思われている)あ の卿老人のロナルド財団の資産と卿老人が経営していたコンピューター会社の利益 が市の再建と成長の貴重な資金元となっていた事は言うまでもない。結局、愚羅市 長はあの戦いの後、ものの見事に卿老人の全資産を横取りする事に成功した訳であ る。しかも市長を中心とする一派は事もあろうにそのコンピューター会社やソフト 会社の重役陣として顔を並べて一切の経営権さえも掌中に収めていたのである。 さてそのコンピュータ会社であるが、愚羅市長は重役陣にプログラマーやグラフィ ックデザイナー等の自分の息が掛かった人材を派遣しつつ市の内外に渡り巨大なコ ンツエルンを形成し、リゾート市の支庁社ビルの横に7階建の本社ビルを建設して 自分は会長に収まり、他の人材を社長以下の重役に派遣して実権を握っていた。今 や世界のIBMを凌ぐ勢いに成長したこの会社は: 「International Standard of Micro Computer Co.Ltd」 すなわち、ISMC(国際基準コンピュータ会社)と呼ばれる迄になった。しかし ながらその事業内容はと言えば、ピシバン帝国内でほぼ99%のPCシェアーを占 めつつ、一部の良心的なPC製造会社を金と権力で次々に傘下に治める一方で、そ の利益の大半をいかがわしい変態SMゲームソフトを売り物にして得ているのがそ の実態であった。卿老人が経営している間はまだまともなソフトも開発出来る人材 も多々存在していたが、今や愚羅市長に乗っ取られたISMC及びその参加のソフ ト会社は完全に愚羅市長一派の資金元の巣窟と化してしまっていたのである。 世間の心ある批判者達はISMCを捩ってこの会社を次のように呼んでいる: ICSM:International Completion of Sado&Mazo 国際的SM変態会社と......。 この巨悪と変態の権化の様なISMCは5名の重役陣で構成されているが、その経 営陣の中に最近、新参重役として入り込んだ一人の初老の男が居た。 この男は元 々PCゲームが三度の食事より好きで特にRPG(取り分けARPG)をさせたら クリアーするまで死んでもゲームから離れないと言うRPG気狂いであった事から 社内ではRPG狂と呼ばれていた。彼がどのようにして愚羅市長(此処では会長) に取り入ってISMCの重役に抜擢されたかは徐々に明らかになろう。 さて、このような堕落の会社にあっても中には会社の将来とリゾート市の未来を憂 いて何とか改革を目指す志を持った若者達も居たが、市長(会社では会長)一派に 睨まれて止むを得ず寝返ったり、或は市や帝国から追放されたり、更には闇から闇 に葬られたりして、会長一派の野望は誰に阻害される事もなく着々と進んでいるよ うに見られた。しかしながらここに新たなる正義の動きが芽生えはじめていたので ある。RPG狂老人にはこの数ヶ月、会社の中で誰にも知られる事なく守り育てて きた8人の若き戦士達があった。何れもこの会社に勤める平社員達であったが、こ のRPG狂老人の薫闘の下、全員の胸には熱き正義の血が燃えたぎっていた。言う までもなくこのゲームの主人公達である。 彼らの使命は、現在繁栄と堕落の頂点にある彼らの会社の重役陣を全員失脚させ、 自分達の勤める会社を本来有るべき真のコンピューター会社に変革し、更にはリゾ ート市そのものも本来の市民の為の物に取り戻す事である。新重役になったRPG 狂老人は、彼らにとって父であり師匠と仰ぐべき存在であり、何時しか彼らは老人 の事を「RPG卿」と呼ぶ様になった。 8人の勇者達の愛するものは「良識」、憎むものは「SM&変態」。彼らの職業は 「そう、サラリーマンです」と答えるようになってから彼らはいつしかこう呼ばれ る様になった:現代の良識「ソーサラリマン!!!」と。 この8人の勇者達は会社にあってはそれぞれ男女ペアーで各部に所属しており、そ れぞれの特技は部署によって異なる: 1.営業部ソーサラリマン *営業の第一線に活躍するだけあって、話術に猛け体力/忍耐力にも優れ、 攻撃には絶対必要なメンバーである。 2.製造開発部ソーサラリマン *物を作る部署のためか、技術的に優れ、体力もある。謎解きや罠を外す/ アイテムを使いこなす特技がある。 3.財務部ソーサラリマン *お金と計算に強い。シナリオによっては絶対必要なメンバーである。 4.医務部ソーサラリマン *その名の通り医術に猛ける。様々な回復系医術を操れる唯一のメンバーで ある。尚、一部のソーサラリマンは仏教系の呪文を操る事が出来る。 ここで悪の巣窟ISMCの変態重役達の陣容を紹介しよう: 1.代表取締役会長兼社長:愚羅市長(正式氏名は未だに不明) *言わずと知れたリゾート市の愚羅市長である。ISMCは勿論、市の一切 の悪の巣窟といっても過言でなかろう。卿老人亡き後、ISMCを変態S Mコンピューター会社に変えた張本人である。 *既に卿老人のWH−ビールスに感染し、更に心の奥に巣食う金と権力への 尽きない欲望の虜になった彼は古今東西比類の無い超ド級変態者に成長し つつあり、体内にはサイレント化したビールスが猛威を奮い始めていた。 *関連会社が次々に販売する変態ソフトの99%は最早まともな人間とは言 えない愚羅会長の変態頭脳から生み出されているらしい。 2.取締役&社長秘書:三ノ輪隆吉(みのわりゅうきち) *何故か通称を「三隆(みたか)」と言う、愚羅市長の秘密秘書及び相談役 的存在である。極最近、練田署長(卿の逆襲参照)が連れて来た正体不明 の男。元、出版社を経営していたとか、ピシバン帝国内の某市長選に敗れ てからは人間が変わってしまったとか様々な噂が絶えないが、現在はマス コミやインターネットに様々な情報網を張り巡らし、愚羅会長の下部とな ってリゾート市とISMC会社の機密漏洩を守っている。 *マスコミ及び法曹界に今でも強力な伝手を持ちISMCに敵対しようとす る一切の障壁を事前に取り除いてしまうと言うISMCの外交面を主とし て担当する。 *欠点は特にないが所詮、愚羅市長/会長あっての存在で彼がいなければ彼 の強力な伝手も宝の持ち腐れに過ぎない。 3.営業部担当重役:山野亀吉(やまのかめきち) *通称を「レインボー山亀」と言う。山亀警部のなれの果てである、と言っ てしまっては元も子も無い。要するに練田署長亡き後、市警察を牛耳り、 更に愚羅市長と共にISMCまでも取り込み、己自身も愚羅会長と共に重 役陣に顔を連ね、一切の利権を共有するに至った訳である。 *元々、様々なエロ雑誌に投稿しては小銭を稼いでいたぐらいであるから、 愚羅会長に次ぐド変態者と言えばこの男ぐらいしかないが、但しH菌を保 持していない分、その変態度は愚羅会長の比ではない。 *持ち前の変態魂とド根性でソフトの強引な押し付け販売と警察権力を駆使 した半ば恐喝的に中堅PC会社を乗っ取りしてここまでのし上がったとの 噂である。 *尚、営業担当重役という役得で、商品化の打ち合せと言っては下請け会社 に入り浸りグラフィック用女性モデルに、時々手を出しているらしいとの 噂が絶えない。 *好きな物は「雨」、苦手なものは「太陽」、そう、何故か彼は晴天に弱く 雨になると俄然力を発する典型的な雨男と言う事になっているようである が、その真実のほどは後程明らかになるであろう。 4.製造部担当重役:Mr.K(ミスター ケイ) *通称を「ケイ」と言う、アメリカ支店から抜てきされたキザな助平重役で ある。その身のこなし方や女性的なルックスからその方面に趣味を持つ男 から言い寄られる事が多いらしいが、本人はまんざらでもないらしい。 *開発部や営業部から回されてきたソフト企画を商品化するのが彼の任務で あり、特にグラフィック技術に優れおぞましいアニメ処理技術では右に出 る者が居ないとの噂である。 *唯一の弱点は「足」、アメリカ帰り/女性的ルックス/キザなスタイリス トを気取る割には短足でかなり底上げの靴を履いているらしい。 5.人事部担当重役:山川羊太郎(やまかわようたろう) *通称を「山羊」と言う。5人の悪徳変態重役の中では唯一良識を誇る人間 で、現在の会社を愁うる常識人であり、愚羅会長からのH菌汚染度も比較 的少ないのであるが、残念ながら聊か高齢のために会長一派に逆らう程の 反抗精神は持ち合わせていないらしい。 *ほとんど実権はなく、愚羅会長と三隆秘書の言いなりになってろくでもな い人材を何処からか捜し出して来る使い走りだけの重役である。 *弱点はどういう訳か「痔」病。 *最近、他の重役陣から「RPG卿重役」の身辺調査を命じられている。 6.財務部担当重役:RPG卿 *何故か、この部署を握るのは「RPG卿」である。ソーサラリマンの潤沢 な活動経費はコッソリと此処から支出さている事は言うまでもない。彼が 何故会社の重要な資金を管理するこの部署に収まれたかは謎である。 かくしてRPG卿及びソーサラリマン達がISMCを牛耳る5人の重役陣達を相手 に如何に戦いきるか? またRPG卿なる老人の真の目的は何か? 更に練田vs卿 老人の結末は如何に? 謎は謎を呼び、新たなるソーサラリマンと言うキャラを導 入した新ARPGの展開を待ち望む読者諸氏たちの期待を知りつつも、今回は紙面 の関係でこれをもって終了する事をご了承頂きたい。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ARPG ソーサラリマン 第壱話:プロローグ − 完 −
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