2003/1/21
以前、店主のおすすめで「名画ミステリ」を取り上げて、次に読んだノン・フィクションがモナリザの盗難に関わるものだったので、タイトルを「名画ミステリプラス」にした。
それから、なぜか名画にかかわるミステリは押さえとかないと、というのが強迫観念になっている。タイトルに「名画」と付くだけで、ロマンス小説だろうが、スパイ小説だろうが、一応はあらすじをチェックしてしまうという……。ノンフィクションでも「盗まれた」とか「略奪」なんて犯罪ぽい枕詞があるやつも危ない(笑)。
えーい、もう名画にかかわるミステリは、このHPをやってる限りはテーマとして読んでいってやるさっ!
んで、『贋作工房』(夏季真矢/中央公論新社)読了。
この本を手に取ったのは、表紙にコラージュされていたフェルメールの絵の存在が大きい。
前に『盗まれたフェルメール』という本(途中で止まっている)を読んで知ったのだけど、フェルメールって有名な割に現存する絵は30数枚しかないのね。市場に売りに出されることもない希少性から、同じ絵が何度も盗まれたり、政治テロにも使われたり……って、なんだか存在自体がドラマチックじゃないですか!
これはそんなフェルメールの贋作に関わるコン・ゲームのお話。
たぶん、出した当初は出版社側もかなり力を入れていたに違いない。だって3部作で、出版が1999年の2月と4月と6月。1作目(これ)に3作目までのタイトルがびしっと予告されているところを見ると、鳴り物入りの発刊という感じだ。
しかし、そんなに話題にならなかったような記憶がある。
何が悪いのかったのかと、私、及ばずながら(そして今さらながら)考えてみました。いや、別に私が対策を練る必要は全然ないのだけど、考えたんで言わせて。お願い。
出版社の方で考えたらしい惹句は「複雑系ミステリの新星登場!」。
これ! これが悪いのではないだろうか。だって、読んでみたら、そんなに複雑じゃないんだもん。
天才贋作師、ナチの戦犯、車椅子に乗った残酷な美女、メトの天才キュレーター、少年ハッカーなどの様々な顔ぶれが登場し、複雑に愛憎が絡みあう……というのがウリなわけですが、この人達が結構わかりやすい。愛憎もわかりやすい。
どっちかというと、ジュディス・クランツとかB.T.ブラッドフォードの出来のいい大河ロマンスの方がよっぽど複雑。彼女らは伊達にタイプ一文字打つごとに2ドル稼いでいるわけじゃないのだ。
と、いうわけで、この打ち出しがイカンのだったと思う。
本当に複雑が好きな人にはぬるい、そうでない人には「複雑系」と書かれたことによって敬遠されてしまうという、あちらを立てればこちらが立たず状態だったのではあるまいか? つまりはマーケティングの間違いってヤツでしょう。
そこで私が考えたのが
「1億ドルを騙し取れ! ジェフリー・アーチャーも真っ青の*痛快、大胆、コン・ゲーム!」。
うんうん。
なかなかキャッチーじゃないの。(←自画自賛) ジェフリー・アーチャーが何ていうか知らないけどさ(笑)。
*アーチャーには『百万ドルを取り返せ』という作品がある。金額的には勝ってるし……。