会見で頭を下げる町井副社長ら(右)
福岡市の会社員が開設した東芝批判のホームページの一部削除を求めた仮処分申請が19日、突然、取り下げられることになった。東芝本社への苦情や質問はすでに2000件を超えたといい、法的手段に訴え続けることで失うものが大き過ぎると判断した模様だ。草の根で形成された「世論」に巨大企業が完全に屈服するという異例の展開となった。同日、本社で会見した町井徹郎副社長は「売上に影響したかどうかはわからないが、インターネットの威力を改めて感じた」と述べ、社内の関係者を処分する意向も示した。会社員側は東芝側の突然の方針転換にも態度を軟化させておらず、これで事態が完全に収拾されるかどうか、依然、不透明だ。
このウエブサイトは、東芝製ビデオデッキの修理トラブルをめぐる東芝側の電話の応対ぶりなどを会社員が録音し、「暴言」を浴びた様子を音声ファイル形式で公開しているもので、6月3日の開設以来580万件を超えるこれまでの常識を塗り替えるほどのヒット数を記録している。さらに第3者の手による30を超えるミラーサイトやこの問題を話し合う掲示板が続々誕生し、事態は一顧客と企業の対決構図を超えて、一種社会現象化した。一部には、まったく関係のない消費者から「不買運動」の声も上がり始めている。
当初、東芝側は「会社員が理解に苦しむクレームを繰り返した」、「面会を拒否している」などを理由として、「東芝のアフターサービス全般を非難しており、(問題になった)ビデオデッキも不良品だと書いている」として音声ファイルなどの削除を求めていた。会見した町井副社長は「謝罪は面会して行いたかったが、面会の見通しがたたなかったのでやむをえず司法に判断を仰いだ。会社員が15日に東芝のアフターサービス全体が悪いわけではない、とウエブサイトに掲示したので仮処分を取り下げた」と説明。今回の仮処分申請はやむをえない選択だったことを強調した。
町井副社長は会見のなかで「私が九州に行って会社員には改めて(社員があびせた)暴言を謝罪し、合わせて製品の説明をしたい」と述べ、直接面会して謝罪することで事態収拾を図る考えを明らかにした。
これに対して会社員はデイリーメールインターネットに「(町井副社長が指摘した)文章は7月11日から掲示してあるのに、東芝は12日に法律事務所に仮処分申請の手続きを依頼している。この点を初めとして、今回の会見でも4点、明らかに事実と違う説明をしており、これらを撤回してくれなければ、とても会う気持ちになれない」と語った。
(磯和 春美、臺 宏士)
■東芝会見の一問一答/「謝罪が遅れたことが一番まずかった」
東芝批判ホームページをめぐる仮処分申請取り下げについて19日行われた町井徹郎東芝副社長の会見の主な一問一答は、次の通り。
Q なぜ、仮処分申請を取り下げたのか?
町井副社長 仮処分を申請した直後に今回の問題が、東芝のアフターサービス全体に対しては不満はないことホームページで明言したことや、製品についてもご理解いただけたことから、司法の場で時間をかけるよりはご説明して解決を図るべきだと私が判断した。製品が故障していたということは全くない。本人とは、できるだけ早い時期にコンタクトを取って私自身が謝罪に行く考えだ。
Q もう少し別の形で早く謝罪していれば、司法の判断を仰ぐようなことにはならなかったのではないか。
町井副社長 担当者の発言は非常にまずいと考えた。これについては、謝罪しなければならないと認識していた。製品、アフターサービスに対して誤解が非常に大きく、本人に直接お話ししてお互いに誤解をなくすよう努力をしてきた。しかし、留守番電話に入れても反応もなく、6月中は家を尋ねても留守だった。本人と近い将来に会うめどがつかなくなってしまったため、やむを得ず苦渋の策として司法の場に訴えた。謝罪が遅れたことが一番まずかったと反省している。本人と会えない中で我々の立場をインターネットで説明すべきでないと判断したからだ。しかし、最初の対応で誤りがあったことは事実だ。
Q インターネット上でこの問題が大きな話題になった。どう受け止めるか。
町井副社長 一個人が発信者になって不特定多数の人に情報が送れるということを実感した。インターネットで改めて認識したのは、誠心誠意スピーディーに対応することが必要だろうということだ。難しいことだと思うが、今回の件を糧に勉強させていただきたいと思う。
Q 担当者の発言は、東芝全体の体質に及ぶ問題ではないか? 担当者への処分は?
町井副社長 私どもは、あの対応は個人的な問題で、東芝全体の問題ではないと考えている。(会社員)本人もあの担当者の対応だけが問題だと言っている。既に担当者に対しては厳重注意している。さらに担当者とその監督者に対して今後、処分を行うことも予定している。
Q 一方的に東芝とのやりとりをホームページで公開されたことをどう思うか?
町井副社長 ルール違反かどうかは何とも言えない。しかし、一般的な話としてはインターネットだからといって何でもやっていいということはない。自分の都合のいいことを一方的に流すのは普通の社会では許されないことだ。インターネットだからいいということにはならないだろう。謝罪するという判断にインターネット(で形成された世論)が影響していることも事実だ。
Q 今回の件が夏のボーナス商戦の売り上げにも影響するのではないか?
町井副社長 東芝には謝罪を求めたり、真相を尋ねる2000件以上のさまざまな意見が寄せられている。現在、エアコンその他の家電製品販売の大きな時期に来ている。直接の影響は、数字では出てきていないが、これだけのユーザーがホームページをご覧になっている以上、多くの影響があると思っている。
Q 今後、インターネットで顧客との間でトラブルが起きた時も司法の場で訴えることになるのか?
町井副社長 司法の判断にゆだねるのはケースバイケース。当事者と話し会うのが基本だ。本人の帰宅を待つことなどはせず、努力不足といわれればそれまでだが、とにかく今回は本人に会えなかった。あのときに仮処分を申請した判断は正しかったと思う。
(臺 宏士)
■10日間で何があったのか??? 下の二つを比べてみよう
☆VTRのアフターサービスについて
お客様各位 | 1999−7−8 株式会社 東芝 |
VTRのアフターサービスについて |
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日頃は東芝製品をご愛用いただきまして厚くお礼申し上げます。
さて、VTRのアフターサービス対応につきまして、さまざまなご質問ご意見をいただき、
多くのお客様に対しましてご心配をおかけいたしておりますことにつきまして、誠に申し訳なく存じております。
当社といたしましては、特定のお客様との行き違いにつきまして、お客様ご本人とのお話し合いもない段階で、
当社の方からインターネットでお答えすることは適当ではないと考えまして、
まずお話し合いを持つべく約1ヶ月にわたり最大限努力してまいりましたが、残念ながらお会いできず、本日に至っております。
この間の一方的なインターネットによる情報に基づき、当社サービスの一般的対応につきまして、
多くのお客様が誤解や疑念をお持ちになる事態を避けますため、
本件に関する経緯と当社の基本姿勢を以下のとおりご説明申し上げ、ご理解を賜わりたいと存じます。
これまでの経緯
当社といたしましては、今後ともお客様の満足を経営の最重点方針とし、お客様に対しまして、 より良い製品とサービスを提供するとともに、常に誠意を持って対応するよう努めてまいる所存です。 当社の対応にご理解を賜りますよう、あらためてお願い申し上げます。
VTRのアフターサービス問題では、皆様方に多大なご心配をおかけしておりますこと、
まことに申し訳なく、心からお詫び申し上げます。 ここで、本件に対する当社の姿勢と考え方をあらためてご説明するとともに、 ご批判いただいております点につきまして心よりお詫び申し上げ、 あわせてこれからの対応につきましてご説明申し上げたいと存じます。
お客様が、他社製のS−VHS型VTRで録画されたテープを、 今回購入された当社製のVHS型VTRで再生したときに、ノイズが発生するというのがお客様からのクレーム内容でした。 当社が原因を調べましたところ、お客様ご所有のテープには、 規格外の周波数で画像が記録されていたことが判明しました。 当社は、お客様からのご要請もあり、 規格外のテープでも高画質の画像で再生できるようにノイズの発生を抑える一部改修(信号発生回路の改修)を行いました。 これは、故障や製品不良を直す修理ではなく、お客様のテープでも画質を落とさずに再生できるようにした異例の処置です。 もちろん、VTR本体の品質・性能に問題がなかったことは言うまでもありません。 お客様がご指摘のように、改修の内容を電話でご説明した際、不正確な内容をお伝えし、 お客様に誤解をあたえることになりました。この点につきましては、後日、正式な文書でご回答を行っております。 一連の経緯の中のいくつかの点について、当社の説明とお客様のご説明に食い違いがあり、 また当社が皆様方に具体的な事実経過を詳細にご説明していないこともあって、 当社のサービス対応について誤解や疑念を招いていることは十分に承知しており、 大変残念に存じております。しかし、当社といたしましては、サービス対応の過程の中で、 最善の努力を行ってきたと考えています。この点につきまして、お客様のホームページ上でも7月15日以降、 お客様ご自身が「私は、東芝のサービス全体が悪いとは思っていません。 現場で接したサービスマンの方々の応対には満足しています。 過去に購入した東芝製ノートブックについて受けたサービスも良かったと思います。」と記載されており、 お客様が今回のサービスや当社のサービス全体についてご不満をもたれていないことが確認できました。
2.お客様への発言
しかし、お客様とのやり取りの中で、一部対応窓口においてお客様に対する態度としては不適当な発言があり、 これがお客様のホームページ上に音声ファイルとして公開され、当社に対し、多くのご批判をいただきました。 当社といたしましては、この発言につきましては、お客様に対する言葉としては礼を失した不適当なものであり、 重大に受け止めています。今回の発言は、いかなる事情を考慮しても、不適当なものであり、真摯に反省しております。
まず、この場におきまして、この不適当な発言により、お客様に多大なご迷惑をおかけし、
不愉快なお気持ちにさせてしまったことにつきまして、心よりお詫び申し上げます。 また、今回の発言について、多くのお客様方から厳しいご批判をいただきました。 これらに対しまして、謹んでお詫び申し上げますとともに、今後、二度とこのようなことがないよう、 あらためて社内に徹底を図っていきます。
3.仮処分申し立ての件
4.インターネットでの発言について
この点につきましては、まず当事者間で話し合いをする前に、 いきなり事実経過を第三者に公開することはかえって事態を混乱させると考え、 ご本人との面会を優先した当社の事情をご理解いただきたいと思います。 もちろん、当社は、インターネットが新しい時代のコミュニケーションツールとして、 今後ますます重要な役割を果たしていくことは、十分に認識しており、当社といたしましても、 皆様方に当社の考えをお知らせし、ご理解いただくための手段や、皆様方からのご質問やご意見を頂戴する場として、 積極的に活用していきたいと考えております。その点で、今回の経験は、きわめて多くのことを学び、 反省する機会となりました。
ただ、インターネットで情報を発信する際、匿名性や瞬時に大量の情報を送れるという特性等から、
そこには自ずとルールがあるべきと考えております。
5.最後に
今回の経験を貴重な糧とし、皆様方からの信頼を回復し、真に愛される企業となるよう努力していく所存です。 皆様方のご理解とご支援をよろしくお願い申し上げます。
■7/15日付けで東芝社内に配付された資料 従業員の皆様へ 副社長 町井徹郎 VTRアフターサービス問題の対応について 掲記の件につきましては、従業員の皆様方にご心配をおかけしています。 これまでの経緯と今後の対応を説明し、皆様のご理解とご協力をお願いします。 1. これまでの経緯 (1) 製品の改修の経緯 今回の問題は、お客様が他社のS-VHS機で録画されたテープを、当社のVHS機で再生(S−VHS簡易再生)した際に発生したノイズの問題です。 原因を調査したところ、ノイズの発生原因は、規格外で録画されたお客様所有のテープにあることが判明し、当社のVTR本体には品質・性能とも問題はありませんでした。 しかし、当社がテープのノイズ発生原因を調査している最中に、お客様は、「正常に使えるような状態にして欲しい」という文書を添えて、VTR本体2台を、いきなり西室社長宛に送りつけるという理解に苦しむ行動を取られました。 お客様からのこのような強い要請があったため、当社は、規格外で録画されたテープもノイズを低減して見られるようVTR本体を改修するという異例の処置を行い、お客様が希望される期日までに返送し、技術的処置の内容もご説明しました。 ところが、お客様は、お送りしたVTRの画質も確認しないまま、今度は、東芝ビデオプロダクツ社長宛てにVTR2台を送りつけるという、これも理解に苦しむ行動をとられました。 当社は、あらためて画質をチェックし、お客様に返送しています。 また、これらの一連の過程で、お客様は、お客様ご相談室九州地区担当、九州テクノネットワーク、九州支社、本社お客様相談室、東芝ビデオプロダクツジャパン(株)、深谷工場などさまざまな窓口を相手に、ある部門が対応しているときに、他の部門に電話やFAXを送付し執拗なクレームを行ったり、一貫しない要求を繰り返されました。 このようにお客様からは、執拗なクレームや、通常では理解しがたい行動が繰り返されましたが、当社はそれらに対し、一貫して誠意ある対応を行いました。 また、その後3月6日に、お客様ご自身がインターネットフォーラムに「今日になって改修後、初めて使ってみました」「画質は良好です」との投稿をなされましたので、改修についてはご納得いただいたものと理解していました。 (2) 電話での応対 上記のようにお客様から、執拗なクレームや理解しがたい行動が繰り返し行われ、通常のクレーム対応の範囲を超えていたため、渉外監理室が電話の応対を引き継ぎました。この渉外監理室の窓口での言葉遣いの中で、お客様に対する言葉としては不適当な部分があったことは事実です。 (3)ホームページが開設されてからの対応 6/3に問題のホームページが出されましたが、そのページの中で、お客様は、今回の事実経過として、自分の都合の良い部分のみを取り出し、当社のVTRが欠陥機種であるかのごとく述べたり、今回の電話応対があたかも当社のサービス対応全体であるかのごとく、一方的に情報を流し、当社の信用・名誉を傷つけています。 当社としては、今回の問題は特定のお客様との問題であり、あくまでも当事者間で解決すべきであると判断して、ホームページでの反論などは控え、ホームページが開設されて以来、ご本人にお会いし、改修の技術的内容についてあらためてご説明しご理解いただくとともに、言葉遣いについては謝ってご本人のご納得をいただくべく、面会の申し入れをしてきました。 しかし、一ヶ月が経過した現在に至っても、お客様はさまざまな理由を持ち出されて、面会を拒否されています。また、現在も、ホームページ上には当社を中傷する新たな内容が書き加えられており、一般のお客様方の中に、当社の製品やサービス全般に対する誤解や疑念が広がってきており、営業活動面でも、深刻な影響が出てきています。 2.今後の対応 上記のように、当社としては、これまでご本人との面会によって問題を解決する考えでしたが、ご本人から面会を拒否され、さらに現在も当社を中傷する内容が書き加えられているため、当事者間での話し合いは不可能になったと判断し、今後は、やむなく、司法の場での公正な判断を仰ぐことにしました。 当社としては、お客様との問題について司法的手段によって解決することをいたずらに望んでいるわけではありませんが、当事者間での解決が不可能となった現在、司法の場で公正なる判断を受けることが、解決に向けての最善の方法であると判断した苦渋の選択であることをご理解いただきたいと思います。 解決に至るまでには、今しばらくの時間を要するとは思いますが、従業員の皆様が本件について正しく理解し、一刻も早い信頼回復のためにご協力されるようお願いいたします。 以 上 99/07/15 ■東芝音コラージュ ■「修理で暴言」、東芝が仮処分申請 東芝製のビデオデッキの修理をめぐり、福岡市の男性会社員が「東芝に問い合わせたら暴言を浴びせられた」と抗議するホームページをインターネット上に開き、多数のアクセスがあった問題で、東芝は十五日までに、このホームページの内容の一部削除を求める仮処分を福岡地裁に申請した。 同社広報室によると、削除を求めているのは、ビデオデッキが欠陥商品であるかのように書かれた部分など。ホームページの一部削除を求める仮処分申請は異例。 (7月15日13:56) ■東芝、ホームページ問題で仮処分申請 一部削除求める 「ビデオデッキの不具合について問い合わせたら暴言を浴びせられた」と、福岡市の男性会社員(38)がメーカーの東芝(本社・東京)に抗議するホームページ(HP)を開設、インターネット上で大きな反響を呼んでいる問題で、東芝は15日までに、このHPの内容の一部削除を求める仮処分を福岡地裁に申請した。東芝側は「名誉権と営業権に基づく妨害排除の請求だ」としている。HPの一部削除を求める仮処分申請は珍しいという。 東芝広報室の鶴田啓之・広報担当グループ長は「会社員に対する言葉遣いで不適当な部分があったと思っているが、HPでは本社製ビデオが欠陥製品で、本社のサービス全体が問題であるように、自分に都合のいい事実のみ取り上げて書いている。面会を申し入れたが拒否されたため、やむを得ず司法の場で判断を仰ぐことにした」と話している。 仮処分申請に対し、会社員は「公の場で是非を問うのは、むしろ望むところ。HPではビデオ再生時にノイズが出た事実などを書いたまで。サービスを批判したのは暴言についてで、謝罪を求めているのもこの1点だけだ。法的措置をちらつかせながら面会を強要した東芝に『誠意を持って面会を求めた』などと言う資格はない」と話している。 会社員のHPへのアクセスは15日現在、約370万件に上っている。 (14:07) 99/06/18 ■東芝のアフターサービスについて ちょっと前に話題になっていた物。 東芝のアフターサポート問題掲示板は荒れている。 過去ログはここから入れます。 |