翌日、訓練所の前に、千秋に会いたいと真理子が来た。教官は慌てて飛び出していき、千秋に(妊娠のことを)言わないでくれと頼む。「そしたらキスして。キスしてくれたら黙って帰ってあげる」と言われ仕方なく教官は真理子とキスしてしまう。その時、教官を追ってきた千秋は、その現場を目撃してしまう。ショックを受け、千秋は訓練所を飛び出す。
家もなく、親もそばにいない千秋は、三郎のもとへ「スチュワーデスをやめたい」と言って居候をすることにした。教官や、さやか、信子、友子は、千秋を連れ戻そうと魚屋を訪れたが三郎によって追い返された。
桧山教官と訓練課長は話し合って、明日の授業に出てこなければ千秋をやめさせるしかない。と決めた。教官は再び魚屋へ連れ戻しに行く。千秋の腕をつかんで連れ出すと、「俺と真理子がキスをしたのは訳があるんだ。しかしその訳は今は言えない。しかし、俺と真理子のキスを見たぐらいで訓練所をやめるなんて、どうしようもない甘ったれだ。こんなだらしない根性じゃ、厳しい競争に勝てないぞ」と励ますが、「スチュワーデスになるなんて最初から無理だったんです。教官も愛したことも・・・」と言って千秋は泣き出した。そんな千秋に教官は「俺はお前が好きだ。俺はお前を一人前のスチュワーデスにするしか生きがいがない。もう何も言わない。もう一度俺を信じる気になったら訓練所に戻ってくれ」と言って別れた。
魚屋へ戻る千秋を、さやか、信子、友子の3人が無理矢理タクシーに乗せ、訓練所へ連れていく。訓練所に着き、さやかが今から千秋をつるし上げると言うと、「教官をもっと信じたらどうなの。愛する人に1回や2回裏切られたからってメソメソしてるんじゃないよ。しっかりしろ・・・」と478期生全員が千秋を責めるとともに、励ました。
気合いを入れられた千秋は、「みんなありがとう。私バカでした。教官を疑って一人で悲しんですみませんでした。私、ショックを受けてどうかしてたんです。でも、もう目が覚めました。ドジでのろまだけど、明るい松本千秋になって一生懸命訓練をやります。教官を信じて頑張って一人前のスチュワーデスになります」と言って立ち直った。
翌日、教官は心配そうに訓練所に出てきたが、千秋の姿を見ると、思わず笑顔がこぼれた。千秋に対して厳しく当たっていた桧山教官も、「よく戻ってきました。戻る根性があれば大丈夫。スチュワーデスはど根性よ」と言って励ました。千秋はその日の訓練に張り切ってのぞむのであった。
スチュワーデスの最終試験まであと1ヶ月。千秋は、神社で神だのみをした。
救急看護の訓練中、千秋は転んで足を捻挫してしまう。翌日の午前中、治療で病院に来ていた千秋の前に真理子が現れた。「どこか悪くて病院に?」と千秋が聞くと、「悪いどころかおめでたなの。毎週産婦人科の検診のために来るのよ。私妊娠してるの。誰かさんの子供がこのお腹の中にいるのよ」と皮肉混じりに言った。千秋は顔をひきつらせて足をひきずりながら病院をあとにした。
人工呼吸の訓練を受ける千秋だったが、落ち着きがなく、ドジってしまい、みんなから大笑いされる。訓練が終わり、教官に真理子の妊娠のことを聞こうとしたが、恐くて聞けなかった。
千秋は、真理子の家に行き、真理子に直接誰の子供か尋ねた。村沢浩の子供だと聞くと、泣きながら真理子の家をあとにした。千秋は店で大量に食料を買い込んで、他の訓練生たちをパーティーに誘った。千秋は明るく装ったが、これは別れのパーティーにするつもりで開いたのだった。パーティーが終わると千秋は寮を出て行った。おかしいと感づいたさやか、信子、友子は、教官に知らせると、教官はすぐ真理子の家に行き、千秋に妊娠したことを話したことを確認すると、「松本が自殺したら、お前が殺したんだ。よく覚えておけ」と吐き捨て、出て行った。
教官は寮に電話して確認すると、千秋は訓練センターにいるのではとのこと。すぐ訓練センターへ向かうことにしたが、タクシーが捕まらない。いてもたってもいられない教官は猛吹雪の中を全力疾走で訓練センターへ向かった。走って走ってフラフラになりながら訓練センターに着き、ついに千秋を見つけると、力尽きてその場に倒れた。
千秋は、これで最後だからと、訓練センターで今までの教官との思い出、訓練のことを思い出していた。そこへ「死ぬな松本」と叫びながら飛び込んできた教官に、しばらくおびえていたが、教官が倒れると、すぐ(まるで機内で客が倒れた場合と同じように)診察した。呼吸が止まっていることを確認した千秋は、ただちに人工呼吸をした。訓練では全くできなかった人工呼吸を完璧にこなすと、まもなく教官は気づいた。
千秋は、今夜、どこか遠い海へ行って自殺しようと考えていたことを教官に話した。すると教官は、松本を助けるために一度だけ真理子を抱いたことを白状した。
教官は言う。「真理子は恐ろしい女だ。俺なんか少しも愛していないし、子供も全く欲しくないのに無理矢理産むつもりだ。しかし俺はそれに耐える。生まれてくる子供を愛し、父親としての責任をとる。しかし松本、お前まで真理子に負けて自殺を考えるなんて俺は悲しいぞ。俺はどんなことがあっても、お前を死なせたりしないぞ。だって俺を生き返らせた大事な命の恩人だからな。松本、俺だってお前の命の恩人だぞ。俺が来なかったらどこか遠い海で自殺していたはずだ」すると千秋は「その通りです」と答えた。
さらに教官は続ける。「じゃあ、俺が助けた命は大事にしてもらおう。命の恩人、村沢浩のいうことを素直に聞いてくれ。明日から毎日訓練センターに通ってスチュワーデスの訓練を受けてくれ。頼む松本。俺たちはお互いに命を助け合ったんだ。将来どんな運命に出会おうとも、お互いに助け合い、励まし合っていこうじゃないか」すると、千秋も納得し、「松本千秋、頑張っていかすスチュワーデスになります」と誓った。
千秋は、「教官と真理子さんの間に子供が産まれる以上、もう教官のことは諦めて訓練に打ち込みます。しかし教官の顔を見ていると、諦めるのがつらくなって涙が出てきます。だから今日限り絶対教官の顔を見ません。許してください。教官」とジャンボを見ながら誓った。
帳票処理(免税品の売り上げを計算して指定書類に転記する作業)の授業では、村沢教官を意識して手間取る千秋だったが、教官以外の授業では張り切ってのぞんだ。
ある日、江原三郎という男が千秋に会いたいと言って談話室を訪ねてきた。千秋が応対に出ると、三郎は手みやげとして鯛を差し出しながら、いきなりプロポーズをしてきた。千秋は「私はスチュワーデスになるのが夢よ。プロポーズは断るわ」と答えると、三郎は「男がプロポーズを断られて黙って帰れるか」と言いながら千秋に乱暴しようとした。すぐ千秋は他の訓練生に助けられ、三郎は鯛を取り上げられ、帰された。
教官はすぐに真理子の家へ行き、「また三郎をそそのかして千秋に乱暴させたな」と責めた。真理子は、「私は執念深い女よ。あなたと松本千秋を引き裂くためなら何でもやるわ。私は子供が大嫌いだし、このお腹の中の子供だってちっともかわいくない。だけど産むわ。私たちの間に子供がいたら、ずうずうしい松本千秋も割り込めないでしょ」と反論した。
翌日、訓練課長や訓練生に真理子から(村沢教官と近いうちに結婚式をあげるとの)挨拶状が届いた。さやから5人の訓練生は、千秋に「教官と別れたはずの真理子さんからこんな挨拶状が来るなんてどういうこと」と聞くと、千秋は、真理子のスキー事故のことから妊娠のことまですべて打ち明けた。5人の訓練生は、それを聞いて同情して泣き始めた。
授業中教官の顔を見るのがつらい千秋は、訓練課長に、クラスを替えて欲しいと申し出る。それを知った教官も、「そこまで想いつめていたのか」と言って受け入れざるを得なかった。その日の夜、最後の特訓として、千秋に帳票処理の特訓をする。最初は計算に手間取る千秋だったが、教官がテンポの早い音楽をかけると、それにつられてすらすら計算できた。「やればできるじゃないか。松本。よそのクラスに移っても俺の言ったことを忘れるな。きっと最終試験を突破して、最高のスチュワーデスになってくれ」と言い残し、別れた。
教室を出ていった千秋だが、間もなく自分のネームプレートを持って戻ってきた。窓からジャンボを見ながら、「教官、他のクラスへ移りたいなんてわがまま言ってすみませんでした。どじでのろまな松本千秋。教官の訓練があってこそ、一人前のスチュワーデスになれるんです。やっと今、身にしみて分かりました。どうか478期20名の1人として訓練センターを卒業させてください。そして、スチュワーデスとしてあのジャンボに乗せてください」と頼んだ。
「松本、俺の478期で訓練を受けたかったら、必ず相手の目を見ろ。これからは俺の顔をまっすぐ見つめて、きちんと訓練を受けられるか」と教官は確認する。「もう教官から絶対目をそらしません。スチュワーデスになったら、必ずお客様の目を見て心のこもったサービスをします」と千秋が答えると、教官は真剣だった顔をくずし、笑顔で千秋を迎え入れた。
半月後にせまった訓練飛行に備えて、訓練飛行必需品を買いそろえる訓練生たちだが、千秋はまだ(訓練飛行まで進める)自信がないと言って買わなかった。そんな訓練生たち全員に、教官は靴袋をプレゼントした。
和服の着付けの途中、千秋は信子の首にキスマークがついていることを見つけた。それを知った他の訓練生たちは、ちょっとした騒ぎになり、信子は訓練課長や桧山教官に注意される。村沢教官は、相手の中野たかしという男、気になって仕方がない。と心配した。
寮に戻った信子は、他の訓練生たちから、(信子の)父が心筋梗塞で急死したとの電話があったことを伝えられる。信子は、孝に「フィアンセとして一緒に小樽へ帰って、父の葬式に出て欲しい」と頼むが、孝は、「仲間との登山の予定は変えられない」と断った。千秋も「信子さんを助けてあげてください」と頼むが、つっぱねて出ていった。
教官は、信子に「つらいだろうが、気を落とすなよ。明日の朝一番の飛行機で小樽へ帰れ。俺も一緒についていって、これからのことをどうするか相談にのるから安心しろ」と励ました。
2日で葬式から帰ってきた信子は元気がなく、美しい歩き方の授業で、千秋とともに落第してしまう。信子はロッカールームで「孝さんと結婚して北海道で母と一緒に暮らしたい」と、スチュワーデスをやめたいと言う。千秋ら訓練生たちは驚くとともに、孝は(葬式にも行かなかったし)信用できないと察知した。案の定、たかしを談話室に連れてきて問いただすと、信子と付き合ったのは愛ではなく、世界中の山を制覇するために、(コネ目当てに)スチュワーデスと付き合っていたことを吐いた。怒った千秋は孝を思い切りたたいたが、「男なら殴り返しているところだ」と言い残して出ていった。「孝さんと結婚して北海道で母と一緒に暮らすことが夢」と言っていた信子は、ショックで大きく取り乱した。
千秋は、教官に「お姉さんのような信子さんが訓練所をやめてしまうなんて悲しい」と訴えた。すると教官は「心配するな。どんなことをしても引き止めてやるよ」と答えた。
そのあと、千秋に歩き方の特訓をしていると、真理子が現れ、「私の反対を押し切ってまで、特訓するんだったら、このお腹の子供がどうなるか分からないわよ。最近、このお腹の子が憎らしくなってきたのよ。このままだと、どんどんお腹は大きくなって、スタイルのいい美しい私が見にくくなるわ。我慢できないわ」と教官を脅した。
深夜に一人で歩き方の特訓をしている千秋に、寝つかれず起きてきた信子が話しかけてきた。「信子さんはすばらしい人です。いつかきっと本当に愛せる人が現れます。だから、訓練所をやめないで、スチュワーデスになってください。お願いします」と励ました。立ち直った信子は、千秋とともに歩き方の試験の追試を受け、2人とも合格した。
訓練センター最後の難関、英語の訓練が始まった。LL教室での発音の訓練で、千秋は緊張してうまくできなかった。「これだと落第だ。今日の夜から毎日特訓だ」と教官から言われる。
千秋に特訓を始めようとしたとき、教官は訓練課長に呼ばれ、真理子さんが病院に入院したとの連絡を受けた。特訓を中止して病院に行くと、真理子の父から話を聞く。真理子がこの寒い3月に自分の部屋からプールへ飛び込んだ。教官の心を引き止めるために産みたい気持ちと、お腹が大きくなってスタイルが崩れていくのが耐えられないという気持ちが、葛藤し、ついに爆発したのだということだ。流産は免れたが、「子供なんかかわいくない。死んでしまえばいいんだ」と真理子は自分のお腹をたたいた。教官は「このお腹の子は俺の子供だ。大事に産んでもらいたい」と言って真理子を必死で落ち着かせた。
翌日も訓練課長に呼ばれた教官。2日連続で特訓を中止にして病院に向かった。特訓が中止になった千秋は、さやかから、恋人である国際外国語大学の一郎に指導してもらえば?と提案される。
千秋はしばらく談話室で一郎に英語を教わったが、すっかりデート気分のさやかは、音楽をかけ一郎と踊りだした。そのころ、兼子と克美はしょうすけに電話で、さやかが一郎とまたデートしていると知らせた。しょうすけが怒って談話室に来ると間もなく、さやかをめぐって一郎としょうすけの殴り合いの大ケンカが始まった。千秋が水をぶっかけて、ようやく止まったが、カンカンに怒った一郎は、「君のまわりの人間は乱暴だなあ。これで君ともさよならだ。君は遊び相手としては楽しいが結婚相手としては落第だ。結婚相手はもっと落ち着いていて上品な社長の令嬢さ」と吐き捨て、出ていった。
教官は、再び病院へ行き、真理子の父から事情を聞く。真理子の父は「今度はわざと階段から落ちた。真理子は大丈夫だったが、お腹の中の子供は流産してしまった。真理子の生きがいは君しかいない。真理子を見捨てないで、一生そばにいてやってくれないか」と教官に頼んだ。
真理子の病室へ行った教官は「子供が流産しても俺の生き方は変わらない。ずっと君のそばにいるよ」と約束した。
一方、失恋したさやかは、今回の大騒ぎになったお詫びとして、千秋ら5人の訓練生をレストランへ招待した。さやかが千秋にビールをすすめると、千秋は一気に飲み干した。すると緊張感がとれたのか、いつも口べたの千秋が失恋したさやかを言葉巧みに励ますとともに、歌を歌い始めた。それをたまたま見ていた教官は、「これは使えるぞ」と直感した。
カクテルの作り方の授業を受けた千秋。自分の作ったカクテルを飲んだ千秋に、教官が英語で話しかけた。いつもの千秋なら、答えられないはずなのに、すらすら答えることができた。酒一杯で緊張感がほぐれ、本当の実力が出せるという教官の判断は正しかったのだ。
千秋を呼びだした教官は「真理子が流産したよ。俺の子供はもう消えてしまったんだよ。これからはお前だけを愛して結婚することだってできる。しかし真理子にはもう何もない。すがりつく生きがいもない。どんなに強がってもお先真っ暗だ。そんな真理子を俺はほおっておけない。子供は流産したが、俺はやはり真理子と結婚して一生面倒を見るしかないんだ。分かるか、この俺の気持ちが」と言うと、千秋は頭をかかえて座り込んだ。
「俺はお前が好きだ。大好きだよ。真理子のことなんかみんな忘れて、お前を力いっぱい抱きしめたい。しかし、それができない。どうしようもないんだよ。俺が今できることは、お前を特訓でしごいて最終試験で合格させて、一人前のスチュワーデスにしてやることだけだ。それでもいいのか」と確認すると、「教官、それだけでは嫌だって言いたい。しかし松本千秋、精一杯我慢します。教官の力でスチュワーデスになれたら、それで幸せです」と答えた。
スチュワーデスが飛行機に酔っていては話にならないということで、飛行機酔いしないかどうかのテストをシミュレーターに乗って受ける千秋。他の訓練生は平気だったのだが、千秋一人だけひどく酔ってしまい、教官に介抱される。
その夜、教官は千秋に「人間、緊張していたら酔わないものだ。気持ちがたるんでいるから酔うんだ」と叱ったが、「今日一日中酔っていたのは、最終試験を受けるのが恐かったからなんです。最終試験が終わると教官と離れなければならない。そう思ったら、頭がくらくらして、めまいがして、吐き気がしてきたんです。私、訓練やテストなんかどうでもいい。教官と離れたくない。そう思うと、どうしようもなくなってきたんです」と訳を話した。
「松本、気持ちは分かるが、やはり俺はお前をスチュワーデスにするのが夢なんだ。どんなに苦しくても俺と力を合わせてスチュワーデスになってくれ」と教官が頼むと、「分かりました教官。もう訓練やテスト中に絶対酔いません。教官の夢のために必ずスチュワーデスになります。安心してください。教官」と千秋は答えた。
いよいよ総合最終試験が始まった。これまでの試験に比べてはるかに厳しく、とまどう訓練生たちだったが、特に千秋は今まで同様、ドジでのろまぶりを披露してしまい、落ち込む。
訓練課長によって最終試験の合格者が一人ずつ呼ばれる。一人呼ばれるごとに歓声が上がるが、千秋の名前だけが最後まで呼ばれることなく合格者発表が終わってしまった。一人席に座っている千秋を見て、他の478期生たちは静まり返った。訓練課長と教官が出ていったあと、しばらく泣いていた千秋だったが、必死でこらえて、「頑張ってすばらしいスチュワーデスになってください」と送り出した。
教官のマンションに来た真理子は、「あの色の黒いドジな娘、まんまと最終試験に落っこちて、このまま訓練センターに残ることになったんでしょ。おめでたい話じゃない」と言うと、教官はそんな真理子を思い切り殴った。「あなたはこの両手を義手にしたのよ。防ぐ手段もない私を殴るなんて、最低の男よ」と真理子は怒ったが、教官は、「そうだ。俺は最低の男だ。松本千秋を最終試験に落第させちまったんだからな」と元気なく答えた。
翌日、千秋は教官と二人だけの朝礼を行った。教官は千秋に、「俺のしごきが足りなくて最終試験に落ちさせてしまった。みんな俺のせいだ。勘弁しろよ。松本、火事場のバカ力って知っているか。人間ってのは火事に遭遇するととんでもない力を出す。再試験を火事場だと思って命がけでぶつかってみろ。そしたら必ず合格する。お前はいつか、大けがした80kgもある女性を、ふもとの村まで運んでいって命を助けたろ。それだけじゃない。ルートインフォメーションの試験では俺の誕生日プレゼントとして、難しい星座まで覚えてトップを取ったじゃないか。クラスの中であれだけ星座のことを詳しく知っている者は、お前しかいなかった。お前はいざとなると、その位の力は出せるんだよ。お前はドジでのろまだが、それは一つ一つを丁寧に覚えようとして、時間がかかるんだ。人より真剣に取り組みすぎて失敗を重ねるだけだ。ちっとも恥ずかしいことじゃない。その一つ一つの積み重ねは、お前の中で生きているはずなんだ。お前は他の478期生よりもっとすばらしい力を持っている。その底力で、最終試験を突破するんだ」と言って励ました。
「分かりました。松本千秋、火事場のバカ力で、きっと最終試験に合格します」と答えたとき、合格した他の478期生全員が「成田の寮に移るまで毎日千秋を応援しに来るよ」と言って、励ましに来た。このように、みんなに励まされ、再試験に向けて訓練する千秋だった。
最終試験に落っこちた千秋は、これまで寮で同部屋だったさやかと兼子の成田の寮への引っ越しの手伝いをした。他の478期生たちは、「全員一緒に機上訓練に進みたかったのに残念。何としても再試験にパスして成田に来てね」と千秋を励ました。
自信がないともらす千秋にさやかは「自分の好きな男性をものにすると自信がつくよ」と答え、教官へのアタックの方法を教えた。
教官と二人で12時間にもおよぶ特訓を終えた千秋は、さやかに教えられたように、教官に「私だけ最終試験に落ちてさみしく、悲しいんです。教官の胸の中で私をあたためてください」とお願いする。
しかし教官は、「バカ。さみしい気持ちは分かるが、その悲しみから逃れるために俺の胸の中に飛び込んでくるとは何だ。目を覚ませ。今夜のお前は大嫌いだ。俺の好きな松本は、いくら悲しくても、つらくても、歯をくいしばって頑張る、転んでもすぐまた起きあがってスチュワーデスになる夢を追いかけるお前なんだ。ひたむきで命がけの松本千秋になったら、俺はいつでもお前を抱きしめてやるよ」と怒った。
それを聞いた千秋はすぐ「分かりました。もう甘えません。たくましいカメになってスチュワーデスになってみせます」と誓った。
最終試験に合格した千秋以外の478期訓練生は、いよいよ機上訓練に突入した。教官は「今までと違って、機上訓練は相当きついぞ。パーサーや先輩スチュワーデスを見習って、ぜひ突破してくれ」と気合いを入れた。千秋も「みなさん安心してください。松本千秋、必ず再試験に合格して、みなさんに追いついて、きっと機上訓練に出発しますから」と言って見送った。
訓練センターに残った千秋は、次々と再試験を受けていった。が、相変わらず緊張して、ところどころミスをおかしてしまった。再試験が終わると、すぐ千秋の成績についての会議が行われた。全科目80点以上が合格ラインだが、3科目でわずかに足りない。規定により再試験は落第。松本千秋は訓練所をやめ、スチュワーデスを諦めてもらうしかない。との結論が出たが、村沢教官が反論した。
「たしかに規則は規則です。守るべきだと思いますが、わずかに足りない点数のために、松本千秋の一生の夢をぶちこわしたくはありません。松本は、ドジでバカでのろまで、さらに内気で臆病であがり症です。試験でいい点を取れないのは当然だ。しかし、気持ちがやさしくて、あたたかくて根性があります。スチュワーデスとしてジャンボに乗せたら、きっとお客様を大事にして一生懸命働くでしょう。たった3科目の点が足りなかっただけで、優秀なスチュワーデスになれる子を見捨てていいんでしょうか。僕は反対です」と主張した。訓練課長も教官に同意して、試験教官たちに「松本千秋を合格させてやってください」と頭を下げた。
訓練課長は会議が終わったあとも、試験教官たちに頭を下げ回って、ようやく最初の機上訓練の結果で再試験の合否を決めるという結論に達した。そしてその機上訓練に村沢教官が同行することが決まった。
「明日の機上訓練に備えて、寮に帰って支度をしろ。と千秋に指示した教官のもとに、真理子が現れた」「やっとドジでまぬけな松本千秋が機上訓練に進むことになったんですって。おめでとうと言っておくわね。これであなたも、やっとあの子から解放されたんですもの。これからローマのアッシジへ飛ぶわ。あなたもすぐ来てよ。サンフランチェスコ大聖堂で結婚式をあげるんだから。必ず来てよ。もしあなたが来なかったら、私死ぬわ」と義手を出しながら脅迫した。
成田の寮に着いた千秋と教官は、さやかと兼子に会った。この二人は機上訓練で落第したのだ。この二人も、千秋と一緒に明日の機上訓練に参加することになった。
明日の機上訓練を前に神社でお祈りをした千秋に、教官は「命がけで頑張れるか」と確認したら、千秋は「命がけで体当たりして、合格してみせます」と答えた。
もうあとがない千秋・さやか・兼子は、訓練を必死で頑張り、無事にこなすことができた。訓練中、教官は千秋に「この訓練が終わったら、落第しても合格しても、さよならだ。これが最後の(一緒の)旅だ。松本、俺が一生忘れないような、すばらしいスチュワーデスの姿を見せてくれ。美しい思い出を作って別れようじゃないか」と励ました。
命がけで取り組む千秋、一度機上訓練で落第したさやか、兼子は、あとがないという気持ちから一生懸命取り組んだ。
千秋・さやか・兼子が乗った飛行機がローマに着くと、偶然別ルートで訓練を受けていた、信子・友子・克美に空港で会った。喜びあうとともに、固い絆を確かめようと、一緒にホテルのレストランへ向かった。
ホテルに着いた訓練生たちは、教官からカクテルをごちそうになるが、そこに真理子が現れた。「浩、明日私たちはイタリアのアッシジで結婚式をあげるわ。必ず来て、来ないと死んでやるから」教官が何も答えないでいると、さらに「スキー事故で私の両手を奪った上に自殺までさせる?あなたはそんな冷たい男じゃないでしょ」と続けて言った。千秋にも、「松本さん、私と浩、明日アッシジで結婚式をあげるの。悔しいでしょ。泣きたいんじゃないの」と嫌みを言ったあと、「私と浩に結婚おめでとうと言ったらどうなの。言いなさいよ。にこにこ笑って」と無理矢理せまった。仕方なく、千秋は「結婚おめでとうございます」と、教官と真理子の前で言った。
真理子が帰ったあと、さやかが千秋に「本当は泣きたくて仕方がないんじゃないの?」と言われ泣くと、同情してさやか・友子らも同情して泣いた。その様子を教官はじっと見ていた。
翌日教官は、サンフランチェスコ大聖堂に行って真理子と会った。「浩、約束通りアッシジに来たわね。さすがに私を殺すことはできないみたい」と真理子が言うと、教官は「見たいものがある」と言って、しばらく聖堂の中を一人で見学した。その後、「人間にとって一番大事なものは愛だ。俺たちは愛しあっていない。愛しあっていない二人が、こんな美しい教会で結婚していいのか。俺にはできない。とてもそんな気にはなれない」と教官が切り出すと、さらに、「真理子、スキー事故で両手を奪ったのは俺だ。その罪は一生かけてもつぐなう。しかし結婚だけはできない。愛しあっていないものが結婚しても憎しみあうだけだ。絶対幸せになれないからな」と主張した。それを聞いた真理子は怒り、「そんなこと、始めから分かってたわ。結婚式の前になってそんなことを言うなんて、あなたって卑怯な男ね。許せない」と言って、思い切って(義手で)教官を何回も殴った。教官は殴られながら「真理子、愛、愛からは何でも生まれる。しかし憎しみ、憎しみからは何も生まれないんだ」と言うと、真理子は殴るのをやめた。
「もう6年間もあなたを憎み続けて疲れたのよ。私ってバカね。我ながら愛想がつきたわ。その上松本千秋はあなたと結婚しないって言うし、あの娘からあなたを奪う楽しみもなくなってしまった。気が抜けてがっくりよ。もうあなたを追いかける理由は何もない。浩、あなたを解放してあげるわ。私は自分の力で、新しい楽しい人生を見つけてやるわ」と吐き捨て、去っていった。
エンディング。麻倉未稀の主題歌が流れ、出演者・スタッフなどが示される。
「真理子とは結婚しなかった」と千秋らに報告すると、帰りの飛行機でも機上訓練に同行した。帰りも無事に訓練をこなした千秋・さやか・兼子は、ついに機上訓練で合格した。これで478期全員が合格となり、478期生全員をスチュワーデスにしてやるという教官の目標が達成されたわけである。閉講式で、478期訓練生に向かって、教官は一人一人、スチュワーデスのバッチをつけていった。訓練生たちも、教官に感謝の意を込めて、花を渡したり、代表して千秋がお別れの言葉を贈ったり、胴上げしたりした。モックアップで、教官は千秋に「松本、もう俺がそばにいなくても、ちゃんとやっていけるな。俺はこのスチュワーデス訓練センターに残って、新しい訓練生を育てていくよ。ドジでのろまなカメ、お前をスチュワーデスにして、初めて人を育てる楽しさ、美しさ、尊さが分かったんだ。しかし松本、よく頑張ったな。ジャンボに乗っても、そのど根性を忘れるな。たくましい、かわいいカメになって、世界中の空を飛びまくれ」と励ますと、千秋は「はい、松本千秋。ジャンボで世界中の空を飛びまくります、頑張って、かっこいいスチュワーデスになります」と誓った。
そして、訓練生たちが訓練センターを去っていくというシーンで、このドラマのエンドとなる。