ボクは音符
ボクは音符です
ボクはシューバさんの作曲する楽譜のなかで働いています
シューバさんはりっぱな作曲家で,
よく家族と一緒に彼の曲を演奏します
シューバさんはそれが大好きなんです
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でもボク自信としては、
ちっとも楽しくないんです
どうしてなのかって?
う〜ん...それはね、
シューバさんには4人子供がいて、
その中にジムという男の子がいるんです
ジムはヴァイオリンを担当していて
ボクはいつも彼の楽譜の担当なんです
ジムはとてもかわいい男の子なんだけど、
彼の演奏は最悪なんだ!
ボクはいつだってピリピリしながら彼が音を出すのを
待ってるんだけど
他の音符仲間だって同じ気持ちなんです
とにかくみんな他の楽譜に行きたいって
頭を抱えてる
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どうやら最近 家族の皆も
ジムの恐ろしくひどい演奏にがまんが出来なくなったみたいで
ある夜シューバさんが「もっと練習が必要だ」ってジムに話したんです
おまけにジムの他の兄弟たちがものすごい剣幕で
おまえは下手だとかそのことをわかってるのかとか
言ったもんだから
小さなジムはただうつむいて小さな声で「うん」と答えただけ
ボクもついでに一言いってやりたかったけど
ジムがあまりにも悲しそうな顔をしていたから
ボクは何もいうことが出来なかったんです
その日からボクらは音楽室でジムを見ることがなくなってしまいました
おかげでボクたち音符たちはみんな
毎日毎日嫌な気持ちを感じるようになったんです
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ところがある日、
ジムが音楽室にこっそりと入ってきたんです
それは家のなかに誰もいない日で
「ジムが入ってきたぞ!!」ってみんなでささやきあったんだけど
ほんとにボクたち興奮したなぁ
ジムは自分のヴァイオリンを手にとって
弾き始めたんです
音色は相変わらずひどいもんだったけど
ボクらはただ嬉しくてしょうがなかったんですよ
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ところが、
突然音が止まったので
どうしたんだろうとあわててジムを見上げてみると
ジムはとっても悔しそうに目に涙をいっぱいためていたんです
「ジム、泣かないで!」ボクたちは一生懸命そう叫びました
もちろん、ジムにはボクたちの声はきこえないんですけどね
するとジムがつかつかとボクたちのすぐそばにやってきて、
そしてボクらをじっとみつめたんです
だからボクたちは出来る限り大きな笑顔でジムにこたえました
ところがジムはボクたちにむかってこう言ったんです
「音符、音符、どうしてボクが音符なんかにあわせなきゃならないんだ!」
本当にショックでした それから とても悲しかった
ジムは涙をふいてから、ヴァイオリンを取り
また弾き始めました
ボクたちはただじっとジムをみつめていたけれど、
最後までジムはボクたちの正しい音をだすことができませんでした...
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そんな状態の音楽室へ
男の人が入ってきました
彼はシューバさんの友人でしかも世界的に有名なヴァイオリニストなんです
「やぁジム、元気にしている?」と、彼はジムに声をかけると
近くの椅子に座りました
「うん...なんとか元気です」小さい声でジムはそう答えました
「おや!君はヴァイオリンを弾いていたのかい?すごいじゃないか」
彼は続けて話しました
「わたしもちょうど君くらいの年からヴァイオリンを始めたんだが
そのころはそりゃあひどいもんだったよ」
ジムはものすごく驚いた様子でこう聞き返しました
「おじさんが?そんなの信じられないや
だっておじさんは世界中で有名なヴァイオリニストでしょう?」
「ハ、ハ、ハ! ありがとう、ジム
...ところで、何を弾いていたんだい?-あぁ、これか
ちょっと君のヴァイオリンを借りてもいいかな?」
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ジムは もっていたヴァイオリンを
彼に渡すと、すぐに弦をひき、音を奏で出しました
美しくて、やさしい音が音楽室に響き渡りました
ボクら音符たちはたちまちうっとりとなってしまいました
そうです、この音こそがボクらの音なんです!!
それからジムはというと...
ジムは、あぁ、あの顔をボクは忘れることが出来ません!
ジムは信じられないといった感じで、
彼の演奏する姿をみつめる目はキラキラと輝いていたんですよ!
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"すごいや!"
"どうやったらそんなふうに奇麗な音が出せるの?"
ジムは興奮して聞きました。
"ただ、練習するだけだよ"と彼は答えました
"もちろん、ボクだって一生懸命練習したよ、でも...!"
"それから、ヴァイオリンを心から愛してあげることさ
さぁ、君の番だよジム"
彼は微笑みながらそう言うと、ジムにヴァイオリンを渡しました
ジムはヴァイオリンを受け取り、肩に置きました
"それじゃあジム、この音を出せるかい?"
そう言うと、なんと彼は
ボクを指差したんです!!
ボクは心の奥底から祈りました
そして心の中で
"ジム、ベストを尽くせ!"と叫んだんです
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"想像するんだよ、ジム"
"このヴァイオリンは君の体の一部になりたがっているんだ
君の友達になりたがっているんだよ
だから怖がらなくていいんだ"
ゆっくりと、弓を引くために
ジムは腕を動かしました
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ジムは音を出しました
それは,「完全に」ボクの音でした!
"そうだよ、ジム!弾けたじゃないか!!"
彼は叫びました
それからボクたち音符も彼のように
叫んだり、飛び上がって喜びました!
"ボク、弾けたの?"ジムはおそるおそる聞きました
"そうだよ、君は完璧だったぞ!"
そう聞くとジムは顔中が笑顔になって、
再びヴァイオリンを持ち上げると
ボクの音を繰り返し繰り返し弾き始めました...
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その日以来、
ジムは以前のように家族のみんなに加わって
シューバさんの曲を演奏するようになりました
誰一人としてジムに文句を言う人はいなくなりました
なぜかというと、
ジムは家族の中の誰よりも
上手に演奏できるようになったからです
それからボクはどうしているかというと、
もちろん、変わらずにジムの楽譜の中にいます
そしてジムの楽譜にいることが
ボクにとって誇りなんです!
おわり