担任雑記No,13 「ヨーロッパ旅行記5」 クルージングのコースを説明しよう。地図帳がお手近にあればギリシア・エーゲ海方面をお開きになり辿ってみていただくと、一層イメージが広がること請け合い。
第1日目:アテネ近郊のピレウス港を出航。一路、ミコノス島を目指す。夕暮れこの島を離れ、一晩中航海を続ける。
第2日目:早朝ロドス島入港。一日島内観光。夕方出港、また一晩中クルーズ。
第3日目:早朝トルコ/クシャダス入港。オプショナルツアー参加。正午出港、パトモス島へ。夕方パトモス島を離れ、一晩かけてピレウス港に帰る。
第4日目:早朝、ピレウス港入港、下船。
・風車とペリカン、百万ドルの夕日の島、ミコノス島(ΜΥΚΟΝΟΣ)
この島には大きな港があるが、風が強く波が高かったので、入港できなかった。従って、1kmほど沖合に船を停泊させ、連絡船で島に上陸する手段を取った。夕方5時頃についたが日はまだ高く、この島を満喫するには充分時間があった。この島の名物は、風車小屋である。オランダにあるような造形的に完成度が高いものとは違い、円筒形の土壁に円錐形の茅葺きの建物。北向きに一本丸太が突き出て、その先端から6〜8本の10〜15m位の長い竿がハスに出ている。ここに三角の黄なりの大きな布をかけ、風車の羽根にするのだ。何とも素朴で、原始的な造形だが、それでいて人間の生活臭い力強さが感じられる風車である。これが島の所々にポツンポツンと立っている。民家の壁は皆真っ白、玄関や窓は青や紫などで塗られ、小さい窓にはアザレアなどの花が飾ってある。迷路のように入り組んだ道を辿ると、突然視界が開け、一番目立つ海岸のところに5基並んでいる。よく海外旅行パンフレットの写真になっている図である。スケッチしようにも、ギリシア特有の強風でそれ所ではなかったのが惜しい。
もう一つの名物は島の漁師のおじさんが飼っているペリカン「ペドロ」君だ。妙に人懐こく、愛嬌のある振る舞いが人気なのである。私たちが出会ったときは、人の多さに興奮してごきげん斜めだったようだ。飼い主のおじさんに噛み付いていた。
エーゲ海に沈む夕日はどこから見ても絶品であるが、ここで見た夕日は独特の色合いをしていた。いつも山に沈む夕日しか見たことがない私にとって、夕日による空の色の変化がこれ程までも濃色で多彩だとは知らなかった。空が濃紫に染まるのだ。正確に言うと、太陽が沈む直前、水平線はレモンイエロー、半円を描くようにスペクトラムイエロー、ブリリアントオレンジ、スカーレット、スペクトラムレッド、マゼンタ、バイオレット、天頂付近でジオキサジンバイオレットへと変化して行く。感動であった。
・中世騎士団の街、国際リゾートの島 ロドス島(ΡΟΔΟΣ)
この島は12世紀頃エルサレムを守っていた騎士団が追われて来て、島の支配権を取ってしまったと言う歴史をもつ島だ。街は中世の石作りの城壁に囲まれている。町並みも中世の家々を壊さず現代の生活を融合させている。ちょっと外れたところを歩くと平たい石を縦に並べた石畳の道が残っており、中世にタイムスリップする。にぎやかな所はどこも土産物屋やタヴェルナがずらっと並んでいる。しつこい客寄せがないので冷やかしにも物色も気持ちよくできる。ある店でとてもセンスの良いオールシルクのオールハンドメイドの刺繍のテーブルクロスがあった。店のでっぷり太ったおやじと値段の交渉を楽しむ。22,000ドラクマ(約10,000円)の品物を、手持ちの10,000ドラクマ(約5,000円)に値切ってしまった。ついでに、6点セットでしか売らないというものを無理言ってバラしてもらって手に入れたのだ。半ば強引な値切りだが、別に悪いことではない。売るほうも生活がかかっているのから、言いなりになっていると元値の10倍で売り付けてしまうことだってあるのだ。日本人は言い値で疑いもせずホイホイ買って行ってしまうので、絶好のカモになっているようである。だから、こんなに値切られて、おやじは面食らっていたようである。
・トルコ/クシャダス オプショナルツアーのうれしい誤算
オプショナルツアーに参加して、全く予習していなかった古代ギリシアローマ文明都市遺跡「エフェソス」を見て来た。かつてこの都市が栄えた数千年前、エフェソスは外の国にも文句を言わせないほどの経済力を持ち、高度な文化が花開き、商業は栄え、都市機能は現代に引けを取らないほどシステマチック。石畳や公衆トイレまでも大理石づくしの街の美しさは、クレオパトラが新婚旅行に訪れるほどだったと言う。今は乾燥しきった荒涼たる大地に埋まっているが、現在1/3ほど発掘され、修復、復元された町並みを見るだけでも当時の繁栄の面影を忍ぶことができる。私の求めていたものが、まさにここにあった。興奮の極みにあった。見学時間の1時間があっと言うまだった。
トルコと言えばペルシャ絨毯。ツアーでは政府の管理する直売所も見学できた。その豪華絢爛たる絨毯の魔力に取りつかれ、一世一代の決意をして、足ふきマットほどの本物の絨毯を購入。値段はとても言えない。
・イコンと革細工の島、パトモス島(ΠΑΤΜΟΣ)
イコンとはキリストやマリアなどの顔が宗教家の手で丹念に描かれた宗教画。ここにギリシア正教の寺院があるということで、有名らしいが、我々にとってはそれよりも、のんびりとカフェでビールを飲み、コバルトブルーの海と空気を楽しむことにした。そこで買ったキーホルダーをいま使っている。
いかがでしたか。なに?地図に載っていない島もある?それは残念、しからば皆さんが実際に行って、自分の目で確かめるがよかろう。え?そんな暇無いって?ならば、作れば良い。さて、エフェソスでの感動の続編があるのだが、それは、また別のお話。