1997.8.8Fri

最終日(あとがき)
Air-->東京(成田)-->上野-->長野

 成田スカイライナーの車窓から見える景色は、実に緑色が豊かだ。ここは水の国、日本。空気の湿っぽさからくる蒸し暑さは差程でないが、ジーパンがジットリと重くなような感覚は、海外から帰ってくるとかならずある感覚だ。

 瓦礫の山、乾いた空気、なにもなくただつづく平原のあるカリフォルニアから比べれば、なんと豊かな実りのある国なんだろうか。水田の稲は緑をますます濃くし、きっと数ヵ月後には黄金色したじゅうたんが一面たなびき、豊かな実りをもたらせてくれるのだろう。

 あの乾いた大地のカリフォルニアから米を輸入しなければならないなんて、だれが想像するだろう。食物から始まり、エネルギーも満足に自給自足できない国、日本。豊かさゆえに隠れているものはたくさん有るのだと、車窓の外を流れる風景から感じる。

 豊か、というのか、もしかしたら、日本という国は「恵まれすぎている」のだと言い換えるべきか。
 水は使い放題である。絶対に困らない。少し前までは水をスーパーで買うなんて、馬鹿なことだと思っていた。
 海に囲まれ、外国からの侵入がされにくい。陸続きならば、こんなに人口はふえなかったに違いないし、純血の日本人ばかりがいることもあるまい。
 勤勉さ故に、近代化のスピードは早い。遅れていると思っていたコンピュータ社会はアメリカとさほど違わないような気がした。
 治安のよさ。夜中、街を歩けるところなどいまどきめずらしい。白昼歩けないかもしれないけれど。

 なぜこんなことを考えているのだろう。今までの海外旅行帰国後は日本人に出会うのは本当にいやだった。でも、今回はむしろ、日本人だからこその良さがあるような気がしたり、日本人を見て、思い感ずる独特な感情をもつ(これはプラスの意味で)旅だった。アメリカのフリーウエイを走るにはアメリカの車が一番にあっているし、アメリカの車が格好良くても、日本の高速道路には似合わないような気がするし、アメリカ人がディズニーランドのお姫さまやヘラクレスをやるからカッコいいのであって、日本人が歌舞伎をやるので、ミエが決まるのだ。
 アメリカのフリーウエイのようなものを日本に作ろうとしても絶対に不可能だ。あの風力発電施設を日本のどこに作るのだ?あのガソリン代の廉さは、日本ではとうてい実現できないものだろう。

 

 だが・・・。

 

 俺が見たアメリカは、新しいものと古いものがきちんと同居していた。映り使えるテレビはたとえ時代遅れのダイヤル式で、リモコンがついていなくても、現役で立派に使っているモーテルもある。日本じゃもうお目にかかれなくなったような、カローラ20がサンディエゴ地区ではフリーウエイを80マイルですっとばしている。かと思えば、スーパーマーケットではカード払いが普通のようだし、インターネットによる情報公開もかなり進んでいる。

 食事は¥7〜8,000だせば超高級料理が食べられる。もちろん、ホテルは二人で8、000が相場か。(モーテルだけど)どこに行くにも金はかからない。成田から上野に出るだけでひとり¥2,000は高いよ。

 つまるところ、日本の良さを見つけようとすると、「豊かさ」という大前提があるだけで、それにおんぶにだっこの日本人と、なにもないからこそ大事に、大事に育て作り上げて行こうとするアメリカ人。その差がさらにくっきりとしてしまったような気がする。


 上野発19:00は時間的には間に合ったが指定席も自由席もほぼ満車の状態。1時間後の列車を待つ列がもうできていた。

 アメリカよりも日本国内の交通事情に困るなんて、なんて事だ、しかもこの湿気。息をしているだけで、気分が悪くなりそうだ。東京の空気がこうさせるのだろう。しかもこのアナウンスの多さ、人の多さ。いつきてもこの人の多さや喧しさにうんざりする。
 金はかかる、人はおおい、狭い、湿気は高い、おまけに人は陰湿。いいところ発見した旅だったのに、これでは却っていやなところを再確認ではないか。
 そう、列車の座席の狭さも結構くるものがある。今だに普通路線は狭軌を使っているのだから仕方ないが、狭苦しくて、これから俺のような体格を持つ人間がふえそうなのに、どうするんだろう。
 どうして列車にこんなに人があふれているのに、国鉄はつぶれてしまったのだろう。毎年こんなに駅には人があふれているとわかっているのに、どうして解消されないのだろう。不思議の国日本、この疑問は海外旅行をするたびに大きくして行くような気がしてならない。
 人は知らない人と言葉を交わさない。なるべくかかわらない様にしているようだ。とくに、人口密度が高まるようなところは傾向が強い気がする。いや、そうとも云いきれないところもあるが、フレンドリーではない。アメリカで日本人らしき人に出会ったけれど、声をかけられなかった。声を掛けてもらいたくないような雰囲気も伝わった。


 まったく暑い。むしむしする。この夏は嫌いじゃないけれど、湿気は本当に嫌いだ。乾燥していれば、どんなに暑かろうが、俺は耐えられる自信がある。ラスベガスで体験したあのドライヤーの中のような空気でも、日陰にさえいればそれが木陰でなくとも涼しいし、汗をかかない。じとじとした、この不快感。アジアを象徴するこの湿気。この湿気によって起こる日本社会に及ぼす影響は測り知れないものがあるようだ。


結局結論は?といわれると、ううん、わからん、でも、はっきりしていることは、もう一度旅にでてみたいなあ、ということだ。日本がもっと旅のしやすいところだったら。

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おわり

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