小説:世界が二人を分つまで(完成版)(全14章) 堂本 江角 2001/06/06 04:07:33 ├小説:世界が二人を分つまで(二)(4〜7... 堂本 江角 2001/06/06 04:10:26 ├小説:世界が二人を分つまで(三)(8〜1... 堂本 江角 2001/06/06 04:12:13 ├小説:世界が二人を分つまで(四)(11〜... 堂本 江角 2001/06/06 04:13:40 │├(感動)もう、なんと言って表現したらいい... 毛華 2001/06/06 05:11:44 │└お疲れ様でした! DEW 2001/06/06 05:18:01 ├読みました(Nott/o)w だっちょ 2001/06/06 04:26:50 ├世界が二人を・・・・・・・まで・・・・ 火の国のほ〜けん 2001/06/06 07:00:13 ├読みました〜 ゲマ 2001/06/06 09:04:41 └小説を読ませていただきました。 ネオ 2001/06/06 10:53:13
小説:世界が二人を分つまで(完成版)(全14章) 堂本 江角 2001/06/06 04:07:33 ツリーへ
小説:世界が二人を分つまで(完成版)(全14章) | 返事を書く
ノートメニュー |
堂本 江角 <mgnkpfkgxo> 2001/06/06 04:07:33 | |
前ページにお待ち下さいスレッドを立てて置いてあり、また、そこに乗せようとしたのですが、 長すぎて駄目となりました。 4つに分割することになったので、悪いとは思いつつもこちらに分割し乗せる事に致しました。お許しください。ごめんなさい。 悪いのは全て僕です(汗) 堂本 江角 以下、元文 ---------------------- 小説:世界が二人を分つまで(全文掲載) 本来三部構成で公開してきましたが、取りあえず完結を見たのでここに全文を掲載致します。 恐らく改訂が入ります。不備な点、多数あると思いますが、お許しください。 また、恐らくこれはこれまで発言された全てのカキコの中で最も長い(超々長い)デス。多分。 お覚悟を(笑) ------------------- プロローグ 光が過ぎ去って、後には何も残っていなかった。 彼女は呆然と、それを見つめていた。見つめるしかなかった。残ったのはそれだけだったから。 嫌にまっすぐな切り口だった。鋭利な刃物ですぱっと縦断したらこうなるだろうか。いや、それにしても健や骨とか、とにかく堅い部分に当たるだろうからこう鮮やかにはいかないだろう。やがて思い出したように、鮮やかな赤が滴り始める。ちぎれた、いや切断された左腕。彼の腕。彼の全て。 「あ…」 何が起こったのかようやく理解した。結果だけだが、理解する。理解せざるを得ないから理解してしまう。ようするに、これはー 「あ…」 長かった黒髪が、今の爆発のようなもので所々焼けこげているようだった。長い髪。日頃から彼女の密かな自慢だった。それが、今の爆発が嘘のように緩やかに流れる微風の中、ゆっくりと、頬を撫でていく。再び目を落とす。左腕。その先が、なかった。 何の拍子か、それがぼとりと落ちた。落ちた瞬間、粉々になって砕けた。びちゃ、という嫌な音だけが耳に残った。 本当に遅かったのだがー少女は絶叫した。続いた緩やかな光の輪に包まれながら。巨大な魔法陣に飲み込まれながら。声が枯れて、出なくなるまで。転送された先でも叫び続けた。心が壊れる寸前まで。 多分その時から、彼女の時は止まっているのかもしれない。 1. (冗談じゃないぞ) 彼は焦っていた。 だだだだだだ… 焦っていたので走っていた。事態は客観では問題ない程度の話だったが、彼の主観的には間違いなくかなり深刻な部類に属していた。深刻だったので、彼は、その、想像してしまった最悪の結末を回避すべく、とにかく最速で行動を起こさなくてはならない思いに駆られていた。なので走っている。 ずだだだだだだ… そう、最速だ。取りあえず真っ先に思いついたのはどこまでも遠くへと逃げることだったが、残念ながら今現在、現時点に於いて、彼に許されている行動半径はとても狭かったので(誰だって狭いのだが)、プランは断念せざるを得なかった。 そう、逃避だ。出来ることなら今からでもあの、ガラス向こうの暗闇へとその身を投げやり、絶対零度の中果てしない先、どこまでも泳ぎゆきたいとも願うのだが、そうすると逃亡しなかった場合と結果が同じなので、意味がなかった。 ででででででで… 「うううう…」 結局、思い悩んだ彼が、次善策として次に思いついたのは、成功率という点に於いて、初めのに比べるとかなり怪しいものではあったのだがー ◆◇◆◇◆ 少女の朝は遅かった。 平時より、閉じてから十数時間経たないと決して開かないという特殊な(?)まぶたを持っているのだが、つい最近まで世界はそんなことを言っていると命がなくなってしまう現状に放置されていたので、忘れていた癖ではあったのだが。 とにかく、もうそういった心配は過去の話になったので、なったばかりだったのだがとにかくなっていたので、その日も、彼女の体は無意識に世界平和を理解していたらしく、やはり起床は昼前になったようだ。むくりとふかふかのベッドから起きあがり、多少寝癖がついたらしい短めの黒髪をかるく撫で、ふああと一度欠伸をした後、ただぽてぽてと、寝間着にガウンを羽織っただけという格好で、そのまま、牛乳を取りに階段を降り始めた。降りる。 すぐに気づいた。何かオカシイ。 生じた変化は、別段、明らかに奇妙と言える程度ではなかったが、かといって違和感をまるで覚えない程、些細なものでもなかった。 居間。昨夜、少女が寝つく前まで確かにそこに存在していた筈の、ヴィジョンスクリーン…まあ言うなれば壁掛けテレビのことだが、それが、媒介のフレームごとなくなっている。 「…?」 真っ先に浮かんだのは盗難だったが、より持ち運びやすくて高価である筈のもの(ハンドベルトニューロマシンとか、そこで寝ているノクトとか)が他はまったく持ち去られてないというのはかなり不自然である。 「ノクト…おいで」 取りあえず状況を確認しよう。そう思い、少女は同じく居間のソファの上に寝そべっていたそれに声を掛けた。 はた目は普通の黒猫にしか見えないその動物は、やはり起きていたのか片目だけうるさそうに持ち上げただけで、また閉じてしまった。相変わらず彼女は自分が嫌いなようだった。必要以上には決して自分に近づこうとしてこない。というか、誰に対してもこの調子だった。今もしている赤い首輪がなかったら、その警戒心の強さから、間違いなく野良猫だと思われるだろう。そんなもの、このパイオニア2のどこにもいないのだけど。ちょっと微笑んで嘆息した後、延ばした手をひっこめる。 少女は、ぼんやりしたその見かけから予想される通り低血圧だったので、事態がまだよく理解できなかった。とりあえずふらふらと頭蓋を揺らしながらも意味無く天井を見上げてみる。 そのまましばらくぼーっとした後、そういえば、部屋に入る前、何か目に付いたものがあった事を思い出した。おもむろにキッチンに目を移す。 食卓の上に、何か乗っていた。 「…」 ぽてぽてと、うさぎのスリッパを動かして近くまでよって覗いてみるとそれは紙切れで、わざわざ短くタイプライトされているようだった。読む。 「すみません、テレビ、一週間、貸してください」 「…いいけど…」 少女は訳がわからないまま、とにかく承諾の旨を伝えた。仕方ないのでその辺の空気に。 取りあえず、朝、彼女の周りに起きた不自然は、それだけだった。 2. 「と、言いますと、他にもあったのですか?」 相変わらず青年がこちらに返すのは返事だけだった。切れ長のその瞳自体は、見下ろす書籍から離す気配がない。 「うん…」 場所は変わっていて、ここはいつも彼等が落ち合うバーの中であった。やや薄暗い中、天井にはレトロな羽のようなものがいくつか、ゆっくりと回転している。カウンター裏では寡黙そうな男が一人、黙々とグラスを拭いている。 というか、彼がまともに他人と向き合って会話するということがこれまであったかと聞かれれば、それはあまりなかったような気がする。というか、ない。 まあそんないつものことをここで口にしても仕方ないので。少女はマスター…グラスの男だが、彼が用意してくれたホットミルクに一口、口をつけてからこくりと頷いた。続ける。 「…道行く先々で、道路工事の看板が通り道を塞いでいて…」 「それが何か不自然ですか?」 「工事してないんです」 「ふむ…」 その看板、ひょいと先を覗いても、別段、工事関係者がいて何か作業しているとか、設備業者の人が柱の上でパネルを開いていたりもない。ただ道の真ん中に、「工事中です」という文句と共に、それがでんと置いてあるだけなのである。 「そんな事が3回程続いたので…」 「はいはい」 思いついて、また別の道を選択するため引き返す前に、少女は問題の板に「×」と、目印を付けてみた。そのまま普段通らない細い横道を迂回して進んでみると、 「どうなりました?」 「はあ…想像通りだったのですけど…」 次の分岐点で同じような立て札を目にした時、問題の札には先程付けた「×」の文字が、くっきりと残っていた、と言うわけである。 「…彼の意図がわからなくて…」 「そうですねえ。ま、貴方にそこまで言わせただけであれも本望だったと思いますよ僕は」 その返答にはちょっと引っかかったらしいが、少女は気にしない事にしたようだった。というか、彼が話し相手になってくれる事自体、実は希有である。自分には常に応じてくれるので少女には知るよしもないのだが。 「…うーん…反抗期でしょうか…」 「いつだって反抗期だったような気もしますが」 「というか、犯人わかってるのかね、あんたら」 いつものようにグラスを拭いていたマスターが、つと不思議そうに、当たり前の疑問点を指摘すると、二人ははたと顔を見合わせた。次にどちらともなく、カウンターの下に目を向けやる。 ひょいとのぞくと、そこではいつもの三人組の最後の一人、つまり剣士だが、彼が、煤だらけで転がっていた。 「…本人に問いつめましたから…」 「側でそれを見ていましたから」 そう言えばそうだったかもしれない。道理で奥にひっこんでいる時、店内から悲鳴のような音が聞こえたわけである。マスターは嘆息した… ◆◇◆◇◆ 「…で、一体何の真似だったのですか…?」 割と趣味に近いのか、少女はちょっと嬉しそうだった。ばり、と、延ばした小さな指先。それが宙に描く電撃の呪が、刹那空間にオレンジ色の小さな雷を生み、消える。要するに尋問だが。 「いいいい言わないぞ俺は。言うもんか」 自白している自覚がないのか、彼はぶんぶか首を横に振りつつそう言い続けていた。少女は、相変わらず何を考えてるのか知れない希薄な瞳で、言うそれをしばし見続けていたが、やがてぼんやりとした視線を虚空に投げかけ、「加減って難しいですのに…」 ばりり。再度悲鳴。 ◆◇◆◇◆ 「…」 剣士はかなり死んでいるようだった。いつだって死んでいる時の方が多かったのだが。今日は普段よりその度合いが色濃い。冷静に観察している自分もどうかとは思うが、それは慣れだから仕方ない。とにかくぴくぴくと、指先がけいれんしている。ノクトがふああと、欠伸をした。 「…次はどの呪文にしましょう…」 手段が目的と化し始めている事を指摘してやろうかどうか、横で本に目を落としたまま魔法使いの彼は数瞬迷ったが、やはり放っておくことにした。隣で絶叫している剣士が何故そこまで頑張るのか。彼には想像できなくもなかったが、かといって剣士の望みが叶うとは確率的に到底思えなかったし。 「うふふふふふふへへへへへ」 突っ伏した連れの目がやや虚ろになってきた時点で、ちょっとまずいかなと(彼すら)思い始めた、そんな時だった。 「そういえば、お前さんら聞いたかい、あの話。ほら、例の大会…」 助け船、という訳ではなかろうが、グラスをあらかた拭き終わった(ようするに客が少ないのだが)マスターが、暇つぶしなのか、こちらに水を向けてきた。煙草を手に火を点けつつ、そんな風に言ってくる。単語の一部に多少興味が惹かれたのか、少女が、マスターの方に顔をむけたようだ。 「ああああああ」 本から目を離さず、彼が内心苦笑したのとほぼ同時。隣下から剣士の悲鳴が聞こえた。当たり前といえば当たり前だが。 「…大会って、なんでしょうか…」 少女が視線を完全に剣士からマスターに転じ、聞く体制に入っていた。マスターは意外そうに、え。知らなかったのかい?とかなんとかいいながら、ともかく説明を始めた。特に抵抗なく先を続けてしまう。 「ほら、大会…っていうか、イベントだよ。政府主催の。ようするにあれだな、暇になったハンターズに対しての、具体化した政策の一環って奴だろうな。最近はそーいった理由で短気な奴等同士がつまらないいざこざを起こす騒ぎが後を絶たないしー」 「はあ…たちが悪いですね…」 自覚がないのか、少女はこくこくと相づちをうっているようだった。彼の記憶が正しければ、彼女は確か昨日も、まさにここで、自分に声を掛け、馴れ馴れしくも肩に手を置いてきた見知らぬ軟派なハンターに対して最大規模の電撃で答えたはずだったし、それで無茶苦茶になった店の掃除に数時間かかったマスターの皮肉もそれを指しているはずだったのだが。 まあ、世界はそれだけ平和なのだろう。そう、思う事にする。マスターはぼんやりと、悪気の無い純粋な、好奇心いっぱいの瞳を見下ろしている内、嘆息と共にそれで許す事にしたらしい。とにかく、先を続ける。 「大会だよ。武闘大会。参加資格はハンターズに登録されている者全員。いや、一応セカンドクラス以上という条件つきだが、例の騒ぎで殆どの奴がクリアしてるだろうから。まあ、全員だな」 「大会…」 「何で言うんだああああああああああ!?」 暇、暇と日頃訴えていた少女のぼんやりとした目に確かな光が宿るのと、悲鳴はほぼ同時だった。それは勿論崩れ果てていた剣士で、殆どかみつくような勢いで復活し、今はマスターの襟首を確かにしめていた。 「な、なんでって…何あんた、さっきから必死で黙秘続けてたのってまさかこれの事かい?」 「そうだよ!」 「…あほか、あんた」 マスターは心底呆れたようだった。神に祈るかのように首を振っている。まあ、あほだし。 「んだとう!?」 がたたっ 「人が!ていうか俺が!ここまで必死になってポスターの貼ってある所迂回させたりニュース見れないようにしたり、全力を挙げて情報隠蔽に励んでいたのに一瞬でぶち壊しやがって!俺に何の恨みがあるっ!?」 全部吐く剣士。 「取りあえずなかなか溜まった付けを返してくれないこととかならー」 「あああつけの事は言わないでくれいつか払うからー」 「大会…」 いがみ合う中、少女は天井に目をやったまま、小さな両手を小さな胸の前で組み、幸せそうに呟いているようだった。彼女にしてみれば当然かもしれない。闘っていれば幸せなのだ。この子は。見た目は純粋無垢な顔してるのに、このギャップは殆ど法律違反だ。 「まあ、それはともかくとしてー」 魔法使いはようやく顔をあげて本を閉じると、ついと出口付近に目を走らせ、騒ぎ始める彼等に声を掛けた。それぞれが自分の方を見る気配を感じ取るや、視線でそちらを見るように促す。 騒がしいファンファーレ。軽快な音楽と共に拡声器で拡張された男の音が、視線の先、屋外から、電気カーの電動音と共に響き渡り始めている。 「ハンターズの皆皆様に置かれましてはご機嫌麗しゅう。さてさて。お待たせ致しました!政府主催の第一回ラグオル武闘大会、その参加登録の受付が今日から始まります!日頃体力をもてあまされておられ、日夜市内の破壊活動に貢献されている腕自慢のハンター様は、こぞってご参加ください!勿論、魅力的な賞品を数多く揃えております!参加は無料です! 更に!(強調)優勝された方には我らが総督より直々に、花束とサインが!是非多くの方々の当大会へのご参加をお待ちしております…」 『サインて』 三人共気になった点はそこだったようだが、とにかくそれで、それぞれの理由で時間停止した彼等に、魔法使いは再び視線を本に落としながら、 「ま、隠すだけ無駄だったようですね」言う。剣士は昏倒したようだった。 3. 「嫌だ嫌だ嫌ダイヤダイヤだいやだー!」 「ほらほら、早くいかないと間に合わないかもしれません…」 「それは大変ですね。急ぎましょう」 「ていうか俺は間に合わなくなってほしいんだあああああ!」 何故か愛用の鎌を持参し、それを肩に担ぎつつ前方をぽてぽてと前進する少女を筆頭に、三人は大会の参加申し込みを受け付けている建物まで歩いていた。 因みに性懲りもなく、剣士は今も抵抗を続けていた。百貨店で母親に駄々をこねる子供の如く、いやいやを続けている。自分は最後尾でそれを見ていて、ノクトは横をしっかりとついてきている。また欠伸をしたようだ。 「なんでお前は反対しないんだよっ!?」 矛先はいつのまにか自分になっていたらしい。仕方なく嘆息し、 「諦めが早いのが自慢でして」 「…どういう意味でしょう…」 前方で少女が小首を傾げていた。僕は無視したし、剣士も無視した。冷や汗が流れてはいたが。無視された少女もしばらくは腑に落ちない様子で「?」と、疑問符を頭上に浮かべていたが、すぐに忘れたようだった。到着。 「いらっしゃいませー」 思いの外、受付会場はがらんとしていた。並ぶとか間に合わないとかいう以前に人の気配がない。ともかく、はきはきとした感じの華奢なレイキャシールの場違いな声が、自動扉の向こうから軽薄な笑顔でこちらにそう言ってきていた。慣れた様子で書類を取り出すと、こちらに三部手渡す。 「あ、俺は参加しないか」 じろ、と少女が振り返った時点で剣士は黙った。隣でノクトが再度欠伸をする。と、珍しいのか、今度はきょろきょろと建物内を見渡し始め、そのまま勝手に奥へとことこ歩いていってしまう。彼女は彼女で勝手にやるということだろう。放っておくことにした。 「さ、参加人数は今どのくらいっスか?」 恐らく生存本能が救いの出口を模索した結果だろう。剣士がふるえる声でレイキャシールに聞いていた。彼女ははきはきした軽薄な笑顔で、 「少ないですよう。お客様方で10人目ですぅ」 「…死亡確率9分の一か…」 「…きっぱりどういう意味です…?」 「いや別に」 「あはははー大丈夫ですよう。ちゃんと救急車も医療班も待機させますからぁ」 瞬間、殺意が交錯したようだったが、おおむね平和であった。 ◆◇◆◇◆ 「うーん…」 「どうかしました?」 再びバーにて。少女はミルクセーキと書類を片手になにやら唸っているようだった。割とよく唸るのだが、それは普段とは違う唸り声のように彼は感じた。だから尋ねた。続いた返答は意外なものだった。 「いえ…参加、やっぱり取り消そうかなと思いまして…」 「え、マジ!?」 彼女のすぐ隣。死んだような目で文字通り遺書を書く作業にいそしんでいた剣士が(抵抗の一環だろうが)がばっと顔を上げ、目を輝かせた。少女はこくんと頷くと、書類をぽんとテーブルに放りだし、憤慨したような口調で、 「だって…武器はフォトン使用不可にされて威力を10分の一まで下げるそーですし…加えて怪我をしないように試合中は重力フィールドでダメージを軽減させるってありますし…」 「つまらなそうですから…」そう締めくくった。 「いよっしゃああああああ!」 はた目、どーみても可愛らしい、小柄な、普通の女の子然とした少女から、かなりな問題発言があった事は取りあえずどうでもいいのか、ガッツポーズする剣士。不満そうにテーブルの下で床に届かない両足をぶらぶらさせて溜息をく少女。 「…嫌なら参加しなくてもよかったですのに…」 脅迫していたように見えたのは気のせいだったらしい。取りあえず死の危険が遠のいたらしいので、僕もこっそりこちらに向かって親指を立てた剣士にならい、同じ仕草で答える。 「残念だなあ、あんたらなら優勝確実だと思ったんだが」 マスターが世辞をいったが剣士にじろっと睨まれ慌ててグラスを拭く作業に戻る。少女はなおも未練があったのかぱらぱらと書類をめくったがー 「…」 書類の最後のページで、繰る手が止まった。ぼんやりとしていた瞳が深刻な光を帯びていた。やや大きめの可愛らしい瞳。年相応のそれが、ページに記載された文字を何度も何度も繰り返し見送る。次に彼女は何を思ったかノクトにコマンドを走らせ、データを照会し始めた。やがて何かを確信したのか、一度小さく頷く。 「発言取り消し…やっぱり参加します…」 「え」 半ば小躍りしていた隣の顔色がそれで一転したが、少女はそんな事はどうでもいいようだった。最後にもう一度ざっとページを見た後、何かを決意したかのように、顔を上げる。 「…ちょっと、出かけてきます…」 僕に言うと、返答も待たずにぴょんとテーブルから飛び降り、小走りに店から飛び出していく。ノクトが素早く反応し、それを追って扉向こうに消えた。 「あ!おい、待てよ」 なんだかんだ言って少女にぞっこんな剣士が慌ててそれに続いた。僕は、取りあえず手にした本を閉じると、懐から例の書類を取り出した。記憶していた、少女が目をとめていた問題のページを開く。 それは、大会の勝者に渡される優勝賞品と、それら賞品を提供する企業や個人、大会主催者等の一覧が載っている目録のようだった。 その一行目。少女が先程凝視していた部分だ。皮肉げにこちらを見やる見覚えのある男の顔。巨大でいびつな形をした何か。モノクロの写真付き。短い文字で、それはあった。 武器名:天罰 提供者:J・モンタギュー |
├小説:世界が二人を分つまで(二)(4〜7... 堂本 江角 2001/06/06 04:10:26 ツリーへ
Re: 小説:世界が二人を分つまで(完成版)(全14章) | 返事を書く
ノートメニュー |
堂本 江角 <mgnkpfkgxo> 2001/06/06 04:10:26 | |
小説:世界が二人を分つまで(二)(4〜7章) ------------------ 4. ふんふんと鼻歌を歌いながら、その男は書類をめくっていた。器用にも片手で。もう片方の指は先程から休む間もなく、忙しくキーを叩き続けている。見る見るうちに目の前のディスプレイ上に複雑な化学式が構築され、そのままだらだらとのびていく。 彼はつとそれら作業していた手を一度止め、「それ」を眺めた。 仕事机の脇。無造作に置かれた、ホルマリン漬けされ、その周りを超小型の冷凍カプセルで厳重に覆われた小さな瓶。中にはある生物の一部が入っている。勿論、誰かにそれが何の生物か、と尋ねられても答えられる筈もないものなのだが。 (ふむ?) 男は飽きもせず暫くの内瓶を眺めやっていたが、やがて嘆息と共に、一息入れることにした。椅子に腰掛けたまま、軽く伸びをする。 「博士、コーヒーいれましたぁ」 「あ、うん。ありがと。エル」 と、嫌に軽薄な声音。のんきな声が、彼の思考を中断させる。背後。彼のお気に入りであるアンドロイドエルノアが、まさにベストなタイミングでブレイクの誘いをしてきていた。 コーヒーを飲みつつちょっと休憩し、エルノアをからかう。それは割と彼の最近の趣味となりつつあった。内心苦笑しつつ、彼は振り返る暇も惜しく手を後ろに延ばすと、盆を受け取った。その上に存在する筈の、彼の好みに合わせてある筈の、苦い、猛烈に熱く煮えたぎっている筈のカップを取ろうと― じゅっ… (ん?) 熱い感覚は指先ではなく頬にやってきた。間違いなく何千個からの細胞を破壊していく感覚が左頬に走り始める。肉が焦げるリアルな音。なんというかそれ以前にこれは凄く熱いというか熱い―― 「うおお!?」 「…こんばんは…おじさん…」 呪うような声音が、飛び上がった彼の悲鳴に続いた。軽く火傷した頬を押さえつつ彼が振り返るとそこにはエルノアではなく盆を持った小柄な女の子が立っていて、熱く煮えたぎったコーヒーの入ったカップを手にしてこちらを見つめている。 「あ、博士。お客様ですぅ」 「遅いよ…エル…」 半眼でぼそっと呟くと、エルノアは、『す、すみません〜博士、お仕事に集中してらっしゃるようでしたのでぇ』などといいつつ、そそくさと少女から盆だけ受け取りすたこらと部屋から逃げていった。 「…おじゃまします…」 「…君も遅いよ、それ」 「…そうですか…?申し訳ございません」少女は素直にぺこりと頭を下げた。 ジュニアハイスクール並みの小柄な背丈。やや大きめの、割かし整った瞳。短く纏められた黒髪。光の加減で多少灰色がかって見える。後天的なものだった。元は漆黒だった筈で。それは、少女の印象を少なからず強く相手に与える事に影響しているかもしれない。 とにかく、どこからどー見ても、目の前の少女は只の可愛い学生にしかみえなかった。とても少女がハンターズに登録している一流のハンターで、更に言うなら数少ない最高ランクの称号を得ている最年少の人物であるとは想像しがたい。 「コーヒー…飲みますか…?」 「え?あー、うん」 モンタギューは、こちらも史上最年少で「遺伝子工学の権威」とまで言われた生物学者である彼は、まだ状況を把握できないまま、ともかく目の前の少女からそれを受け取ると一口口につけた。甘い。 「ぶ」 滅茶苦茶に砂糖が入っているようだった。ミルクも。溜まらず咳き込む博士。少女の左手が、表情は固定したまま彼からは死角になる位置でVサインを形作る。 「おいしいですか…?」 「うまいもうまくないも」 甘すぎて味なんかわかるかい。内心で続けると、モンタギューは取りあえずそれを机の脇に放置した。無論二度と手に取るつもりもないが。 「君か。一体僕に何の用なんだい?」唇の端を歪めるいつもの皮肉げな笑みを浮かべると ――同僚達にもエルノアにもやめるように言われている彼の悪い癖だった―― 天才は、少女に向き直った。ぼんやりと、ただ今は多少はっきりとした厳しい視線を自分に投げかける、自分より年下の少女。多少ならず非難の色が混じった大きな瞳がそれには答えず、すっと、視線を彼の仕事机の脇に移す。 「…ああ、これか」 博士は面白そうに笑うと、瓶を手に取った。内部は零下二百度近くまで下げられているそれを弄びながら、楽しそうに薄暗い研究室の中、彼女に向かって掲げてみせる。 それは、グロテスクな何かの生き物の表皮のようだった。ラベルが貼られていて、簡素にただ日付と内容物の簡単な説明書きがされている。 XXX5-X0001 dark false Type01 ちり、と、私の中で何かが音を立てていた。それは、いつか私の脳をかき回した音に酷似していて、溢れるような光の渦と共に全てを押し流したそれと同じで。つまり―― 「…それを、どこで手に入れたのですか…?」 軽い微熱のようなものを覚えながら。少女は男に尋ねた。研究の事しか、理論と数式と生命の神秘にしか興味がない彼に。目の前にいるのは、恩人で、自分を助けてくれた人で、己の好奇心のみに忠実に生きる、ある意味純粋すぎる人だった。自らの研究がもたらすもの。その結果そのものにはまったく興味がない人間。 そう。目の前にいるのは、過去の歴史に置いて、人類の取るべき道筋を致命的に進路変更してきた輩と同一の「化け物」だった。知的好奇心という名の麻薬に見せられ、「大量殺戮兵器」にもなりかねないモノを造り上げかねない、いや、造り上げてしまった人。 手が震えていた。また、繰り返す事になるかもしれないのを、ただ、恐れていた。 「不思議な事を聞くんだな、君は」モンタギューはおかしそうに笑った。新たな遊び道具を見つけた子供、まさにそのままの表情で。彼は続ける 「君の武器に付着していたんだ。予想しなかったのかい?いや、できなかったのかな?君はあの時瀕死だったからねえ」 博士は瓶をぽんと、空中に投げた。「ありがとう」 少女が眉を潜めるのをニヤリと見返しつつ、モンタギューは言う。 「最高だよ。君がもって帰って来てくれた素材は。史上最高のサンプルだったよ。神様の欠片というのは」 闇の中、少年と少女は向かい合って、その後はかなり長い間沈黙が続いた。 5. 鳶色のマントをしたそのフォニュエールの少女は、きょろきょろと辺りを見渡していた。 大きな、先端が途中から二つに割れて先にぼんぼんがついているという不可思議な帽子をした青い髪の少女は、その、種族的な特徴である長い両耳をぴょこぴょこと動かしながら、先程から案内板を探す作業に難航して困り果てていた。背が低すぎて、このむせかえるような人混みの中、背中しか映らない情景に内心舌打ちしている。 「困るな…これは」 あまり困ったような声音でなくそう呟くと、鳶色のマントにすっぽりと覆われた小柄な体の中で肩をすくませ溜息をつく。 よく見ると、フォニュエールのしているマントの腰辺りの部分が微妙にふくらんでいるのがわかるだろう。彼女の愛銃、レミントンYK-Rとシグ・ザウエルP240ホークスという改造銃が両側のベルトにホルスターで吊られているからだ。かなりレトロな銃で、今時弾丸の装填作業がいるという、甚だ実戦に不向きな、いわゆる大昔の「拳銃」と呼ばれる類のそれだ。マントが歩くたびじゃらじゃらと鳴るのも、裏地に大量の弾薬、マガジン入りポケットがあるからに他ならない。 「シータ?」 呼ばれて振り返ると、自分と同じくらいの背格好の少女が、驚いたようにこちらを見返しているのとぶつかった。 「やあ。君も参加するんだ」 フォニュエールは最初ぱちくりと相手を見返した後、普段は無表情に限りなく近い瞳をやや嬉しそうにほころばせて答えた。 「結局、あの日何を話しにいったのでしょうね」 旧友と再会し、話し込んでいる少女を前方に、魔法使いは剣士の彼にそう聞いてみた。が、いっこうに返事が帰ってくる気配がない。見ると、 「俺は死なない、死ぬ、死なない…」 どこから持ってきたのか花を片手に占いをしているのが目に入った。…次からは聞く相手を選ぶようにしよう。そう堅く誓い、見なかったことにする。 (…まあ、僕は僕の役目を果たすだけだし) 溜息を吐きだしつつ、彼は空を見上げて祈りを捧げた。何に対してかは解らない。神様では無いことだけは確かだった。僕らは既に背徳者なのだから。 「…貴方はどうして参加されるのですか…?」 「別に。腕試しかな?」 くるくると、ザウエル…セミオートマティックの小銃を器用に回転させて暇をつぶしながら、シータは無表情で己の手元で踊る武器を見つめていた。少女も隣でそれに習う。 二人はよく似ていた。一見してあまりに小柄な容姿。寡黙な性格。冷静な判断力。可愛らしい外見。耳の長さは違うが。それでもぱっと見、仲のいい姉妹にすら見える。両方ともちょっと暗いので、こうやって隅っこで二人並んで座ってぼそぼそ話してるとやや不気味に映るのが欠点と言えば欠点かもしれない。 「前から疑問に思ってたのですけど…」 「うん?」 「どうして拳銃なんて使ってらっしゃるのですか…?」 「…へえ?わかるんだ。驚いたな」 こちらの問いに無表情でそれに答えながら、シータは点検なのか、癖なのか、マガジンを排出し、弾薬が全弾装填されているのを確認して戻していく。一般のハンターには彼女が何をやっているのか、皆目検討がつかないだろう。解る必要もないのだが。今現在使われている銃というのは、弾薬の供給という概念が、そもそもないのだから。 「…生まれが生まれですから」 「ふうん」シータは特に興味がないのか、そっけなくそれだけ言うと、ホルスターにザウエルを戻した。あざやかな手並みであった。恐らく本気で引き抜く時は瞬きする間もなく相手の眉間にポイントできるに違いない。 「反動が好きなんだ」シータの答えは簡素だった。 「…」 「それだけだよ。今のフォトン銃は何かを殺してるっていう実感がない。だから罪の意識も沸いてこない。空虚なんだ。ボクにはそれが我慢ならない」 シータはぴょんとマントを翻しながらそう答え立ち上がると、座り込んでいた柱から飛び降りた。両肩を落としたいつもの姿勢でこちらを見上げて軽く唇だけで笑みを浮かべ、 「じゃ、またね。君とは決勝で会えるといいな」 それだけ言うと、すたすたと人混みの中、奥の方へと歩いていく。 「…一つお願いがあるのですけど…」 やや慌てた様子で自分を引き留めた少女にシータは顔だけ振り返り、 「了解してる。あんたの仲間を傷つけるような真似はしない。約束する」 もともと当大会での拳銃使用の規制では、使用可能な弾薬は全てホローポイントのペイント弾である。勿論急所に当たれば卒倒するほど痛いだろうが、人体を貫通するだけの殺傷力はないだろう。無論、目を狙うことも禁止されている。 「…それもあるのですけど、もし優勝されたら…その…」 少女の口から紡がれた内容に、シータははじめちょっと目を見開かせ、探るような視線を向けてきた。が、それも一瞬のことで、 「OK。いいよ」あっさり承諾し、もう振り返ることなくすたすたと行ってしまう。 「…」 見えなくなっていくフォニュエールの小さな背中を、少女はしばらくの間見つめ続け、やがて、そちらにむかって深々と頭を下げた。大会が始まる。 6. 「結局、参加者は何人だったんだ?」 パンフレットを繰りながら、剣士は隣の魔法使いにひそひそと耳打ちした。更に隣では、なにやら普段とはまるで違う真剣な雰囲気で大会の進行を見守る少女がじっと黙って前を見つめ続けている。 少女は一週間前、あの変人の家に行ってからというもの今日まで、明らかに様子がおかしかった。ずっと何かを考えるような感じで、声も掛けづらく、結局大会当日まで殆ど二人と口を聞かなかったのが酷く彼をいらだたせていた。あの日、何があったのだろう? 「ざっと30人という所ですね。トーナメント方式ですから…まあ要するに5回勝てば優勝です」 「私は4回…役得…」 唐突に、少女が割り込んできた。二人がそちらをみると、無表情で前を向いた姿勢は変わらないまま胸の前でVサインをしている。割といつもの感覚が戻ってきてるようだ。それを見て、やっぱり気のせいだったのかな?と、剣士は内心ほっとなる。 (…)魔法使いは目を細めてそれを見ていた。かすかに震えているその指先と、背後で強く強く握られて白くなっている少女の右手を。 (どうやら、本気で優勝を狙わないといけないようですねこれは)本を閉じ、嘆息する。 「えーっと、対戦表は…」今ので安心したのか、幾分いつもの気楽な調子で剣士が当初の問題へと関心を移していた。その心配はないのだけど。と、やおら彼が、びしっと硬直する。ぎぎぎ…と、首を巡らしこちらを見ると、「俺、お前とだ。最初」 「へえ」 魔法使いはとくに感情を見せず、そのまま前方を見続け進行を見守りつつ、頭の中で二回戦での戦術をどうするか、考えていた。 ◆◇◆◇◆ 「あれは酷いと思うぞ…」 「何がですか?」 一回戦が終わって。最初の組み合わせだった剣士との戦いを終えて。魔法使いは掌にまとわりついた静電気を控え室ではらっている所だった。相変わらずもう片方の手は書籍を持っていたが。 「何がって」 魔法使いの彼は、始まるや否や距離を置いたままテクニックを連打し、連れが向かいで何も言わなくなるまで撃ち続けただけである。初戦が単純な相手だと楽でいい。 「まあ、この作戦の欠点は、友情にひびがはいることですかね」 「…どこ見て誰に説明してるのかしらんが俺はお前がますますキライになったぞ」 文字通りずたぼろの様子でベッドに突っ伏し、側で医療班が傷の手当てを始めるなか、剣士は半眼で呻いた。勿論無視した。 まあ、ひょっとしたら、途中でギブアップとか彼が確かに言ったのを、そして確かに自分にも聞こえていたのを無視し、そのまま連打し続けた事は確かだし、彼もそれを指摘しているのかも知れないが。まあそれは不可抗力で。 「い、いつか殺してやる…」剣士はそれだけ言うと、もう意識を失ったようだった。確認して、魔法使いも会場へと足早に戻っていく。彼の代わりに見守って置く必要があるだろう。自分より強い人間の心配をする必要があるのかどうかは甚だ疑問ではあったのだけど。 「初め!」 180センチを優に越す大柄なハンターである彼は、相手が見るからに子供子供した少女であることに、困惑の色を隠せないでいた。 短い黒髪。帽子をかぶってどこか虚ろな瞳をこちらに向けてじっと立つ女の子が、本当にハンターズで、自分の相手をするのかと、訝っているのだ。 「…宜しくお願い致します…」 「…あ、ああ」 ぺこりと、相手が深々と礼をしてきたので、半ばつられて頭を下げてしまう。会場の客からどっと笑い声が起こった。 大剣を持ってきたのも大男の気勢を削いでしまっていた。こんなものをふるって万一あの小さな体に直撃でもしようものなら、例え威力が格段に制限されているとはいえ、致命傷になりかねない。こんなことならもっと軽い武器を―― 思案できたのはそこまでだった。 「…では、参ります…」 「え」 次の瞬間。少女の体が嘘のような素早さで目の前から見えなくなった。 それまで確かに少女が立っていた筈の場所には、踏み込んだ時に穿たれた、空恐ろしい程見事なまでにへこんだコンクリートの足跡だけが残っていて。 「え」 一瞬で間合いが0となっていた自分と彼女の目がちらと重なって、 ずどん 「…あれ?」 彼が次に意識を取り戻した時。そこは試合場ではなく会場内の医務室で、横では前の試合で黒こげにされていた剣士が自分と同じようにのびていた。何が起こったのか結局最後までよくわからないまま、彼の武闘大会はそこで終了した。 (相変わらず化物じみてるな) シータは無表情のまま、少女の闘う様を改めて目の当たりにし、溜息をついた。彼女から間合いを取りつつ闘うのはかなり困難なように思える。何が恐ろしいかというと、まずあの速度。そしてあの怪力。どちらも尋常じゃないレベルで拮抗している。何を食べたらああなるのかは知らないが。 加えて言うならあの無垢な外見も、相手を油断させるのに一役買っているのだろう。現に先程の大男は明らかにとまどっていた。とにかく、あれと闘う時は他の戦法を考えた方が無難かもしれない。 少女はナックルのようなものを左手にはめていた。相手が完全に動かなくなったのを確認するやそれをおもむろにはずし、何故か帽子の中にそれをしまう。 暫くぼおっと崩れ落ちたハンターの大男を見下ろしていたが、やがてぺこりと頭をそれにむかって下げ、後は黙ってすたすたと控え室に戻っていく。 会場は始まりから終わりまでしん…となっていたが、すぐに「うおお」という大歓声と共に、大きな拍手がそれに続いた。既に賞賛の対象となる少女は建物内に入って見えなくなっていたのだが。 7. 「そこまで!」 額と胸の真ん中にペイント弾を打ち込まれたその痩身のハンターは、両手に剣を構えた姿勢のまま、終了の合図とともに真後ろに倒れて気絶した。どうやら撃たれた衝撃で脳しんとうを起こしたらしい。実弾なら脳しんとうではすまないのだが。 シータは息を付くと、ホルスターにザウエルを落とした。歓声の中、自分も次の試合に備えて少し休む事にする。少女にならい、残りの試合はみないで建物内にひっこむことにした。 「…!」 ぞわり。 その途中。シータは「それ」に気づいた。後々思えば気づかない方が幸せだったのだが、とにかく気づいてしまった。闇を引きずるような、暗いそいつの気配に。 (…) 感じた瞬間、シータは殆ど無意識に右手が腰のホルスターから銃を抜き取り、体は近くの柱に滑り込んでいた。かつん、かつん、という音が、向かう通路の先から響いてきている。 やがてにゅっと、別段警戒する様子もなく、そのヒューキャストは姿を見せた。黒がかった紫色の体。一切の無駄のない動きでまっすぐに進む男。特に不自然な所はない。ないのだが―― (なんだ?嫌なかんじがする…) 大会の参加者だろうか?とにかく、ヒューキャストはこちらに気づいた様子もなく、そのまま彼女のいる柱を通過し、通路奥に消えていった。その先は選手の控え室でないことだけは確かだ。あの先は…なんだったろうか? (パンフレットをもっとよく見ておくべきだったかな) シータの銃把を握りしめる手に、汗がにじんでいた。こんな事は滅多にないことで。それでも彼女は迷わず彼を追うことにしたのだけど。 ◆◇◆◇◆ 「こんにちはぁ」 「やあ、頑張ってるねえ。おじさんは鼻が高いよ」 扉を開けると、そこではモンタギューがエルノアとチェスをしていた。 「…」 「ああ!ちょちょちょっと待ってくれよ」 「あぁ〜私が勝っていたのに〜」 すぐさま扉を閉めたこちらに慌てたのか、ばらばらと壁向こうで駒がばらける音と間の抜けた悲鳴が交錯したようだった。構わず、少女は足早にそこから立ち去ろうと歩進める。 「まあ待ち賜え」 にゅっと、後ろから延びた手が少女の首を抱え込んだ。仕方なく止まると、「…離してください。でないと噛みつきますよ…」 「うわ」 おどけた声で、モンタギューが戒めを解く。「おっかないな」 「何の用でしょうか…?お話はこの間で終わった筈です…」 「冷たいなあ。いや、君が大会に参加登録してるって聞いて、心配になったんだよ僕は」 「…貴方にそんな台詞を仰る資格はありません…」少女はにべもない。 「酷いなあ。それじゃまるで僕が非人道的な性格をしているように聞こえるよ」 「…違うとでも言うのですか?」 「違うさ」 モンタギューはちっちと指を振ってみせた。少女がようやく、彼に体を向け立ち止まる。モンタギューは満足そうにそれを確認すると、先を続ける。 「科学というものに善悪の区別はない。あるのは道具としてのそれだけさ。僕はそれを作り出す事に人生を捧げるだけにすぎないし、そういう観点では僕も道具のようなものだし善悪といった概念には縛られない」 「…」 「前提が間違ってるよ君は。武器や兵器が作り出されるのは科学者のせいじゃない。僕らは人という種の、「進化したい」という本能の忠実な僕にすぎない。人の生み出した文明が発達していくのは進化論で言うところの当然の帰結であって、ようするに、それらの副産物として生まれてくる武器や兵器となりうるものを、まさにそれとして利用してしまう存在こそ、君の嫌悪するモノだ。そうじゃないかい?」 少女は黙ってそれを聞いていたが、博士が一息つくのと同時に口を開く。 「…貴方達はいつもそれです。貴方達が研究をやめればそもそもそういったモノは生まれないのではないのですか…?誰も間違えずにすむのではないので」 「だったら僕を殺せばいいじゃないか?」少女に最後まで言わせず、モンタギューは口を挟んだ。絶句する少女に向かってにやりと笑う。いつもと代わらない皮肉な笑顔。 「ん?殺して見たまえよ。君の論理は僕達を完全に否定している。なら殺せばいい。そうしてきたんだろう?研究しない僕というのは、僕にとって生きている価値は無いに等しい。なら死んだって構わない。君は気にせず僕を斬り倒して、そのままパイオニア中、返す刀で母星の全ての科学者、研究者を殺して回ればいい。それをずっと続ければ君は人類の自殺という結果で幕を引く世界の終わりを見ずに安心して老衰して死ねるだろう。そうすればいい。なぜそうしない?」 少女の瞳が震えていた。モンタギューはなおも言う。 「できないだろ?君は一週間前もそれができなかった。どうするのか見ていたら今日はここで回りくどい行為に身を落として自己満足している。何を考えてるのかは想像がつくよ。でもそれが何になると?呆れたね僕は。こないだ君に斬られる覚悟もしていた僕にとっては本当に残念でならないね。情けないよ。くだらないよ。ようするに君は――」 「私は――」反論しかけた少女の震える声を、彼は無視した。すなわち、止めの言葉を。 「ようするに君は、復讐したいだけだろう。自分から何もかも奪ったモノ全てに蓋をしたいだけなんだ。君はいつまで、そうやって自分をごまかして生きていくんだい?神様を殺しただけではまだ気が済まないのかい?」 ◆◇◆◇◆ 「やめろぉ!」 怒声と共に、モンタギューが少女の目の前から吹っ飛んで消えた。見ると、医務室で昏倒していた筈の剣士が、息を荒げながら横で腕を突きだしていた。どうやら思いっきりぶん殴ったらしい。 「…」 走ってきた勢いも乗せていたので、モンタギューは完全にのびているようだった。体力勝負はからきしな男なのである。にやついたいつもの趣味の悪い笑みのまま、妙な体制で壁にへばりついて気を失ってしまっている。 「こいつを、泣かすな。…馬鹿やろ」 それだけ言って、剣士は壁にもたれかかって黙った。見上げると、かなり高い位置から心配そうな瞳で見下ろして来ていたのだけど。 「なんか嫌なこと言われたんだろ」 「…別に…」 思った通りで。表れた剣士はいつもどおり、特に何も考えていないようだった。何事にもとらわれず、その時の感情のままに、己の信念に基づき動く。そんなところ、凄く、似ている。だから私は―― 「なら何で泣いてるんだよ」 「泣いてなんか…いませんから…」 ぼす、と。少女は剣士のお腹に頭を当てて答えた。泣いてなんかいない事を照明するために、涙を見せないために。 「はあああ〜!?は、博士〜」 と、ようやくチェスの駒を仕舞い終えて駆けつけたエルノアの間の抜けた声が廊下に響いた。 それがあまりに滑稽で、二人はどちらともなく笑顔になった。ばたばたと、文字通り目を回しているモンタギューに、エルノアがどこからか取り出した医療セットで応急処置をし始めるのを遠目で見やる。打撲傷に風邪薬というのはさすがに違うのではないかと思うのだが。 「うあ、まずいな。民間人殴ってしまった。免許剥奪かな…」 剣士がようやく己のしたことがどーゆー意味をもつのか思い当たったらしく、突如あわてふためきだした。 初めきょとんとそれを見ていた少女は、次に呆れたように半眼で狼狽する彼を見上げていたのだが、 ごうっ!! 通路奥から響いたその衝撃音に、それらは全て中断を余儀なくされた。音は連続して4回響き、更に凄まじい振動。通路、折れて見えないその先から、何か小さなものが飛び出してきて壁に半ば衝突して止まった。転がってきたのは藍色のマントをしていた。手にしていたシグ・ザウエルがからからと音を立てて横に落ちた。 |
├小説:世界が二人を分つまで(三)(8〜1... 堂本 江角 2001/06/06 04:12:13 ツリーへ
Re: 小説:世界が二人を分つまで(完成版)(全14章) | 返事を書く
ノートメニュー |
堂本 江角 <mgnkpfkgxo> 2001/06/06 04:12:13 | |
小説:世界が二人を分つまで(三)(8〜10章) ----------------- 8. シータは舌打ちした。慎重を期すあまり距離を取りすぎたため、いつのまにか男を見失っていたのだ。今日何度目かの溜息をつく。 (どうするかな…) まあ、どうするも何もない。そもそも何故、自分はあの不気味なヒューキャストをつけているのか。問われたら、返答に窮してしまうだろう。 ふと脳裏に大会前、少女と交わした約束が蘇えった。彼女は確かこう言っていた。もしシータが優勝し、賞品を手に入れることになったら、自分の代わりにそれを破壊してくれ、と。 (あれにはどういう意味があるのかな…ん?) なんともなしに下方へ向いていた視界。足下。そこでは丁度、トコトコと一匹の動物が、通りすぎていく所だった。 「…?」 猫だった。すらりと細身の綺麗な黒猫で、飼い猫である証だろう、目立つ赤い、大きな首輪をしている。もっとも、パイオニアに野良猫がいる筈ないので意味はあまりないが。 首輪には、奇妙な文様が施されているようだった。住所で無いことだけは確かである。 「…君も迷子かい?」 現れた場違いな住人に、シータは半分無意識に、普段人前では決して見せない年相応の屈託のない笑顔を浮かべた。握りしめていたザウエルをホルスターに戻してしゃがみ込むと、手を差し出しつつ尋ねてみる。 「…」 が、猫はやはり猫でしかなくて。彼女(シータは何故か彼女と直感していた)はあたかも「私、貴方に関心ないんです」といった様子で。 勿論、餌一つ持ち合わせていない、気の利かない少女の事などどうでもいいのだろう。ちらと一度彼女を見上げたけどそれだけで、そのままとことこ先へ行ってしまう。 「…つれない奴だ」 立場をなくした自分の手を、シータは暫く苦笑して見やった。と―― (ん…?) 立ち上がり、シータは気づいた。そのまま行ってしまったかに見えたその猫は、しかしそうではなくて。やや前方、数メートル先。そこで完全に立ち止まり座り込んでいた。じっとこちらを見つめている。 まるで、こちらへ何かを訴えかけてきているようだった。少なくともシータはそう感じた。黄金色の両目を瞬きもせず、視線を一直線に自分に向ける黒猫。見返す自分。まさか、初めてのお見合いの相手が猫になるとは思わなかった。 試しにシータは一歩前に出てみた。するとどうだろう。猫はくるりときびすを返し、同じ距離だけ前進すると、また振り返って直立不動の体制で座り込むのだ。もはや間違いなかった。 「ついて来いって事かい?」 そうだよ。猫は、確かにそういった。意志溢れた瞳で。 ◆◇◆◇◆ 「…驚いたな。ビンゴって奴だ」 シータは柱の陰から慎重に頭だけ出し、それを確認した。すなわち、厳重そうな保管庫らしき部屋の前で倒れている衛視二人の姿を。 (しかし、ビンゴしすぎだなこれは。なあ、猫さん) 二人はただ倒れているのではなくて、永遠に倒れてしまっているようだった。何しろ二人とも、胴体が半ば生き別れになりかけている。医者を飛び越えて家族を呼ぶ必要があるだろう。 「…腕試しとはよくいったもの、だね」小声で下に話しかけるが、黒猫は死体自体には関心がないのか、ただじっと、今は薄く開いている重たい鉄扉向こうをしきりに気にしている様子だ。 シータにも解っていた。確かにそこに、まだ気配はあった。あの嫌な、全身が総毛立つような不気味なそれが。 (…そもそもこれは本当に「人」の気配なのか?) 気配の元があのヒューキャストであることは承知しているものの、シータはどうも納得がいかない。あんな異常な空気を、一個の個体が発していい筈がない。あれではまるで―― シータは決断しかねていた。さてはて。これは、そもそも自分一人でどうにかなる程度の事件なのだろうか?大抵はどうにかする自信があったが、実力を過信して死ぬというのは、シータの最も嫌うところである。ここは戻るか。いや―― シータは嘆息した。下に目をやる。 「…なあ猫君。年長者の言う事は聞いておいた方がいいと思うんだが」 知るもんか、馬鹿。離せ。 少なくとも下方の黒猫は完全に突撃姿勢だった。シータが空いた手でつまんでいなければとっくにそうしていただろう。唸り声一つ挙げないまでも(それはそれで不自然ではあるのだが、今はありがたい)、今や闘志むきだしといった感じで。 何故かはわからない。あたりに漂う大量の血の臭いをかいで、興奮しているのだろうか? じたばたじたばた。 「…」 (…解った。お互い歩み寄ろう。取りあえず、通信だけはしとくのがベストかな。犯人は出来るだけ追跡する。見失ったら即撤退。無理はしない。オーケー?) 猫は答える代わりに左手の甲を強烈にひっかいてくれた。うるさい。離せ、馬鹿。あほ、すかたん。若年寄。ちび―― (やれやれ) それを無理矢理了解の意志と判断することにして、シータはシグ・ザウエルを握り直した。直後、生じた強烈な殺気が、彼女達に横からいきなり襲いかかった。 ◆◇◆◇◆ ごっ 刃は、非常識にも、壁向こうから遮蔽物全てを紙屑のように引き裂いてシータに迫って来た。 大昔にあった、何かの映画の一シーンで、海面から背ビレだけ覗かせて高速でせまってくる怪物、というのがあったけれど、まさにそれの陸上変形版、といった感じだ。 「…!」 が、彼女は素早く頭を屈め、寸前でそれをかわしていた。しかし帽子だけが間に合わず、すぱっと空中で両断されるのが気配で解る。 「…無理はしないと…」 無表情で毒づくと、シータはしゃがみこんだ姿勢のまま、素早く左手を引き裂かれた壁に押し当た。そのまま凍結の印を結ぶ。 「言ったろうに」 刹那、「ばきっ」と、乾いた音と共に、彼女の掌を中心にして横壁半径数メートルが文字通り完全に凍り着いた。続いてひょいと猫をつかみ直すと、シータはその場から更に後ろに向かって大きく跳躍する。 ざうっ! 間をおかず氷が砕け、繰り出された緑色の奇跡が彼女等が飛び退いた場所を何度か通り過ぎていった。どうあっても三枚に下ろすつもりらしい。どかっと、温度変化による金属疲労や斬撃などで殆ど崩壊しかけていた廊下左側の壁が、内側から蹴り破られ完全に倒壊し、ヒューキャストの冷たい三つの瞳がのそりと姿を現す。 「問答無用って訳かい」 邪魔なので左手の動物を後ろに放ると、シータも問答無用で引き金を引いた。 9. 「シータ!」 少女が叫ぶと、それで吹っ飛んできたフォニュエールはびくっと体をけいれんさせ、顔を上げた。 気絶していたのは一瞬だったらしい。その状態にもかかわらず、顔中煤だらけであっても、当のシータは冷静そのものだった。視線だけで、こちらの姿を確認してくる。 「やあ」 相変わらず無表情で答えたシータの左足は、しかしふくらはぎ半ばから先が黒く焼けこげていて、しかも折れているように見えた。何か言おうと少女が口を開きかけるのとほぼ同時、壁向こうからばららと緑の火線が走り、倒れたままの彼女に向かって叩き込まれる。 「!」 が、それも転がって寸前で避けたシータは、そのまま落としたシグ・ザウエルをひっつかむと更に回転し、奥に向かって正確に3度連射した。がんがんがんと簡素な音が通路向こうに叩きこまれる。同時に薬莢がオートマティックの真上へ次々と排出され、高い金属音を響かせて床に転がる。 確認せずそのまま横へ転がりきると、シータは全身を使い床をもう一度蹴った。少女達とは反対方向へ。次の瞬間、轟音と共にもう一度放たれた巨大なフォトンの粒子が、今し方シータがいた場所、つまりT字路の中心に叩き込まれて大爆発を起こす。 どごっ 突如、爆風の中延びてきた長い棒状のものが、かろうじて第二撃を避けたシータに横凪で襲いかかった。今度こそ直撃し、小柄なフォニュエールの身体が斜めに吹き飛ぶ。そのまま通路に思い切り叩き付けられ、シータはそのまま動かなくなった。 「…花火ですか?」 爆発と、失神(だと思いたい)したシータを交互に、相変わらずマイペースなエルノアが間の抜けた指摘をしたが、さすがに誰も相手にしている暇はなかった。爆発が収まり、もうもうと煙が立ち上る中、やがて「ぬっ」と、先程から強烈なフォトンの雨を降らしてきていた通路から、見覚えある特徴的な紫の姿が姿を見せたからだ。 ◆◇◆◇◆ 「貴様等か…縁があるな、つくづく」 キリークはこれまで同様、右手にソウルイーターを装備していた。加えて今回は更に左手にも、別の武器を装備している。 それは、巨大でいびつな重火器に見えた。いや実際銃だろう。先程から凶悪なフォトンの雨を降らせていたのはまず間違いなくあれだろうし。先端がいくつか棒状に分かれた奇妙なライン。奇妙なその銃を、ヒューキャストは片手で軽々と抱えている。 『天空より降り来たれ…』 少女はそれには答えなかった。既に最大規模の雷撃テクニックを唱和している。 『裁きの雷!』 詠唱が終わると同時に、少女の周囲に輝く白い力場が発生し、突き出した両腕を中心に、数万本の光の螺旋が召還された。 一本一本が抜群の指向性をもつ、その、無数の雷電光は、瞬時に少女が頭の中描いた軌道を正確に辿り、無防備にも姿を見せたヒューキャストの辺りへと高速で襲いかかった。 「ふん」 が、キリークはすっと体を後退させ、なんなくそれを避けた。電撃は空しく後方の壁に突き刺さり、周囲を一通り荒れ狂った後霧散して消える。 それで倒せるとは思っていなかったらしい。少女はその隙にぶんっと腕を横に降るうと、キリーク同様、死神の鎌を召還した。ぶぅんっと、延ばした掌先の空間が暗黒に染まり、避け、突如そこに死神をモチーフにした凶悪な曲線を描く鎌が出現する。彼女が掴むや否やそれは発動を開始した。先端より膨大な量のフォトンが放出し、刃となって凝固する。 ◆◇◆◇◆ 全く同一の武器を構え、少女とキリークは、数メートル開けて互いに睨み合っていた。 「……何のご用でしょう……?」 傍目のんびりといつもの調子で、少女が尋ねる。が、キリークは答えず、黙ったままだった。少女も暫く待ち続けるが返答はない。 「……大会参加でしたら、登録受付はもう終了しま」 「違う」 む〜と上を向き、やおら唸ると指を押っ立て呟きかけた少女の頭を、剣士の彼は呆れ顔でつっこみ叩いた。因みにその後方では、ようやく事態の深刻さを了解したらしいエルノアが、未だ気絶中のモンタギューの足を引っ張り撤退を始めている。 剣士は眉をひそめた。一番遠くで倒れたままのシータは、まだぴくりともしない。遠目でもその怪我が決して浅くないのが知れた。 幾ら相手がキリークとは言え、あのフォニュエールがここまで一方的にやられるというのは、彼にとって信じがたい事である。恐らくこの一方的な差を生み出した原因は、ヒューキャストが手にしているもう一つの武器のせいだろう。何故かどこかで見た記憶があるような、ないような… 「…悪いが今は貴様等に構っている暇はない」 しかしヒューキャストの答えは簡素だった。ぼそりとそれだけ言うと、左手に装備した銃を構える。 「!」 少女の顔に緊張が走った。小さな両手が空中に最大規模のシールドの印を結ぶ。が、キリークはそれをそのままこちらに向けてきたりはしなかった。持ち上げた銃身を通路の壁面へ向け、引き金を引く。 ごうっと、再度爆発が起こり、燃焼とがらがら壁材が崩れる音とが辺りを埋め尽くし、少女達が視界を取り戻した時には、ヒューキャストの姿はどこにもなかった。壁に巨大な穴だけ残して。 「くそっ」 「よしたまえ」 慌てて後を追おうとした剣士を、背後からモンタギューが制した。どうやら回復したらしい。 「アレを持っている限り、彼には誰も勝てない。無駄死にするのは馬鹿のすることさ」 「んだと?」 めまいがした。光が、溢れて、その後、何も残らない。ただ、赤い切り口を残して左腕だけが鮮明に。 赤。赤。光。魔法陣。絶叫。無慈悲な殺戮。全滅。赤。たった一人。復讐。あの人の顔。泣いている私。死神。光。武器。無限に続く墓。神様に見放された種族。それを更に否定する私。愚かな私。 それでも寂しくて、辛くて、一人でいると泣き出しそうで。また、「側にいてくれる誰か」を探す私。 あの人にそっくりな剣士。不思議な臭いのする魔法使い。ノクト。寡黙で、私と似ているようで、心根で決定的に違う、強い女の子。闘う事でしか自分を表現できない不器用な悲しい人。純粋すぎるために他全てを見放し、達観を決め込む人。 どうして願いは叶わないのだろう。私は、ただ― ただ、もう誰も不安にならず、闇に怯えることなく、幸せに暮らせる未来を― 白い光。それは空から。何本も、何本も。突き刺ささり、弾け、全てを飲み込み、何もかも奪う。 またあれを見るの?また、失うの?何もかも全て… 「キリークさん…それを…使っては…いけません…」 それを使ったら、私は… 「おい!」 ふいに、少女が倒れた。糸が切れたマリオネットのように。慌てて受け止めた剣士は、そこで初めて少女が酷い熱を帯びている事に気づいた。とても、今まで立っていたのが信じられないくらいの高熱。 「お前…!」 自分を心配する声に、懐かしい声が重なる。もう二度と、思い出すことでしか聞けなくなった声。優しい声。 『仕方ないな。俺が君を守ってやるよ。礼はいらない。え?何故かって?』 ずっと横で、世間知らずだった自分の斜め上で、聞き続けられると信じていた声。 『当たり前だろ。この力は―これは俺の思いこみなんだが―男の力ってのは、女を守る為に神様がくれたものだからさ。それ以外の意味なんてきっとない。そう思ってる。だから男は常に女性を守らなくてはならない。ついでに子供も守る。それをしないで逆に女を傷つけるような奴は、俺に言わせりゃ屑以下だ。だから、その、俺は―』 力が欲しかった。全てを守れる強い力。手に入れたその先は、取りあえず考えないことにして。だけど最近思う。本当にこの願いは叶うのかな、と。だって、倒しても、倒しても…どれだけ同じ事を繰り返しても、人は変わらない。変わってくれない。見たくない悪夢は別の形で必ず再び私の前に現れる。どうして― (どうして…) 『俺は、君を守るぞ。だから最後まで一緒だ』 私は多分、あの人が凄く好きだったのだと思う。 それに気づいたのはずっと後だったのだけど。 10. 「事態は深刻を極める。慎重に事を運ばねば被害は拡大する一方だ…」 「そんな事は解っている!集計では、既にラグオルには千人を超える市民が移住を完了しているのだ!彼等を見捨てる訳にはいかん!」 「しかしですな、このクーデターがラグオル移住作業完了前に起こったのは不幸中の幸いとも言えませんか。最悪の場合…」 「最悪の場合、なんだと言うんだ!あそこには、私の家族も…」 既に用意されていたらしいシナリオは、キリークの帰還と共に、即座に実行された。突如、ラグオル本土との通信の全てが無効化され、ゲートの全てが遮断される。 同時にブラックペッパーの残党と名乗る男、ゴスペルの声明がパイオニア及びラグオル全土に向け発信された。 曰く、我々は惑星到達当時より、ことごとく市民に対して必要な情報を隠蔽し、一つとして公開せず、全滅の危機にあったにもかかわらず、それら全てを隠した政府に対して当然の対応をするものである。すなわち、現政府の完全な凍結―及び、軍部の解体―これはクーデターではない―市民をないがしろにした政府への当然の権利として我々は― 以下省略。おおむね、極めて武装決起らしい、基本に忠実な内容であった事だけは確かだ。ともかく、彼等はラグオルに移住し始めていた市民全てを人質に取って立てこもった。抵抗は無駄だ。武器を捨てろ。返答は速やかに行え。従わないのならば― 人質の命はないと思え―これは政府にのみ極秘通信で送られた―どこが市民の味方だ― 政府は当初、これを鼻で笑った。しかし、モンタギューが会議室の扉を叩いて、問題にもされていなかった、武術大会でクーデター側に奪われた例の武器の解説を淡々と行った時点で笑い声は凍り付くことになった。 「アレは例のダークファルスの遺伝子情報を元に作られたものでしてね。あの神様の特殊なフォトンを―神様にもフォトン情報があったことは歴史的な大発見ですねぇ。あ、失礼―フォトンを圧縮して打ち出す武器なのですが―それはあくまで余興であって」 一呼吸。 「えー、とあるコマンドを天罰に―ああ、武器の名前です。我ながらナイスなネーミングだと思ってます―天罰に与えますと、それはある特殊な電磁波を天空に向かって投げます。投げられた磁場は地上数千メートル位置で4つに別れ凝縮し、それぞれがある一つの物質に変化し固定します。えー、集約レンズというやつです」 「これは数キロに渡って広がり、太陽の光を集め、一点に向かって放射る能力を有しています。その熱量は個々の広がったサイズに比例して増大します。まあ、数万度とか、数億度とか、とにかくこの世のあらゆる固体が蒸発できる温度まで」 「発動が完了する時間は武器の方でタイマー計算されて、完了とともに第一安全装置は自動的に解除され、それを使用者に伝えます。また、使用者はその段階においてもレンズの角度を自由に設定することができます―ああ、レンズは発動の直前まで光を抵抗0で透過する空気となんら変わらぬ状態で保持されるので発言の直前までまったく無害です―発射すると―」 「ポイントされた地点の物質は全て分解されて崩れ落ちます。直径は最大で200メートル。因みに余波としての熱量は発生しません。特殊な神様のフォトンは電磁スクリーンを形成し―電磁スクリーンって何かわかりますか?まあいいや―ポイントされた場所の空間とそれ以外の場所の境でシールドを形成し、使用者が巻き込まれるのを防ぎます。要するに、指定地点より一センチでもはずれた地点に居る人物は傷一つ追いません。これがこの武器の最も優れている部分だと僕は自負しております。被害者はおおむね即死するので、実際に使用者がその数億度とかの熱さを実感することはないかと思われます。もっとも、膨大な光量はそのままなので失明はするかもしれません。サングラス必須ですね―以上が―」 「クーデター側に奪われた武器の概要です。これが説明書」 ぽいとそれを静まりかえった室内、円卓の上に放ると、博士はいつもとかわりない調子で鼻歌と共に退出した。 ◇◆◇◆◇◆◇ 「何を考えているんだ?」 「…」 少女は医務室のベッドの上、上半身だけ起きあがった姿勢で、いつもの放心したような視線を前方にただ向けじっとしている。俺はそれを見ていた。 「私…」 「いかせないぞ」 俺は遮った。これだけは譲れない。例え彼女になんと言われようとも。嫌われたって構うもんか。殺されても絶対に止めてやる。 「あんたは寝てろ。あの馬鹿どもは俺が止めて来てやる」 「あはは…」 少女は笑った。力ない笑みだった。俺はこんな悲しい笑い声を聞いた事がない。 「貴方には無理です…」断言してくる。 「それに怪我してますし」 不可抗力です。 「そうかも知れない。だけど、俺は―」 「言うだけなら誰でもできます…」 「なんでいつもいつも、君は俺を信じてくれないんだよ!」 時々、泣き叫びたくなる。この娘は、いつも決定的なところで他人を、俺やあいつを拒絶していた。 何故かは解らない。話してくれないから。彼女はいつも一人で、そして最悪な事に、これまでそれで問題なく全てを為してきてしまっている。最後の戦いの時もそうだった。結局の所、俺は何もしていない。確実に傷ついていく彼女の背中を、突っ立って見ていただけだ。ただ、後ろにいるだけで何も出来ない自分。情けない。俺は― 「俺は、俺は君の足手まといでしかないのか?あんたの背中を守ることは永遠にできないのか?いつになったら君は俺を―」 俺を見てくれるんだ―言葉を飲み込む。 惨めだった。あまりに情けなさすぎる。好きな女一人守れないどころか、あまつ保護されている自分が。溜まらなく、惨めだった。 最初、助けて貰った時からずっと思っていた。君と対等になりたい。今も思ってる。途中から余計な感情が混じってしまったけど。 俺は、君の側にいたいんだ。君に頼りにされたいんだ。頼りにして欲しいんだ。だけど。だけど…いつだって君は、俺を、最後の最後で常に拒絶する。 少女は立ち上がった。もう話は終わりと言うことらしかった。ベッドから降り立ち、ドアの前立ちふさがる自分を見上げる。 「…どいてください」 「嫌だ」 「…どいてください」 「嫌だ!」 じっと向かい合って、二人は見つめ合った。お互い譲らないかのように、視線は交錯したまま動かない。 「これは私の問題なんです…この事態を招いたのは私の不注意ですから…」 「俺は関係ないって言うのか?あんたの問題なら、それは同時に俺とあいつにとってもそうだ。仲間ってのはそういうものだろう?」 「…どいてください…」 「嫌だ!」 ばち。 衝撃が、身体に走った。向かい合う少女が笑っている。泣きそうな顔で笑っている。視界がかすむ。姿がだぶっていく。 「…なんでだよ…畜生…俺はただ…」 俺は、ただ、君を守りたいだけなのに。最後まで守っていたいだけなのに。 「ごめんなさい…」 少女は崩れ落ちた剣士を抱き留め、そっとベッドに降ろした。側に腰掛けると気を失って力無く横たわる青年を見下ろす。一度そっと顔を近づけて、やがて離すと、立ち上がる。 「ありがとうございます…でも、ごめんなさい…私も、貴方だけには死んで欲しくないんです…」 扉が閉まって、ぱたぱたと、小さな足音は闇の奥へと消えていく。 ◇◆◇◆◇◆◇ モンタギューは足を止めた。目の前。少し先で、見慣れたあどけない顔が自分を見ていたのを見つけ。 「やあ。何か言いたげだね?」 ぽりぽりと頭を掻きつつ、少年は微笑んで見せた。相変わらずの皮肉げな笑顔で。少女はそれには答えず、ただそこに棒のように突っ立っていた。小さなその手に鎌を持って。 「…」 モンタギューは目を細めた。細めただけだったが、その刹那の間に、次の瞬間、少女の身体と鎌の刃先は彼の喉元数ミリ手前にあった。じりっと、静かに、だが緊迫した時が流れる。 少年は笑顔で言った。「…それで正解だよ、シズ」 ◇◆◇◆◇◆◇ 一週間前と寸分違わず、少年と少女は再び薄闇の中向かい合っていた。 「…」 少女は鋭い眼差しで、少年の首先に鎌の先を添えていた。少年はそれを見ていた。笑って見下ろしていた。 「僕を殺せばいい。君は…もっと早くこうするべきだったんだ」 この状況下ですら、モンタギューの、少年の皮肉な笑顔は崩れなかった。じっと、自分の生命の揺らぎそのものの、今は己の命を天秤に掛けている死の切っ先を、静かに見つめてただじっと揺るがない。 「…」 「白状するよ。シズ。あの時、君を助けたのは実は気まぐれじゃない。君に救いの手を差しのべた本当の理由はね」 「…」 「君なら、僕を殺してくれると思ったからなんだ」 モンタギューは笑った。皮肉ないつものそれではない、酷く力無い笑みで。 見下ろす小柄な少女の瞳がかすかに揺れたような気がしたが、気のせいだろう。一度「殺す」と決めた時、彼女はそれに対して迷ったりしないのだから。 少年は歌うように、先を続けた。無表情で自分を見上げる、たった今しがた、自分に死の審判を下した少女に向かって。まるで親が娘に躾をするかのようにそっと。それでいて力強く、確かに。 「僕は狂ってるんだよ。多分ずっと前から、既に。僕はね、シズ―」 「…」 「僕は、君がこうして僕に剣を向ける日を、ずっと待っていたんだ」 少女は反応しなかった。ぼんやりと、いつもの、ともすれば軽薄に映る瞳を、嫌にまっすぐこちらに返すだけである。 「シズ…?」 少女が、鎌を降ろしていた。モンタギューが怪訝そうに、降ろされてしまった刃を、名残惜しそうに見送る。訝る彼に、少女は淡々と、ようやく話し始めた。 「…私は、貴方に感謝しています…」 「は?」 「貴方は、私を助けてくださいました…死にかけていた私の命を、救ってくれました…生きていても良いと、言ってくださいました…今でも、とても、とても感謝しています…私は」 少女は一度言葉を止めた。じっと少年を見上げ、そして続ける。 「貴方を悪い人だと思った事はありません…」 「今度は昔話かい?」 やれやれと首を振って空を仰いだ少年を、少女は長い間黙って じっと見続けた。が唐突に半眼になり、 「…ですけど、それはそれ。私は、やっぱり貴方を好きになれそうもありません…ていうかキライ。激しく嫌い。だいっきらいです」 「うわきっぱりと」 「あーもう、全部嫌い。凄く嫌い。嫌いです。なんでこんな嫌な人がこの世に存在するのでしょう。これって犯罪じゃないですか殆ど。もう全力で存在を否定したいというか、私の前からいなくなれー馬鹿、というですか。ダークファルス様の方がまだしも可愛げあふれていたというか腕のリングが何げにチャーミングでしたし」 少女はいきなり空いた右手をぶんぶか振り始めた。演説するかのように上下に移動させつつ、断言してくる。 「…おいおい(汗)」 がくと、モンタギューは頭を落とし、そのまま両手から膝付きで崩れ落ちた。落ち込んだ様子で床に「の」の字を書く少年に満足したのか、少女は再びいつもの無表情に戻ると下で砕け散っている彼を意に介せず、淡々と独白を再会する。 「私は、貴方が嫌いです。勝手で自由な、貴方が嫌い…世界で一番、大嫌いです。ですから…」 「貴方の喜ぶ事なんて、一つたりともしてあげないの」 「痛いなぁ」 君みたいな可愛い子に面と向かってそこまで言われると、辛いよ。 「…僕の負けかな、こりゃ」 にこにこと、もう居なくなった小さな背中に向かって、モンタギューは呟く。 少年は頭を掻いて、再び歩き出した。研究室へと。もう何も問題ない。事はもう終わったのだから。 |
├小説:世界が二人を分つまで(四)(11〜... 堂本 江角 2001/06/06 04:13:40 ツリーへ
Re: 小説:世界が二人を分つまで(完成版)(全14章) | 返事を書く
ノートメニュー |
堂本 江角 <mgnkpfkgxo> 2001/06/06 04:13:40 | |
小説:世界が二人を分つまで(四)(11〜14章) -------------------- 11. 「…何だ、貴様か」 齢50そこそこ。細く冷たい眼差しのその男は、背後で自動扉の開く音がしたので、目の前に鎮座する最強の戦術兵器から視線を背後に移して、そこに見慣れたヒューキャストの姿を確認したので、興味を失い再び前方のそれにもどした。 ゴスペル・ロドニエフ・カウマン。数週間前壊滅してしまったある組織のNo2だった男。既に消滅した組織での地位が上から何番目だったかがどれ程意味のあるものかは知らないが―取りあえず、その順位に比例して威厳のようなものは微かに見え隠れしてはいる。が、やはりそんなものは今更あったところで大した意味はない。何も知らない一般人から見れば、やけに偉そうな禿頭のおっさん、で、終わりだろう。 「…政府は何と言っている?」 「ふん。まだ返答がないな。どうせしつこく無駄な会議でも繰り広げているのだろうよ。それとも夜逃げの準備かな?どちらにせよ―」 ラグオル市民と、「これ」が我らの手にある限り、事態が我らの不利に働く要因はない―男はそう締めくくった。 「キリーク、残念ながら君の力を借りる事は当分なさそうだよ。勿論クーデター成功の暁にはそれなりの―」 もう一度背後に目をやると、既にヒューキャストの姿はなかった。かつかつと、遠ざかる足音だけが聞こえる。 「…まったく。何を考えてるのかわからん男だ」 まあ、奴のことなどどうでもいい。これでようやく悲願が叶うのだ。些細な事にとらわれている暇はない。これから忙しくなる― あの男もこの武器も、それを叶える手段の一つにすぎない。俺はいずれラグオルを、いや母星を含めた世界の全てを制する。俺以外の全ての人間を、思うままに支配してやる。― 男は再び物思いに耽った。夢を見ていた。世界をここで、指先一つで思うままに動かす壮大な夢を。 ずどぉおおおおおおん! 「な、何だ?」 いきなり生じた破壊音に、ゴスペルは思わず椅子から転げ落ちた。 無論、夢は、夢でしかないのだけど。 ◇◆◇◆◇◆◇ 自分の中で、ある時から、絶えず破壊を訴えかける何かが潜んでいるのを、キリークは自覚していた。それは、常に強大な敵を欲してやまない自分のそれと目的が似ていた。だから彼は即座に「それ」を受け入れた。受け入れた闇は、自分の力を更に増してくれた。心地よい。吐き気がするほど。同化の際、脳内システムの一部が焼き切れ、大切だった筈の何かが沢山失われていたのだが、キリークがそれを自覚することはない。いや、できない。彼は既に、静かにだが確実に、発狂していた。 ずっと退屈していた。どいつもこいつもゴミのように無力だった。自分に敵わなかった。弱かった。それが我慢ならなかった。敵だ。敵が欲しい。圧倒的な強さで自分に剣を振り下ろしてくれる相手が。 「来たか…」 建物が爆発と共に振動する。同時にヒューキャストは腰をあげ、歩き出した。喜びで、肩が震えていた。唯一自分を倒せる相手。それが、やってきたのだ。嬉しくて溜まらなかった。少女は、今度こそ全力で向かってくる筈だ。躊躇せず。神を屠ったその力で。これ以上の喜びがあるものか― ◇◆◇◆◇◆◇ 「何だ!今の振動は!」 苛ただしげに、数人の部下が詰める制御室へと入るなり怒鳴ったゴスペルが見たのは、慌ただしく機材の周りを右往左往する部下達だった。 彼等は口々に、「爆発が…」、「外壁に強力な衝撃破…」等と叫び返し、それぞれが拡大されたメインモニターの一つを指さす。 そこには、ゴスペル等が占拠して居座っているこの建物、中央コントロールタワーの壁面の一部が大写しされていた。シールドされた筈のそこに、真新しい大きな穴がぽっかりと空いている。粉々に散った外壁の破片がそこらに散乱しているのが見える。もうもうと煙が上がっていた。 「敵襲か?馬鹿な!いや、それはともかく、外面はシールドされている筈だろう!」 モニターを凝視して、ゴスペルは唸った。おたおたしつつも部下が状況を報告してくる。 つい先程、長距離より高速でコントロールタワーに向かってやや放射線気味に、直径150ミリ程の弾丸が飛来してきました。どうやら何者かが超長距離より砲撃を行ったようです。現在位置を特定中。 また、タワーのシールドは確かに張られておりました。にもかかわらず、向かってきた弾は無抵抗でそれを通過し、壁に激突して大穴開けました。以上。 と、いうことらしい。そんな馬鹿な。 「んな非常識な事があってたまるか!コントロールタワーのシールドは戦車クラスのフォトン弾にも耐える力があるんだぞ!それを貫通もせず抵抗0で通過だと!?」 「ゴスペル様、あ、あれを…!」 「今度は何だ!」 部下が、再び別のモニターを示していた。ヒステリックにわめき返し、ゴスペルもそちらに視線を移す。それはタワー前方を遠距離で写したものだったのだが― タワー正面の、やや急になった丘の上。そこには、年の頃十代半ば程の少女がちょこんと立っていた。肩に黒猫とバズーカを担いで。 ◇◆◇◆◇◆◇ 「…」 「なんだ、あれは」 「はあ。猫と女の子に見えます」 「そんな事はわかっとるわ!じゃあ何か?あのちっちゃいのが担いでる火気がコントロールタワーのシールドされた壁面を破壊したと言うのか?馬鹿も休み休み言え!」 「し、しかし現に…」 「ゴスペル様、外部より通信回線が開いておりますが…」 「ええい、繋げ!」 ほとんどやけになってゴスペルが怒鳴ると、びんと、正面の巨大スクリーンに映像が投影される。 「…こんにちは…」 映像の中。そこに大写しされた、バズーカと猫を担いだ少女は、ゆっくりとを肩からバズーカを降ろすと、帽子を取って深々とお辞儀をした。急に生じた地震に猫がびっくりしてわたわた小さな領域で右往左往するのが場違いにユーモラスである。 「…なんだ、貴様は」 いらいらしながらゴスペルが問いただすと、少女は始めぱちくりと大きな瞳を瞬かせ、しばらくの間上を向いて無言で悩んでいたが、やがて思いついたのかぽむと両手を叩くと嫌に軽薄な無表情でこちらを見据え、指をたてつつ、 「通りすがりの正義の味方…」 「ふざけるな!こんな事をしてただで済むと思ってるのだろうな!?貴様、政府の回し者か?言って置くがこちらには1000人を数える人質がいるんだぞ!今すぐ…」 ごう!ずどおおおおん! 「…」 「だ、第三ブロックに火災発生…」 ゴスペルは黙った。呆けたように部下が、被害状況を報告する。 「これは最後通告です…」 先端から白煙上げるバズーカを再び肩からよいしょと降ろすと、少女は淡々と続けた。嫌に穏やかで礼儀正しい娘であるが、目が笑っていない。 「今すぐ、武器を捨てて投降してください…従わない場合、こちらも相応の処置を執らせて頂きます…」 「…ふ…く、く、くくくくくく」 ゴスペルは少女の正気を疑った。呆然とモニターに大写しされた少女の最後通牒を立ちつくし聞いていたが、やがてその身体が震え始め、次にさもおかしいとばかりに笑い出す。 「降伏だと…?」 「はあ、そーです降伏…意味、わかりませんか?ええと、降伏というのは…」 モニターの前で少女がびしりと止まった。また上を向き、次に肩の猫をみて、更に横に視線を送る。 「抵抗をやめておとなしくすることです」 「…抵抗をやめておとなしくすることで」 「誰が語彙を聞いた!ていうか説得に使う言葉の意味くらいしっとけ!」 「はあ…そうですね」 間に耐えられなくなったゴスペルが溜まらず少女の独白を中断させた。怒りで頭の先まで真っ赤にしつつ、 「それはこちらの台詞だ馬鹿め!いいか、今すぐその、妙ちきりんな武装を解除して投降しろ!さもなくば人質の一部を今すぐ焼却してやる!これは決して脅しではな…」 ひゅごっ…ずっっっっっどおおおおおん! 「…降伏してください…」 三度目の激震の後、少女はバズーカを構えたまま、やはり淡々とそう繰り返した。 12. 「…天罰を持ってこい」 部下がぎょっと、ぼそりと告げたゴスペルを凝視した。が彼が繰り返すと慌てて一人が制御室より退室し、すぐに両手にそれを抱えて戻ってくる。 「小娘…貴様はワシを怒らせた。覚悟はいいだろうな?貴様の無謀な挑発行為により、今より数百人の人命が失われるのだ…」 モニターの中で、少女は軽薄な瞳で無言でこちらを見ていた。肩の黒猫が欠伸をする。ゴスペルは今度こそぶち切れた。 「後悔するなよ…」 ゴスペルは天罰を抱えた部下から奪い取ると、安全装置をはずした。ぶいんと宙に投影されたパネルを操り、設定してあった地図を呼び出し、つい最近建設されたばかりの居住区のドーム、その一つへとロックオンする。 「ゴスペルさん」 モニター向こうで少女が何か言ったが、ゴスペルはもう聞く耳持たなかった。その野太い指が、最終兵器の引き金を引いた。 要するにその武器は、大昔のSF映画などで「ソーラレイ」と呼ばれたものであると言えるかもしれない。そういったものを、可能な限り扱いやすく、コンパクトに纏めた超兵器。それが天罰という武器の真の能力である。 発動と同時に成層圏まで飛ばされ、そこで物質化された磁界は独自の化学反応を起こし、瞬間的に巨大な凸レンズを形成する。特殊フォトンでコーティングされ、数秒だが超高熱にも耐えうる強度を持つ直径数キロに及ぶその巨大レンズは、手早く太陽熱を集め、設定された地点の数百メートル上空に焦点を合わせる。更にそこで別に電磁スクリーンが焦点周り半径数十メートルの細い筒状で展開され、集約された太陽光はよりまとめられて柱状となって地上に降り注ぐ。 圧倒的な熱量のそれは、地上のあらゆる物質を一瞬で溶かし、葬る。最早武器と言うより立派な戦略兵器であった。 発動直後、それらのプロセスを一瞬で完了した神の雷は、構築の際生み出しされた熱で周りに広がっていた筋状の雲を一瞬で消し飛ばすと、居住ドームの一つの真ん中に突き刺さった。 圧倒的な光量がモニターの全てを真っ白に変える。部下達から悲鳴が飛んだ。 「くははははははははははあはははあははははは!!」 ゴスペルは目を押さえながら、溢れんばかりの光の中、狂ったように笑い声をあげていた。 これこそ力だった。そう、圧倒的な力。 破壊しろ。俺を馬鹿にする奴全てを破壊するんだ!政府の犬ども、新たな神たる我を祝福せよ。そう、神の力、その欠片を手にした我こそが、新たな世界の支配者、王なのだ。王たる我に従わぬ者、抵抗する者、そのような輩は全て滅ぼすのみ。破壊しろ。破壊だ。壊せ壊せ壊せコワセ… コントロールルームにある多数の映像モニタの一つ。先程まで二百人からの民間人が詰めていたドームの外観を写していたそれ。無論見張りをしている部下もいくらかいたが、そんなものは些末な問題に過ぎない。 数秒後。たった数秒の間天空より照射された光の柱が収まると、そこに確かにあった筈の半球状の建物は、最早破片一つ残さず完全に消滅していた。 代わりに、まるで業者が整地したかのように平らな、むき出しになった地面が映った。中心になにやらぽっかり巨大な穴が穿たれていて、ぐつぐつとできたてのマグマが赤黒い光を発している。 「居住区ブロック03ドーム、完全に消滅致しました…!」 「くくくくくうくはあはあははははは!!」 「素晴らしい…まさに天罰。ふさわしい名だ!」 ゴスペルはなおもげらげら長く笑い続けていたが、やがて飽きたのか、次ににやにや中央モニターへと視線を戻した。 少女がどのような顔でそれを確認したのか見てやろう。そう思ったのだろう。 「どうかね、自分のした事の結果を視認した感…」 ゴスペルは言葉を失った。 風がそこまで届いたのか、少女の帽子はやや離れた場所に落ちていた。それも構わず、モニター向こうの彼女は酷く悲しそうに、自分を確かに「見ていた」。映像スクリーンを挟んで、確かに。自分を。自分だけを。 少女は本当に、本当に、見ているこちらがどうしようもなくなるほど悲しげな顔で、じっとこちらを見ていた。少女は無言で泣いていた。 「…」 コントロールルームに居合わせた者全てが、その時不思議な感覚にとらわれた。それは、何か大切な者に、遂に、最後の最後。見放されてしまったような、そんな空虚。 自分を最後まで信じてくれた者をとうとう裏切ってしまったかのような、そんな取り返しのない後悔。 「…満足ですか…?」 「あ?」 「…そうですか…」 独り言だった。それはそうだろう。少女はその時もう、コントロールタワーには「人間の存在は0」と判断していたのだから。 「ノクト…映像ジャック解除」 黒猫がぴくりと顔を持ち上げ、これまでの間ずっとしていた「ある行為」を解除した。それはコントロールタワー周囲、各々の居住区、ドーム内に設置されていた全ての監視モニタのビデオ映像に割り込ませておいたとある機器のスイッチをオフにする、それだけの事である。それだけだったが、それが果たして何を意味するのか― 「な、何だ?これは…」 「どうした?」 呆然と中央スクリーンを凝視していたゴスペルが我に返って、呟いた部下の一人の方を見た。が、そいつが何に驚いたのか、ゴスペルも、確認せずともすぐ知るところとなった。 先程までそこここの各サブモニターに映し出されていた、監禁されて押し込められて震えていた筈の居住区の民間人の映像。それが、見張りの部下ごといきなり全て消失していたからだ。モニタは、がらんどうとなったドーム内を空しく映し出していた。いくつかのモニタ内に、中央にさんさんと輝く簡易の転送装置が見える。 「…システィ・R・S・ハザーウィンド…」 モニター向こうで少女が淡々と呟く。 「所属IDウォールタウン202454:パイオニア01。私は」 「私はパイオニア1最後の生き残りです…」 ゴスペルの目が見開かれた。何だと?今、こいつは何と言った? 「私はここで育ちました…ラグオルは私の庭です…ですから、貴方達パイオニア2の人達が知る筈もない、現存する転送装置の場所を多数記憶してたりします…ぶい…」 無表情のまま顔の前にVの字を形作った少女の姿。それを、今度こそ唖然と、コントロールルームの住人全員が見送る。 「…と言うわけで。実はとっくに皆さんパイオニア2に非難済みだったりします…ご苦労様でした…」 「おのれえええええ!」 ゴスペルは激高して叫ぶと、最早無茶苦茶な手つきで天罰を再度起動させた。迷わずコントロールタワー正面に立つ少女に焦点を絞ると、引き金を引く。天罰は光輝き― 「…」 「な、何故だ!?何故発動せん!?」 何も起こらなかった。ゴスペルは狂ったように何度も何度も引き金を引いたが、手にした最終兵器は低く明滅を繰り返すだけで。と、唐突に地図を表示していたモニタが切り替わり、巨大なデジタル時計のようなカウンターに切り替わった。曰く、 『 再起動 マデ あと: 29:23 Second. ごめんネ。ばいもんたぎゅ 』 「…ああ、因みにそれ、連射はできませんから…」 カタカタ、あまりにゆっくりとそれが秒を削る中、モニター向こうで少女が遠い目で淡々と解説するのが聞こえた。 「くそっ!」 「もしもし…そこの割と犯罪者な方々…」 ゴスペルが再びモニターに(憎々しげに)目を向けると、少女はバズーカを地面にぺいと投げ捨てている所だった。 「…判決…」 そのまま左手を真横に。刹那、突如延ばした先の空間が暗黒に染まり、絵本に出てくるかのような凶悪な曲線の大鎌が出現する。 それを手にして、少女は相変わらずの淡々とした表情と口調でこちらを見やり、すっと目を細め、 「…全員、死刑」 言って、鎌を地面に叩き付けた。 続けて肩の黒猫がぶるるっと一度身を震わせる。するとその両足に浮き上がった魔術文字が光り始め、続いて浮かび上がりはじめるや、それまで鮮明に彼女ら他を映し出していたスクリーンモニタの映像群が、突如としてじじっと明滅し、点滅を始める。 「それ…」 びしりと少女が右の指先をぶれるモニタに向かって延ばした。その口元が、見た全員ぞっとするように恐ろしげな、小悪魔的な笑みを浮かべている。が、やはり瞳はぜんぜん笑っていない。 「…その役立たず持って、首洗ってお待ちください…30分以内に必ず、そこへ、参ります…」 左手に死神の鎌、右肩に黒猫を乗せた少女のその台詞を最後に。 コントロールルーム。彼等の目の前。制御室全てのモニターが一斉に閉じ、その機能を永遠に停止した。 残り29分 13. 「殺せ!何としても止めろ!」 ゴスペルの命令下、残された彼の部下達はバリケードを作り、各々銃や剣を手に、ばらばらと侵入者に対して攻撃を開始していた。 進入してきたのはハンターズに名を連ねるとはいえ年端いかない少女一人きり。取るに足らない。その筈だった。 「散開しろ!足を…うわあああ!」 「そいつ」は、疾風のように彼等兵士に襲いかかった。恐ろしく正確に。そいつが手にしたモノを一閃する毎に、向かっていった兵士の悉くは瞬時に逆方向に吹き飛ばされた。銃器で自分に狙いを付ける兵士から順番に正確無比な雷撃が即座に放たれそれを薙ぎ倒す。 一対多数。で、多数側押され気味。そんな馬鹿な。民主主義はどこいった。数の有利はいずこへ?それは獣のように早く、そして、酷く無慈悲だった。 こちらの攻撃がある程度組織化し始めると、そいつは冷静に、冷徹に、戦術を突貫からゲリラ攻撃に変化させた。部屋の中心でぶんぶん鎌をふるっていた姿が突如としてかき消え、見えなくなる。 兵士は震えていた。震えて銃を撃ち続けていた。エネルギーパックが見る見るうちに減っていく。だが、構っていられない。とにかく撃ち続けなければ。一瞬でもそれをやめたらどうなるか。決まっている。あの悲鳴の列に、加わるだけだ。 頼みの照明はとっくの昔に全て破壊されていた。先程から闇の中、仲間の悲鳴だけが累々と続いている。それは恐らく倒された数と同じで。 「くそ、くそ!」 闇雲に、正面にむかって機関銃を連射していた兵士の頬に、ぴたりと何か冷たいものが突きつけられた。いつのまにか向かって右横に、「そいつ」がじっと佇んでいる。 紫色に輝く、夢に出てきそうな(勿論悪夢だ)、凶悪な鎌を手にした少女が、右手に持った白銀のナイフを自分の右頬に切っ先当て、黙って立っていた。 ゆっくりと視線を巡らし、状況を理解して、滝のように、冷たい汗が、兵士の首筋を流れ落ちた。手にした銃が滑り落ちる。 「…ゴスペルさん、どこですか…?」 「あああ…」 少女はごうっと、鎌で床を叩いた。小さなクレーターが生じたそこをやはり視線だけで追い、兵士はがくがくと足が揺らし、ただただあえいだ。 いつの間に、立っているのが彼と少女だけになったのだろう?先程から響き続けた悲鳴は、今はどこからも聞こえてこない。勿論援護の声も。うめき声すら。 「…どこですか…?」 震える男を冷たく見据え、少女がもう一度、聞く。 あと19分 ◇◆◇◆◇◆◇ 鎌を担ぎつつ、少女はぽてぽてと通路を前進していた。コントロールルームを通過し、更に奥へ。 罠の可能性があるので、転送機は全て無視して少女は非常階段をてくてく昇った。ノクトが肩の上でせかしたが、慌てずあくまで慎重に昇っていく。まあ、罠の心配はこの場合あまり必要ないのだけど。 分かれ道も多数あったが、その度にノクトが道を教えてくれた。彼女は極めて近距離であるならあの武器の臭いが(この場合ダークファルスのフォトンの波長)わかるので。 臭いは動いていたので。これを正確に辿れば間違いなくゴスペルに、あの男を追い続ける事ができる。少女はそれでも慎重に進んだ。この先が行き止まりであり、彼が逃げる先が最早どこにもない事を熟知していたとしても、まだ油断はしない。彼女にとって油断するというのはすなわち生存の放棄でしかないので。 昇りきって、たどり着いた先は、これまでで最も大きな部屋のようだった。展望台、といった所か。数本の柱が天井を支えていて、四方に空が見えた。部屋の中心に、無造作に天罰が放置されている。 「…?」 少女は小首を傾げた。ノクトが肩から飛び降りる。駆け出し掛けたその首筋を後ろからひょいとつまみあげると、少女はゆっくりとそれに歩み寄った。間違いないようだった。天井がみし、と音を立てる。 ずどん! 刃のような鋭さで、キリークがまっすぐ落ちてきた。ヒューキャストは少女とまったく同一の武器を手に、非常識にも天井を突き破って落下してきた。落ちきる前に手にしたそれを空中で振り下ろしてくる。 「単細胞…」 勿論少女はそんな事は想像していた訳で。猫を後ろに放り投げつつ、同時に自分も後方へと飛びすさり…はせず、ちょっと後ろに下がっただけで寸でで避けるとそのまま鎌を両手でぶうんと振り、落下して鎌を振り切った姿勢で無防備な男に横から薙いだ。 じゃっ が、どんな反射神経か、ヒューキャストの方も素早くそれを後方に飛んでかわした。かわした際鎌と鎌がぶつかり、紫の火花が散った。向かい合う。天罰がからからと床を滑っていき、やってきた入り口に近い柱の側で止まる。 「ククッ…手厳しいな」 ノクトが聞く耳持たず、雷精霊ユニットを召還した。突如空間に亀裂が走り、雷電をまき散らしながら巨大な鹿(のようなもの)が嘶きつつ出現する。鹿はキリークに向かって最大威力で電撃を叩き付けた。が、キリークはそれすらも更に後退し直撃を逃れている。鹿が消える。 「奇妙なマグを連れているのだな」 「…マグじゃありません。ノクターンです」 それまでずっと無表情だった少女がぴくと眉根を上げた。不意にびしと、彼を凝視して唸るノクトを指さし、抗議を始める。断固として譲らないと言わんばかりだ。 因みに少女は猫をもう一匹(ノクトが聞いたら怒るだろうが)飼っており、名前はレクイエム(愛称:レム)という。はっきり言って、愛玩動物につけて良い名前ではない。外遊びを教えてしまった影響か最近帰って来ません。誰か知りませんか。 「相変わらず妙な奴だ…」 キリークは笑ったようだった。鎌が不気味に明滅して吠えた。 残り10分 ◇◆◇◆◇◆◇ 「畜生」 剣士は病室で俯き腰掛け、痛いほど拳を握りしめてじっとしていた。爪が掌に食い込んで血が流れても、ずっとそうしていた。 「別にあの子は」 声に気づき振り向くと、包帯だらけのシータがドアに寄りかかっていた。目線をこちらに向けないまま言ってくる。 「君に自分の騎士になって欲しいとは思ってないと思うけどな」 「そんなことは解ってる…」 「そう」 シータは無表情でザウエルをくるくる回しながら、ぶっきらぼうに短くそう言った。足を引きずりながら、扉向こうに身体を持っていき、それを閉める前にもう一言だけ付け加える。 「悔しいなら強くなればいいじゃないか。納得行くまで」 剣士は閉じた扉に枕を叩き付けた。 ◇◆◇◆◇◆◇ ぎゃんっ! 鎌と鎌が再度衝突し、フォトンの奇跡が空を焦がした。それは連続で矢継ぎ早に何度も繰り返され、互いの呼吸が間近で交錯する。 「強くなったな!シズ!俺は嬉しいぞ…」 キリークが吠えた。少女は無言で応える。やや後ろでノクトは二人の交差する間を追って顔を何度も左右に揺らした。先程から極めて近距離で、戦闘は推移していた。互いに殆ど足場が移動しない。両者とも一撃で相手を戦闘不能にできる武器を有している。これではテクニックで援護するわけにもいかない。間違えて少女に当たる可能性があった。 「ノクト…こっちは大丈夫ですから…」 ひょいと、キリークが振り回した鎌を頭を低くしてかわした少女が言った。ノクトは即座に了解しきびすを返すと、後は迷わず柱の方に転がっている、あのいまいましい、主人の仇であるその欠片に向かって、全力で四肢を伸ばし駆けた。 (ふふふ…ふふふははははははははは) ヒューキャストは歓喜に打ち震えていた。目の前の少女の力に。実力は拮抗していた。いやむしろ― ぎいん! 何度目か、キリークの放った目にもとまらぬ塹壕が、少女の右手のナックルガードががりっと弾いた。無駄のない動き。絶えず隙を伺う視線。無表情で感情の読めない顔。まさに死神。目に止まる、自分の敵全てに等しい死を与える小さき存在。これだ― (ようやく見つけた!俺が待ち望んだ相手が、ここに居る!こんな素晴らしい事が他にあるカ!?) 「楽しいですか?キリークさん…」 「当たり前の事を」 聞くな、と言うつもりだった。が、言えなくなった。少女のナックルが今度こそキリークの鎌を逸らしきった。間近で流れた己の身体。あまりに無防備なそれ。それまで敢えて流すに止められていた少女の左手が物凄い早さで動いた。右腕が吹き飛んだ。鎌を持ったそれがぎりぎりと円を何度も描きつつ、ゆっくりと後方へ落ちていく。少女は息を吐いた。 「…私はあまり楽しくありません」 残り2分 ◇◆◇◆◇◆◇ 「残念だ…」 キリークは首を巡らし、第一関節から切り裂かれ、ばちばちと火花を走らせる己の腕、無数に延びたコードの切れ端を見据え、呟いた。 「…」 「もっと闘いたかったのだが、な…どうやら貴様はとうの昔に我を越えていたらしい」 「…越えてなどいません。ただ、テクニックを使用して能力を増強した分の差です」 「成る程、種族の壁という訳か。だか、貴様の正確無比な動きは機械仕掛けの我すら越えている。それは素直に誇るべきだ…さあ」 「…」 「とどめを刺すがいい。我は満足した…こういうのを人間は何と言うのだ?…そう、悔いがない、だ。そういう事だ。さあ、とどめを」 「やです」 「…あ?」 少女は鎌を降ろしていた。あまつ、起動すら解除してしまう。棒立ちするキリークを尻目に、すたすたと歩き出す。 「楽しかったですか?キリークさん…」 「…」 少女はよいしょと、落ちた彼の右腕を拾い上げた。はい、と、彼に腕を押しつける。 「…私で宜しければいつでもお相手致します…ですから、もう、こんな回りくどい真似は最後にしてください」 呆然と自分を見下ろすキリークを見上げ、少女は小首を傾げた。と、ふと思いつくように指を立て、 「あ、でも再戦は暫く後にしてください。後始末がまだ残ってますから」 「ク…ハハハ…クハハハハハハハ!!」 呆然と佇んでいたキリークはちぎれた腕をもう片方で持ち、それで顔を押さえて笑った。 そして見た。少女の背後、柱の側。そこで撃たれ倒れているノクト、更に猫を撃ったゴスペルが、天罰を手にそれを少女に向かって静かにポイントするのを。 ごうごうごうごうごう! 分かれ延びた先から緑色のフォトンの弾が乱射され、少女を突き飛ばしたキリークの身体を次々と貫通していった。勿論、それは通過した際、彼の生命活動を維持していた重要な機関のいくつかを、回復不能な迄、致命的に、粉々に散らしていったのだ。 『漆黒より舞い降り爆ぜよ紅蓮の腕!』 突き飛ばされ転がった後、膝をついた姿勢で少女が延ばした右手より烈火の炎がゴスペルに向かって放たれた。放射線状に延びた火線が慌てて柱の陰に身を戻した男の側を貫き焼いて消える。 場に、不気味な沈黙が訪れた。 「キリークさん…」 「クク…シズ…一人の時は背後にも気を付けろと…言ったろう」 キリークは体中を穴だらけにしたままそれだけ言うと、辛うじて残っていた左手をがくがくと動かし、それで親指を立て、そして確かにニヤリと笑った。そんなように見えた。そのまま後ろ向きに、どうと倒れる。もう何も言わなかった。 あと3秒 ◇◆◇◆◇◆◇ 「動くな、小娘」 静かに鎌を片手に立ち上がった少女へ手にした天罰を向けつつ、ゴスペルがゆっくりと柱から姿を出した。少女の視線は動かなくなった機械人形から離れない。 「…どうして貴方達は…」 「動くなと言ってるだろう!」 それだけで激高したゴスペルの天罰が、少女の左手付近を焼いて、彼女が手にしたソウルイーターの刃先を粉々に吹き飛ばした。紫のフォトンが断末魔の悲鳴を上げつつ虚空に残像を残して弾けて散り、消える。生じた風邪で、少女の髪が、ゆっくりとなびいた。 『制御機構回復。ポイントを指定して下さい』 天罰から無機質なデジタル音声が響いた。ゴスペルはうっすらと醜い笑みを浮かべ、迷わず少女の居る場所がぎりぎり当たる場所へ、照準を指定する。 「…覚悟はいいかね?」 「…」 少女はもう何も言わなかった。ただ視線だけがじっと、動かなくなったキリークを悲しそうに見据えていた。それが自分を無視しているように映り、ゴスペルは歪んだ唇の端をわななかせる。 が、踏みとどまり、彼はおかしそうに両手を広げ、告げる。 「さあ、このくだらない時間に幕を降ろそう。…君が馬鹿にした兵器で!この天罰で!」 「…予言します…貴方は…」 少女がようやく何か応えたが、ゴスペルはその時既に引き金を引いていた。 天罰が明滅し、光が弾ける。 「…予言します…貴方は、踊り狂って死にます…」 −23秒 14. 「ば、馬鹿な!?」 天罰はやはり明滅したのみで、機能回復不完全であることを使用者に伝えた。確かに回復したと告げたのを見たゴスペルが、狂ったようにパネルを叩く。だが、デジタルは無機質に同じ表示を繰り返すのみである。 「現在、ラグオルに置いて標準時刻がどこで計算され告げられるかご存じですか…?」 少女が、ゆっくりと、キリークの亡骸から鎌を手に取り、発動させつつ言ってくる。ゴスペルは気が触れたようにパネルを叩き続ける。デジタルが何度も同じコマンドを走らせる困った使用者に、しかし礼儀よく同様の表示を示す。 「実はここに繰る前、ラグオル全土に時刻を伝えているパイオニア2の時報に細工をして、一分を58秒で刻むようにしておきました」 パネルの上を激しく踊っていたゴスペルの指が、それでようやく止まる。思い出したかのように慌てて少女に銃口を向ける。が、勿論彼女はそれまで待っていたりはしない。 既に彼の鼻先近くまで寄っていた少女は、向けられた銃口を、彼の手首ごと鎌で斬り飛ばした。宙をまったそれに更に塹壕を繰り返し、粉々に分解する。 ばらばらと散ったそれを呆然と見下ろしたゴスペルの目が、無表情で彼を見上げて静止する少女の空虚な瞳と重なった。 少女のナックルがみぞおちにたたき込まれた。文字通りそれで宙に浮いたゴスペルの背中に、更にナックルがたたき込まれ、今度は床にぶち当たり、男の太った身体がバウンドする。 「ぐひ…」 鎌を後ろに投げ捨てると、そのままゴスペルの首根を、少女はむんずとつかんだ。すたすたとタワーの端まで歩いていき、遥か下地面が見える場所までそれを運んでいく。 不幸な事にゴスペルにはまだ意識があった。思わず下を見てしまい、そこに何も無いことを(いや、遥か下に地面ならあったが)確認してしまい、真っ青になって滝のように汗を流し― 「貴方も失ってみますか…?他人ばかりでは不公平でしょう…」 「た、たすけ…」 「却下」 少女は無表情で即答すると、ぱっと手を離した。男は絶望の表情をそこに止めたまま、自由落下を開始した。 ◇◆◇◆◇◆◇ 「うーん…」 電撃で昏倒され倒れていた兵士はようやく気が付き、ふらふらと立ち上がった。見ると、そこいらで仲間のうめき声が聞こえる。どうやら死神は、魂を持って行くことだけは勘弁してくれたらしい。 ふと、手に当たるものがあった。それが自分が先程まで使用していた銃であることに気が付き、彼は悲鳴をあげてそれを更に遠くへけっ飛ばした。 「…私は嘘つきなんです。多分これからもずっと…」 タワーの上。地平向こうに先程連絡したパイオニア2の正規軍がぞくぞくと到着する姿を目にしつつ、少女は呟いた。その横で、泡を吹いて太った男が失禁している。長い一日がようやく終わり、いつもと同じで日が暮れていく― ◇◆◇◆◇◆◇ 「お墓参りですか?」 そこは、ラグオルに建設途中の居住区からかなり離れた区画にあった。綺麗な水を讃えた大きな池のほとり。そこに簡素な墓が。少女が花を手にして、そこに立っている。 「…ナツメ?また不思議な取り合わせですねえ」 「…あはは…この人、この花が好きだったんです」 そっとそれを名前の刻まれていない墓に添える少女。それを魔法使いの僕はそっと見送る。 「彼はその人の代わりですか?」 我ながら核心を付いたのではないかと思われたその言葉。少女を傷つけるのではないかと思い、何度も躊躇ってはこれまで発しなかった台詞。だが今度こそ、今だからこそ、聞いておかなくてはならなかった。 「…返答によっては、僕は貴方の前から消える事にしようと思ってます」彼を連れて。そう続けた僕に、少女は最初驚いたように見上げ返した。が、すぐにそれは破顔する。 「…いいえ…」 「あの人の代わりはどこにもいません…そして、彼の代わりもどこにもいません…当たり前の事です…」 「…そうですね…馬鹿な事を聞きました。忘れてください」 僕は微笑んだ。少女も微笑んだ。それで話は終わった。風が吹いて、置かれたばかりの花が空に舞い、池に向かって飛んで散る。 ◇◆◇◆◇◆◇ シータはその上、大木の木陰で枝に腰掛け、ザウエルを回している。動かなかった足は下の魔法使いに治してもらって完治した。借りはいつになるかわからないが、早い内に返そうと思っている。 「…出るタイミングを見失うとどうしようもないものだね」 横で気楽に寝ている猫に愚痴る。ノクトが気楽に伸びをした。 ◇◆◇◆◇◆◇ パイオニアにて。静まりかえった、客の寄りつかないレトロなバー。そこにはいつもの三人が、いつものように怠惰に平和を謳歌していた。 「暇です…」 「またかよ」 「またですか」 明らかに早すぎる、足が果てしなく床に届かないカウンター席へと無理に腰掛け、少女がいつもの台詞を呟いた。 「…何か事件起きないでしょうか…」 勿論、居合わす他三人とも解っている。彼女がそれをちっとも望んでいない事を。 了: あとがき: 取りあえず、滅茶苦茶遅れて申し訳ございません。重ねてお詫び申し上げます。 えーと、これまでで一番長く、苦労しました。特に最後どうするか、決めてはいたものの、表現に迷い、筆がとまったりしました。ええい、思い出したくない。 恐らく改訂が加わると思いますが、取りあえず今日、仕事帰るなりとりつかれたようにこれまで書ききったのをそのまま掲載してみます。 恐らくいくつかおかしな記述の仕方、乏しい語彙などあるでしょうが、お楽しみ頂けたら幸いです。 宜しかったらこのクソ長い小説を最後まで読んでくださった方、感想をください。ちらとでもいーです。このさい「読んだT/O」でもいーです (灰) ください〜 それでは僕を知る方、Ver2でまたお会いしましょう。 堂本 江角 |
│├(感動)もう、なんと言って表現したらいい... 毛華 2001/06/06 05:11:44 ツリーへ
Re: 小説:世界が二人を分つまで(四)(11〜... | 返事を書く
ノートメニュー |
毛華 <jjlyuiyuxo> 2001/06/06 05:11:44 | |
(感動)もう、なんと言って表現したらいいのか… 凄すぎます。既にファンタジー小説として物凄い完成度があるような気がします。 文章が楽しすぎます。真面目な部分、小気味よい部分、それらがユーモラスに機関銃のように展開されるそれは、読者である私を決して最後まで飽きさせませんでした。 無駄な情景描写を敢えて最小限に押さえ、すら〜っと最後まで読ませよう、という作者の思いが強く感じられます。 当然の如く、中身もこれまでのどのお話よりも完成されていて、壮大で、そして酷く悲しい物語でした。 少女の(心の)強さに乾杯 |
│└お疲れ様でした! DEW 2001/06/06 05:18:01 ツリーへ
Re: 小説:世界が二人を分つまで(四)(11〜... | 返事を書く
ノートメニュー |
DEW <dkrbtsbhbk> 2001/06/06 05:18:01 | |
お疲れ様でした! 一気に読み終えました。前回までの謎も解けて非常に良い読後感に浸れております。 ストーリーとしては微妙にオフィシャル要素も入っていて使い方も巧いと思いました。 なんかこー、ニヤリとさせられるといった感じです。 もちろんそれらはトッピングに過ぎずメインのキャラ達が魅力的に描けているからこそ この作品が良作となっているのは言うまでもないのですが。 少女の名前が公開されたということはこのシリーズもう終わりってことなんでしょうか。 少し寂しい気もしますね・・・。 剣士くん(微妙に)ヨカッタネ。 拙い感想ですいません。DEWでした。 |
├読みました(Nott/o)w だっちょ 2001/06/06 04:26:50 ツリーへ
Re: 小説:世界が二人を分つまで(完成版)(全14章) | 返事を書く
ノートメニュー |
だっちょ <hstnzqkdrd> 2001/06/06 04:26:50 | |
読みました(Not
t/o)w ふう・・・。 ため息でました。実はこのBBSで小説スレッドは読まないんですが、 堂本さんのだけは必ず読みます。 なぜか? 堂本さんの文章表現が好きだからです。 今回、感じたことをつらつら書き連ねたいのは山々ですが、止めておきます(笑 これからもお仕事、PSO、創作活動、破綻しない程度にがんばってくださいね。 ああ、そうだ。このレス、はっきりいってファンレターです(笑 |
├世界が二人を・・・・・・・まで・・・・ 火の国のほ〜けん 2001/06/06 07:00:13 ツリーへ
Re: 小説:世界が二人を分つまで(完成版)(全14章) | 返事を書く
ノートメニュー |
火の国のほ〜けん <nnnloiiuxy> 2001/06/06 07:00:13 | |
世界が二人を・・・・・・・まで・・・・ タイトルはさておき、お疲れ様でした。 ここの掲示板では1・2を争う人気作家wな 堂本さんの小説を今回も読ませて頂いて光栄な かぎりです。 描写・・・うまいですねぇ。倒置法(?)の文末が かなり好きッスわ。 時々KAN○NやA○R入ってるのかなぁ?と思いながら トントン拍子で40分ほどでフィニ。 こ〜ゆ〜良質作品(勝手に認定w)を読ンでいると 「自分も稚拙な文でいいからまた書いてみたいw」 という感情さえ覚えます。 (一度だけ掲載した事ありますがw) (書こうかなぁ・・・ただ自分は気がつくとよく 説教話によくなっちゃっていまして(^^;) 「小説という世界の歴史を見る」と 「小説という世界を創造する」のに如何に時間の差 が生まれるかは自分も書き手の立場に立った人間 なので、わかりますわ(^^; ん〜何かを受け入れ成長し変わるというのは・・・ まぁお疲れィ!(^人^) 〜次回作はいつかなぁ〜(馬車馬のように働かせるw鬼) と考えている火の国のほ〜けんより〜 |
├読みました〜 ゲマ 2001/06/06 09:04:41 ツリーへ
Re: 小説:世界が二人を分つまで(完成版)(全14章) | 返事を書く
ノートメニュー |
ゲマ <wecrpgbfhf> 2001/06/06 09:04:41 | |
読みました〜 なんか少女の口調が某武器商人さんみたい(または逆?)と 思ったのは私だけ?(笑) なにはともあれ、いいものを読ませていただきました。 Ver2もゆっくり楽しんでくださいね(笑) |
└小説を読ませていただきました。 ネオ 2001/06/06 10:53:13 ツリーへ
Re: 小説:世界が二人を分つまで(完成版)(全14章) | 返事を書く
ノートメニュー |
ネオ <tbjjesvqwb> 2001/06/06 10:53:13 | |
小説を読ませていただきました。 堂本 江角さんの作品はいつもながらすごいです! 続きの執筆頑張ってくださいね! あ、でも無理はダメですからねw これまでに書いてある「世界が二人を分つまで」を 私のHPに補完したいんですが・・・ 転載許可をいただけますか? もしよろしければ転載させてください! どうぞよろしくお願いします。 |