わがまま えいちゃん
えいちゃんは
とっても わがままな 女の子。
あんまり わがままが すぎるので、
まだ 4さいだというのに
だ〜れも あそんでくれなくなりました。
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だからといって、
えいちゃんは さみしく ありませんでした。
なぜかというと、えいちゃんは 自分の想像の世界で
1日の ほとんどを すごしていたので
誰かが えいちゃんのことを
怒ろうと、笑おうと、からかおうと、
ちっとも かまわないのでした。
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ある夜、
えいちゃんは 自分の部屋の窓から
空を じ〜ッと 見ていました
空の お月さまが ビカビカと
それは きれいに 光っていたのです。
あまりにも 見つめていたので、
お月さまも はずかしく なるくらいでした。
そうするうちに、えいちゃんは
お月さまを 手にとって 見たくなりました
(お月さま、こっちにきなさい。)
えいちゃんは お月さまに こう言ってみました。
でも、お月さまは な〜んにも 答えません
(こっちに きなさいったら!)
なんど いってみても、おなじでした。
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えいちゃんは
すっかり おこってしまって、
こんどは ジャンプをしはじめました。
だって、本当に 今にも 手が とどきそうなくらい、
お月さまは 近くにいたのですから。
えいちゃんは いっしょうけんめい、
できるかぎり 飛んでみましたが、
なかなか お月さまの ところにまで とどきませんでした。
さて、いくら飛んでみても
どうやら お月さまの ところへは 行けそうもない と
やっと あきらめた えいちゃんは、
次の方法を 見つけるために、
あたりを キョロキョロと みました。
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すると、
えいちゃんの 3にん分くらいの 高さの木が
あるのに 気がつきました。
えいちゃんは 木のぼりが 大好きです。
急いで走って その木に飛び乗り、
あっという間に 木のてっぺんまで 登ってしまいました。
でも、それでも やっぱり お月さまは
さっきと同じ 大きさのままで
ビカビカと 光っているだけなのです。
(もう、お月さまったら、いじわるしないで
こっちに きなさいったら!)
と、えいちゃんが そういったあと、
そのすぐとなりに 別の木が あることに 気がつきました。
その木は、どうやら えいちゃんが 登った木よりも、
もう少し 背が 高いようです。
えいちゃんは、その木に 飛び移りました。
その木の てっぺんにまで ついたとき、
さらに そのとなりに もう少し 高い木が
あるのに 気がついたので、
また、えいちゃんは その木に 飛び移りました。
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しばらく
同じことを くりかえしてふと、
えいちゃんは 周りのけしきが
さっきよりも 違うことに 気がつきました。
どうやら、その木は 空まで のびていたようでした。
(あら、この白いものは何かしら?)
よく見ると、えいちゃんの 足元は
白い フワフワした 雲で いっぱいでした。
(きっと、お月さまのところについたんだ!)
嬉しくって、でも、そ〜っと、
えいちゃんは 雲の上に 足を おろしてみました。
(不思議!わたし、雲の上に立ってる!)
えいちゃんは 走り出しました。
お月さまを見つけるために。
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でも、
なかなか お月さまは 見えません。
(な〜んだ)えいちゃんが そう思った時です。
遠くから 楽しそうに わらう声が 聞こえてきました。
その声は だんだんと近づいて、
えいちゃんの すぐそばまで 聞こえてきました。
ところが、不思議なことに、声は聞こえても、
だれの 姿も みえないのです。
えいちゃんは いっしょうけんめいに
声の するほうを 見つめて、姿をさがしますが、
声は すぐそばで 聞こえるのに、
えいちゃんには それがだれなのか ちっとも見えませんでした。
(ちょっと、だれなのよ!ここにきなさいよ!)
えいちゃんは おこって言いました。
すると、えいちゃんのまわりで(ふふふ...)と
笑う声が 聞こえました。
(こわ〜いんだ、おこってるよ。)
(じゃあ、この子には わたしたちは見えないのね。)
(からかってみようよ!)
(だめよ!そんなことしたら かわいそうよ)
(ちょっと、だれなのよ!)
えいちゃんは、こわくなって、さけびました。
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(おどろかせてごめんなさいね。
わたしたち、まだ 人間になってないから 体がないの。
でも、わたしたちには、あなたが よ〜くみえるわよ。
私は あなたと 同じ 女の子よ。
わたしの ほかに 男の子が1人いるわ。)と、
その声が 言ったので、
えいちゃんは びっくりして しまいました。
(体がないの?じゃあ、どうやって遊んでいるの?)
(ふふふ...)と女の子の声が、こう言いました。
(体はなくても、わたしたちは いつも たのしく
遊んでるのよ。
かけっこしたり、お話ししたり、いろいろとね。
ねえ、本当にわたしたち が見えないの?)
(うん、ちいっとも。...あれ、ちょっとまって...)
よ〜く その声の するほうを 見てみました。
すると、ぼんやりとですが、青く、まあるく かがやいている
2つの光が 見えてきました。
(見える!見えるよ!あんたたちが 今 話ていたの?)
(そうだよ!ぼくたち かけっこを していたんだけど、
いっしょにやらないかい?)
男の子の 声が そう言いました。
(うん、いいよ!)
それから しばらくの間
えいちゃんと 2つの光たちは とても 楽しく 遊びました。
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そのうちに、えいちゃんは
からだのない この2つの ひかりの こどもたちが
大好きに なりましたが、体のないことが
とても かわいそうに思いはじめました。
(あんたたち、からだが なくて かなしくないの?)
えいちゃんは 思いきって そう聞いてみました。
(さみしくないよ!だって ぼくたちは いつかは しらないけど、
そのうちに からだを もらえるんだもん)
(ほんとうに?どうして いまは もらえないの?)
(さあ、それは ぼくたちも しらない。
でも、ああ、はやく そのひが こないかな〜っておもうよ!)
(からだを もらったら、どこにいくの?)
(しらない)
(しらないのに、こわくないの?)
2つの光は、それを聞いて だまってしまいました。
えいちゃんは 自分が とても 悪いことを したように感じました。
(どうして何も言わないの?)
えいちゃんは 思いきって 聞きました。
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(こわいと思うし、
ぼくたちの 行くところは さまざまだからね)
男の子の声が、答えました。
(でも、ぼくたちは また かならずあえると しんじてるよ)
続けて 女の子の声も いいました。
(そうよ、かならずあえる!)
えいちゃんは 勇気を出して 聞いてみました。
(えいちゃんとも、またあえるの?)
2つの声は 一つになって いいました。
(そうだよ!かならずあえる!)
えいちゃんは それを聞いて、
うんうんと うなずきながら
とっても うれしそうに わらいました。
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そのときです。
(さぁ おまえたち、そろそろ やすむころじゃ ないのかな)
という しずかなこえが
えいちゃんたちの 頭の上のほうで 聞こえました。
えいちゃんは びっくりして、
(いまの、だぁれ?)と聞くと、
(ぼくたちのお父さんだよ)と男の子の声が、答えました。
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(さぁ本当に もう いかなくちゃ。
えいちゃんは ぼくたちが とどけてあげるよ。
さぁ、目を閉じて 4つかぞえて ごらん)
えいちゃんは いわれるとおりに 目を閉じましたが、
すぐに また目をあけて、
(ねぇ、本当に また あえるよね!?)と聞きました
2つの光は(うん、また かならず あおうね、えいちゃん!)
と答えたので
えいちゃんは あんしんして 両手で目を抑え、
(ひとーつ、ふたーつ...)と数え始めました。
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(...よーっつ)と
言いおわって 目をあけると
えいちゃんは パジャマを来て、
ベッドの なかに いました。
えいちゃんは 夢をみて いたのでしょうか?
えいちゃんは ベッドから 出て まどの外を 見ました
外は きらきらと 輝くような 青空が 広がって いました。
(かならず あえるよね)
えいちゃんは 空を見上げて つぶやきました。
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それから数ヵ月 たちました。
えいちゃんの いえに 赤ちゃんが 生まれました。
なんと男の子と、女の子の ふたごの 赤ちゃんでした。
えいちゃんは 誰よりも よろこびました
そして、
えいちゃんはもう
(わがままえいちゃん)では ありませんでした。
おわり