written by 狂極
過去の記憶を語り尽くしたケリーは、ソーサラリマンから今までの全てを語り
受け、女性モデル達に心より詫びたのであった。例え正気の沙汰ではなかった
にしても、非は非と認め己を厳しく律っすると言う、ケリーの人間性にソーサ
ラリマン一同は全員感服した。
ケリー:「そうですか、山川重役も今ではあなた方の貴重な一員なのですか。
よかった!及ばずながら私にもお手伝いさせて下さい!二度と私の
ような不幸な女性を出さないためにも...そして、この会社をま
ともな会社に変えるためにも!」
ソ営業:「ところでケリーさん、もう一人、レインボー山亀を何とかしないと
いけないんですが、奴ときたらわれわれの姿を見ても、全く無視し
て相手にしないので困っているんですよ!何か良い方法はありませ
んかねえー?」
ケリー:「ええー、そうですねー、おっしゃる通り、レインボーはここに来た
時から中に閉じこもりっきりだと言いますしね。女性達をいじめて
飽きるとすぐに部屋に戻り、ほとんど外に出ませんでしたねー..」
少女1:「あのぉー、お話の途中ですけどぉー、ちょっといいですか?」
ソ医務:「えっ、何か思い当たることでもおありですか?どうぞ、何でも良い
んですよ、遠慮なさらずに、どうぞお話ください。」
少女1:「ええ、実は...レインボーは絶対に外に出ない、というわけ訳じ
ゃないんです。雨の時は、まず必ずといって良いほど、外にモデル
達を連れだして、はしゃいでいました。しかも、すぅーごくイキイ
キとして...。よっぽど雨が性に合うんじゃないかぁって、変な
奴だなぁーって、みーんなで噂してたんですぅ。ケリーさんやソー
サラリマンさん達は、今日はじめて来られたから知らいでしょうけ
どぉ....。」
ソ営業:「そういえばここに来る途中の親衛隊の一人が言ってたな、雨の音と
何かを間違えてどうのこうのと...。」
ソ製造:「そうか!奴をおびき出す方法がわかったぞ!ほら、子供の時にやっ
ただろう、馬の足音とか、海の音とか、蛙の鳴き声とか、擬声音と
か言ったあれさ!...えーと、親衛隊から手にいれた『団扇』と
『大豆』と...あのー、すいません、モデルの方達、誰か糸と針
を貸して下さい...ゴソ、ゴソ、ゴソ...........」
と言うと製造部ソーサラリマンは器用な手付きで団扇に糸で大豆を十数個取り
付けた「雨音の団扇」を作り上げた。
ソ製造:「よし、できた!これで奴を外におびき出そう。あいにくと今は、に
わか雨が降り出したから、奴をおびき出すのは、われわれには不利
だ。すぐに止むだろうから、それまで待とう。」
こうしてソーサラリマン達は、レインボーが好む雨が止むのを今か今かと待ち
わびていた.....。待つこと数十分..... ついに雨が止んだ。急い
で建物の外に出たソーサラリマン達は、「雨音の団扇」を使った。
案の定「レインボー」は、また雨が降り出したと勘違いして、喜び勇んで出て
きた。
レイン:「ウァッ!なっ、何だ。雨が降っていないじゃないか。うぬ!ソーサ
ラリマン、貴様らぁ!黙って立ち去れば、生きて帰れたものを!俺
様を本気で怒らせてしまったようだなぁ」
ソ営業:「覚悟しろ!レインボー山亀!既に雨は止んでしまった。雨のないお
前に勝ち目はないぞ!!」
と、営業部・製造部・医務部・財務部の4人のソーサラリマン達はレインボー
の回りを取り囲んだ....と、その時、目映いばかりの太陽の光で、山端の
きわから七色の虹が天空高く大きな孤円を描き始めた。ソーサラリマンが一瞬
の気を外したすきに、「レインボー」はその虹をめがけて空中に浮かび上がっ
た。そして虹の孤円の最上点に乗ると不気味な声で言った:
レイン:「ふっふっふっふっふっ、ついに虹が出たか、ソーサラリマンよ!!
俺の本当の好きなものはこれだ。虹だ!冥土の土産に教えてやろう
、俺が何故に『レインボー』と呼ばれる本当の理由をな!」
『悪鬼入其身!悪鬼入其身!!悪鬼入其身!!! グウァーーーー』
背筋が寒くなるような呪文を唱えはじめた途端、レインボーの体はみるみるうち
に体長15mに及ぶ大とかげ(レインボー怪獣バラモン)に変身した。そしてバ
ラモンの頭の2つの角からソーサラリマンめがけて、七色の光線が発せられた;
ソ営業:「うわっ!危ない!! みんなさがれぇーーー」
と、危機一発で後ろにさがって、辛うじて光線の攻撃を避けたソーサラリマンが
今まで立っていた地面は、5m四方を50cmの深さで、「ボッカリ」とえぐり
取られていた。
レイン:「逃げられるとでも、思っているのか!ソーサラリマン、そーれ、もう
一発受けてみろぉーーーー」
とバラモンが2度目に発した七色光線の一つが、女性医務部ソーサラリマンの胸
に命中して地面に叩き突けられた。
ソ製造:「危ない!!残念だがここはひとまず例の小屋の中に逃げ込もう!」
と倒れた医務部ソーサラリマンを助け起こすと、急いで前に入った小屋の中に入
った。
取りあえず、胸をやられた医務部ソーサラリマンを、小屋の隅にあったベッドに
寝かそうとしたら、胸から焼け焦げたコンパクトと割れて粉々になった鏡が床に
落ちた。暫くして医務部ソーサラリマンが目を覚ました。
ソ医務:「運良く光線が胸に入れて置いたコンパクトに当たったお陰で助かった
わ。それにしてもレインボーがあんな呪文を知っていたとは!私もう
かつでした。」
と云うなり医務部ソーサラリマンは暫く考え込んでしまった。
ソ営業:「それにしてもコンパクトに当たっただけで、よくあんな凄い威力の光
線を防ぐことができたものだ。多分、鏡に当たって反射したのかもし
れないなぁ....」
と営業部ソーサラリマンが言うのを途中でさえぎって、製造部ソーサラリマンが
口を出す。
ソ製造:「ちょっと待て、営業部ソーサラリマン。鏡? 反射?? うーーん、
もしかすると....さっき見つけた『ダイヤの原石』、そして親衛
隊から手にいれた『磨き砂』......、そうか! これだ!」
と、製造部ソーサラリマンは急に立ち上がったかと思うと、なにやらゴソゴソ作
業を始めた......待つこと、約1時間余り....
ソ製造:「みんな聞いてくれ!営業部が言ったように、多分、レインボーの放つ
あの七色光線は鏡の反射に弱いんじゃないかと思う。しかし、普通の
鏡ではあの熱線で溶けてしまって役にはたたない。そこで今、これを
造ってみた!これで奴と戦えるぜ!」
と言って製造部ソーサラリマンが見せた物は、澄んだ水のように透明な『ダイア
モンドの鏡』であった。製造部ソーサラリマンを先頭に、小屋を出てきたソーサ
ラリマンを虹の上から見ていたバラモンことレインボーは、
レイン:「うっはっはっはっは!とうとう我慢できずに出て来たな!この臆病者
めらが、何度戦っても同じ事だ!俺様のレインボービームを受けて見
ろ!」
と例の七色光線を2つの角から発射した。先頭の製造部ソーサラリマンは、すか
さず『ダイヤの鏡』を前面高く捧げた。すると七色のレインボービームは全て鏡
に集中してそのままバラモン目指して逆反射していった。逆反射したビームは誤
らずに、バラモンの両方の角に命中した。
「ウギャーーー ァァァァァァ- - - - - - 」と叫びながらバラモンはまっ逆さ
まに地面に墜落した。「ズズズズゥーーーン!」
墜落音のした地面に向かって走り出したソーサラリマン達が見た物は変身したバ
ラモンの姿のままで悶絶した「レインボー」の無惨な姿であった。
医務部ソーサラリマンは、静かに近寄って左手をバラモンの角と角の間に置き、
右手を己の額に置いてなにやら呪文らしきものを唱え始めた.......
「如来秘密神通之力! 如来秘密神通之力! 如来秘密神通之力!」
すると、見ているうちに、バラモンの体中からおびただしい量のどす黒い泥水を
身体中から吹き出して、忽ちのうちに元の等身大の人間「レインボー」の姿に戻
った。暫くして目を覚ました「レインボー山亀」こと、山野営業担当重役の顔色
は、風呂上がりの様なサッパリした青年のそれであった。
完全に正気に戻った山野重役を連れて、ケリーやモデル達が待っている建物に戻
ったソーサラリマンたちは、今までの忌まわしい出来事と、ISMCのおぞろお
ぞろしい変態会社の実態を説明し始めた。
第参話「悪魔に魅入られた少女たち」−後編 − 完
−
参考資料:第参話の前・後編部分
1.日本ファルコム製「ソーサリアン」シリーズシナリオより
「悪魔に魅入られた花」「呪われたオアシス」
「血塗られた王家の秘法」−ツタンカーメンの攻撃法
2.日本ファルコム製 「イース3」よりボスキャラの攻撃法
3.***宗発行 「仏教入門」
4.鳩摩 羅什 漢訳 「妙法蓮華経並に開結」
5.夢枕 獏 著 サイコダイバーシリーズ「美空曼陀羅」、
「真言密教と呪印」より
語句解説:
「悪鬼入其身」 −「あっきにゅうごしん」と読み、釈迦仏教の最高峰
法華経の文。邪な生命感情を持つと知らず知ら
ずの内に自然界より悪の心を導入して仏の生
命(清らかな生命)を第六天の魔王(邪心)に委
ねてしまう。
「如来秘密神通之力」−「にょらいひみつじんつうしりき」と読み、同じく
法華経如来寿量品(にょらいじゅりょうぼ
ん)
の文。如来とは仏(釈迦)、秘密とは仏の甚
深
(じんじん)の働きを云い、神通之力とは仏
の
自在自由の力。
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・追伸:ゲーム設定の時代背景/会社名/人物像につきましては架空のもの・
・ ですので誤解の無いようお願いします。
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