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Last updated July 29, 1999
論文試験ご苦労様でした。さあ、これからはリクルートです。悔いのないように。
リンクは勝手にどうぞ。但し、このページの内容をあたかも自分の意見のように使わないこと。
このページに言及してほしい。多くの人に見てもらわないとせっかく作った意味がない。
このページは、公認会計士試験2次試験に合格した人のリクルート活動用のページのつもり。
ただ、これから会計士試験の勉強を始めようなどという人にもぜひ見てほしい。
(注)このホームページは、監査法人の実態についてあまりに情報開示が進んでいないために作成した。
就職とは、自身の労働力の販売先を決めると同時に人生設計に大きな影響を及ぼす行為である。求職者は、投資家が投資先を決定する以上に、就職先の情報開示を要求したいのではないだろうか。このページにあることは、既知のことであるし、別に問題とは思わないという人もいるだろう。そういう人はそれでよい。しかし、就職してからこんなはずではとういう声が多いのも事実である。
被監査会社に情報開示を迫るのが仕事の監査法人、ここの情報開示を多少でも進めるとともに、求職者の情報格差をなくそうという意図をWebmasterは持っている。自己責任の前提は徹底した情報開示でしょ。
また、監査法人のリクルートパンフレットに書かれている肯定的なことには一切触れていない。これは、肯定的な側面を一切否定する意図ではない。いいことは、いろんなところに書いてあるからそれを見ればいいじゃんという姿勢である。監査法人についての欠点集であると考えてほしい。以下本文。
大部分の2次試験受験生は、公認会計士や監査法人についてとんでもない思い違いをしている。
まあ、受験予備校は真実を知らせると受講生が少なくなるためにいわないけどね。
仕事の抽象的な意義は監査論でも理解できるんだろうけど、それが現実の社会システムに置かれると
ほとんど支離滅裂状態になっていることを誰も教ない。
それどころか、隠蔽しようとしているのではないかと感じる。
なお、Webmasterは、某大手監査法人を数年前に退職しており、主にそこでの経験をもとに記述している。
その後変化している可能性もあるので、監査法人の実名は出さないが、漏れ伝わってくる話からすると
かえって悪化しているようでもある。
日本の監査法人がすべてアメリカの傘下に入る日も近い?
上記の参考図書も見ること。このホームページに書いてあることがあながち嘘でないことがわかると思う。
以下が目次、忙しいので装飾は適当だが、そのへんは我慢してほしい。
もう少し暇になったら、きれいにするかも。
監査法人の情報開示(個人商店並) | |
監査法人は階級社会(会計士補は奴隷) | |
監査法人は奇人変人の集まり | |
監査法人処世術 | |
上の仕事は大蔵省専門行政書士 | |
おかしな資格−会計士補 | |
U.S. CPA | |
外国公認会計士 | |
他の資格にも目を向けよう |
君は、監査法人の決算報告を見たことがあるかな、あるはずがない。そもそも、監査法人は合名会社として構成されて
いるため、財務諸表など表にでてこない。だいたい、勤めていても自分の働いている監査法人が儲かっているのか、
いないのか、全くわからない。(ただ、概要を知りたい人は6月24日の日経金融新聞を見るとよいだろう。)
Webmasterがいた監査法人など、職員に対する福利厚生まで開示されていなかった。
入所案内で聞いたはずの福利厚生施設など、誰も使った記憶がないという。
また、退職給与も他の監査法人と比べてとんでもなく少なかったが、それも退職した後にはじめてわかる始末。
大手監査法人は、給料もほぼ同じようにパンフレット等に書いているが、実際は相当な開きがある。
こういうことを、開示せずにリクルート活動を行うのは、ほとんど詐欺のようなものである。
さらに、クライアントがばたばた倒産する昨今、各法人とも訴訟案件を抱えているが、その内容を開示しようともしない。
聞こえてくるのは、我が法人はきちんと監査を行っており問題はないと考えているの紋切り型の説明のみ。
そういえば、つぶれたクライアントも倒産する直前まで同じような説明を公然と行っていたような・・・。クライアントの失敗を見ても情報開示できないとは、かえってやはり開示できないほど深刻であるというメッセージを送るだけだと思うけどね。
大手監査法人だったら、どこでも給料は同じと思ったら大間違い。手当の額、残業の付け方、交通費の支給等で当初からかなりの差がある。そのうえ、勤続期間が長くなるにつれ、給料の額の開きが大きくなっていく。
普通、監査法人では、3次試験をパスして公認会計士になると給料がかなり上がるが、Webmasterのいた監査法人のなりたて公認会計士と他の監査法人の3年目の会計士補と給料の差がほとんどなかったとういうこともあった。
また、些細なことだが、実務補習所から行く工場見学等の交通費につても、唯一Webmasterのいた監査法人は支給しなかった。
補習所の授業料を支給すれば、十分と考えていたのだろうが、他の監査法人の補習生がタクシーを使って帰るのをしり目に、
雨の中バスを待つのはつらいものがあった。
また、監査法人によっては、3次試験の予備校の授業料を補助してくれるが、監査法人が受講料をまとめて予備校宛振り込んでくれるかもチェックしよう。Webmasterの場合、会計士補2年目の11月に申し込もうとしたら、入所以来の給料に含まれていたから自分で支払えときた。確かに、よく見ると研修費の項目が給与明細にあった。そうならそうと最初からいっておけと思ったね。
まあ、少ない給料のカモフラージュに使っていたということだろう。
参考図書にも某法人は給料が高いとかの発言が書いてあるのでみること。
監査法人に入ってまず驚くのは、入所が1年でも早ければ大先輩という体育会顔負けのしきたりである。
他の会社でも大なり小なりこの傾向はあるが、常に少人数のチームで会社へ往査に行かなければならないところが決定的に異なる。
まず、荷物運びは会計士補の仕事である。2週間旅行用の大きなスーツに監査調書を一人で詰め、一人でタクシーまで引きずっていき、一人で往査会社の会議室等に運び入れ、一人で明けて諸先輩方が取りやすいように並べなければならない。
伝統的に、この仕事は一番下の者がやることになっているので、監査チームの中で誰が一番下か常に考えなければならない。
一見簡単なようだが、Webmasterの場合、調書を入れるスーツケースの争奪戦が激しく、日曜日にスーツケースを確保するためだけに事務所へ行ったりしなければならなかった。また、荷物は大きなクライアントの場合60キロ位になるので、それを引いたり、タクシーのトランクに入れるのは大変な作業になる。Webmasterは、この作業のために腰を痛め、結婚した現在も、腰の使い方に苦労している同僚を知っている。労働基準法などあってなきがごときこの業界、労災など認めてもらえないので注意が必要だ。
一番下の仕事はそれだけにとどまらない、諸先輩方はなるべく往査に持っていく荷物を少なくしようと思うので、会計士補は、諸先輩方に使っていただくために、監査小六法、税法の法規集、クライアントリスト、穴あけパンチ等の文房具などを持って行かなくてはならない。
さらに、コンピューターまで持ってくるようにいわれることもあるので、会計士補、それも入所したての1年生は5〜6人の往査チームの最後尾を遅れて、重い荷物にふらふらしながらついていくことになる。
みんなで分担して運べばよいようなものであるが、そこが階級社会のこの業界、過去自分が苦労したことを思い出しつつ、新米が苦しむのを見て、俺も階級が一つ上がったんだとの感慨にひたる者がほとんどである。
それ以外にも往査先では、いろいろなしきたりがあるので注意が必要である。(特に社会人経験のない人は、この部分よく読んでおくように。)
まず、タクシーに乗るとき新米は当然助手席に乗る。間違っても諸先輩をさしおいて後部座席に座らないように。
また、Webmasterの監査法人ではタクシー代の支払も一番下の者が行った。
一番金銭的に余裕がない者が立て替え払いをするのもどうかと思うが、これもしきたりで、どうにかすると、2万も3万も立て替え状態になることもあった。また、立て替え払いに備えて、常に財布には、2万円は入れておかなければならない。そして、その2万円も万札では、タクシー運転手がお釣りを持っていない場合、先輩に迷惑がかかるので、千円札を5枚程度は混ぜなければならない。ちなみに、入所直後、給料がでていない段階でもこのしきたりは容赦なく適用されるので、新入所員は9月から10月までアルバイトでもしてお金を貯めておいた方がいいだろう。
また、往査の会議室に出入りするときも、自分の位置づけを確認してから、列を組む。
当然新米は、一番最後だが、CPA間でも誰が先輩か見極めて列を作るところは滑稽でさえある。
次に、エレベーターに乗るときは、下の者が最初に入って操作盤の前に身をちぢめて立って、諸先輩方が入っていらっしゃるのを開ボタンを押して待つか、列の都合で(エレベーターに向かう列も上の者から順になっているのが原則)最後になったときには、操作盤前の位置を早急に確保して、目的階のボタンを押さなければならない。
そして、エレベーターを降りるときは、開ボタンを押してみなさんに出ていただいてから、自分は最後にでるようにすること。
また、監査会場の席も勝手に自分から座ってはならない。常に、どちらが上座か考え、自分の位置がどこになるか見当をつける。
一番下の者は、事務所からの電話の取り次ぎ役もしなくてはならないので、電話の位置も考慮に入れる必要もある。
そして、場所が決まったらすぐスーツケースを開け、調書をみなさんが使いやすいように並べ替える。また、監査調書を書く用紙(単なるレポート用紙のようなものだが)を諸先輩方に一冊づつ配る。文房具もろくに持ってこない先輩のいるのでそういう方には文房具もお出しする。まだこれだけでは終わらず、主査や関与社員が使う重要な調書のファイルはまとめて、主査なり関与社員の机の上までお持ちする。そのときに「調書でございます。よろしくお願いします。」というと喜ばれる。
こういう気遣いを、1日中8時間程度(残業のあるときは12時間とか)続けなくてはならないので、ある意味では体育会より精神的には厳しいかも知れない。Webmasterの経験でもほぼ毎年新人が気疲れで、入所して数週間で病院送りになっていた。
入所順がすべての社会であるので、大学の後輩やかつての勉強仲間が先に合格していたら、丁寧に「さん」付けで呼ぼう。
プライベートではともかく、勤務上序列を崩すような行為は厳禁であることをお忘れなく。また、年下の先輩から呼び捨てにされようが「くん」付けで呼ばれようが、にこっとしてハイと答えるように。
また、昼はクライアントにご馳走になることが多いが、そのときも序列を考えてイスに着くように。どの席が上座に当たるか覚えておかないとひんしゅくを買うことになる。注文も、上の人に合わせて、一人だけ豪華なものを頼まないようにすること。
また、おしぼりやお茶は一番下の者が率先して配るようにしよう。中華料理などで数人分のスープなどが一つの器に入っているときつけ分ける役目も当然新米であることをお忘れなく。
また、食事中も勝手に会話をしないように。クライアントは食事の中で主査や関与社員から情報を聞き出そうとしたり、親密な関係を築こうとしているからである。新米は、黙々と食べ、質問されたときだけ話すという姿勢でいればよいだろう。
食事の後は、お茶等で1時間の昼休みをつぶすのが普通なので、本当の昼休みはないと考えた方がよい。買い物や銀行などそう簡単にはいけないのでそのへんの覚悟も必要だ。
ところでこの昼飯クライアント持ちの制度も、おかしなものである。通常寿司や鰻などかなり豪華な食事がでるが、監査をする側が平気でこれを受け入れているのは少なくとも外見的独立性を損なう。だいたい、昼飯などは監査にいっていようが、いってなかろうが、取る必要があるものであり、なぜ、クライアントに負担させるのか不明である。(事務所に愛妻弁当でも持ってきていた時代の名残か?)
さらに、夜の宴会に招かれたりおみやげをもらって帰るようなことも日常的に行われているので、まあ、なれ合い関係が生じるのは当然の成り行きともいえる。これが、関与社員のレベルになるともっとひどい。こっそりと料亭で接待を受けたりしている。接待を受ける本人は気付かれないと思っているのだろうが、交際費の支出などを監査しているとときどきそういった支出が明らかになる。
ヤオハンの裁判でも、この点、監査法人は饗応等で意見を左右された気配があると判決で指摘されているが、まあさもありなんというところである。
一般企業が実力主義に移行しつつある今、このように入所順が最大の武器になるような組織体制にしていて大丈夫かと思うが、上の方は居心地がいいから変えようとはしない。
まあ、個人会計事務所の徒弟制度がそのまま残っていると考えると、わかりやすいだろう。
こういった上下の差別が厳しい組織の常として、一番弱いところにしわ寄せが来る。軍隊で新兵がいじめられるように、相撲部屋で新弟子がかわいがられるように、会計士補も入りたての時は、大なり小なりいじめに遭う。
別に書いたように、タスクフォースが何本も並列して走っている状態なので、嫌がらせに徹夜しなければできないような量の仕事を特定個人に押しつけても、誰も個人の仕事量を管理する人間がいないためストップがかからず、押しつけられた方は泣きながら朝日を拝むことになる。
また、そこまでしなくても、だいたい新米は、株券の見方も、工事見積書の見方もわからないような状態なので、そんなこともわからないかと一喝すれば、結構縮み上がってしまう。また、主査によっては科目だけ押しつけて何も言わないという手段をとることもある。すると、何もわからないまま仕事が進まず、本当に泣き出してしまう新米もでて来る始末である。
ちょっとひどい例を書きすぎたが、少なくとも仕事を手取り足取り教えてくれるなとと決して期待しないこと。知識が商売道具のこの業界そうそう易々と教えてはくれない。先輩に最大限の敬意を払いつつ、お教えをこうという姿勢で尋ねよう。
教えてもらったら、大きな声でありがとうございましたというように。
まあ結果として、知識不足で入所してくる会計士補はこういうプロセスを経て調教されて従順な奴隷となっていくと言うことである。
ただ、ときどき奴隷でなかった幸せなときのことが頭をよぎるやつがいる。結果は殴り合いの大喧嘩である。(冗談でなく決算期等で疲労がたまってくると本当に起こるところが怖い。)そういうやつは完全な奴隷にはなりきれなかったやつなのだろう。当然、そういう反乱者に対する制裁は厳しく大抵はやめていく。
こうして、気概のある者が排除されますます奴隷集団としての性格が強くなっていく。
こうしてみると公認会計士は、自由業といわれる士業の中で、かなり不自由な部類に入ることがわかったと思う。
確かに、一般の企業にはもっとひどい例があるのだろうが、そういったサラリーマン社会に嫌気がさして自由業といわれる公認会計士をめざすという人は注意が必要である。なぜって、まさにその逃げ出してきたサラリーマン社会がそこにあるからである。
上では、会計士補の悲惨さばかり書いてきたが、上下関係は公認会計士になっても当然継続されるので、先輩には頭が上がらない。まあ、15年ほどがんばって社員になれば、ある程度の自由はあるだろうが、やはり社員間でも先輩後輩関係は崩れない。
また、会計士補や公認会計士を中途採用する場合もどの序列に位置づけるか、社員は一生懸命頭をひねる。というのも、序列がわからないと、採用された人も周りの人間もどのように接してよいかわからず、精神的混乱を来すからである。だいたい、メンバー表は、相撲の番付のように序列の上のものから下のものへ記載されているので、そこのいずれかの位置に入れてもらってほっと一安心ということである。
よく考えると、これは狼か犬の社会に似ているような気もする。
こういう業界だから、上に逆らって会計制度や監査法人の監査体制にもの申すなどと言う輩はまずでてこない。
このように自由に議論できない体質が、日本の監査制度や会計制度を後進的なものにしてしまったのだと思う。
一度社会人となってから、一念発起会計士を目指している人、または、目指そうとする人も多いと思う。そういった人の意欲に水を差すようで恐縮だが、社会人経験が長くなれば長くなるだけ監査法人では不利になることを覚悟すべきである。
もうおわかりのように、監査法人では入所年次が最大の資源なのである。たとえ、あなたが30歳、銀行勤務経験あり、MBAも取得といった立派な経歴を持っていても、入所初年は480万程度、3年後の公認会計士合格時でも600万程度の年収しか期待できない。22歳新卒で受かった人と全く同じ扱いを受けるわけだから当然といえば当然である。
反対に、新卒の人にとっては収入面から見ればそれなりに魅力のある職場ともいえよう。(ただし、一般の大企業のように福利厚生は全く整っていないのでそのへんの計算もすること。)
本当は、金融機関の監査などで銀行勤務経験者は、大変な戦力になると思うのだが、会計士補になったとたんに年収480万円が決まってしまうのは何とも不合理である。他の業界を経験した人をそれなりに遇せないというのは、序列社会の大きな欠点である。金融機関の監査の状況を見ていると、はっきり言って純粋培養の会計士では対処できないと感じる。だって、売掛金、買掛金、売上伝票、仕入伝票の世界の人間が、スワップ、オプション等のデリバティブを相手にするのだから。山一、長銀、日債銀等の金融機関の破綻で監査法人の責任がとやかく言われているが、そもそも複雑化する一方の金融商品・取引相手に銀行研修社の新入行員向けテキスト読んで監査に行こうっていうんだから、最初から勝負にならない。まさに徒手空拳とはこのことよと言いたくなる。こういう状況を是正するために、銀行出身者などが移りやすい環境を業界が整えるべきだと思うが、全くその意欲さえ感じられない。既存の序列社会を崩したくないのだろうが、それならいっそ大好きな序列を一つ加えて最近労働市場に多く供給され始めた銀行のプロを迎え入れたらどうだ。−公認金融機関監査士(主査クラス扱い)−
しかし、現状では、入所して奴隷化のプロセスを経て一歩一歩上って行くしかない。
公認会計士協会の様々な分野から人材を迎え入れたいなどと言う言葉は信じないことだ。
なお、年齢による加算など全くないか、1歳当たり月1,000円程度なので期待してはいけない。勝手に一般企業と同じように年齢経験を加味して給料を決めてくれると思いこんでいる人(まあ、それが今までの日本の常識だったので一概に非難することはできないが)は、注意しよう。新米は新米、22歳でも30歳でも給料は同じです。
大体、予備校もこういう現実を無視して、社会人に対してキャリアアップだなどと言って受験を決意させるなど罪なことをするものである。
現在のシステムでは、ともかく早く試験に受かること、卒業してから本気で勉強などと言っていてはならない。
どうにかすると、上述したように大学時代の後輩が主査となってその下で働くことになる。下で働くとは、その後輩のために重いスーツケースを持ち、監査小六法をお見せし、監査調書をお出し、タクシー代をお出しすることだということをお忘れなく。
すでに会社を辞め勉強をはじめてしまった人は、厳しい上下関係や給与制度から言って、監査法人に入るなら25歳までに受かるべきであろう。30歳などというのはもってのほかである。もうすでに30歳を越えている受験生は、もう一度進路を考え直してみよう。別にあきらめろと言っているわけではないが、現実を直視して果たして自分にとってメリットがあるかどうか考えてほしい。それから将来の設計もより精緻に行うべきだろう。
こういう心配をしてホームページを作っていたら、7月15日付の週間文春に『資格学校に群がるリストラ予備軍の真剣』と題して、42歳で大手都銀を退職して公認会計士2次試験を目指す男性の話が載った。Webmasterはこの男性が友人の会計事務所等への就職のあてがあって挑戦していることを祈るばかりである。さもないと、ほとんど就職先はない。たとえ、どこかの監査法人が採用したとしても、上述したような状況に直面して満足できるのだろうか。予備校も本当に本人のことを考えているのかといいたくなると同時に、当ページのように情報開示を進める必要性を痛切に感じた。
今まで述べてきたことだけでも、気が滅入るのに(Webmasterも本当に過去の記憶がよみがえってブルーになってきている。)、それに追い打ちおかけるのが、奇人変人の多さである。特に社会経験がなく社会人になったとたんに外部では先生先生と呼ばれ、内部的にはまるで丁稚扱いされてきた人が奇人変人になる確率が高いように思える。ここにも階級社会のひずみが顔をのぞかせていると言うことだろう。それでは、典型的な奇人変人をひとり。
A社員は、下の者をクライアントの前で叱りつけるのを趣味としている。往査会場でもクライアントがいようがいよまいがお構いなく、スタッフを呼びつけては、バカモンと大声で怒鳴る。その原因たるや重箱の隅をつつくような問題であることが多い。おまけに、その日の気分によって怒鳴ったり、怒鳴らなかったりするので、A社員が監査会場に姿を現すと水を打ったように静かになり、みんな首をすくめてその日のご気分を推察する。気分が悪いときは特定の個人が一日中絞られるので、その者はほぼ再起不能になる。別名ターミネーター。
ただ、下の者を怒鳴り散らすのは、結構一般的な現象である。社員が主査を、主査が公認会計士を、公認会計士が会計士補を、会計士補の中でも3年生が1年生をという具合に、負の連鎖反応が起きている。さらに、どうにかすると、クライアントの経理課員までねちねちといじめて泣かせてしまう会計士もいる。組織的な病理現象であり、経営学的又は組織心理学的なケアが必要だと思うが、上の者に直接被害が及ぶわけではないので手当がされないままである。こんな組織に、経営指導を受けてもろくな結果は出ないとと心底思う。
そのほかにもセクハラ社員、重役出勤社員、ロリコン主査など変人奇人には枚挙にいとまがない。異常な組織に長年いると個人も異常になり、それがまた組織をより異常なものにしていくということだろう。
また、序列社会でもまれた結果みんな序列に敏感になっている。ほとんどパラノイア状態である。序列の上の者が、誰かをからかっても、からかわれた人間より序列が下の者は笑ってはいけないなどという暗黙の了解事項があるといったら意味が分かるだろうか。
監査法人などという一つの法人格を持った組織として法律上は扱われているが、その実態は個人事務所の集合体であることが多い。特に、BIG5との関係が緩やかな、国内系の監査法人にその傾向が強いようである。大蔵省の指導もあり個々の個人会計事務所等が合併に合併を重ねて監査法人が形成されてきたたことはご存じと思う。普通、企業の合併といえば帳簿を一つにし、人事面でも融合をはかるような工夫がされるものだが、大先生方のとった合併の方法は少し違う。合併に際して先生方の頭に去来したのは、大体以下のようなことであったと推察される。
自分が多くのクライアントを開拓し、事務所を大きくしてきた。経営状態もよい。大蔵省の指導とはいえ、自分のクライアントを他人に差しだし、他の経営状態の劣る会計事務所の影響を受けて所得が下がるのはいやだ。組織を本当に統合したら、上下関係ができてしまってこれもおもしろくないし、そもそも監査法人などできない。いっそのこと合同事務所のようにしてして現在の体制を温存しよう。問題になるのは、社員の無限連帯責任だが、今まで責任を問われたことはないし、そんなに心配することもないだろう。
この結果生まれたのが、現在の監査法人である。よって、監査第何部門とかいっているのは、クライアントの業種とかとは全く関係ない。過去の個人事務所の名称がとれただけのものである。クライアントを他の部門に差し出すことはしないし、会計も部門毎に別会計の独立採算性であり、人事も採用及び異動単位も部門である。監査法人が日本相撲協会、各部門が各相撲部屋と考えると構造がよくわかるかも知れない。
確かにこうすることによって、当初の合併はうまくいったのだろう。実質合同会計事務所にしたのだから、独立心の強かった先生方も何とかまとまった。銭の問題も営業が下手なやつの影響は最小限で済む。また、監査法人が合併するときも、単に共通経費を案分する仲間が増える程度の認識でできたため、監査法人の規模拡大に役立ったことも事実である。
ただ、現在社員の無限責任追及が現実のものとなる可能性に直面して、他の部門にもある程度口出しをしないと自分の財布も危なくなると先生方は悟ったようである。あわてて、ある部門の監査を他の部門が審査する等の内部審査体制の拡充等の策を打ち出している。
さらに、他の先生の責任まで連帯して負う監査法人の制度は、そんなことが実際には起こるはずはないと思ったから、同意しただけで、実際にそのようにことが起こるなら無限責任などいやだという反応が当然出てくる。それが今議論されている社員の有限責任化である。やばくなって急にそんな議論が出てくるところは、今までそんな覚悟が全くなかったことの証左ともいえるが、身勝手な話である。有限責任化するなら、財務諸表の開示はもちろんのこと、監査法人の内部留保を厚くするために過去に社員に分配した利益も返還べきである。おいしいときだけ無限連帯責任といって利益を自由に分配しておいて、やばくなってから有限責任で、資本の部が不十分な監査法人へ逃避することを簡単に認めるべきではない。少なくとも引き当て財産の減少が実質的にない形での移行が必要であろう。
少し話がそれてしまったが、この実態を知らずに監査法人に入ってくる会計士補にとっては、はた迷惑な話である。
つまり、各部門が個人会計事務所時代又は合併前の監査法人の性格を強く残しているため、ある監査法人に入ったとしても、配属される部門によって全く違った監査法人に入ったのと同様の結果になるのである。そもそもその採用さえ、監査法人として一体で採用しているような体面をとっているが、部門毎に採用の意思決定をしていたりする。
この結果、部門毎に職場の雰囲気・文化が全く異なることも珍しくない。また、残業代の付け方、仕事の内容も異なることが多い。例えば残業では、サービス残業を強いられる部門と気前よく出してくれる部門があったりする。仕事でも会計士補の間から主査等の責任のある仕事をさせる部門から、2年経っても3年経っても販管費ばかり監査させる部門もある。さらに、監査調書の書き方からして部門毎に異なっていたりする。ここまで異なっているなら、正直に部門毎に採用活動をして情報開示をしたらどうだと思うのだが、全くその気配がない。困ったことである。
また、首尾よく採用された後も、こういった仕組みを知っておかないととんでもないトラブルに巻き込まれたりする。
Webmasterはかつて、そんなことを知らずに他の部門のコピー機で大量にコピーをしてクレームを付けられた経験がある。
また、一旦ある部門に採用されると他の部門に移るということは、監査法人を変わるよりも難しい場合場ある。よって、とりあえずある部門に入ってその後人事異動で希望の部門に行こうなどということを考えている人は、そんなことが可能かよく確かめよう。
かなりいい加減だということがわかったと思うが、スタッフの管理もできない。
ところでめでたく監査法人に順応することができ、番付が上がっていくとほとんど監査らしい監査をしなくなるといった矛盾した状況に陥る。
というのは、主査になると財務諸表の注記の書き方を調べたり、有価証券報告書の記載方法を検討したりといった、いわば、お化粧の部分に忙殺されるようになるからである。また、往査にいっても特定の会社と接し続けるうちに、会計処理コンサルタントと化してしまい意図的な虚偽記載を発見しようなどと言う大それたことは思いもよらなくなってくる。会社から先生ご相談がありますと言われると悪い気はしないし、仕事をした気分にひたることもできる。しかし、そもそも、会社側からここについて処理をどうしましょうかと相談してくるような部分に粉飾などあるはずがない。また、虚偽記載を見つけようと努力したって会社にいやがられるだけ。結局やっていることは、会社が大蔵省の様式に合わせて書類を作ることをお手伝いする、または、自ら作るという作業にとどまっしまう。いわば行政書士化である。
実際の証憑突合等は心許ない会計士補が行っており、申し訳程度に主査は、前期比較等の分析的手続を行っているだけである。まあ、こういう姿勢で監査をしていたから、突然粉飾決算が明らかになって会社がつぶれたりしたのだろう。
監査法人の実際の勤務時間は説明会などではまず本当のことが聞けないのでここでお教えしよう。
まず、繁忙期は、4月から6月初めくらいまで(国内法人監査の場合)。この期間はエンドレスで仕事をしなくてはならない。一時期に多数の会社を監査しなくてはならないため、1社当たりにさける日数は限られている。そのため、往査が終わるのが11時といった日が毎日続く。
往査が終わってから、事務所に戻って書類の整理や残高確認書の整理をしたりすると確実に午前様となる。Webmasterは、午前3時というのが一番遅かったが、徹夜組も結構いたのでまだ恵まれていた方だったといえる。終電車に乗れずタクシー帰り、又はホテル泊まりになることも多い。おまけに、土曜日曜もない。(つまりゴールデンウィークも休みなしということ、国内監査をやっていてゴールデンウィークに休もうなどと間違えても思ってはいけない。)どうにかすると、連続30日間休みなしという日程になる。労働基準法も何もあった世界ではないが、監査法人では労働法による保護は期待しないこと。そもそも、労働組合もないのだから。こういう組織にいると、御用組合でも労働組合は必要だと思ったが、独立性の高い会計士の先生方のこと団結なんかできっこない。
このような過酷な勤務が2ヶ月も続くと当然体調を崩す者も出てくる。しかし、この時期ちょっとした体調不良などで休めると思ったら大間違い。だいたい、みんな半病人のような状態で監査を続けているため、休むためにはそれなりの重大性を立証しなくてはならない。なぜなら、ぎりぎりの人数で監査を行っており一人でも休むと他のメンバーにさらなる負担がかかることになるため、それを納得してもらわなければならないからである。そのためには、ふらふらして往査に出かけ、監査会場の机に突っ伏して動かなくなるとか、鼻血を出して血まみになる、意識を失って倒れる等して他のメンバーに仕方がないと思っていただかなくてはならない。多少の発熱ぐらいでは出ていくのが常識。ちょっと熱があると暗に体調不良を訴えても、「点滴に行けばすぐよくなるから、ちょっと行って来たら(当然点滴の後は監査にもっどてこいという意味)。」などといわれるのが関の山である。
また、どの監査法人も補習所の出席には最大限の配慮をしますといっているが、その配慮とは5時半頃から9時頃まで事務所にいなくてもよいという意味なので間違いのないよう。繁忙期や仕事のあるときは、「補習所は8時半頃に終わるよな、それから2時間は仕事ができるな。」で終わり。また、いわれなくても9時頃に帰っていって仕事をするのが正しい会計士補の姿とされているので、周りの反感を招かないよう注意しよう。
まあ、中央官庁、中でも大蔵省等の勤務と比べたらこれでもかなりましだと思う。但し、中央官庁へ行く者はその過酷な勤務状態を知ったうえで就職しているが、監査法人となるとほとんどが実態を知らないまま入所すると思う。
こういう点は、生活、もしかしたら生命にも直接関わる可能性がある事項で、情報開示が重要だと思うが、なぜしないのだろうか。
ところで、この日本に蔓延する長時間労働はなんとかならないものか。中央官庁の他、銀行なども労働時間は長いようである。大手都銀に行っている友人など文字通りセブン−イレブンの勤務態勢である。長時間労働をしている当事者は、内心では正常ではないと思ってはいる。しかし、自分が徹夜や深夜勤務をした場合何か自慢したくなる心理が働くようである。これは、年寄りの集まりで、誰かが高血圧の話をすると、自分は心臓も患っており大変だと張り合うあの心理状態に似ている。Webmasterのいた監査法人でも朝、事務所に行くとぼろぼろの格好で「昨日は徹夜だったよ。」となぜか誇らしげにぼやくやつがいた。自分を犠牲にして仕事をしたという被虐心を満足させる側面もあるのだろう。
ただ、悲劇的かつ喜劇的なのは、その長時間労働があまり意味があるものではないことが多いという現実である。有り体に言って、異常なほどの長時間労働が続くのはマネジメントの人員配置の誤りであり、経営上ほめられたことではない。また、長時間労働の内容は社会的にはあまり意味があるとは思えない内部資料のとりまとめであったりする。それを反映するのが、長時間労働が常態化している業界のパフォーマンスの低さであろう。中央官庁の非効率さ、行政課題に対する取り組みの遅さは社会問題化している。銀行は、破綻が続き、破綻しない銀行にしても24時間ATMさえ実現できず、あの韓国の金融機関よりサービスが悪い。監査や会計制度は海外から不審の目で見つめられる。そんなこんなもあってか、日本の国際競争力は世界14位だそうである(日本経済新聞7月14日夕刊)。くだらない仕事を削減する革新性の方が、既存の仕事をくそまじめに行う忍耐力より重要だと思うが、おかしいことをおかしいといえない日本のサラリーマン(特に巨大組織)。競争力回復の道のりは遠い。
考えてみればこの会計士補というのもおかしな資格である。率直に言って会計士補の資格だけでは監査には全く対応できない。税効果会計などでますます重要性を増す税金は2次試験の受験科目に入っていない。また、小切手や手形も初めて見るというような状態である。
ところで、小切手法、手形法を全く勉強しないまま会計士になれるというのは不可解である。手形要件、手形の呈示期間、裏書人に対する遡求権の確保等々全くわからないまま手形の監査といってもねえ。
まあ、まともに監査できないから会計士補というんで、それならそれで、会計士がきちんと指導すればよいのだが全くそうなっていない。多くの場合、最初からある勘定科目をまる投げで任される。すると、会計士補は右往左往しながら手探りで監査らしきことを行うことになる。大抵は、前期の調書を数字だけ変えてまる写しする結果となる。会社の経理担当者に質問しようにも何を質問してよいかわからない状態であり、たまにする質問は常識に属するようなことで恥をかくことになる。監査法人では、これがOJTだといっているが、次のような問題がある。
まず、ほとんどアマチュアレベルの会計士を連れてこられて実験台にされる会社はいい迷惑である。いわば手術経験のない医者が手術をしているような状況であり、その上しっかりと監査報酬は取られる。面と向かっては苦情は出ないが、会社の経理の人々は、監査の後であの会計士はひどいとか、なぜ毎年うちは新人の研修に使われ基本的な説明を繰り返さなくてはならないかと内輪で愚痴っている。これでは、会計士に対する信頼など出てこない。あなたは公認会計士を信じますかというフレーズがあったが、実態を知っているものは信じるはずがない。
こんな不完全な状態の会計士補をプロフェッショナルとして平気でクライアントにつれていくというのは、クライアント・ファーストに反すると思うがあまり問題にされないようだ。また、このようなOJTを行うのは、監査などいい加減でよいと宣言しているようなものである。
一方、会計士補にとってもこのいわゆるOJTは、一般企業のOJTとかなり意味合いが違う−その場質問できないのである。つまり、クライアントが目の前にいるため、主査等の上司に不明点を大きな声では訊けない。例えば、破産廃止という単語ががわからなかったとしてもそんなことを大声で聞こうものなら、まず後から、主査にクライアントの前でそんなことを聞くなと怒鳴られる。結局、監査会場からこっそり抜け出て、別の会社の監査にいっている親切そうな先輩や物知りの同期に携帯電話で教えを請うことになる。それでもわからなければ、当日は適当にお茶を濁しておいて、夜のうちに事務所に帰って調べ翌日さも知っていたような顔をする。本当に、会計士のうわべの権威を保つのも楽ではない。
このように不十分な知識で合格させておいて、後は公認会計士と同じ仕事を任せっぱなしにしてOJTだといえる会計士補という資格は当の会計士補にとってあまりありがたい制度ではない。あくまで補だというなら監査法人等は、しっかり指導をして会計士の質の向上と均質化に努めるべきである。即戦力にしたいというのなら、2次試験科目をそれに合わせて再検討し、経験年数1年程度で3次試験なしで公認会計士として認めるべきであろう。(お気づきと思うが、こればアメリカの制度である。)勘ぐれば、わざと2次試験を不完全な科目設定にして、3次試験までに給料の安い丁稚期間を3年間も設定する口実にしているのではないかといいたくなる。ところで、これは、深刻度では全く比較にならないが、看護婦と准看護婦の問題と似た側面を持っている。
監査法人の経営面からいえば、多少知識がなかろうが会計士補が必要である。公認会計士を使うと労働時間あたりの単価が高くなり経営を圧迫するからである。また、一人前の会計士ではないはずの会計士補も別に税法科目の監査をを担当してはいけないなどという制限はない。監査補助者としての位置づけは同じであり異なるのは単価だけである。よって、監査チームを作るときも原価を抑えるために会計士補を必ず一定比率組み入れようとする。(調書運び等の雑用をする者の確保という意味ももちろんある。)さらに、残業なども残業代を出す場合は会計士補にやらせた方が安くつく。
ただ、単価が安い分会計士補はリストラの対象にはまずならない。会計士補であることの唯一のメリットである。晴れて3次試験に受かって公認会計士になり、単価が上がった場合、次のようにリストラの対象になる可能性もあるから注意が必要だ。
何もリストラと言っても現在騒がれているような仕置き部屋に隔離するような必要はない。プライドの高い会計士のこともういらないといわれたらみんなおとなしく出ていく。そんなときに懇願してお情けでおいていただくというような選択は、先生としての美学が許さないというところだろう。
また、会計士補の時代に監査法人の実状に失望して3年間のご奉公が終わったらすぐ退職するという人も結構いる。特に有能な人は会計士に限界を感じて司法試験などを目指すことも多いようだ。まあ、監査法人としては、コストがかかる公認会計士が出ていってくれて経営的にはプラスといったところだろう。この公認会計士の退職の程度は、公認会計士、会計士補合わせて1,500人程度の組織で毎年150人程度会計士補を採用していることからもかなり高いといえる。
最近U.S. CPAの予備校ばやりである。日本の公認会計士試験よりも簡単であり、また、税理士試験のように科目別合格も可能(といっても1科目だけ受ければよいというわけでないようだが)といったことから人気があるようである。
Webmasterは当初以下のように考えていた。
会計、監査科目は確かに監査・会計が国際的に統一される潮流があり意味があるかも知れないが、税法やビジネスローなど日本人が日本の制度を知らずに学習して意味があるのか。日本の民商法を知らずして、アメリカのコマーシャルコードで契約の成立要件を勉強してどうするのだろう。また、IRS向けのForm1040や1120を学習して日本の税法を知らないというのでは国内の実務では役立たない。
この資格が実際に役立つのは、@英語がネイティブ並でアメリカ本土の監査法人や一般企業で就職したいという人A日本の外資系企業の経理部に勤めたい人だろう。
ところが、最近特に去年の秋口から国内の監査法人の国際部が監査スタッフとしてU.S.CPA資格保持者を採用し始めた。背景には、日本の会計士2次試験合格者が昨年は不足していたということもあったらしいが、確かに主に外資系企業の日本支店についてSEC基準で監査する場合にはこの方がよいかも知れない。日本の2次試験を受かった会計士補でも国際関係を主に扱うときはU.S.GAAPについて付け焼き刃的に勉強しなければならず、その面ではU.S.CPAの方が一日の長があるといえる。それに、SEC基準下では、日本の会計士は無資格者である。今後、NYSEやNASDAQをを目指す企業が増えてくれば活躍する場面が増えてくるかも知れない。
さらに最近耳にはさんだところでは、国内法人の決算繁忙期にはU.S.
CPA資格者を国内法人の監査に回したところもあるらしい。別に、監査チームをすべて日本の資格者で構成しなければならないとはなっていないので法的な問題にはならないが、U.S.
CPAでも国内監査OKならどうして日本の会計士試験をそれほど難しくしなければならないのかと思う。最近各監査法人では監査マニュアル整備を一生懸命やっているようだが、監査など誰がやってもマニュアルさえあれば何とかなるということかも知れない。おまけに、U.S.
CPAの場合は大体の州で1年間の監査経験があればライセンスをくれる。もちろん3次試験などない。給料も日本の会計士補とそれほど変わらないか、かえってよいようである。
こういうことを踏まえるとU.S. CPAをとって、国際部でSEC監査等を行うという道は結構おいしいと思う。ただし、U.S.
CPA試験には日本の会計士試験のように会計士の供給量を調整するような機能はない。そのため、今後合格者が増えると大手監査法人に入れる人はほんの一握りという事態が生じるだろう。大体、アメリカの公認会計士自体、会計を職業にしたい人が受ける試験で、日本のように監査をやりたい人が主に受ける試験とはだいぶ性格が違う。合格即就職とならない点に注意が必要だ。さいわい、社会人が会社を辞めてまでしてやらなくても受かる試験のようなので、自己啓発のつもりで受け、チャンスがあったら転職するといった程度の認識の方が安全だろう。また、時間のある学生時代にとるならもっと簡単だろし、監査法人に入らなくても外資系企業を中心に就職時の武器にはなるだろう。
ところで、外国公認会計士試験の論議はどうなったのだろう。外国公認会計士といっても単なる外国で公認会計士資格を取った人のことではなく、その資格を日本政府に承認してもらった人のことである。
この、外国公認会計士については、公認会計士法に規定されている。参考までに下に関係条文を挿入しておいた。
公認会計士法
(外国で資格を有する者の特例)
第十六条の二 外国において公認会計士の資格に相当する資格を有し、且つ、会計に関連する日本国の法令について相当の知識を有する者は、大蔵大臣による資格の承認を受け、且つ、日本公認会計士協会による外国公認会計士名簿への登録を受けて、第二条に規定する業務を行うことができる。但し、第四条各号の一に該当する者については、この限りでない。
2 大蔵大臣は、前項の資格の承認をする場合には、試験又は選考をすることができる。この場合において、大蔵大臣は、公認会計士審査会をして試験又は選考を行わせるものとする。
3 第一項の登録を受けた者(以下「外国公認会計士」という。)が左の各号の一に該当する場合には、日本公認会計士協会は、同項の登録を抹消しなければならない。
一 第二十一条各号の一に該当するとき。
二 外国において公認会計士の資格に相当する資格を失つたとき。
4 第十九条、第十九条の二、第二十条、第二十二条から第三十四条まで及び第四十九条の規定は、外国公認会計士に準用する。
証券取引法(おまけ)
第百九十三条の二 証券取引所に上場されている有価証券の発行会社その他の者で政令で定めるものが、この法律の規定により提出する貸借対照表、損益計算書その他の財務計算に関する書類で大蔵省令で定めるものには、その者と特別の利害関係のない公認会計士(公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)第十六条の二第三項に規定する外国公認会計士を含む。以下この条において同じ。)又は監査法人の監査証明を受けなければならない。ただし、監査証明を受けなくても公益又は投資者保護に欠けることがないものとして大蔵省令で定めるところにより大蔵大臣の承認を受けた場合は、この限りでない。
そもそもこの制度は、日本の公認会計士制度が発足したばかりの頃、外国人の公認会計士を国内的になんとか位置づけようとした政策的なものである。当時、日本人では監査なんぞ本格的にやったことのある人間などいない。監査制度自体は、アメリカからの直輸入であるから、明治時代のお雇い外国人よろしくアメリカ人に来ていただいて指導を仰ぐ必要があった。こういう性格の試験だから、日本人でもそれなりのノウハウを蓄積したと大蔵省が判断したら資格承認は停止された。実際に使われたのは1950年から1975年までで74人を承認したようである。ただ、当時承認した人がまだ10人ほど残っているので、条文を削るわけにも行かず放置してあったというのが正直なところだろう。
ところが、日本の会計士制度が貿易障壁だとアメリカ通商代表部に1998年から指摘され初め、この制度を再び使う使わないという議論が起こってきた。
議論の経緯は以下を見てほしい。
1998年
1998年アメリカ(USTR)のNational Trade Estimate Report on Foreign Trade Barriersでの主張は、ここを見てほしい。(Japanの部分を見ること。ただ、PDFファイルなので多少面倒かも。)
それに対する日本政府の反論(98年外国貿易障壁報告書への日本政府のコメント)
会計監査業務
会計・監査業務に関する米側の指摘には、国際的にも一般的な内容の資格認定制度に関し、これを参入障壁と称する内容のものが多数入れられ、誠に遺憾である。これらの内容については、削除されるべきものと考えている。具体的な内容は以下のとおりである。
(1)米側は、我が国において日本の公認会計士の資格を持つ者又は監査法人のみが監査業務を提供できるとしていることをもって、市場参入障壁と指摘しているが、米国を含む各国の市場関係法制においても、会計監査業務の提供は法律で独立職業専門家としてその能力を認定された者のみに認めているところである。従って、米側の指摘は当たらない。
(2)米側は、外国の会計士が我が国において公認会計士資格を取得するために外国人対象の特別の試験に合格しなければならないことをもって市場参入障壁との指摘を行っているが、米国を含む各国においても他国の資格者の参入に当たり、一般に、その能力・経験等を検証の上、国内資格を認定する手続を行っているところである。従って、米側の指摘は当たらない。
なお、我が国の外国の会計士を対象とする試験は、希望者が確認されなかったことから、1975年を最後に実施されていないが、現在作成中のWTOでの会計サービスに関する多角的規律が作成された後において、当該規律を踏まえた試験等を実施する場合の条件等を検討しているところである。
(3)米側は、我が国において、監査法人がスタッフ、パートナー又はアソシエイツとして雇用した外国の会計士に監査業務を認めないことをもって参入障壁との指摘を行っているが、(1)でも述べたように、米国を含む各国においても自国において職業専門家としての能力・経験等の資格認定を受けた資格者のみが監査業務を提供しているところであり、米側の指摘は当たらない。
なお、外国の公認会計士においても、(2)で述べた国内資格認定のための試験を経て資格認定を受けている者は、業務を提供できることは当然である。
(4)米側は、我が国において外国の会計業務提供法人の支店や子会社が監査業務を提供できないことをもって参入障壁として指摘しているが、各国においても一般に他国で監査業務の提供資格を認められたことをもってその支店の監査業務の提供を認められるものではなく、各国の法制の下で監査業務の提供資格をあらためて認定しているものと承知している。従って、米側の指摘は当たらない。
(5)監査法人における税務業務の提供については、米国においても監査業務の提供法人が税務業務を提供することを禁止する方向も含めて検討が行われていると聞いている。
また、米国においては、外国の会計士の資格承認手続は加・豪のみに認められていると聞いており、我が国としても重大な関心を有している。
こんなことを、大蔵省が中心となって書いたものだから(発表は10年4月3日)、すぐにでも外国公認会計士試験が再開されるような雰囲気が醸し出された。そして日経新聞が10年4月6日付で早ければ99年からと報じてしまった。
しかし、その後大蔵省ははたと気がついたようである。U.S.CPA日本人合格者がどんどん出ている今、試験を再開すると日本の公認会計士試験を空洞化させると。アメリカの圧力で再開する試験、本当に資格を開放したいアメリカ人が受かるような試験でなくてはならない。すると、「会計に関連する日本国の法令について相当の知識を有する者」と法文にあってもそれほど難しい試験にするわけには行かない。しかし、それでは日本人のU.S.
CPAがどんどん外国公認会計士になってしまう。日本で会計士となるための試験であり日本人U.S.
CPAが日本語で解答したいと言っているのに英語の出題・回答を強制してふるい落とすわけにも行かない。身動きがとれない状態になってしまったようである。
その結果か、今年の反論は実にあっさりしている。
1999年
99年外国貿易障壁報告書への日本政府のコメント
会計監査業務
「外国会計士が職業資格を手に入れるには、外国人用の特別の試験に合格しなければならない」との記述は、我が国公認会計士試験については国籍無差別に受験資格が開放されているため、適切ではない。米国を含む主要先進国においても自国において公認会計士として資格認定を受けた者のみが監査業務を提供している。また、米国を含む主要先進国においても、一般に自国以外の国で監査業務の提供資格を認められたことをもって自国内の監査業務提供が認められるものではない。
しかし、日本人のU.S. CPAが今後どんどん増えていけば、その存在は無視できないものになるだろう。また、日本人U.S.
CPAは、日本政府が特に弱いアメリカからの外圧を利用すればよい。まず、AICPAの会員になる、そして日本人U.S.
CPAの団体を作り、大蔵省に試験の再開を要求する。当然のごとく大蔵省に拒否された後は、AIPCPAの会員が日本で不当に扱われているとしてAICPA及びアメリカ政府に泣きつこう。
U.S. CPAの予備校もアフターケアまで考えて、大同団結してがんばればよいだろう。
そうすれば、会計士資格も大競争時代にはいる。勝ち残るのはどっちかな。日本国内でだれも資格を取ろうとしない飛行機の操縦免許のようにならないとよいが。
上述してきたように、監査法人で生き残るには何よりも従順さと、理に合わないことでも喜んで受け入れる精神構造、過酷な決算期を乗り切る体力が必要となる。
まず、精神面だが、人間結構適応力があるもので、入所した当初は監査法人の実態に文句を言っていた者も、次第に思考力を失う。そして、苦渋に満ちた何かに耐えているような顔つき、いわばマゾ顔が板に付いてくる。それとともに、次第に文句も言わなくなり、喜々として先輩方のお世話をするようになっていく。これは、体育会系の団体にいた人には、比較的おなじみの情景であろう。
但し、ときどきこの馴致化のプロセスがうまく働かない人がいる。こういう人及び監査法人に早く溶け込みたい人は、SMクラブに行って支配される喜び、従順さを身につけるとよいだろう。最近は、女性が主査になることも多いから、女性に命令されることに慣れると言う意味からも、女王様に鍛えていただくのは男性諸君にとって結構意義のあることだと思うよ。
いずれにせよ、マゾ化できない人は、入所後半年か1年で監査法人を辞めることになるのでそのつもりで真剣に取り組もう。
もっとも、2次試験を受かってくるような人は、毎日机の前に12時間座って、やりたくもない勉強を続けることができる人だろう。
とすると、2次試験合格者は元々苦しさの中に快感を感じるマゾの素質のある人が多いのかも知れない。
また、体力の増強も必要だ。
まず何よりも腰を鍛えよう。60kgの荷物をタクシーのトランクに入れるだけの筋力は必要だ。ヒンズースクワッドをやるのがよいだろう。
なお、女性はさずがに免除されるのでこれは必要ない。
また、会計士補が往査に持っていく荷物は5〜10kg程度。監査小六法だけでも1k弱、それにコンピュータ、税法の法規集、監査調書、文具等を入れるとこのくらいにはなる。これを持って往査会場に行くだけでも結構体力を消耗する。荷物を手に下げて20分は歩けるようにしよう。地下鉄の長い階段などで息が切れなくなればまあ合格。これは、女性も必要になるので今までハンドバッグしか持ったことのない人は練習しよう。
なお、時として通常の荷物に加えて監査調書のファイルを7,8冊持参しなくてはならないときがある。すると、荷物の総重量は、15kgほどになるのでこれにも対応できるうようにするとなお可。ただ、この場合でも、他の先輩はほとんど荷物を持っていない状況下で一人だけ苦しんでも不平不満を言わない被虐精神が前提になるのでお忘れなく。
ついでに、就職に当たって引っ越す人は最寄りの駅からできるだけ近いところに引っ越すこと。普通なら駅から徒歩15分でも許容範囲かも知れないが、15分も荷物を持って歩くのはつらいものがある。実をいうとWebmasterもこれに嫌気がさして一度引っ越した。特に雨が降ったときなどに荷物が2つもあると傘もさせず大変苦労した覚えがある。
さらに、通勤ラッシュがひどい路線も避けた方がよいだろう。自分の体を入れるだけでも精一杯のところに、大きな鞄を2つも持って入り込むのは至難の業である。また、運良く乗り込めたとしても周りの冷たい視線を浴びる。雨など降った日には、傘と鞄を抱えてドアに貼り付いたまま我慢しなくてはならない。悪くするとその上に、ラッシュの圧力で鞄に入れたコンピュータが壊れたりして多大な出費を強いられることになる。
冒頭に書いたようにこのページは監査法人がパンフレットでPRするようなことはすべて省略して、マイナス面だけを取り上げている。そしてこのマイナス面も、すべての監査法人にここにあるすべてのマイナス面が存在すると勘違いしないよう。なにせ、監査法人は個人会計事務所の集まり、同じ監査法人内でも部門や部によって全く雰囲気が変わることも珍しくない。
Webmasterが意図したのは、監査法人に就職した場合に考えられるリスクを提示すること。だって、表向きいい話しか伝わってこないでしょ。
みなさんがすることは、各監査法人のPRも聞いてプラス面でも比較すること。また、このページにあるようなマイナス面については、どのマイナス面についてどの程度まで自分に受け入れられるかしっかり価値判断をしよう。はっきりいって、結婚相手と同じでマイナス面が全くない監査法人などあり得ない。
その中で、自分にとって何が大事か今までの人生経験が問われる選択をすることになる。
でも、マイナス面を承知の上で就職するなら、だまされたという後悔だけはしなくて済むんじゃないかな。
これだけではあまりに漠然としているのでチェックポイントを少し。
1 監査売上高と監査法人の職員数を比較しよう。(上述した日経金融新聞(6月24日)が参考になる。)
監査収入の割に人が少ないということは、監査に人手をかけないか、職員が酷使されているかどちらかを意味する。有効性を損なわず、効率的な監査をしている可能性もあるが、監査がいい加減になっている可能性も大きい。あまりに職員数が少ないのは好ましい状況とは言い難いだろう。
2 社員の構成比も比較しよう(これも、上述した日経金融新聞(6月24日)が参考になる。)
監査法人において社員の仕事は下に命令することで、当然個々の科目など担当しない。特に昨今の会計士に対する責任追及の機運に敏感になっており、以前にも増して次々と命令を出すようになっているようである。しかし、その命令をこなす人間はあまり増えていないのが現状であるため、スタッフレベルでは大残業の連続となってしまう。あまりに逆ピラミッド型になっている組織は避けた方がいいだろう。
3 日程表を見せてもらう。
すでに監査法人にいる人に、まず、繁忙期の日程を見せてもらおう。(なお、予定でなく、実績を見せてもらうこと。決算期において予定は未定で仕事はどんどん増える。)国内部門中心の人ならなら4月から6月、国際部門なら1月から3月といったところを見て、どのくらい忙しかったか聞いてみよう。証取法の決算監査に延べ人数で何日人を使っているか注目するのもよいだろう。いくらリスクが少ないといっても、証取法の決算監査を10人日で行っているような場合は要注意と言っていいだろう。
また、出張についても確認しよう。独立採算性の監査法人、チャンスがあったら地方に本社があるクライアントについてもその監査法人の地方事務所をさしおいて東京事務所が契約をとったりする。この場合、なわばりを荒らされた地方事務所は監査に参加もさせてもらえない。ただでさえ支店や工場の監査があるのに、こんなクライアントが多いと、スタッフレベルでは出張ばかりになる。ひどい例だと、5週間とかにわたって毎週出張に行っていた人がいた。今週は大阪、来週は札幌、次は、福岡といった具合である。おまけに、夜もクライアント主催の宴会や社員、主査の趣味に振り回される。ただ、出張が好きな人もいるのでマイナス面とは断定しないが、生活全般に関わることなのでどのくらい主張があるのか確認した方がよいだろう。
さらに、繁忙期以外の日程表も見せてもらおう。繁忙期以外は普通、多少往査日程にブランクがあって、事務所で書き残した調書を書いたり、調べものをしたりする日程があると思う。こういったブランクがどれだけあるかも重要である。これがないと、毎週月曜日から金曜日まで往査に行って、その結果の整理やクライアントに出す報告書の作成等はすべて残業時間帯や土曜日曜をつぶしてやらなければならなくなる。おまけに、その残業は全てサービス残業となる可能性が高い。注意が必要だ。
4 3次試験の合格率を聞いてみよう。
3次試験の合格率をチェックするのも有用だろう。ここの合格率は、3年目で一発で合格する者の割合である。3次試験を一回で合格できる人の割合が低いということは、会計士補が酷使されていることを表すと考えてよいだろう。
確かに、個々人の資質や能力もあるのだろうが2次試験を突破してきた会計士補なら、時間さえかければほとんどが3次試験に合格する。
試験前に1ヶ月間は、勉強に専念できるような環境の監査法人にいる受験生と、1週間前まで毎日11時の残業が続いている監査法人の受験生では結果は自ずから明らかである。
また、公認会計士協会にある会計士の名簿で登録番号が古い会計士補がどの法人に何人いるか調べるのも一つの方法だろう。
まあ、監査法人としては、3次試験に受かって公認会計士になられると人件費が増すので会計士補のままでいてくれた方が助かるのだろうが、安給料で会計士になった同期と同じ仕事をやらされるのはつらいものがある。
4 採用予定人数と現在の職員数のバランスを調べよう。
別のところにも書いたが、会計士業界の人の動きは一般企業に比べ激しい。しかし、それにも限度がある。現在の人員に比べてあまりに採用予定人数が多かったり少なかったりするところは注意しよう。ここでは、初歩的な分析手続を行う。他法人に比べて採用予定人数が多い、少ないというのは必ず理由がある。業務の拡大縮小、退職者の増加等その裏にある理由を確認する。監査でも役立つ思考方法なのでいろんな角度から考察を加えてみるとおもしろい。ただ、事務所単位、極端な場合は部門単位で採用数を決定している場合もあるので、法人全体でなくできるだけ採用単位に合わせて分析すること。
5 事務所がスタッフに働きやすくできているか見極めよう。
監査法人によっては、事務所を見学させてくれる。このときにスタッフルームや調書置場をよく観察しよう。ポイントとしては調書置場のスペース、机の数、個人の所持品置き場、社員室との区切り、事務スタッフの数といったところか。
まず、調書がきちんとラックに入っていないところは大減点。自分たちの仕事でもっとも大事な書類がスペース不足でラックからはみ出したり、床の段ボール箱に入っているなどしているところは問題外である。調書の保管に十分なスペースがとれないような事務所に入所しても一番下っ端のあなたが調書が整理できず困るだけである。
また、机の数も何人のスタッフに対していくつあるのか計算してみよう。監査法人では自分専用の机はない。空いている机を勝手に利用する。(但し、この机にも上座と下座があるので新米は下座に座ること。)これは、一定の人員は常に往査にいっているため全員分の机を用意してもスペースの無駄だからである。しかし、これも程度問題。あまりに少ないと1つの机に2人掛けで、残業をこなす羽目になったり、場所がなくて風呂敷残業を強いられることになる。
また、個人の持ち物の保管場所も確認しよう。一人一人に身の丈大ロッカーがある地方の監査法人を見たことがあるが、大都市ではコインロッカーぐらいのスペースしかもらえないと考えた方がよい。それでも、監査法人によって大きさはだいぶ変わるので個々人にどれだけのスペースが与えられるのか確認しよう。保管場所があまりに小さいと書類や書籍を事務所におけずに自宅保管せざるを得なくなるなど思いの外不便である。
さらに、事務スタッフ1人当たりに監査スタッフが何人にいるか確認しよう。事務スタッフが少ないと、下っ端の会計士補が、郵便の受取や電話番までしなくてはならなくなり、ただでさえ多い雑用にますます忙殺される結果となる。特に、残業時間帯にも事務スタッフが残っているかも確認しよう。事務スタッフだけさっさと帰って行かれると、一番下の者は宅急便の受取や電話番で自分の仕事もできなくなる。
これらは、一つ一つは小さなことであるが法人のスタッフに対する姿勢をあらわすものなのでよく観察しよう。
6 粉飾リクルートに気をつけよう。
リクルート担当者を経験するとわかるが、必要人員を確保するプレッシャーは相当ものがある。合格者数によって需給関係が変動するが、比較的合格者が多い年でも内定を出した人が合格して予定どおり入ってきてくれるか気をもむ。これが、売り手市場の年になると多少の脚色をしてでも受験生に来てもらい早めに内定を出して確保しようという動機が強くなる。何たって一旦入ってしまえばこっちのもの、労働単価が安い3年間はいてくれるのが普通だからここが勝負とリクルート活動に精を出す。また、リクルート責任者はリクルートに失敗すると事務所中から大変な非難を浴び、かつ出世に響くのでもう必死である。そういう認識は、末端のリクルーターまで行き渡っているため、自分の事務所の悪口などいうはずがない。リクルーターの誰々さんがこんな批判をしていたなどとリクルート責任者の耳にでも入ったら大事になるからである。
特に、人が集まらないと、事務所の状況について全くの虚偽ではなくとも例外的事例を一般化して説明するといったことが行われがちなので注意が必要だ。末端のリクルーターとしては、一般企業が粉飾決算をしたくなる気持ちが理解できた貴重な経験だったが、それを真に受けて入った受験生は割り切れないものを感じただろう。
また、上にも書いたが事務所見学などのときも、事前に掃除がされ、スタッフに対しては見学者がいるときはニコニコしているようにといった指令が飛んでいるのが普通なのでみんなが楽しそうにしていても真に受けないこと。大体、監査などニコニコしてやるような仕事ではない。こんな状態だから、監査法人の話を聞くのならリクルートとは全く関係のない人を見つけて、プライベートな時間に聞くとよいだろう。
子細な点でも、事実と違う又は事実を誤認させるおそれのあるようなリクルート情報を提供しているようなところは避けることだ。その法人の誠実さに関わることで、重要性の有無で免責されるようなことではない。被監査会社に情報開示を求めておきながら、自己の情報開示について不誠実な態度をとるなど許されない。そのような、目的が原則を駆逐する体質を持ったところは、監査でもやけどとする可能性が高いのではないかな。
(追加情報)昨年リクルートに大失敗したといわれている監査法人が、今年はかなり気合いの入ったパンフレットを作ったようである。ただ、悲しむべきは、当の監査法人内であまりに美しすぎてほとんど詐欺ではないかとの声が出ているらしいことである。2次試験合格者の監査人としての能力発揮最初の機会が、監査法人のリクルート情報の信頼性を判断することだとは。世も末である。
7 諸手当の内容も確認しよう
一般に言って監査法人の手当は、多くない。いや、貧弱であるといった方が正確だろう。Webmasterのいた監査法人では、賃貸住宅の補助が20,000円から30,000円ほどだった。もちろん大手都銀のように一等地に寮などない。伸び盛りのクライアントに監査に行った際、福利厚生でかなりの家賃補助があるのを知って愕然としてことがある。持ち家のための補助も家賃補助と同じ程度30,000円位あるだけでありこの点だけ見ると中小企業よりひどいかも知れない。
さらに、地方から、わざわざ東京、大阪等に出てこようという人は、転居にかかる費用をどれだけ出してくれるかも確認しよう。Webmasterのいたところでは全くそういった費用の手当はしなかった。わざわざ四国から引っ越してきた人がいたが、引越荷物の運賃、新居の礼金、敷金、仲介手数料など一切出ずかなり困っていた。一般企業なら、新たに入ってくる社員の引越荷物の運賃ぐらいは払ってくれるのに。監査法人に入ったばかりに就職する前に、すでに1・2ヶ月分の給料が持ち出しになってしまう。けちにもほどがあると思うが。
また、退職給与規定もお粗末なものが多いので注意が必要だ。Webmasterのいた監査法人では3年間の会計士補丁稚期間を終えてやめたぐらいでは退職員は一銭も出ないようになっていた。退職金が出るのは、10年とか15年た人のみという状況では、やってられない。一般企業のOLが3年で寿退社するときだって多少なりとも退職金が出ると思うが。この点他の法人では違うところもあるようだが、いかんせんそこまで開示しないのが監査法人、情報収集に努めるしかない。
8 監査法人の特色を押さえよう。
今まで書いたことは枝葉末節に属することで、監査法人の特徴とか、研修制度とかは考慮しなくてもよいのかという声が聞こえてきそうである。当然考慮する必要はある。しかし、あまりにも常識であり、この点を押さえていない受験生はいないと考え書かなかった。なるべく外部の人が考えつかないような視点を提供したつもりである。
監査法人の特徴を見る座標としては次のようなものか。
疲れたので続きはそのうちに