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とりあえず最近読んだ小説あたりからご紹介(でもあまりよんでないね)。



メイ・サートン『夢見つつ深く植えよ』(1968、みすず書房、1996)


   中年の女性作家が田舎に家を買い、ひとりで暮らし始める。その中で
   綴ったエッセイ(だった、よな)。
   もともと新聞でこの本の書評に引用されていた一文に惹かれて読んだ。
   ちなみに、メイ・サートンは科学史家ジョージ・サートンの娘


同上『独り居の日記』(1973、みすず書房、1991)


   まだ1/3くらいしか読んでないで止まってる。
   サートンに言わせると、『夢見つつ・・・』は自分の感情のネガティヴな側面を
   描かなさすぎたとのこと。『独り居の日記』では、自らの怒りや懊悩が
   より率直に綴られている。


水村美苗『私小説-from left to right-』(1995、新潮文庫、1998)


   「帰国子女」を主張するには早く帰ってきてしまった自分には
   身にしみてわかるような気がするところとそうでないところと両方。
   あと、欧米でアジア人である自分を発見することの辛さは、世代/時代背景がやや
   違うのでそのままで理解することは出来ない。


内田春菊『あたしが海に還るまで』(1996、文春文庫、1997)


   こういう人生もあるのだなと思う自分はやはりどこかお嬢さん育ち。


桜井亜美『ヴァージン・エクササイズ』(幻冬社文庫、1998)


   何で最後はハッピーエンドなんだい?


ファティマ・メルニーシー『ハーレムの少女ファティマ-モロッコの古都フェズに生まれて』
 ラトクリフ川政祥子訳(1994、未来社、1998)


   原題は"Dreams of Trespass"。要するに「境界線を超える夢」。改題したほうが確かに
   関心をそそるとは思うけど・・・・ちょっと作品の内容とイメージがずれてしまうよね。
   20世紀初頭の植民地下モロッコの知識人家庭で育った女の子ファティマの幼少期を
   描いたもの。一般に日本人が「ハーレム」というコトバで想像する、オリエンタリズムちっ
   くな固定的イメージが改められるでしょう


ターハル・ベン=ジェルーン『砂の子ども』菊地有子訳(1985、紀ノ国屋書店、1996)


   かなりいけない比喩を使うと、モロッコ版オスカルの話。
   つまり、イスラム圏において跡取りとして性別を偽って育てられる女性をめぐる話
   なのだが、いわゆる近代小説の枠組み(時系列に沿って物語りがすすみ、中立かつ
   客観的で全知全能の語り手を想定する)を完璧に廃した構造で作られている。
   いくつもの語り手の叙述が入り交じり、読者には本当の話の結末さえわからない。
   いや、そもそもたった一つの「事実」などあるのか?
   なお、この本について激しく些細なことながら日記でちょこっと言及アリ


同『聖なる夜』菊地有子訳(1987、紀ノ国屋書店、1996)


   『砂の子ども』の続編。なかなかよいです。やはり。


松浦理英子『ナチュラル・ウーマン』(河出文庫、1994)


    年代順不同の三つのエピソードからなり、いずれもビアンな関係の物語。
   主人公は一貫して一人の女性で、一番昔の「最初の女性」との話がラスト
   にくる。そして一番印象に刻まれるのがこの「最初のはなし」であり、そこでは主人公
   と、ヘテロセクシュアルな性愛(とりわけセックス)のあり方に嫌悪感を抱く
   「男性経験豊富」な美しい女性、花世とサド=マゾヒスティックで過剰さに満ちた関係を
   経験し、破局に至る。
   時代背景、世代の差もあるが、彼女達に比べると自分の性愛観は随分のっぺりとしていて
   牧歌的なものに見えてくるものである。花世のセリフとなっている「ナチュラル・ウーマン
   になる」という言葉、そしてラスト別れの会話に際し主人公が抱く「いわゆる「女」なのか
   わからない」という絶望は、私の中の何かをかすめていったが全体としてはすり抜けて
   しまった。
   彼女らにとって「女=ウーマン」でいられないことは何故苦しみなのだろうか?
   どうでもいいが、ラストの話の舞台になる大学のマンガサークルがなにやら
   文化資本高げでイケてる場であるというあたりが作者の年代(1958年生まれ)を
   思わせる。
   本当は他の作品もきちんと読んでおきたい作家なのだけど残念ながらこれしか
   読んでませ〜ん。


マルグリット・デュラス『北の愛人』(1991:河出書房新社、1992)


   1991年に日本でも上映された有名な『愛人』の作者による、映画化とほぼ
   同時期のリミックスバージョンとでもいおうか。物語はほぼ同じ枠組みで進むが
   細部や設定、語り方がやや異なっている。前述の映画化に際して脚本面で監督
   と折り合わなかったこともあり、映画の脚本と演出を意識した上で書かれた
   ともいえる小説。私は『愛人』よりこっちの方がスキかもしれない。
    内容的には『愛人』よりも細部が枝分かれしているような豊かさと混乱が
   増加しているような印象を受ける。
    で、この中では全くメインではないが、主人公と弟の一度限りの近親相姦
   に関するエピソードが、今まで目にした性愛にかかわる描写の中では一番心を
   つかまれたものだったりする。いや、とにかくサイコーなんだってば(笑)。
   


比留間久夫『YES・YES・YES』(河出文庫、1992)


吉本ばなな『N.P』(角川書店、1990)


酒見賢一『後宮小説』(新潮社、1989)


マーク・トウェイン『不思議な少年 第44号』(角川書店、1994)


同上『不思議な少年』(岩波文庫、19??)


 
 
 
 


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