ミナミ

 大阪のミナミ。
 関西で随一の繁華街であるこの町を、二人の男が足早に歩いていた。
 話すわけでもなく、かといって見ず知らずの他人同志でもない二人。
 一人は東京からの出張で、大阪に来たサラリーマンの私。
 もう一人は、関西の先輩だった。
 「ここだ」
 先輩が言った。
 「私、初めてなんです、こういう所」
 「大丈夫や。何事もチャレンジ、チャレンジ」
 明るいネオンが点滅している入り口。細い階段が上へとのびている。
 私は、関西の先輩の後について、ゆっくりと階段を上って行く。
 「いらっしゃいませ」
 「鳴りはどう?」
 「ぼちぼちってとこですか」
 「そうか」
 彼は私を見てうなずいた。

 数分後、私は小さな個室の中で、ソファーに座り天井を眺めていた。
 目の前には会社と同じ電話が2つ、そしてメモ帳しかない。
 電話がなっているが取れない。
 早取り。
 緊張しながらも、受話器の上げ下げをする私。
 やっと取れた1本に、緊張しながら話し掛ける。
 「もしもし・・・」
 彼女は20歳の学生。名前はアケミ。どこにでもある普通の名前だ。
 「いま、暇してるんよ」
 雑音がうるさい公衆電話から彼女は言った。
 「え、どこにいるの?」
 「そと」
 「そとって?」
 「店のすぐ前!」
 初めての会話、初めてのアポ。
 こんなにスムーズに行くなんて。
 私は、関西の先輩にどうすればいいか聞きに行った。
 しかし彼は電話中であり、手でシッシッと私を追い払う真似をする。
 仕方なく、私は店の外に出た。
 そこにアケミは立っていた。
 顔立ちのきれいな、女性が。

 私はアケミのあとをついていき、一件の居酒屋に入る。
 「家出したんだ。」
 アケミのひとみに吸い込まれそうになりながら、私はやさしく対応した。

 それは成り行きだった。
 「泊まるところが無い」
 と言ったアケミの肩を抱き、ホテルへ。
 2人でシャワーを浴び、ソープごっこをした。
 アケミの手は自然に私のあそこへ、そして私の手も・・・
 浴室からでて、濡れた体を乾かさないまま、後ろからやさしく攻めた。
 私はすでに元気になっており、アケミのお尻に股間を擦りつける。
 そして、ゆっくりとベットへ・・・

 朝、目覚めた時、彼女は居なかった。
 一瞬、夢だと思った私は周りを探し、ワイシャツについたキスマークを見つけた。
 「着替え、無いのに・・・」
 と言った私は、寂しさの漂う部屋の中で笑っていた・・・


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