店主の読書日記 OCT2003 タイトルリスト 作家別リス ト

2003/10/31

 先日の仇を取るため、品川プリンスにやってまいりました。
 なぜなら、ナシゴレン・セットは10月のおすすめメニュー。これを逃したら、ここでナシゴレンを食 べられる日は永遠に来ないかもしれないのです。

 ただいま、品川プリンスでこの文章を書いてます。実況生中継です。
 はい、今度は無事食べられました。美味しゅうございました。
 先日の変な人に懲りて、充分スパイスを用意してたものと思われます。今日はこれで満足っす。セッ トのコーヒーを飲んだら、帰ることにしましょう。
 って、インターネット・カフェに何しに来たんだ、という感じですが、もちろん今日は食事に来たん です。
 ……なんだか、最近、ネタのために街に出てる気もします。気のせいでしょう、きっと。

 しかし、ここって本当に外国の方が多いなあ。それでもって、毎回隣の席の外国の方に使い方を聞か れるのはなぜだろう。
 よっぽど慣れているように見えるのだろうか。
 いえ、いつも持参のスパイスで料理を作らせてるわけじゃないんですよ、隣で囲碁をたしなんでいる オジサマ。


2003/10/29

 試写会で『キューティ・ブロンド/ハッピーMAX』を見る。
 原題は"LEGALLY BLONDE 2: RED, WHITE & BLONDE"。星条旗をその色からRED, WHITE & BLUEというをもじっている。アメリカ人なら、タイトルで「ああ、ワシントンに行くのか〜」と わかる仕組み。

 えーと、普通のレビューを書いても、ここを読んでいるような人にはつまんないかと思うので、偏っ た感想を行きましょう(笑)。
 まず、犬バカのあなた。あなたには強力プッシュだ。
 今回の物語は、リーザ・ウィザースプーン扮するエルが動物実験規制の法案にかかわる物語なので、 もう、ものすごーく犬がたくさん出てくる。数だけでなく、犬種も多い。エルの愛犬・ブルーザー(チ ワワ)がもちろん一番出番が多いのだが、チワワがあまり好きでない(だって、チワワって小刻みに震 えてて死にかけ……っと失礼、すごくご高齢のご老人を思わせるじゃん)私でも、結構楽しかった。
 第2のポイント、さあ、オヤジスキーの人達、用意はいいかい?(笑)
 今回の舞台はワシントン。政治家はオヤジが多い。エルが愛犬・ブルーザーの散歩の途中で知り合う マークス議員もとってもチャーミング。
 ええ、もちろん、これくらいでプッシュするつもりはなくてよ。
 エルが泊まるホテルのドア・マンのシド、彼はかなり映画で重要な役どころなのだが、彼はとっても キュート。見返りを求めずエルに助力するところなんて、まさにオヤジスキーの天使さま。

 リーザ・ウィザースプーンのエルは確かにキュートだ。
 しかし、見ていてエルにいじわるをするグレースの気持ちがすごくよくわかる。やっぱり、マジメに 仕事をしているのに全身をどピンクで固めて、犬と一緒に苦労知らずのお嬢様が来たら面白くないだろ うなあ。しかも、仕事の合間に結婚式の準備をされてちゃねえ。あんたよくないで、エル。(って、な ぜに関西弁)
 これって、大人になってみると「アルプスの少女ハイジ」のロッテンマイヤーさんの気持ちがよくわ かるのに似ている。そういえば、最近「フランダースの犬」を見て、幼い頃あれほど憎らしかったアロ アのお父さんがそんなに鬼のような人でもないのがよくわかった。
 お父さんは言う。
「私は、絵ばっかり描いてる貧乏な小僧が娘と仲良くするのが許せなかった」。
 わかります、お父さん。その気持ち!(笑)

 しかし、会場の椿山荘は遠かった。どこの駅からでも必ず10分はかかって、しかも高台にある。
 終わった後にはパーティがあったのだが……立食って疲れるなあ。体力のオトロエを感じます。はい 。


2003/10/28

 夕方からパーティ。
 やっぱり仕事関係なので、会社を出る時に名刺を鷲掴みにして持って出た。
 会場はパレスホテルで、こういうパーティには珍しく和風のお料理で統一されていた。なんたって、 デザートは和菓子よ、和菓子。
 しかし、あれっすね。他のものはたいがい立って食べるのに慣れたけど、なんとなく和菓子を立った まま食べるのはいただけません。

 ところで、隣の部屋が「清水港パーティ」という謎の集まりだった。こっそり忍びこみたかったなあ 。
 どういう集まりなんだろう。だって、ここ丸の内だし。


2003/10/26

 『上と外1――素晴らしき休日』(恩田陸/幻冬舎文庫) 読了。

両親の離婚で別れて暮らす元家族が年に一度、集う夏休み。中学生の楢崎練は久しぶりに会う妹、母と ともに、考古学者の父がいる中央アメリカまでやってきた。密林と遺跡と軍事政権の国。四人を待つの は後戻りできない「決定的な瞬間」だった。
全5巻書き下ろし、隔月の連続刊行、熱狂的面白さで読者を魅了する恩田ワールドの決定版、待望の第1 巻。

 あらすじは全5巻だが、実際は全6巻が並んでいた(笑)。  1巻は起承転結の起部分。これからの物語のために主人公・練の家族の人間関係がみっちりと書かれ る。ちょっと宮部みゆきテイストかなあ、と、思ったけど、宮部みゆきよりも少し一般から逸脱してる (が変人ではない)人間が多いように思う。
 ストレンジではなく、少しだけファニーな人々が恩田テイストなのだろうか。
 今年の残りを恩田陸強化月間にしているので、おいおいわかってくるかもしれない。
 練とじいちゃんのエピソードなんかは私のツボで、こういう職人タイプのジジイに弱いんだよなあ、 どうしても。

 1巻で書かれた人間関係は、それだけで波乱を含んでいる。
 異母兄妹の練と千華子の会話を読んでいると、「子供は大人が考えるよりずっと聡いし、大人な考え 方をするんだよなあ」と気がつく。
 子供だったことを忘れるのではなく、大人なことが当たり前になっちゃうんだよね、年をとってくる と。
 さて、これから2人はどう変わっていくんだろう。

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2003/10/25

ハワーズ・エンド  「ハワーズ・エンド」を見る。
 パッケージとあらすじからすると文芸大作らしい。私、あんまり文芸大作って好きじゃないんだよな 。(じゃあ、なぜ借りた!>自分)
 しかし、割と飽きずにオーラスまで見てしまった。2時間以上あるのに。
 もちろん、舞台になったハワーズエンドや、舞台設定がビクトリア朝のイギリスなのでご婦人のドレ スや家のしつらえの美しさなんかがたまらなく美しいこともある。
 でも、それ以上にこれがイギリス文学であることが大きいだろう。どうも画面を見ながら、地の文が さらさらと浮かんでくるんですね。
 純文学は読んでないが、翻訳ミステリだったら山ほど読んでいる。日本で読まれている翻訳ミステリ のほとんどがイギリスかアメリカのもの。ミステリだって純文だってイギリス人作家のものならイギリ ス文学だ。

 やっぱり、この映画が楽しめるかどうかはイギリス的なものがどれくらい好きにかかってる気がする なあ。
 イギリス度踏絵として使えるかも。

『ハワーズ・エンド』 HOWARDS END (1992年 アメリカ) 143分
監督:ジェームズ・アイヴォリー、 原作者:E・M・フォースター、 脚本:ルース・プラバー・ジャブバ ーラ、 撮影:トニー・ピアース・ロバーツ、 音楽:リチャード・ロビンズ
CAST:アンソニー・ホプキンス、バネッサ・レッドグレーブ、ヘレナ・ボナム・カーター、エマ・トン プソン、ジェームズ・ウィルビー、サミュエル・ウェスト


2003/10/24

 休みに入る前、私は休み中に発生したメモなどを入れてもらうため、お休み袋を2つ用意して机の上 に置いていった。B4サイズの封筒とA4サイズの封筒。この中に休み中の仕事を入れてもらうためだ。
 休み明けに出勤したらパンパンかもしれないなー、なんて想像していた。
 が。
 出勤した私の机に2つのお休み袋はなかった。かわりに置いてあったのは……手提げ袋であった。し かも、ケーキが入っていたやつ。
 マジックで「リオハ(仮名)さんのお休み袋」と書いてある。
 どうやら、2つの袋では収まりきらなかったので手近にあった一番大きい袋(うっうっ)に振り替え た模様。

 一日で終わるはずもないので、適当なところで切り上げて退社。
 まだ記憶の新しいうちに旅行のメモなどまとめておこうと思い立ち、それなら裏取りのためにはイン ターネット環境の方が便利だな、と、品川プリンスのYahoo!cafeに。
 しばらくしたら、小腹がすいてきた。当たり前だ。もう10時を過ぎている。
 ホテル内のカフェなので、お食事メニューは品川プリンスが担当している。10月メニューとして、「 サラダ仕立てナシ・ゴレン」があったので、それを注文。インドネシアと品川プリンス、食べ比べるも よかろう。
 しばらくして、シェフが大変申し訳なさそうにやってきた。
「すみません。こちら、本日はスパイスが終わってしまいまして……」
 スパイス。ああ、あのサンダルとかサンバルとかいうやつ。
 なら仕方がない……といいかけて、ふと思い出した。
「あの、今、私、スパイス持ってますけど」
 そうなのだ。昨日到着して実家で一泊、今日はお土産類を持ってそのまま出勤したのだ。何を隠そう 、れおんさんからナシゴレンの元を一袋もらっていた!
 シェフはすごく意表をつかれた顔をした。
 そりゃそうだろう。私も、ナシゴレンのスパイスをかばんに忍ばせている女がいたらびっくりする。
「少しお待ちください」
と、バックルームにひっこんで、しばらくしてから出てきた。責任者に確認を取ったのだろう。
「お客様さえよろしければ、それでお作りしますが……」
 さすがだぜ、品川プリンス!
 自分で吟味したスパイスを持ち込んで(←ただのナシゴレンの素である)シェフに料理を作らせる、 海原雄山のようなワ・タ・シ。ウフフフフ……と、一瞬想像の世界に遊んでしまったが、人様に迷惑を かけるのもなんだ。
「また改めて食べに来ます。すみません」
と謝って、他のものをオーダーしたのであった。


2003/10/23

 つーことで、インドネシアから無事に帰ってきました。
 昨年の10月に大規模テロがあったバリ島でございます。8月にテロがあったジャワ島にも行ってまい りました。

 気が向いたら、簡単なメモ程度でも載せましょう。
 でも、終始だらだらしていたので、人が読んでもつまらないかも。


2003/10/17

 会社でちょっとトラブルがあった。みんなで手分けして300件強、電話をかけまくる。
「おれ、打率6割だよ」
「ええ〜、私なんて1割ですよ。負けた」
 かからなくても、負けではありません(笑)。
 もしかして、こういうのがローラー作戦っていうやつ?

 明日から、少し留守にします。
 昨年の夏(←今年でないところがミソ)から働きっぱなしだったので、久しぶりのきちんとした休暇 。
 ぐーたらしてくるつもりだけど、なぜ休もうとすると、その倍もがんばって働かないといけないので しょう。キング・オブ・ぐーたらとしては、納得がいきません。

 つーか、もし旅先で何かあったら、これが絶筆かあ。うわー、ショボい。


2003/10/16

 近所の公園にジャングル出現!

 私の部屋の前には、築25年になる向かいのマンションが建っている。
 割と大規模で、併設の小さな公園がついているのだが、その公園にある日小さなジャングルが出現し ていた。
 このたび大規模補修工事をやることになったそのマンション、外壁も当然手をかける。塗装の薬品に やられては大変なので、ベランダの緑たちも緊急引越しをしたみたいなのだ。
 しかし、いくら小さい公園とはいえ、100uくらいはある。そこにある日突然ジャングルが出現した 姿を想像してみてください。(BGM「イマジン」byジョン・レノン)
 ベランダ・ガーデナーたちってあなどれないなあ、と、公園の前を通るたびに思う。
 ところで、避難中の世話は大丈夫なのだろうか。そして、補修工事が終わった後は、ちゃんと元の飼 い主(というのは変か)のところへ帰れるのだろうか。ちょっと心配なリオハであった。


2003/10/15

シックス・センス  今さら「シックス・センス」(1999年、アメリカ)を見る。
 いやー、びっくりした。
 素直で人を疑うことを知らない純真な私は(やりすぎは逆効果だぞ、リオハ)、オチで見事に驚かさ れました。 2度楽しめるかは人によるだろうけど、一度っきりの初見の幸福っていうのも世の中にはあ るのだ。
 たまらなくなって、見終わったのが夜中の1時近かったのにもう一度初めから鑑賞。(字幕入れて3倍 速で早見だけどさ)
 ななな、なるほど。もう一度見ると、きちんと伏線を張っているわ。エライなあ。
 たとえば、少女の家に向かうバスからお墓を見た次のコール少年の反応。2度目に見ると計算された シーンだったことに気がつく。
 それにしても脚本がうまい。
 監督はインド人だそうで、確かにアングロサクソンとは考えのベースが違いそうだ。学童向けの雑誌 に「真夏の心霊写真特集」なんて載ってる日本だから逆にわからないのかもしれないが、霊魂というも のについてのキリスト教の考えは自由ではない。だから、ホラーは日本人の方が優れたものを作れるベ ースは持っているはずなんだけどね。(世界にマーケテイングできるかは不明)

 あきっぽい私にしては、ラストまでの107分をほとんどじっと見続けた。なにしろ、画面がとてもき れい。フィラデルフィアという古い街が舞台なのも手伝って、カットカットが素晴らしく美しい。たぶ ん、撮影監督がいいんだろうな。恐がりでめったにホラー映画を見ない私に夜中に見させるとは相当の もの(笑)。

 霊が見える少年・コール役のハーレイ・ジョエル・オスメントについては、賞賛されつくしているの でもういいだろう。『運動靴と赤い金魚』のお兄ちゃんみたいな、困り顔がベースのくせに、演技力は ものすごい。
 彼の演技をばっちり受け止めるのが、トニー・コレットの母親・リン。
 離婚してシングル・マザーでコールを育てているが、自分の子供は友達になじまないし、学校で変な 絵を書くし、部屋の机の上には「お前を殺してやる」とびっしりかかれたルーズリーフが置いてあるし 、なにやらカルトめいたテントさえ作っている。えーと、まだあったな、盗癖か。とにかく、何も知ら ないお母さんにしてみたら、心痛で心の休まる暇のないはずだ。(たぶん、何もない空間に話しかけて る姿も一回くらいは目撃してるだろう)
 それでも、たまに爆発はしても、懸命に自分の子供を守って育てるお母さんにはそれだけでエライ。
 母と息子の交流シーンでは、やっぱり泣いた。
 心優しいけれど、問題ばかり起こす精神を病んでいるらしき愛しい息子。リンお母さんはかなり息子 の将来を心配していたのだと思う。でも、彼女に本当の福音をもたらしたのは、この息子なのだ。
 ちなみに、DVDの日本語音声では、この役を勝生真沙子さんがやっていて、私はそれだけのために 日本語音声で聞いていた(笑)。……って、いいこと書いてたのに最後でだいなしですかそうですか。 (どなたか、声の出演のデータの見かたを教えて下さい)

 この母親と対照的なのが、女の子の幽霊のお母さん。
 実は、2回目に見た時は日本語の字幕と英語の字幕を両方出していたのだけれど、日本語音声と3種類 全部が違っているセリフがあった。

 日本語字幕 「ひどい母親だな」
 日本語音声 「お前が犯人だったのか」
 原文 「お前が彼女を具合が悪いままにさせておいたのか」(日本語直訳)

 日本語の意訳はとてもわかりやすい。
 でも、英語の元のセリフはかなり練りこまれたものだと思う。たとえば周囲から褒められたり同情し てもらえる立場を楽しんで子供を虐待する。そういう事例もホントにあるし、そんなどす暗い人間の恐 さをヒタヒタ感じるセリフだ。短いセンテンスなのに。
 まあ、これも脚本のうまさだよね。
 しかし、最後にびっくりしたのが、ケースのあらすじ。
 「このあらすじ、ウソじゃーん」と思い、よくよく再読してみると全然ネタを割ってないのだ。いや 〜、私には書けません、あんなの。今回は色々おじさん、参っちゃったなあ。

『シックス・センス』(1999年、アメリカ)107分
監督 :M・ナイト・シャマラン、音楽 :ジェームズ・ニュートン・ハワード、脚本 :M・ナイト・ シャマラン、撮影 :タク・フジモト
CAST:ブルース・ウィリス、ハーレイ・ジョエル・オスメント、オリビア・ウィリアムズ、トニー・コ レット


2003/10/14

 おすすめシリーズ第3弾、旅人さんおすすめの『光の帝国――常野物語』(恩田陸/集英社文庫) 読 了。

 少し不思議な能力を持っている常野という一族のことを描いた連作短編集。
 最初の「大きな引き出し」で、まずやられた。
 ああ、ダメだっ。弱いんだよ、こういうの。私はガンコおやじにとっても弱い。ガンコおやじとふと したキッカケで心が通うお話はよくあるが、どんなに底が割れててもクるもんなあ。
 この話では、主人公の少年が持つ不思議な能力が離れていた親子を結ぶきっかけになるのだが、これ を別の小道具に置き換えてもやはり泣くだろう。

 全体的に、今まで読んだどの恩田陸作品よりもリリカルな感じがする。あとは小道具が美しい。
 「大きな引出し」の、常人外れた記憶力を持つ春田一族の文机。ひとりがひとつの机を持ち、それぞ れに名前がついている。春田の一族はパートナーである文机で書を読み、それを自分の中の引出しにし まうのだ。美しいではないか。文机の木の目地に漆の質感まで見えそうだ。
 「二つの茶碗」の茶碗、表題作の笛など、ザラっとした質感まで感じるような描写力。

 ただ、不満がないかといえば、ある。
 作者のあとがきにあるとおり、短編のいくつかが大きな話に繋がるプロローグ的なものとして書かれ ている。その短編から大きな物語を垣間見してるようで、じれったい。(物語の中で出てくるいくつか の謎も解決されないままだ)

 なんとなく
「絵が見たいね、パトラッシュ」
と、ルーベンスの前のネロみたいな気持ち。

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2003/10/13

 伊吹律さんにおすすめいただいた 、毛利志生子。ほとんどがシリーズもので手を出す勇気が出なかったのだけど、シリーズ外単発ものが あったので読んでみた。『遺産――Estate left』(毛利志生子/集英社コバルト文庫) 。

 高校三年生の暮林小鳥は母親と二人暮らし。だが、母の再婚が決まった直後、母が自宅で凍死してし まう。呆然とする小鳥のもとに、カナダ人の青年カイルが現れた。十八年前に死んだはずの父親が、実 は先日まで生きていたというのだ。一カ月前に死んだ父はカナダで恐竜の化石を発掘しており、小鳥に 数億の価値の化石を残していったという。戸惑う小鳥だが、その直後何者かに命を狙われて…。

 大別すればミステリになるけれど……微妙。
 こなれたミステリ・ファンからすれば不満だろう。
 しかーし、コバルト文庫にしてはものすごく大人っぽい小説に入るのではないだろうか。物語の重要 なポイントになる恐竜の化石や、主人公・小鳥が住む古い洋館などは、とてもペダンチック。読んでい て「あれ、建築探偵の本だっけ?」と、思ってしまったくらい(笑)。一般ジャンルだったらどういうも のを書くか見てみたいなあ。

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2003/10/10

 竹内哲さんに教えていただ いた『ゴッホの遺言――贋作に隠された自殺の真相』(小林 英樹/情報センター出版局)、読了。

 正直言って、私はゴッホにものすごく偏見を持っていた。
 私の中のゴッホのイメージというのは、自分の耳を切り落として精神病院に入院した挙句自殺してし まったエキセントリックなアーティスト。ゴッホの芸術性はよくわからなかったし、当然、「ひまわり 」が何十億という大金で落札されるのは面白くない。(これはゴッホのせいじゃないけどね)

 そのゴッホ観が『ゴッホ殺人事件』を読んで少し変わって、この『ゴッホの遺産』を読んでだいぶ変 わった。
 生前にたった1枚しか絵を売ることの出来なかったゴッホは、生活費すべてを弟テオにおんぶしてい た。
 テオの職業は画商。ゴッホ自身は、自分は貴重な芸術を生み出していると信じて疑っていなかった。 ゴッホがそういう意識を持っていたかはわからないが、現代の画家なら「先行投資だよ」くらいは言う かもしれない。
 兄思いで芸術に理解のあるテオとゴッホの間はしっくり行っていた。それが少しきしんできたのは、 テオの仕事が元のようではなくなり、プライベートでも結婚して子供が生まれてからだ。
 でも、私は普通の人なので、テオの嫁さんの気持ちもよくわかる。
 子供が生まれて物入りなのに、売れない画家の義兄さんにそんなに仕送りしてちゃたまんない!
 そりゃあ、嫁さん、怒るって。

 さて、この本のキモはテオの手紙につけられていたというスケッチの真贋判断だ。
 著者は画家ならではの視点で、次々とスケッチが贋作であることを証明していく。やや長いが説得力 があって、逆になぜ長年これがゴッホの真作として思われていたか不思議な気持ちになってくる。

 読み終わって思ったが、鴈作者は本当はゴッホの芸術を信じていなかったのではないか?
 私は「犯人」(とこの本で指摘された人)の気持ちもなんとなくわかる。ゴッホのように生活が破綻 している人間が人の賞賛浴び、マジメにコツコツ働いている人間が浮かばれない状況を目の前で見てい るとしたら……。そして、自分は芸術に憧れているけれど、才能のカケラも持ち合わせていなかったら 。
 私が「犯人」をそんなに憎む気になれないのは、そのせいだ。

 実のところ、犯人がわかってもわからなくても、個人的にはどうでもいい気がする。
 ただ、自分のスケッチに初めての子供を説明するようなコメントをつけるゴッホのことだ。質の劣る 贋作が自分の作品とまかり通るのは我慢がならないだろう。
 ゴッホの死の真相はわからない。
 本人が死んで、関係者もすべて死に絶えた今となっては、たぶん永遠にわからないだろう。
 そして、最後に残るのは作品だけだ。でも、それこそがゴッホの望みのような気がする。

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2003/10/9

 『手塚治虫の奇妙な資料』(野口文雄/実業之日本社)読了。
 ものすごーい労作、だと思う。
 手塚治虫は自分の作品にばっさばっさと手を入れる作家だったらしく、雑誌掲載時と単行本収録時と はかなり違っているそうだ。この本はその雑誌掲載と単行本を比較検討するという、とても地味で、で も、ちょっとでもマンガに興味があると面白くてたまらないことをやっている。
 労作というのは、あとがきを読むと雑誌掲載の方の図版のクリーンアップまで著者がやってるらしい んですね。

 実際に本の内容もスゴイ。何ページか加筆というのはよくあるが、手塚治虫はラストを丸々変えてし まったり、1つのエピソード80P相当を丸々削ってしまったりしている。(なんて大胆な!)
 実は私、自分が描いたマンガの原稿をほとんど持ってない。人の本に寄稿したものは大体返って来て ないし、「描き終わったからいいや」と思って返却依頼もしなかったのだ。(ただのアマチュアのヘボ マンガだしさあ) それって自分の作品が好きなマンガ描きにいわすと言語道断の仕業らしい。
 が。
 そんな私から見ても、手塚治虫は大胆だった。トリミングなんか平気、ばっさばっさと切る切る!  キャラクターの顔が古臭いと思ったら、全部描き換え! 雑誌発表時の興奮そのままに、なんてこと毛 ほども考えてないのだ。
 だから単行本だけ知らない読者(私もそうだ)は、雑誌だけしか読んでいない読者とはかなり違った 物語を見ている可能性だってある。
  有名な話らしいが、私は全然知らなかった。

 手塚治虫が映画が好きだったということは知っている。もしかして、手塚治虫にとって作品はフィル ムのようなもの、だったのかもしれない。単行本発行の時には、手塚治虫監督がディレクターズカット 版を作っているのだ。これは私の想像だが、あんまり間違ってもいない気がする。
 ディレクターズカット版が、必ずしも劇場公開版よりいいと限ってないのまで似てるんだから(笑) 。

 手塚治虫は作品が新たに人の目に触れるチャンスごとに、その時に自分が一番いいと思ったものに変 えている。それは決して自分の作品に100%満足していないということで、あんな風に「神様」とまで 呼ばれる大作家としてはスゴイことだ。
 その姿勢、ちょっと北斎にも似ている。
 失礼な言い方をすれば、両方ともマンガ馬鹿。でも、そいう馬鹿って好きだなあ、とっても。

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2003/10/8

 シュワルツネッガーがカリフォルニア知事に決まって、気が動転しています。
 という言葉から始まった米谷ふみ子講演会。
  米谷ふみ子(こめたにふみこ)さんは、作家で、大阪市生まれ。1960年アメリカよりフェローシッ プを受け、抽象画の勉強のため渡米した。作家ジョシュ・グリーンフェルド氏と結婚し、1985年、家事 ・育児の体験を元にした小説『遠来の客』で文学界新人賞、その続編『過越しの祭』で新潮新人賞、 1986年同著書で芥川賞を受賞。現在、カルフォルニア州にお住まいだ。

 なんでプロフィールを長々語ったかというと、今回の講演にかなり関わりがあるから。講演タイトル は「日米のメディアについて」。
 米谷さんが結婚した人は作家で、しかもユダヤ系の人だった。2人の間に生まれた子供は脳に障害が あった。そういう立場から見たアメリカは決してハッピーでもワンダフルでもなかったという。
 講演の内容は、詳しく書かない。いや、だって、自分で会場に足を運んで聞く気がないとあんまり意 味がないかなあ、と、思うし。興味があったら、著作を読んでみてください。

 ちょっと面白かったのが、講演後の自由質問。
「なんで、絵の勉強をしにいったのに作家になったんですか?」
という質問に、米谷さんはいくつかの理由を答えていた。

1. アメリカの現実を日本に伝えたいと思った
2. 抽象画を描いていたので、絵では伝えにくかった
3. 障害を持つ子供がいたので、絵の具を身の回りに置くのは危なかった
4. まわりも英語、夫もEnglish Speakerで自分が日本語を忘れそうだった
(これは、やっぱり芥川賞を受賞した池田満寿男も同じようなことを言っていた)

 そして、ちょっと笑ってしまったのは、

5. 夫の仕事を見ていたら、絵より楽そうだと思った

だからだそうだ。
 みんな、同じようなこと考えるんだなあ(笑)。


2003/10/7

 だらだら読んでいた『堪忍箱』(宮部みゆき/新潮文庫)読了。
 短編集なので、ふと思いついた時に続きを読んでいたら1冊に3週間くらいかかっていた。(まあ、そ れも短編集のいいところだよね?)

 これは時代物の短編集。
 ミステリの宮部みゆきと、時代物の宮部みゆき。本質的にはどちらも同じだが、時代物では人の心の ざわめきがもっと際立っているような気がする。
 デビューした頃の宮部みゆきの作品は、人物の透明感が好きだった。だから初期は人間の書き方が甘 いと批評されてもいたらしいのだが、それだけ読み手の私も若くて(と、いうか幼くて) 現実よりも少しだけきれいな人々の織り成す世界が心地よかったのだ。

 本当は人間はきれいなばっかりじゃない。
 悪い人ではないけれど、何かがうまくいかなくて人を妬んだり、ふっと魔が差してしまう。そういう のが人間だし、だんだんそういう平仄のつかなさが許せるようになってきた。
 そして、たぶん、そういう読み手じゃないと、もしかしてこの本は面白かったり染みたりしないのか もしれない。ほとんどの話は市井の人たちの日常で、奇想天外な事件や胸踊る冒険やがあるわけじゃな いから。

 とりあえず私が「上手い!」と唸ったのが「砂村新田」。
 砂村新田というのは、今の砂町のことみたいで、東西線に南砂町という駅名があるので「ああ、あそ こか」と、おわかりの方も多いかもしれない。江戸時代だと、ちょっと人里離れたという感じだろうか 。
 その砂村新田に奉公に行く12歳(たぶん数えで。だから今だと10歳くらい)の少女のお話だ。
 少女は奉公先からお使いに行く途中に男に声をかけられる。どうやら母の知り合いらしい。羽織を羽 織っているので余裕のある人だと少女は思うが、ちょうど行き会った叔母さんがいう。

「とんでもないよ。やくざか遊び人に決まってる。羽織の紐を喧嘩結びにしてたもの」

 どうやら、喧嘩結びという結び方があるらしいんですね。その結び方をしているだけで、ある程度身 分がわかってしまうという。
 どうやらヨットの時の結びみたいに特殊なやつで、力が加わるとスルリとほどける。そういう結び方 をするのは、巾着切り(スリ)かやくざ。なぜかというと、巾着切りは襟首を捕まえられた時にスルリ と羽織の紐がほどけて逃げられるように、やくざは喧嘩の時に腕のひと振りで羽織が脱げるように、だ そうだ。
 ここいらの小道具の使い方が上手い。見ただけで玄人筋とわかる紐結びなんて、現代に残っていただ ろうか。

 結び方ひとつだけで、たった1シーンしか登場しない男がものすごく印象深くて、しかも読者が色々 推測できる。
 小道具の使い方だけじゃなく、もちろんいい話だと思った。
 事件といえば少女が道で見知らぬ男に声をかけられただけ。それでも、こんなにしみじみと染みる話 を作る宮部みゆきはやっぱりスゴイ。

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2003/10/6

 『誘いかける瞳』(ノーラ・ロバーツ/扶桑社ロマンス文庫)読了。
 すっっ(←タメ)ごく甘い。
 元々がハーレクイン・ロマンスから刊行されたものだから仕方ないのかもしれないが、ベタベタに甘 い。最初からロマンス・モード全開。ノーラ・ロバーツってロマンス作家だったんだ、と、思い知った わ(笑)。
 ハーレクインとしては辛い一冊なのかもしれない。
 なんとなーく私が思うに、アメリカでのロマンス小説の位置って、日本の少女マンガに近いものがあ るんじゃないだろうか。日本であんまりロマンス小説が発達してないのは少女マンガの質が高いからだ ろう。ロマンス小説からスタートしてベストセラーになる作家もいるから、ライトノベルのようなもの かもしれないな。読み手が限られたファン層に向けているところは。
 まあ、とにかく、ノーラ・ロバーツはそこから出発して、ものすごーく本を売る人になったのだけだ けど、ロマンス好きの人じゃないとこの本は薦められません。
 今回の本は、自選の3作を1冊のペーパー・バックとして発行したものを、日本では3冊に分冊して( ややこしい!)発行している。だから……このシリーズ、みんなこうなんだろうな。もとがハーレクイ ンだから。

 ただ、そんな物語でもさすがだなあ、と、思ったのが主人公・スレイドの描写。
 スレイドは殉職警官を父に持つ、刑事。作家になる夢を持ちながら、生活のため警察に勤務している 。そんな彼が上司から名づけ子の監視(もちろん秘密で)を依頼されたところからロマンスが始まるの だが……このスレイドがものすごくいい。
 正確にいうと、男の人として「ステキ♪」とは全然思わなかったのだが(それってロマンス小説とし てどうよ(笑))、作家としてのおののきとか喜びとかが、地味にしみじみしてるんですね。
 彼の書いている小説は、とある一家の大河ロマン。グリシャムみたいな職業を生かした感じじゃなく 、ヘミングウェイみたいな文学的なもののようだ。だから作家の魂と刑事の生活に引き裂かれているよ うなところもあって、すごーく面白い。たぶん、これは作家としてノーラ・ロバーツが体験した投影で もあるんじゃないかなあ。

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2003/10/5

バーティカル・リミット  なんだか土日に寝込んだというよりは眠った。
 とにかくいくら寝てもまただるくて眠くなってしまう。約束も何もないのをいいことに一人でトロト ロ寝ていた。1日18時間くらい(笑)。
 日曜日は12時に目を覚ましたと思ったら、昼から夜の9時前まで寝て、貴重な起きてる時間に見たの が日曜洋画劇場の『バーティカル・リミット』(2000年、アメリカ)。
 くそう。面白くなかった。いや、公平にいうとアクションは面白かった。K2の空撮はもちろん美しか った。しかーしっ! あのストーリーはなんだっ。
 映画館で見てもないし、レンタル代も払ってないから批判するのは反則だとは思うけど、なんか山に 失礼な気がして仕方ない。  以下ネタバレなので読みたくない人は飛ばしてください。

 私がダイビングのライセンスを取った時の話。
 島で取ってしまったので、プール実習は前の浜でやった。座学もいいかげんだったような気がして仕 方ない。
 で、ホントにそう教えているのかわからないけれど、バディのレギュレーター(タンクから空気を吸 うやつ)が使えなくなった場合、オクトパス以外の場合はレギを渡すな、と言われた。
「そんな」
と、思った。
 レギュレーターが壊れて、その時の深度によっては、間違いなく死ぬ。
「冷たいようだけど、レギを渡したら2人死ぬんだよ。2人死ぬとこを1人で済むんだよ」
 教本では交互に吸って、と、教えているが、相手に渡したら相手はパニクっているからまず返ってこ ない。
 自然に立ち向かう時には冷たい算数をしなきゃいけないんだなー、と、思った瞬間だった。

 映画は親子3人での楽しい岩(ロッククライミング)のシーンから始まる。アクシデントが起こって 、ひとつのカムで3人が宙吊りになってしまう。
 2人が助かるために自分のところでロープを切れ。
 父親はそういう。妹は助かる方法はある、切るなと叫ぶ。そしてピーターはロープを切る。冷たい算 数だ。
 2人ともこの算数の答えに納得していない。
 物語が進むと、遭難した3人を助けに行くために6人が救助に向かう。そして生還できたのは9人のう ち3人。これはまったく納得がいかない。遭難した3人の命が尊くないわけではないが、こんな算数にな るなら救助隊は出ないはずだ。そこが映画なのよ、というのは簡単だけど。
 でも、やっぱりヤだなあ。私は登山をしないが、山(あるいは登山)の素晴らしさを描いたシーンが あれば、こんなに後味が悪くないかもしれない。


2003/10/3

 今日はハリウッドのゴシップの話をしよう。ちなみに元ネタあり。(今月号のFurauの記事)

トゥーム・レイダー2  さて、現在公開中の『トゥーム・レイダー2』。主演のアンジェリーナ・ジョリーがプロモーション のために来日した時、カンボジア人の養子の男の子と一緒だったことをご記憶の方も多いかと思う。
 この子に一所懸命になったために、夫のビリー・ボブ・ソーントンとは離婚。
 しかし、元々映画に詳しかったり、ゴシップに詳しかった人達はツッコんだかもしれない。

 おいおい、お前ら、ちょーラブラブのバカップルじゃなかったのかよ。

 結婚当初の彼らはとにかくお騒がせカップルだった。タトゥー好きつながりだけあってお互いの名前 を腕に彫りあい、お互いの血を封じ込めたペンダントを身につけたりと、なにかとエキセントリックな エピソードが多い。
 だいたい馴れ初めにしたって、ビリー・ボブ・ソーントンは当時別の女性と婚約していたのに、映画 の競演をきっかけに盛り上がったアンジェリーナ・ジョリーが自殺未遂→精神科入院と大騒ぎして、ま んまと略奪結婚してしまったくらいだ。
 が。
 アンジェリーナ・ジョリーは『トゥーム・レイダー』1作目のロケで訪れたカンボジアで、なぜだか 人類愛に目覚めてしまう。何事にも猪突猛進な彼女らしく、いきなり関係団体に莫大な寄付をしたり、 「世の中から1人でも2人でも孤児を減らすのが私の仕事よ!」と、養子を取ったり。
 これだけ聞くといい話なのだが、家族は反対しているそうだ。たぶん、しっかりした考え方をしてい るわけではなく、方向は違うけど自殺未遂を起こした頃のパッッションと狂乱をそのままチャリティに 持ち込んでいるものと思われる。それを家族が心配して危ぶんでいるのだろう。違っていたらスマンけ ど。

 ところで、夫のビリー・ボブ・ソーントンの話をしよう。
 アンジェリーナ・ジョリーに比べると日本での知名度は低いが、アカデミー賞主演男優賞と助演男優 賞で2度もノミネートされている。監督、脚本もこなし、しかも脚本業はかなり評価が高い。(音楽方 面でも活躍している、てーか、元々ミュージシャン) どれくらい評価が高いかというと、『アカデミ ー脚本賞(脚色)を『スリング・ブレイド』で受賞しているくらい。
ギフト  そんな彼の脚本作品に『ギフト』(2000年、アメリカ)がある。
 監督はサム・ライミ、主役の霊感のある未亡人にケイト・ブランシェット、ドメスチック・バイオレ ンス男にキアヌ・リーブス……と、なかなか豪華な顔ぶれなのに興行成績はイマイチだった。ネットの レビューサイトも見たけど「なんでソーントンがあんな脚本を長年温めていたのかわからない」と、な かなか厳しい。
 そう、「アカデミー脚本賞を取ったビリー・ボブ・ソーントンが無名時代に書いた“幻のシナリオ” を映画化」というのもこの映画のウリのひとつだったのだ。
 おおまかなストーリーは、持って生まれた超常感覚(神から与えられた「ギフト」)を生活の糧にし ている未亡人が殺人事件に巻き込まれ……という感じ。(ごめん、未見なのでDVDのレビューをパクり ました) あれ、実話なんだって。
 主役のアニーは、まんまビリー・ボブ・ソーントンの母親がモデルになっているらしい。
 『シックス・センス』の後だったので、2匹目のドジョウ狙いかと思ってたよ! ごめんよ、ビリー ・ボブ。(でも、私だけでなく日本中がそう思ってたんじゃないかと) 
 事件なんかは創作なのだろうけど、彼の母が職業的霊能力者なのはホント。(『ギフト』のDVDのオ マケで言ってるんだって)
 これ、面白くありませんか?
 無名時代ということは、もしかして初めて書いたのが『ギフト』の元の脚本だったかもしれないし、 だとしたら息子の才能を花開かせたのは母の霊能力だった……という、極めてスーパーナチュラルなウ ソみたいな本当の話。

 さて、ハリウッド・ゴシップに戻ってオチをつけようか。
 アンジェリーナ・ジョリーがバカップル時代の血のペンダントを返して、って騒いでるんだと。呪い の儀式に使われるーっ、って。
 女性週刊誌だったら、タイトルはズバリ

 鬼姑に呪い殺される! アンジェリーナ・ジョリーの悲痛な叫び

だろうな、たぶん。


2003/10/2

 なんで昨日のラグビー講座を中座したかというと、また仕事のパーティがあったんですね。
 小さい頃は
「明日はパーティですの、オホホホ」
なんてごっこ遊びをしていたけど、本当にパーティに行くような大人になるとは思いもしませんでした 。ああ、びっくり。
 しかし、昔夢見たパーティとは違い、大人の私が仕事で行くパーティというのは「努力」「根性」「 体力」と、どっかのさびれたみやげ物屋に売ってる置物についている立て札のような(長!)ものを必 要とする、いわば修行の場。
 まさに心・技・体の3拍子揃った状態で挑まなくてはいけません。
 大体が立食であるので体力は必須、たとえ女房に逃げられ娘は悪い男にだまされてシャブ漬けの上に 腹ボテで自分自身は末期のガンにおかされていようが(←だから、長いって!)笑顔をふりまきながら 、元々あんまり持ってない社交術に全力をつくす!
 基本的に社交って記憶術なのよ。何年か前に一度だけ名刺交換した人にいかに早く気がつくか、その 人のデータをどれだけ覚えているか。また、めったにないがお互いにビジネスに役に立つ同士を紹介し てあげたりとか。物覚えが悪い上にボケの入ってる私には、コレはかなりしんどい。(よよよ)

 ちょっと疲れたので、会場を出て近くの本屋に寄った。新橋駅前の文教堂。
 ここは、すごい。
 何がすごいって、ガンダム棚があるんですのよ、奥様。(奥様?)
 泥酔したサラリーマンといえば新橋駅前、新橋駅前といえばねずみ色のサラリーマンという、あの新 橋駅前なのに。
 しかも、ここ、翻訳ものが妙に充実している。ミステリはともかく、SFが充実してる本屋なんて、 今時ちょっとお目にかかれないご時世なのに新橋駅前で!(しつこいって)

 そこで、なぜか『神罰――田中圭一最低漫画全集』(田中圭一/イースト・プレス)を購入。
 ええ、ホント最低(笑)。
 あの神様・手塚治虫の絵で下ネタをやってると思いねえ。(まさに神をも恐れぬ所業!)
 ちなみに帯がついていて、手塚るみ子さん(手塚治虫のお嬢様)が手書き文字で書いている。

 ライオンキングは許せても、田中圭一は許せません!!

 いや〜、手塚治虫の遺族って、ホントにシャレを解するいい人だなー(笑)。こんなお下劣な本を許 可したり、販促を手伝ってくれちゃうなんて。

   仕事で疲れたり、会社でイヤなことがあったら、これを読んでガハガハ笑って何も考えずに寝ちゃお う。そういう目的にぴったりの一冊。
 でも、読んだということを書くだけで、人柄を疑われそうな危機に満ちた一冊だなあ。いやーん。

cover


2003/10/1

 去年、あまりに会社だけが生活のすべてだったので、このままでは世界が狭くなると思った。
 思ったので、人間関係を広げようと、会社の知らない人と喋ってみることにした。(←でも、社会が 会社内に限定されていることは一緒) その時にたまたま話したのがラグビー部のOくんで、ちょうど その年のリーグが始まる前だった。
 Oくん達の活躍で、部はリーグ優勝。
「すごいじゃない〜」
と、たまたま休憩室で会った時にいったら、まだ上のリーグがあるんだそうだ。
 そういえば、ラグビーのことってよくわからない。ボールを後ろにしか投げちゃダメ、っていうこと くらいしか知らない。
 と、いうことで、今年のシーズンに向けて、ラグビー観戦のためのワンポイントアドバイス講座が会 社の会議室で開催された。Oくんと、同じくラグビー部のIくんが講師である。もちろん業務終了後、 希望者のみ参加。

 リーグについての説明とか弊社の(というかグループの)ラグビー部の説明があった後、Iくんによ るラグビーのルール説明が始まった。
 ホワイトボードにフィールドをさらさらと書いたあと
「ここにこういうゴールがございまして……」
 Iくんの説明はとっても丁寧だ。
「このHの形の上の方にボールを入れていただきますと……」
 いや、その丁寧語は違うだろう。
 わしら、トライはしないから! と、会場にいた人のほとんどは心の中で突っ込んだ。
「……この場所でスクラムを組んでいただくのですが」
 だから、わしらは、スクラムは組まんから!(笑)
 名残惜しいが、用があった私はIくんの説明の途中で退席させてもらった。後ろのドアからこっそり 出たら、前のドアから心配そうな顔でOくんが出てきた。
「あの……あいつの説明でわかりますか……?」
 ごめん、Oくん、怒って退出したわけじゃないんだよ(笑)。

 ちなみにIくんは中学時代からラグビーをやっているそうだが、
「ルールがわかったのは高校3年の時でした」
と、言いながら説明していた。(本人、マジメ)
 同僚として、ちょっと仕事ぶりを心配してしまったり(笑)。



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