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当遼とはいかに?







毎年恒例なんだか何だか知らないが,とりあえず忘年会である。
 柳生邸には,何とか集まったお馴染みのメンバーが無事に勢揃いした。年末の忙しい時期に良いのだろうか,という思いもあったが,ちゃんと純も一泊していく模様だ。

 遼と当麻は久しぶりに電話以外で会えたのに喜んだ。もっと会いたいが,お互い忙しいのだ。

 ナスティと伸の揃えたディナーは,普段以上に手のこんだものだし,皆いつも以上にはしゃいでいる。以前のようにずっと一緒にいられるわけでもない年齢になってしまったから,こういう時には思いきり羽目をはずしてお互いの交流を深めるのだった。

「美味かったなあ。たまに無性に食べたくなるんだよな伸とナスティの手料理って。」

「有り難う遼。私も普段は一人だから料理なんてしないのよ。こういう時でもないと腕を振るえないものね。」

 とても嬉しそうなナスティの表情を見て,皆それぞれに顔が綻ぶ。

「ねえねえお兄ちゃん達!僕ゲーム持ってきたんだよ」

 幾つになっても変わらない純は,今でも皆にとって大事な弟だ。

「どんなゲームなんだい?」

「なりきりゲームっていうんだ。取った札に書いてある物になりきるんだけど,これは僕の特性カードだから普通のとは一味違うよ」

「なるほど。んじゃやってみよう」

 純が嬉しそうにカバンから箱を取り出す。中から沢山のカードを出してみせた。

「ひいたカードに書いてあるものを読み上げて,どんなものでもちゃんとやること,バツゲームは何がいいかな?」

「....脱ぐとか?」

「俺はいいぜ♪」

「冗談だってば。ナスティの前でそんなことできるわけないだろ」

「あら,私は構わないわよ。但し私は除外してもらうけどね」

 征士が一人難しい顔をしているが,秀やナスティまでもが楽しそうに言っているのを見て何も言えなくなったらしい。遼は興味深々といった顔だ。当麻が横で何やら考えているが,誰も気を留めていない。

「脱ぐってどうするんだ?全部脱ぐんじゃないよな....?」

 遼が際どい質問をしてくる。というより本人はあまり意識していないのかもしれないが。

「じゃ,何か一つずつ脱いでいくんで良いよね。結構大変なカードとかあるから,意外と難しいかもしれないねお兄ちゃん達」

「それ程難しいものなのか純。」

「嫌だなあ征士兄ちゃん,深く考えないでよ。あ,同じ札もあるんだけど,2度と同じ事しちゃだめだよ。ちゃんと新しく考えてね」

 当の純が一番楽しそうだ。作った本人だから当たり前だが,一抹の不安を隠せない征士だった。





「....東京タワーのてっぺんにしがみついて助けを求めるサル.....こ,こんな感じか?」

「あははははっ!似てる似てる!」

 秀がサルの真似をして皆を笑わせる。こういうおどけたものは秀はとても得意だ。

「征士は何だ?」

「.....考える人だそうだ。」

 几帳面な性格の彼は,彼なりに真面目に有名な考える人のポーズをとる。一瞬皆が静まりかえった。あくまでも一瞬だが。

「ぷぷぷっ」

「な,なんだよ征士,お前そういうの似合うな〜」

 笑いをこらえて当麻が言う。征士が不本意そうな顔をしたが,おかしいものはおかしい。

「遼兄ちゃんは?次だよ」

 言われて遼が楽しそうに一枚めくる。と,すぐに動きが止まった。

「どうした遼?なんて書いてあるんだ?」

 当麻が不審そうに遼の手元を覗きこむ。

「当遼・・・・ってなんだ?」

 当麻と遼が同時に言った。札には当麻か遼以外の人間がとった場合には別の指示が書いてある。しかし,この不思議な単語は,見覚えのあるような無いような....

「わーい。がんばってねお兄ちゃん達〜♪」

「だ,だから何なんだコレはっ!?」

「文字通りだよ。当遼!当遼ファンのドリーマーなお姉ちゃん達を喜ばせる様なのやってね♪」

 唖然とする当人達と,面白がってる外野,さも楽しそうに笑っている純。

「と...当遼って....何すればいいんだ...?」

「嫌だなあ遼兄ちゃん。昨今のお姉様方が喜ぶ事なんてアレしかないよ♪ねえお姉ちゃん♪」

「そうねえ。せめてキスは欲しいかしら?」

「キ,キス!?」

「遼,棄権して一枚脱いだ方が得策じゃないか....?」

「そ...そうだな...」

 焦りを隠せない当麻の言葉に,遼はとりあえず脱ぐことを選んだ。廻りからはブーイングの嵐だったが,背に腹は代えられないというやつだ。

「しょうがないなあ〜。じゃ,次は当麻兄ちゃんだね。」

 突拍子もないカードが出ないよう祈りながら,当麻が一枚めくる。途端に彼の目が点になった。

「純.....」

 またもや同じカードだった。遊んでいるとしか思えない(遊んでいるのだから当然だが)純に,当麻が思い切り睨み付ける。

「こういうのは運なんだから,大人げない事言わないよねお兄ちゃん♪」

「う....俺もパス....」

 純に逆らえない当麻は,しぶしぶと着ていたカッターシャツを脱いだ。冬とはいえ,室内では下にタンクトップを着ているくらいである。遼も似たようなものだが,あまりこれ以上は脱ぎたくない。

「じゃ,お姉ちゃんだね」

「あら,何が出てくるかしら♪...まあ,SMの女王様ですって!」

「おお〜」

 一同より歓声が挙がる。

「やってみたかったのよねえコレ。ほほほほほほっ!女王様とお呼びっ!おほほほほほほほ〜」

 ご丁寧にそこらへんにあった紐までつけて,ピシッときめてくれるナスティだった。恐ろしく楽しんでいる。

「上手い上手いナスティ最高〜!」

 伸が楽しそうに拍手をする。ナスティはかねてからの興味を少しでも体現できたのが嬉しいのか,にこやかに有り難うと言っている。




 これはもう陰謀としか思えない。
 既に脱いでいる者4名。中でも当麻と遼はこれ以上は無理なところまできている。何故かといえば,次々と引かれていくカードが,この二人だけアヤシゲなものばっかりだったからだ。

「もう後がないねお兄ちゃん♪さあ,引いてよカード」

 再び廻ってきた順番に,当麻は嫌そうな表情で一枚めくる。ものすごい脱力感に襲われたのはその一瞬後だったが。

「何々...当麻が引いたら,遼に愛の告白をするだって〜♪」

 何故だ!何故おれたちばかりこういうのが来るんだっ!
 心の叫びは,完璧に面白がっている皆には無視される。これ以上脱げない。ということはズバリ愛の告白とやらをせねばならないのだ。しかも遼にっ!
 実はすごく嬉しいのだが,流石に皆の前でというと...。

「お兄ちゃん,これ以上脱いで見苦しい姿を晒さないでよね」

 身も蓋もない純である。

くそうっ!仕方がない。大人げない事は出来ない。とすると遼に愛をささやく以外に道はあるまいっ!
 当麻の決心はついたらしい。

「遼!」

「ななななな何だっ!」

 真っ赤になってどもる遼が可愛い。

「....愛してる....」

 これまた丁寧に,遼の頬に手を添えて,妙に真剣な顔つきで当麻が遼を見つめている。

「当麻....」

 当麻の瞳に本物の気持ちを見つけて,遼は照れながらも嬉しくなった。
 言ってしまえばこっちのもの,といった風に当麻は落ち着いている。
 というか,廻りを気にしろお前ら......





「ええええええええっ!?告白されたら相手に激しいキス!?」

 かわいそうな遼が次に引いたのは,どっちに転んでも崖っプチなものだった。

 そうして夜は更けていく....










そして裏方↓

「純,有り難う♪ 次の新刊はバッチリよっ♪」
「あれじゃあまだまだ甘いよお姉ちゃん〜」




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