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特集:リーガル・サスペンス

処刑室 ジョン・グリシャム 白石朗訳 新潮社
The Camber John Grisham
有罪答弁 スコット・トゥロー 上田公子訳 文藝春秋
Pleadeing Guilty Scott Turow
STORY

サム・ケイホールは、ユダヤ人弁護士に対するテロ活動で死刑の判決を受けていた。
刑の執行まで、後1ヶ月となったとき、彼の前に若い弁護士が現れて弁護を申し出る。
そのアダム・ホールという弁護士は、サムの実の孫だった。

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死刑の執行に対して、私たちはどれだけ知っているのだろう。
判決についてはニュースでよく耳にするが、実際の死刑執行にはどんなドラマがあるのか。
この物語は、もう説明するまでもないほど有名なジョン・グリシャムの原作。
リーガル・サスペンスというカテゴリーを作り出し、以後、雨後のタケノコみたいに 次から次へと法律関係者(ほとんどは弁護士らしい)が書く作品が出版された。 彼の書く作品は、みんなハリウッドで映画化されるので、特にミステリ・ファン でなくても、知らない人はあまりいないんじゃないかと思う。
しかし、この作品は日本人にはちとツライモチーフかもしれない。
私にも公民権運動というのは生まれる前の話で、ツライものがあった・・・。
そして、クー・クラックス・クラン団員のサムというキャラクターを愛せるかどうかは、 本当に自信がなかった。(この感情移入できるかどうか、は、こういったサスペンスものを 面白く読めるかどうかの分かれ目なので、結構大問題)
・・・大丈夫でした。すごい。すごいぞ、グリシャム!
死刑執行という、重過ぎる現実に向かって物語りは進んでいきます。 サムがどうなるのか、弁護士で孫のアダムと一緒にジリジリしながら、 その日へ進んで行くのです。
STORY

元警察官の冴えない中年弁護士マック・マロイは、ある日法律事務所の偉いさん達から呼び出される。
失踪した変わり者の同僚弁護士バートを探してほしいというのだ。 彼の失踪前に560万ドルの使途不明金が見つかった。 マックはバートを探し始めるが、事件は単なる横領ではなさそうな様相を見せてきて・・・。

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「推定無罪」で、劇的なデビューを飾った、スコット・トゥローの作品。
「推定無罪」は、ハリソン・フォード主演で映画化されました。 私も映画を見に行って(ハリソン・ファンだから)、その後原作本を読んだクチです。 ハリソン、ありがとうっ!って感じでした。だって、原作の方が10倍くらい面白かったんだもの。 (いや、別に映画がつまらなかったというわけではないんだよ、ハリソン)
グリシャムに比べて、重たい作品を書く人です。
特にこの作品はハードボイルドだったなあ。
リーガル・ハードボイルド(笑)。
すごくアクの強いキャラクターばっかり出てきて、しかも皆幸せではないあたり、 ちょっとやるせなくなったりもします。しかし、ハッピーエンドが好きな私にも、 そのやるせない物語を最後まで読ませてしまうのは、さすがの力量というべきでしょう。
遺言執行 シェルビー・ヤストロウ 森詠訳 集英社
UNDUE INFLUENCE Shelby Yastrow
■今回のまとめ■
STORY

フィリップ・オグデンは、ごく地味な弁護士。 彼のオフィスで遺言状を作成した目立たない一人暮しの老人が 死亡したという知らせを受けるが、なんと、老人は800万ドルの遺産を残していた。
しかも、老人はユダヤ人でないのに、遺産をユダヤ教のシナゴークに残すよう遺言していた。
この巨大な遺産をめぐって、様々な人間の様々な思惑が絡み合って・・・。

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お、面白かったあ!
こういう感想は禁じ手なのかもしれないが、だって本当なんだもん。
今回、この文を書くためにもう一度読み直したが、やっぱり熱中して 読んでしまいました。グリシャムがあったおかげでこの作品が世に出たんなら、 グリシャムにお礼を言いたいくらい。
作者は、1995年の初版の時のプロフィールによると、 マクドナルド社法務担当上席副社長。相当のエライ人なのではないだろうか・・・、 もしかして。
でも、作品を読むと思うんだが、この作者は絶対ミステリが好きだと思う。
ハラハラ、ドキドキのツボをよく知っている気がする。そして、初読の時にも そうだったのだが、今回も泣いてしまった。初めて読んで、たぶん3年ぶりだと 思うのだが、今回は違うところで泣いたのだった(大人になったということだろうか?)。
ところで、初めは図書館で借りて、よかったので最近購入したんだけど、 なんとこれが初版でした・・・。ちなみに奥付は1997年なのだよ。
なんでかな〜、こんなにいい作品なのに。
今のところ大丈夫だけど、絶版にならないことを祈るばかり。 「XXX」(適当な本のタイトルを入れよう!)を買うくらいなら、 その中の1/10の人でも買ってくれればねえ・・・。
リーガルサスペンスというカテゴリーができたのは、 せいぜいここ10年のことじゃないかと思う。
小中学生の頃って、確か「法廷もの」というカタイ(笑)名前で 「ペリー・メイスン」が載ってたきりだったような気がするもの。 で、その興隆の最大の功労者って、やっぱりジョン・グリシャムなんだろうなあ。 彼と、彼の原作を映画化したハリウッド。しかも、トム・クルーズやジュリア・ロバーツ のようなキラ星のようなスター達が主演するんですもの。世間の注目も浴びようっていうものだ。
 しかし、そのおかげで作家となった数々の法律家の皆様を考えると、私はクラクラとする。 だって、面白いんだもの。ただのブームでシロウトに毛が生えたような人が書いてるものでは、 全然ない。アメリカの法律家っていうのは、どいつもこいつも文才があるわけ!?と、 叫んじゃうよ。まあ、全員が、天が二物を与えたもうたすごい人々じゃないんでしょうけれどね。

 才能が世に出ることはいいことだ。
 これからも楽しみにしています。法律家の先生方へ。
(99.01.02)

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