2003/2/5
『痛快世界の冒険文学9/鉄仮面』(さとう まきこ、フォルチュネ・デュ・ボアゴベイ/講談社)読了。
1/27の日記で、『仮面の男』の正体はルイ14世の双子の弟というのはありえない、と書いたら、AIさんよりBBSにツッコミが入った。
それでもって、一応、調べてみたら、史実は割と問の余地ありなのね。
とりあえずモトネタを知らないとイカンと思い、小説『鉄仮面』を探してみました。
そこで、まずびっくりしたのが、『鉄仮面』の原作者はボアゴベイという人だったこと。私はデュマだとばっかり思ってましたよ。
ボアゴベイ(1821-1891)の原作を翻訳して新聞小説として発表したのが、黒岩涙香。その人気ぶりは新聞小説の大流行をまねき、番台はからになるし(←微妙にウソ)、大変なものだった。
黒岩涙香の小説を元に、また翻案して小説を書いたのが、江戸川乱歩。
そして、江戸川乱歩で育った世代が、また自作で鉄仮面を扱って、日本では脈々と「鉄仮面系」とでもいうべき作品が育っていったようだ。
ボアゴベイは、現在は本国フランスでは忘れかけられた作家らしい。日本での方が有名、って、『フランダースの犬』を思い出すエピソードだねえ。(日本人観光客があまりに来るので、日本人のためにフランダースの犬の銅像を立てたという故事)
さて、ボアゴベイの小説は日本語で読めるが、元は新聞小説なので量が膨大。
そこで私は考えた。
「子供用にリライトされたやつを読めばいいじゃん」。
しかし、これが現在ではほとんど発行されていないのよ。
私が小さい頃は少年少女名作文学全集が複数の出版社から出ていたものだが、最近は昔の名作は読まんのか?
……読まんのか。
そうだよなあ。カルピス劇場が終わっちゃうくらいだもんなあ。
今回読んだ本は、世界の名作を人気作家がリライトするもの。どっちらかというと、リライトよりは「翻案」されている。
なにしろ、原作には「鉄仮面」は出て来ないのだ。(原作のタイトルは『サン・マール氏の2羽のつぐみ』) 主人公がかぶせられているのは、布の仮面。作者は「『鉄仮面』が出て来ない『鉄仮面』もなー」と思って悩んだそうだ。「鉄仮面」以外のタイトルでは発行しにくいし、タイトルが鉄仮面なのに肝心の鉄仮面が1ミリも出てこなかったら、全国でちゃぶ台がひっくり返されまくりだろう。
だから、この本にはちゃんと「鉄仮面」が登場し、その正体もボアゴベイの小説とは、ちょーっと違っている(らしい)。
もうちょっと鉄仮面に興味がある人は、別項「鉄仮面のひみつ」をどうぞ。