世界のターボトレイン

ガスタービン機関車

最初にガスタービンを鉄道用動力として利用したのはスイス国鉄でした。 

 現在のものと同じ構造を持つ世界最初のガスタービンは1936年にスイスのBrown Boveri社で開発され、その5年後には2200馬力の電気式ガスタービン機関車を試作し、スイス国鉄で試用されました。 比較的長期に使用されたようですが、熱効率も16%程度と低く、量産にはいたりませんでした。 

 アメリカではユニオンパシフィック鉄道で1948年から4500馬力の電気式機関車が試作され、1950年にはイギリスで2500馬力機、1952年にフランスで1000馬力自由ピストンガス発生方式の機械式機関車などが試作され、世界的に広がりを見せました。 

 一方、ユニオンパシフィック鉄道では1951年から上記機関車の量産が開始され25両が生産されました。 その後、さらに輸送力増強のために出力を8500馬力に増大した世界最大級の機関車を製作し、30両が長大重量列車のロッキー山脈越えに威力を発揮しました。 

そのほか、ソビエトでは6000馬力の電気式、機械式機関車を試作し、性能試験が行われ、ドイツではディーゼル機関車のピークロード時の出力増強用ブースターとして採用され実用化されました。 

 各国で試作され、アメリカでは本格的な営業運転に使用されたガスタービン機関車も1970年ころには多くが廃止されました。 影響が大きかったのはやはりこれまで非力だったディーゼル機関車が4000〜6000馬力を発生できるようになり、強いてガスタービンに頼る必要性が薄れてきたことでしょう。 特にアメリカでは8500馬力機が総括制御できなかったため、より一層の輸送力増強にディーゼル機関車の総括制御で20000馬力程度まで対処できるようになり、単機大出力のガスタービン機関車も働き場所を失ったのです。 また、このころこの機関車に使用していた特殊な低質燃料が急激に値上がりし、ますます状況は厳しくなったのです。 

 

ガスタービン動車

 機関車ではディーゼルに追いつかれて働き場所を追われたガスタービンですが、高速列車用としては次々に華々しい成果をあげて行きました。 長らく200km/hに到達できなかった内燃車両の速度記録は一気に書き換えられ、あっという間に300km/hを超えてしまったのです。 

 フランスでは1967年にTGS系というガスタービン動車を試作し、その後、ETG系、そしてRTG系へと進歩し、これらはイラン、エジプトへも輸出され、アメリカでもライセンス生産されて現在でも走行している現有の数少ないターボトレインです。 

そして現在のTGVの元祖とも言える、TGV001電気式ガスタービン動車が試作され、314km/hという非電気車両最速の記録を樹立し、日常茶飯事のごとく300km/h以上の高速試験を実施したのです。 

 一方、カナダ国鉄では1968年からトロント-モントリオール間に特急"TURBO"として営業運転を開始、アメリカでは同型車両を短編成化してニューヨーク-ボストン間で営業運転を開始しました。 この編成は高速度試験で275km/hに達しました。 

そのほか、イギリスのATP、ドイツ、ソ連、日本、中国などでも試作研究が行われましたが営業にいたったものはありません。 

 

 

これほど明日を期待された高速ガスタービン動車にも過酷な運命が待っていたのです。 

トップページ

1