日本にターボトレイン再来の日は?
ガスタービン機関車
まだ当分は貨物列車の走る非電化区間も残ると思いますから、内燃機関車の働き場所が今後とも残るでしょう。 しかし、すでに3700馬力のDF200がある以上、ガスタービン機関車が登場するには今後それ以上の性能の機関車が必要になるか、より地球に優しい機関車が要求されるようになるかでしょう。
もし貨物輸送量がふえたら 現在の景気では貨物輸送の伸びは期待できませんから当面は可能性はないでしょう。 環境問題などから長距離トラックへの風当たりがきつくなっていますので政策的な鉄道優遇があればある程度の輸送量増加は望めますが、ガスタービン駆動の高速コンテナ船やカーフェリーがテクノスーパーライナーとして開発されるなど新しい海運業界の進展如何では一層厳しい時代になるかもしれません。
もし省エネシステムが実用化したら もうひとつの条件は新世代の動力システムとして高効率のセラミックガスタービンとフライホイールエネルギー回生システムが妥当な価格で実用化された場合です。
ディーゼルは排気ガスや騒音など環境面でかなり問題があります。 今後も大幅な改善は難しく、回生システムを組み込むと重量面でますます不利になります。
一方、ガスタービンは現状でも効率と価格面以外はディーゼルの欠点をほとんど解消します。 もしこれがディーゼル以上に高効率で許容できる価格になった場合、ディーゼルの置き換えという形で実用化が進むでしょう。 最近、急激に燃料電池自動車が夢物語でなくなっています。 しかし、理想の発電システムとはいえ、まだ当分機関車で使えるほどの大容量の燃料電池をコンパクトに作ることは不可能ですし、価格的にも可能性がありません。 非電化区間が残る限り、それまでのつなぎとしてガスタービンフライホイールシステムが利用される可能性はあるでしょう。 セラミックガスタービンが急速に現実味を帯びつつあり、これ如何によっては内燃車の駆動システムが根本から変わるかもしれません。
現在、内燃機関車の新製はほとんどありませんが、いずれDD51やDE10などの耐用年数が切れてきます。 ガスタービンフライホイールシステムがうまく実用化されれば、小型の機関車も含めて徐々にガスタービンに置き換えされる可能性もあるでしょう。
ガスタービン動車
気動車でも機関車と事情は似ていると思います。 旅客輸送量が増大すれば非電化区間でも高速運転の需要が出てきます。 ディーゼル並みかそれ以上のの省エネが実現できた場合の状況は機関車の場合と同じでしょう。
在来線超特急気動車? 281系クラスの気動車なら減速比の改造で直線の多い平坦線なら160km/h程度に対応可能ですから、ガスタービン動車の働き場所はさらに高い速度と高加速力が要求されたときとなります。 非電化の在来線で200km/hとか300km/hの速度が要求されるか疑問ですが、フル規格の新幹線の望めないJR北海道などは関心があるかもしれません。 現実に電車では狭軌新幹線で250km/h程度を目指していますので、もしかしたら非電化区間でも、と期待したくなります。
結局はJR北海道の業績次第でしょう。 非常に業績がよくなれば電化する余裕が出てきますから超特急気動車など不要になります。 おそらくこんな好業績は期待薄でしょう。 非電化とはいえ高速新線を作るほどの状況が生まれるかどうかも疑問でしょう。
もうひとつの可能性として、これから注目されると思われるフリーゲージトレインによる幹在直通運転での応用があります。 新幹線区間はもちろん、直通乗り入れする在来線の電化区間は電気運転し、さらに非電化区間にも直通運転可能な列車はある程度の需要があると思います。
つまり通常の電車に電源車を併結して非電化区間へ直通させるのです。 ガスタービンフライホイールシステムなら1編成の電車に給電する電源車はコンパクトに実現できます。 電化区間の終端駅でこれをつないで非電化区間へ乗り入れできるのです。 しかも電化区間なみの性能で。 もちろん、新幹線からの直通を頭に置かなくても単に電車の非電化区間への直通という面でもメリットは多いでしょう。 例えば土讃線や予讃線、智頭急行線のように長い距離架線の下を走る気動車特急が対象になるでしょう。
この方式なら車両新製も少なくてすみます。 従来の電車に高圧引き通しの改造や電源との協調制御が必要ですが、非電化区間専用の車両は電源車だけでよいのです。 気動車列車まるまる一編成製造するのと比べればコストダウンできるかもしれません。 この方式が可能になれば大都市圏から観光地への直通列車の設定がよりやりやすくなるのではないでしょうか?
今後、日本でターボトレインが走るかどうかはアメリカのプロジェクトの結果如何でしょう。 このプロジェクトが好成績を収めれば世界が注目し、JRも関心を持たずにはおれません。
直流電車での回生制動は同一セクション内に力行中の電車がいないとまったく利きません。 そのために抵抗器を積んだり、十分過ぎる制輪子を準備したりと二重の対策が必要になります。 この解決策のひとつとしてJR総研でも電車用のフライホイール電力回生装置に興味を持っているようです。 この方面の進歩があれば内燃車への応用という発展があるかもしれません。
いずれにしろ、アメリカでの成否が大きな影響を与えるでしょう。 世界がアメリカの方式に注目するような状況になると、発展途上国が高速鉄道を望む場合、電化のいらないガスタービンフライホイール方式におおいに関心を示すはずです。 このとき、この方面の車両技術がないと日本の車両メーカーは海外競争力が全然ないことになってしまいます。 優れてはいるが重装備で非常に高価な新幹線システムが輸出実績ゼロという現実が意味するものは自明です。
高効率ガスタービンについては日本でも国を挙げて開発しているので世界的にも高い技術水準にあります。 1998年から1999年にかけてセラミックガスタービンについて世界最高水準の画期的な進歩がありました。 100KW級の自動車用ガスタービン、300KW級の複合発電用ガスタービンでセラミック化が実用段階に入ろうとしています。 従来、小型ガスタービンは効率が悪いのが当たり前でしたが、セラミック材料による高温燃焼の実現で、高効率ディーゼルを凌駕する42%という驚異的な効率を達成したのです。 いよいよ省エネのためにガスタービン動力を採用するという時代が目前なのかもしれません。
しかし、フライホイールと高速軽量発電機、電動機と組み合わせたシステムとしての応用は自動車にしろ鉄道にしろアメリカの独壇場となりそうです。 効率と容量と廃棄物の面で画期的な2時電池が現れない限り、このガスタービンフライホイール併用方式が燃料電池に次ぐ理想の動力装置になる可能性を秘めているように思えます。 日本のメーカーもここに目を向けてがんばってもらいたいものです。