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ローズマリーの雫  6







「おいっ!一体何なんだこれはっ!」
「騒がしいですねオスカー。お茶でもいかがですか?」

 オスカーとオリヴィエがやっとの思いで戻った時に,リュミエールと領主はのほほんとお茶をしていた。なにやらクッキーの香ばしい匂いがする。

「では領主様,わたくし達は失礼いたしますね。」
「そうだな。少しの間だったが,とても楽しかったよ。」
「わたくしも楽しかったですよ領主様。どうか,これからもお健やかにお過ごし下さいね。」
「ああ。有り難う。」

 眼をまるくしているオスカー達の前で,二人の呑気な会話が繰り広げられている。

「ねえ・・・・結局・・・・何?」
「オリヴィエ,オスカー,これが火の石です。」
「・・・・・・は?」
「これで私達の仕事は終わりです。帰りましょう。」
「おい・・・リュミエール・・・」
「何か文句があるのですかオスカー?」

 にこやかに領主に別れの挨拶をするリュミエールに,オスカーは何か凄みを感じて何も言えなくなる。何があったのかはわからないが,とにかくも用事は済んでしまったらしい。

 はっきり言ってわけがわからないオスカーとオリヴィエだったが,リュミエールにひきずられるようにして領主の元を去るのだった。
 リュミエールが大事そうに抱えている植木鉢のことも聴きたかったが,とにかく聖地に帰ってからと思い直すオスカーだった。





「この花は,海の雫という名前なのですよオスカー。とても綺麗だと思いませんか?」

 聖地に戻ってから,リュミエールは持ち帰った花を館の庭に植え替えた。そうして大事に育てれば,いつかそこには沢山の青い花が咲くかもしれない。

「ああ,お前にぴったりな花だな。」
「有り難うございます。」

 なんだか嬉しそうなリュミエールを見ていたら,オスカーも嬉しくなる。

「それでだな。何があったのか話してくれないのかリュミエール・・・?」
「・・・・・・お二人にはご迷惑をおかけしましたね。でも,これはわたくしだけが知っていれば良い事ですから・・・・」
「だがな,リュミエール・・・」
「そうですね,この花が綺麗に咲いたら,お話して差し上げましょうか。」
「何だそれは。」
「オスカー,あの石は何色になると思いますか?」

 3人は聖地に戻ってすぐに,石をジュリアスに渡した。その後のことは知らないが,好奇心旺盛な女王陛下のことだ,おそらくは二つの石を一緒にしてみたいと言い出すだろう。

「さりげなく話しを逸らしてないかお前?」
「いいからお答え下さい。」

 珍しくリュミエールの押しが強い。オスカーは内心では不満が残るが,リュミエールの顔を見ていたらなんだかどうでも良くなってきた。

「そうだな・・・・・・きっと奇麗な青色に染まるだろうな。お前の瞳のような透き通った色だ。透明で,涙みたいな感じかもなあ・・・・。」
「涙・・・・ですか。」
「ああ。涙ってのは穢れが無くて純粋なものだけにとても綺麗だろう?まるでお前みたいだな。火と水だなんて偶然だろうが,俺とお前だとしたらやはり青く染まるだろうな。お前に包まれてるみたいで俺は幸せだぜリュミエール。」
「オスカー・・・・」


────君から感じるその優しさはどんな激しさですら包み込んでしまうだろうからね・・・・・

「有り難うございます・・・・オスカー・・・・・」

 目の前の人と,遠い星にいる彼の人と。

 リュミエールは,今までよりも少し多めに,オスカーを好きだと思った。 





「ねえ・・・一体ワタシはなんだったわけ?」
「それを言ったら,俺だって・・・・」
「お二人とも,お茶が冷めますよ。」

 今日はなんとなく3人でリュミエールの館の庭でお茶をしている。
 二人のぼやきは終わらなかったが,リュミエールは静かに微笑みながらお茶を楽しんでいた。

「俺はあまりハーブティはなあ・・・・」
「あら,これローズマリーでしょ。良い匂い。」
「二度と手に入らないものですから,どうか味わって下さいね。」
「えっ?そんなに珍しいのコレ?」
「わたくしの忍耐と苦労の結晶ですからね。」
「・・・・・え?」
「何でもありません。」

 お菓子もどうぞと薦めるリュミエールに,二人はどこか恐いものを感じて,これ以上の探求をやめるのだった。






 THE END




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