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ELYSIUM 1 (01/20/2001)







 自分が聖地へと召喚されてから一月。
 オスカーは無言で、自分がかつてくぐった聖地の門を見据えた。
『・・・聖地へ来た以上、故郷も家族も過去も何も俺を束縛するものはない。女王陛下をお守りし、守護聖としての役目を果たすだけだ。』
 自分へと言い聞かせるように、オスカーは心の中で何度も何度も呟いた。



「何をお前が緊張してるんだオスカー?」
 横でカティスが呆れている。
 オスカーとカティスは、今日この聖地へとやってくる新しい水の守護聖を待ちかまえていた。普通は新しい守護聖を出迎えるという事はしないが、同じく新米の炎の守護聖と仲良くして貰おうと、カティスがオスカーを引きずって来たのだった。
 聖地へ来る前に何があったのかは知らないが、最初の頃のオスカーといえば触ると感電しそうな程に気を張りつめていた。カティスはなんとなく気になって、何かとオスカーを観察していたが、一ヶ月も経つと流石にオスカーも守護聖らしく落ち着いて来ている。
 聖地での一ヶ月、オスカーの故郷では何年たっているのだろうか。星によっては数年どころか、数百年経っていてもおかしくは無い。
『・・・・何もかもが無くなってしまえばいい。過ぎてしまえば、俺にとって最早ただの過去にすぎないのだから。』
 両手のこぶしを強く握って、オスカーは自分の考えに終止をうった。



「お出ましか。今度の水の守護聖も美人だと良いがな。」
 カティスは期待に満ちた声音で言う。オスカーにはその様な事はどうでも良かったが、対して違わずに守護聖となる人間にはそれなりに興味があった。これから長い時を共に生きるのだ。
 永い永い時を。



 その人があらわれた時、オスカーは我が目を疑った。

 彼の方もオスカーを見た途端に、小さな悲鳴をあげた。


「・・・おい、どうした二人とも・・・?」
 カティスは訝しげに二人を見る。
 炎の朱と、柔らかな水色が、これ以上ないくらいに対照的だ。
 初対面のはずの二人は、声も出せずに互いを凝視していた。



「・・・何故お前が・・・・・」
「・・・どうして貴方が・・・・?」
 炎の様な強い視線を相手にぶつけながら、オスカーは睨み付けている。それを受ける水色の瞳は、恐怖なのか驚きなのかわからない色を湛えて震えていた。



 恐ろしい程の緊張が、一瞬にして崩れる。
 カティスが一歩遅かったら、水色の人はその身を地面に打ち付けていただろう。
 とっさに受け止めた身体はひたすら軽い。
「おいっ、大丈夫か!?」
 気を失ったその人に慌てて呼びかけるカティスの横で、オスカーは呆然とその光景を見つめていた。 




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