2002/6/10
法医学鑑定に関してよくわからなかったので『科学鑑定−ひき逃げ車種からDNAまで−』(石山夫/文春新書) を読んでみた。
医学鑑定から、科学鑑定、プロファイリングまで説明してくれる親切な本。ボリュームもそんなに多くなくて入門書としてはちょうどいい。……のだが、私にはそれでも難しかったよ〜。
なんとなく、いかに自分が理系にバカかを思い知った気がする。
ところで、この本では実例を挙げて鑑定方法について説明している。↓の事件をみなさんは、ご存知だろうか。
Aは甥の殺害を決心していた。
死んだ兄の後を継ぎ社長となったAは、黒い噂が絶えなかった。兄の死についてもAが何か関与しているのではないかという噂だ。
最近、甥を次期社長に推す首脳陣の動きがある。
なにかとダークな噂のあるAを退け正当な後継ぎである甥をトップに推す動きは、見過ごせないものがあった。このままでは、兄を殺してまで手に入れた社長の地位が危ない。
3月10日、Aは兄の遺児である甥を趣味のハンティングにさそった。人里離れた山中は目撃者もなく、絶好の機会だった。
Aは甥を射殺して、山中に埋めた。心配してついてきた甥の幼なじみも一緒に片付けた。Aにとっては、一緒に殺す人間が一人増えただけのことだった。
二十数年後。
Aの甥の息子であるBは、晴れて社長となっていた。Aの魔手をさけるため、地方で静かに身を隠していた日々も懐かしい。狡猾で残忍なAは亡くなり、Bの命を脅かすものも今ではいない。
そうなってくると気にかかるのは父親の行方だ。生きてはいないものと覚悟していたが、せめてなきがらなりと葬ってやりたい。ついに、父と幼なじみの遺骨が掘り出された。土中に埋められて28年、2体ともすっかり白骨化していた。
2体は、からみあうように乱暴に埋められていた。他の骨は分けることができなかったので、頭蓋骨だけは歯科のカルテをもとに鑑定し、納骨したのだった。
ミステリ風に書いたら、なんだか長くなってしまった。
文中Aは雄略天皇。Bは顕宗天皇と仁賢天皇(二人は兄弟)。5世紀の出来事である。事件簿が載っているのは「日本書紀」。
これくらい古い昔から、遺骨の個体判別をしていたんだよ、ということで。(「歯科のカルテ」は実は乳母の談話ですけれどね)